”わたし”のはじまり~初航海
見たこともない天井が、目の前にある。あ、揺れてる。おっとっと。そうだ、私、仕事始めたんだ。えっと、わたしは…
「おい、沙希~!とっくに時間すぎてんぞ!」
部屋のドアがドン・ドン・と叩かれて、わたしはドア越しに怒鳴られた。時間は朝の6時。いっけない、朝の調理開始は5時から!新人で下っ端のわたしはもっともっと早く起きて調理室の掃除とかいろいろしなきゃいけないのに!…あれ?不思議。なぜか自分のやるべきことが、わかる。急いで制服に着替えなきゃ。っと、ブラジャーをつける…あら、この子、地味に巨乳じゃん。背は170cmぎりぎりあるかないかくらい。肩幅はあるけど、そんなにガッチリはしてないな、水泳やってたせいかしなやかなボディーライン。えっと、従業員証が胸のポケットに入っているはず、うん、あった。
立花 沙希 ≪たちばな さき≫、わたしの名前。従業員証のなかのわたしの髪は無造作にポニーテールにされて、黒縁の眼鏡がなんだか暗い印象を与えている。今日は寝坊しちゃったし、明日からイメチェンするか。従業員証通りに髪を束ねて、制服をきて、歯磨き、洗面をササッと済ませて部屋をでた。
船乗りといっても豪華な客船勤務。どこ行きかというと…今回はアメリカ西海岸。いや~心が躍りだしそう。だけど、とにかく急いで調理室へ。船内の通路は職員用だからかなかなか狭い。階段の角度は急。さあ、調理室。元気出していくぞ、1年しかないんだから。
「すみません遅れましたー!」
大きな声を出して入っていった。あ・れ・皆がじっとこっちを見ている…なんかおかしなこと言ったかな、わたし。
「ぐっすり寝て元気いっぱいか?早く食器とテーブル、準備しろ!」
んっ、あれはチーフ。調理の人間の中で1番偉くて1番年配。でも1番仕事ができる上司。
「元気いっぱいです!準備してきます!」
足早に大きな食器棚のある食器室へ行き、朝用の食器を揃えて…箸やフォーク、スプーンも準備しないとね、あと、紙ナプキンも…っと。
「おはよ、なんか今日作業早いね」
準備を手伝いに来てくれた人、船のエンジニア、25歳の木田智史≪きだともふみ≫(通称トモ)さん。背は170cmちょい、綺麗なお顔、こんな人船乗りなのはもったいないと思うのは私だけ?
「寝坊しちゃったんで…頑張って取り返さなきゃです~」
「今日なんか雰囲気違うね、いつもおとなしいのに」
あれ、わたしって暗い子なの?そんな記録書き込まれてないんだけど…
「職場にも段々慣れてきたので、本性みせていきますよ~!」
「ははっ、そりゃいいね!楽しみだな」
う~ん、こりゃ従業員証の見た目とおり、わたしってば暗い元気のない子キャラみたいね。でもこの1年で、わたしは生まれ変わる。仕事もプライベートも元気いっぱいで、本人が戻ってきたときには明るく充実した毎日を送れるように。
「チーフ、こっちは準備できました!器具洗っておきますね」
すかさず先を見越して片づけにまわる。大体料理人って生き物は料理を作るのと盛り付けにはこだわりがあって、調理に使った器具は下っ端のわたしみたいなのが率先して片づけるものでしょう。
「おう。頼む」
ほ~らやっぱり、なんだか楽しくなってきた!上司や同僚が仕事しやすいように先を考えて行動する、今まで呑気に主婦してた私じゃありえないこの充実感。この心地良い疲れはいったいなあに?私ってばまさか、ドMだったりして…
