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SOLA ~破天荒教師の異世界漫遊〜  作者: daisuke2025.6


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第8話 幻の五つ星食材

聖霧騎士団(セイントミスト)の団長ヴァイス・オルディアは、甲冑をまとい直してはいたものの、裏路地の隅で膝に肘をつき、完全に意気消沈していた。ソラに弄ばれた屈辱が、彼の心を深く侵食している。



そこに追跡隊長のクロウ・テンブラーが、霧を切り裂くように駆け戻ってきた。


「団長、シリウス副団長! 対象を見失ってしまいました」クロウは息を切らせて報告した。


「あちゃー、まぁそりゃあ見失うか。あんな盛大に彫像のバラマキ芸をされたからな」


副団長シリウス・ヴェントは、ドン引きのクロウをよそに、肩をすくめて笑った。彼の目には、団長の全裸像が街中に散らばるという狂気的な状況が、最高のエンターテイメントとして映っているようだった。



「団長!早くしないと騎士団の威厳が地に落ちてしまいます!どうしますか?」


ヴァイスは、震える声で呻くように命じた。「……シリウス。全彫像、および、すべての目撃者から、その彫像の記憶を消去しろ。今すぐだ。街全体への魔法行使を許可する。」



「はいはい、わかりました。団長の立派なポージング、忘れるのはもったいないですけどねー」



シリウスは、皮肉を込めた軽口を叩きながら、上空へ手を向けた。クリフヘイヴン上空に巨大な魔法陣が浮かび上がる。


彼が発動したのは、濃霧を利用した広域幻術。



「上級幻術系統魔法、霧の大虚劇(ミスティ・サーカス)!」



瞬時に、街中に散らばっていた大量の全裸の彫像は、市民の視覚から消された。幻術はさらに深く介入し、目撃した者たちの意識に「最初から何もなかった」という偽りの記憶を上書きしていく。


狂気じみたパニックは急速に収束した。

幻術を完了させたシリウスは、膝を抱え込んでいるヴァイス団長に、満面の笑みで近づいた。


「いやぁ、笑った。笑った。団長、最高のエンターテイメントでしたね。」


「彫像は聖霧騎士団(セイントミスト)のメンバーには見えるようになってます。早いこと回収しましょか」


ヴァイス団長は屈辱に耐えながら、団員達に指示を出し自らの全裸像の回収をはじめた。






その頃、裏路地の奥に位置する海鮮料理屋「霧の灯リュミエール・ブリュム」では、先ほどまでの騒々しさが嘘のように静まり返っていた。


海の至宝リュミエール・マリーヌは作れないんだ」


ソラは舌打ちした。「なんやて、作られへんてどういう冗談や?」


「冗談じゃない。」


「今日、契約漁師のザガンと朝から全く連絡が取れない。彼はこの裏のルートで唯一、最高品質の食材を供給してくれる男だ。彼が来ないと、私の料理、特に『海の至宝』は完成しない。


ルタオは、今にも炎魔法を噴出させそうな苛立ちを抱えていた。彼女のプロとしてのプライドが傷ついているのだ。


「しかも、今日はまずい。予約が埋まっている上に、4時間後、夜21時から大切なお客さんが来る。今、店を離れることはできないだ」



「なるほど。で、何が足りへんのや? 最高の食事にありつくための方法を教えてくれ」



ルタオは静かに、料理の核となる三大超希少食材の名前を挙げた。その希少性は、世界政府の交易の目玉商品にもなるほどだという。



1. 虚空の霧鮑アバロン・ヴォイド:★★★★★


◦ 特徴:霧の源“虚空樹ヴォスト・ツリー” の根元付近の深海にしか生息しない。その殻は宇宙のように深き黒と星々の輝きを持ち、その身は「神秘を宿す」超希少なアワビだ。



2. 星の血を引く海老アストラ・シュリンプ:★★★★★

◦ 特徴:夜間に限り深海から浮上する小型の海老。滅多にその群れを発見できず、その鮮やかな甲殻は、料理の彩りと深みを決定づけ、身は濃厚で味付けなくとも圧倒的な旨味を感じる超希少な海老。



3. 幻影の虹魚ファントム・フィッシュ:★★★★★

◦ 特徴:暗く深い深海に生息する3m超の幻の巨魚。その身は非常に美味であり、食べたものには深海の美しい幻影を想起させるという。




「そいつらがないと、『海の至宝』は完成しない」


ルタオは断言した。


その時、暖炉の影に隠れて食事をしていた男が、静かに声を上げた。


「へっ、そりゃあ困った。あんたの最高の一皿、俺も期待してたんだがな」


男は痩せた体躯にぼろぼろの服を纏い、片目に眼帯をしたDランクの男だった。彼の名はバリオ・ラグナ。クリフヘイヴンでは知られた情報屋であり、黒い噂も絶えない。


バリオはソラを値踏みするように見た。


「おい、そこのイケメン、あんた、ルタオに最高の食事を作らせたいんだろ? 俺も実は、海の至宝を食べたいんだ」


バリオは、レンとアインに視線を向けた。


「そのガキどもが探してるジョシュってやつの件だぜ。あんたらは冤罪だと信じているようだが、俺は真実を知っている」


レンとアインは、驚きと期待で目を見開いた。


「白塔騎士団がジョシュを捕らえた真の理由、そして漁師が同時に拘束された理由だ。その情報、タダじゃあ売れねぇ」


バリオは椅子に深く腰掛け、両手を広げた。


海の至宝リュミエール・マリーヌを食わせてくれたら協力してやる。」


「あんたらが食材を手に入れて、ルタオに最高の料理を作らせる。俺は食う。代わりに、ジョシュの真実をくれてやる」



ソラは、レンとアインに向き直った。2人は目を輝かせている。



「なぁ自分ら、最高の海鮮料理、食べたない?」


「食べたいです!」「絶対食べたい!」



ソラは地図(紙に書かれたクリフヘイヴンの非合法な港湾エリア「ジュダヴェルニ」)を用意し、二人に見せた。



「まずは、契約漁師のザガンがどこで立ち往生しているかを探りに行く。まぁ同業者に聞くんがええわな。ザガンは非合法な取引業者や密漁師が集う裏港、ジュダヴェルニを拠点にしてるはずや」



ソラは笑う。「これが最高の食事にありつくための第1歩目ファーストステップや。漁港へ行き、ザガンを見つけよか」



レンとアインは、最高の食事のため、ソラとジュダヴェルニへ向かった。


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