朝の調理は片付き、お客様が食事を楽しんでいる。その間、交代交代でいろんな部署の乗組員が乗組員用の公室で食事を済ませていく。お客様とは違って、どうでもいい長~い机に、背もたれのない椅子がびっしりズラっと並んでいる。色気がない。おまけに清潔感も、ない。あ、隣にトモさんが座った。
「今回の航海は長いな、携帯もところどころでしか繋がんないし」
「携帯の意味ないですよね、持って歩いてないですもん」
「え、いいの?例の彼と連絡取らないと…」
おっと、そうそう。記録ではわたしには1歳上の彼氏がいる。身長は190cm近く、おめめぱっちり、わたしよりカワイイ顔立ちの“見た目は自慢できる”彼氏…でも、仕事はフリーター、このままだと将来は暗い。そしてなにより
「束縛がひどいので、そろそろ終わりかな…なんて思ってます」
「えぇ~、あんなカッコイイのに!?マジかよ」
「男は見た目じゃないですよ」
「お、名言でたね!俺も頑張ろっと、ごちそうさま」
席を立つトモさん。あなたのほうがしっかり働いてて、見た目も性格も良し、身長はもう少しほしいとこだけど、素敵ですよ。
「今日もファイトです~」
わたしの言葉に応えるように手の甲でバイバイをしながらエンジンルームに向かうトモさん。わたしもそろそろ食器の片づけに行こうかな、席を立つ。
この客船を動かし、お客様にサービスを提供するために色々な人が働いている。わたしは船舶調理士、乗組員のまかない担当、通称チームママ。お客様の食事担当のチームシェフが大半なので、ママは結構忙しい。そしてタオルの洗浄や食器洗浄もママが全てやるから不条理だ。あっちの皿はあっちで洗えばいいのに。
そもそも船を動かすために、船のエンジン系統をつかさどるチームエンジン、舵を取り見張りをするチームコンパス、無線・放送機器系統担当のチームボイス、あとこの客船はヘリポートがあるのでその整備・管理のチームメカ、わたしの所属するチームママの航行5チームが存在する。そうして動く客船で、お客様向けサービスを担当する接客4チームも存在する。バイク・トラック・自家用車の誘導・管理と船内見回りのチームワッチ、お客様の誘導・お部屋への案内やきめ細かいサービスをつかさどるチームフロント、お掃除全般のチームクリーン、そしてわたしの敵(?)のチームシェフ。この計9チームでこの豪華客船はお客様に快適な航海を提供しているのです。
客船勤務だなんてなんかカッコイイ感じがするけど、実は結構な汚れ仕事が大半を占め、チームに分かれてはいるものの仕事の範囲の線引きが曖昧な部分も多いから…わたしみたいな新人はいろんなチームの仕事も手伝わなくちゃいけない。1日48時間くらいあればいいのにって、思う。主婦やってたさっきまでは毎日が退屈で長くて仕方なかったのに、生き方一つでこんなに時間の価値が違ってくるもんなんだなぁ。
食器を洗い終わり調理室に戻ると、チーフが栄養ドリンクを渡してくれた。
「疲れ、たまってるんじゃないか?でも、動きはどんどん良くなってきてるぞ」
「今朝はすいません、ドリンクいただいて良いのですか?」
「あぁ、飲め、昼は9時からな、それまで休め」
「ありがとうございます!お疲れ様でした」
「おつかれさん~」
チーフとは上手くやっていかないとね、良好な職場環境には上司の協力と理解が不可欠。さて、休む前に女性従業員の洗面所やトイレの掃除済ませておくか…この船には女性従業員は3人しかいない。この男女平等の時代、普通はもっと女性職員が多いと思うのだが、勤務の不定期さや長期間日本から離れることから過酷な職業とされて女性からは超不人気の職場のようだ。う~ん、頑張れわたし!
「沙希ちゃんおはよう、おつかれさまぁ」
おっと、女性では最年長の34歳、花の独身の今野加代子≪こんのかよこ≫(通称コンノ)さんと洗面所で鉢合わせ。チームメカとチームフロントを併任している。身長155cm、化粧ばっちり、女を捨てている訳ではなさそう。
「おはようございます!」
「沙希ちゃん今朝寝坊したんだって?疲れてるんじゃない?」
「すみません…気を引き締めなおします。。。」
「あはは、私も何度もあるよ、大丈夫。頑張ってね」
「ありがとうございます」
今野さんは、とてもいいヒト…に見えるが、昔はかなり尖っていたとチーフから聞いた。
(「コンノとは上手くやったほうがいいぞ、この船のお局だからな、逆らうなよ」)
今のところ距離感と空気感は良好!プライドの高い上司はとにかく褒めて、ついていきます的な感じで接しとけばなんとかなるだろう。
「そうだ、沙希ちゃん。今夜休憩所でおやつでも食べながらおしゃべりしない?」
キター!今野さんお得意の“お菓子食べながら言いたい放題女子会”!30代で恋人ナシ、こんな職場でやっていくにはこんな楽しみしかないのかなぁ、なんか、可哀そうなヒト。
「いいですね、仕事終わってシャワー済ませたら今野さんのお部屋ノックしますね」
「よろしく、あ、智里ちゃんも誘っておいてくれない?」
「了解です!」
この船にいる希少種、わたしと今野さんともう一人、前田智里≪まえだちさと≫(通称ちぃ)さん。チームエンジンとチームフロントの併任で、25歳。チームフロント内ではクレーム処理に定評があるクールで160cmくらいのスレンダーでボーイッシュな人。じつは前田さんは今野さんのことが大嫌い…理由はわからないが、今にその原因を突き止めてやる~、女子はこういうの、好きなんですよ。さて、一応お声かけしますか。
(トントン。)
前田さんの居室のドアをノックしてみる。ドア横のホワイトボードには“在室”と書いてある。
(ガチャ)
ほんの少しドアが空いた。
「あ、立花か。おはよ」
なんでドアそんな少ししか開けないんだろ、部屋汚くて見られたくないのかな。
「おはようございます。今夜、例のお誘いがきたんですが、前田さん、どうされます?」
間髪入れず
「私パス。仕事あるって言っておいて」
冷たい言い方、でもわたしは嫌な顔はしない。付き合いは人それぞれ得意な人とそうでない人がいるもんね。前田さんは後者、それはそれでいいと思う。
「了解です!朝からすみませんでした」
「じゃーね」
(バタン!)
はい、ドアクローズされました。こんな感じの人なので結構敵が多いみたい。仕事の腕はかう反面“前田様”なんて陰で言われてるの、聞いた。ヒトっていろいろ。私ってば八方美人、女からは嫌われるタイプだろうな…
今日は朝寝坊の大失敗以外はなんとかいい具合にお仕事できたんじゃないかな、寝坊はきっと記憶の書き込みのせいだ。昼と夜の調理は何事もなく終わり、シャワーを浴びた。例の女子会の時間だ。髪をブローし、今野さんのお部屋のドアを
(トン、トン。)
「ちょっと待ってね~」
今野さんの明るい声。わたしに負けないくらいの可愛らしい声している。声だけなら20代で全然誤魔化せるんじゃないかな、なんて思ったくらいにして、クスクス。
(ガチャ)
「智里ちゃんは?」
「お仕事が忙しいみたいで…お誘いした時も疲れた様子でした…」
「そっ…か。んじゃ入って、私の部屋で話そう」
「いいんですか?失礼します。」
(・・・パタン。)
他人様のお部屋に入ったのは初めて。客船内には乗組員の居住スペースがしっかりあって、男性は大体下っ端は4人部屋、中堅乗組員で2人部屋、いい歳になったら1人部屋。なのに女ってば3人しかいない希少種のせいか1人部屋が用意されているのです!世間の評判は最悪でも内部からみれば最高のVIP待遇だと思うんだけどなぁ。んで、仕事と生活の場がこの船なので、仕事終わった後まで乗組員の顔見たくないんだか…誰かの居室に遊びにいったりはしたことがなかった。わたしは1人が嫌いなほうだから、こうやって馴れ合うのは嫌じゃない。前田さんとは正反対。
今野さんの居室はとっても“オンナノコ”らしくいい香りがした。35歳でこれ?ちょっと時間が止まってる気もするけど、若さの秘訣ってとこなのかな…
「今野さん、あの、これ、どうぞ!」
夕方の調理後にチーフの了解を得てパンを焼いておいたのだ。わたしはパンなんて焼いたことなかったけれど、今日からの私にはそれができる。記憶の書き込みって、すごい!
「きゃ~!沙希ちゃんパン焼けるなんてすごいじゃない!これ、今度乗組員の夜食として多めに作ってみたら?」
そうそう、船乗りは勤務時間が人によって不定で、深夜勤務は当たり前のチームがほとんど。ママとシェフとメカくらいかな、日勤なのは。みんな交代交代で働いて休んで、それでこの客船はずっと機能し続けている訳で…晩ご飯から朝ご飯まで勤務している人もいるので夜食が欠かせないのだ。ここでわたしが、やる気を見せますか!
「チーフが結構面倒がって、夜食は白飯とカップメンですもんね…わたしが夜食調理して用意しても良いのなら、喜んでパンたくさん焼くんですけどね」
「それなら、チーフにたのんでみたら?夜食作らせてください、って」
「でもわたし、まだ寝坊なんてしちゃうようなド新人ですから…言い出しにくくて」
「沙希ちゃん。あのね」
おっ、お局コンノの目がキラリ。
「新人だって、やりたいって意欲を我慢することはないのよ。むしろ新人で怖いもの知らずなんだから、どんどん色々なことに挑戦させてもらったもん勝ち!この職場は経験がモノをいうんだから、思ったことはどんどん上司に相談してみなさい」
まぁ、今野さんの言ってることは正論かな。この職場に限らずどんな社会でも経験と努力は裏切らないって私、思ってる。ここは今野さんをたてる言い方をしないと…
「・・・なんか、勇気出てきましたっ。明日、チーフに相談してみます!」
「うんうん、沙希ちゃんが夜食作ったりなんかしたら、たぶん飛ぶようになくなるよ!沙希ちゃんファンの人たっくさんいるんだからね~」
ん?この地味ぃな感じのわたしのファンがこの職場にいる、と?しわっしわのオジサン船乗りたちに好かれたところでなんの得もないけど。嫌われるよりは心地いい。
「そんな人、いないですよ~」
少し照れた感じでこたえたわたしの目をジッと見て、今野さんが低めのトーンで
「気を付けたほうがいい人、何人か、いるから教えとくね。」
「え?気をつけるって・・・?」
「まず有名なのが、高橋武則≪たかはしたけのり≫ね。」
通称タケ、38歳、美人の奥様と娘が3人。背は180cmくらいで高いけど、顔はブサイクの域。あんなオジサンなんか私、圏外ですよ。
「なんで、最低なんですか?」
「家庭があるのに、女の子みたらどうもちょっかい出すのよね…あの人。」
「そうなんですか!」
確かに、食事のときはいつも近くに座って、楽しい話をしてくれていたかも。結構感じのよさそうな人だと思っていたのに~いい人からどうでもいい人に、降格!
「智里ちゃん、危ないのよね。」
「危ないって。どういうことですか?」
ま・さ・か。前田さんが、あの顔で妻子持ちの男についていくなんてこと…。
「2人でよく話しているし、入港したとき2人で出かけるところを何度もうちのクルーが目撃しているのよ」
あら~!前田さん、もっと若くてカッコイイ乗組員だっていっぱいいるのに、よりによって火遊びの相手だなんて。
「それは、心配ですね…わたし、気を付けます。」
「あと、シェフのショウ。あの人は沙希ちゃんの前任者を辞めさせた人だからね」
うわ~、なんか初日からドロドロした話聞いてしまったよ…
「ショウって、森田さんですよね?辞めさせたっていうのは、調理に対して厳しいということですか?」
「ううん、オンナノコ好きなのあの人は。若い子どうにかしたいんだか、変なこといってくるかもだから気を付けてね」
森田翔太≪もりたしょうた≫(通称ショウ)さん、32歳、独身。身長175cmくらいで超美形、細マッチョ、調理の腕前は本物で若くしてチームシェフの副チーフ。この人は確かに遊んでそう、港ごとに女5人くらいはいそう!だってかっこいいもん。
「わかりました、気をつけます」
「あとは…」
まだいるの?というか、今野さんはどんだけ情報通なんだ?これだから仕事できるけどお局って煙たがられるんだよ。でもこういう話、学生時代以来のような…なんか楽しい!
「フロントの東海林さん。あの人は超ナルシストで、困るんだから」
あぁ~、東海林俊明≪しょうじとしあき≫(通称ショウジ)さん、27歳、婚約中。背はわたしと同じくらいで顔もそこまででもない、全体的に中の上くらいかな。
「勝手に“俺、好かれてる…婚約者いるのに困るな~”みたいな感じでウザいからなるべく関わらないようにしたほうがいいわよ」
東海林さんみたいな性格って、幸せ者だと思う。超プラス思考、うらやましいくらいだけど見て聞いて笑える…うん、ウザそうなので気をつけましょう。
「それは、大変ですね、気をつけます」
「ごめんねなんだか悪口大会みたくなっちゃって。」
「いえいえ、今日お話し聞けて良かったです」
作ったパンを気にいったのか全部ペロリと食べてくれた今野さん。私、主婦やってる間にパンの腕磨いておいて良かった。明日からは本格的に新しい私でいくぞ~!今野さんの仕事の愚痴をたっくさん聞き終え、自分の居室に戻った。
ふ、と居室の端におかれた封筒に目をやった。
(わたしになってくださった方へ)
綺麗な文字で書かれている。あ、これ、自分を1年売り出した時から沙希が用意していたものかな。開けて、読んでみることにする。
(まずはじめに、わたしになってくださってありがとうございます。
わたしなんかの1年を過ごしてもらえるなんて、本当に嬉しいです。
でも、本当に申し訳ないです。
わたしは船乗りです。本当になりたかった仕事ではありません。
オシャレをして、自分のデスクでパソコンをたたくようなOLさんが憧れでした。
閉鎖的空間であり、職場と生活の場が一緒でつらいです。
せめてこの環境が楽しければこの仕事も頑張れるかと思いましたが、
自分に自信を持てず、楽しみを作ることもできず、生きていること自体つらいです。
どうか、わたしに、なんでも頑張れる勇気をください。
1年後からは、人生を楽しんでいきたいです。
こんなわたしなんかの1年間を、どうかよろしくお願いします)
わたしは、なんで自分を蔑んでいるのだろう。“わたしなんて”という言葉、もったいない。わたしは無限の可能性を秘めている若者。私のように結婚して出産しているような女よりも余程毎日刺激的でいきいき過ごせると思うのだけれど…私は、このわたしを喜んで1年間生きるよ。良くも悪くもめちゃくちゃしてやる。沙希に勇気を、あげる。
365分の1日が終わろうとしている。季節は秋。夜の海は冷える。夜の船内も、冷える。居室内の狭い作り付けベットに横になる。布団が冷たい。
「また布団かけていないぞ、風邪をひくからちゃんと布団かけて寝なさい」
あ、いつもの彬人の声。夜、いつも寝相の悪い私をなおしてくれる。寝ながら気付くぬくもり、彬人がいつのまにか腕枕をしてくれていること。愛おしい大きな背中、温かさ…そんな大切な人を捨てて、わたしどこに来ちゃってるんだろ。心音は、もう寝ているかな、誰が寝かしつけてあげたのかな、さびしがったりしているよね、泣いていないかな。こんなに心配なら、なんでこんな仕事始めたんだ?お金と刺激が欲しかったんだよね、もうこの1日で十分。明日目が覚めたらいつもの天井でありますように。