第7話 深霧の街の冤罪事件
親友が冤罪で拘束されたという話に、ソラは興味深そうな笑みを浮かべた。
レンは静かに話し始めた。
「ジョシュって名前の親友なんです。俺たちと同じ孤児院出身で、犯罪を犯すような奴じゃない。でも、白塔騎士団に突然連れて行かれた」
ソラは首を傾げた。
「白塔? ああ、さっきあんたらを追っかけとった聖霧騎士団とは違う連中やな」。
レンとアインは頷いた。
ソラはクリフヘイヴンの複雑な背景を説明し始めた。
「この街は、世界政府の監視拠点である、ステージ3のダンジョン『霧の白塔』を中心に三つの騎士団が動いとる。さっきの連中は聖霧騎士団、裏路地や霧の中の非合法活動、つまりあんたらみたいな『秩序に反する逃亡者』を追跡する実戦部隊や。」
「一方、あんたらの親友を捕らえた白塔騎士団は、その名の通り、塔の監視と警備を専門としとる。塔の宝やアーティファクト、カオスの管理も担っとる組織や。」
アインが質問する。
「アーティファクトって不思議な道具ですよね?カオスって何ですか?」
「あんま知らん方がええで。アーティファクトと大きな意味では同じやけど、より常識はずれで凶悪なもんや。」
ソラが続ける。
「ほんで、もう一つ、海の防衛担当の外洋騎士団がある。海獣討伐のプロや。こいつらはすごいで。クリフヘイヴンの海は危険な魔物も多いからな。先生も一目置いとる。」
アインは拳を握りしめた。
「拘束された理由は騎士団からは何も聞かされていません。ただ、ジョシュは犯罪を犯すような人じゃない。絶対冤罪です。彼は捕まる直前、孤児院の支援をしてくれている漁師のお手伝いに行っていたんです。」
「その漁師も、現在拘束されてる。」
「俺たちは理由を知りたいのに、騎士団は何も教えてくれない。」
レンが付け加えた。
「だから、クリフヘイヴン収容施設に忍び込もうとしたんです。」
「聖霧騎士団に見つかり、追いかけられちゃった所でソラ先生に助けてもらいました。」
アインは追跡の理由を明かした。
ソラは静かに耳を傾けた後、陽気に笑った。
「なるほど、とりあえずで助けたけど、判断は間違えてへんかったな!」
彼は立ち上がり、レンとアインの頭を優しく撫でた。
「大変だったな。でも心配すんな。先生がどうにかしちゃる。」
「ほなとりあえず、メインディッシュ食べて、どうするか考えよか。」
ソラはルタオに視線を向け、目を輝かせながら注文した。
「ほな、最後に頼むわ。シェフ・ルタオの最高傑作をな。あれが今日クリフヘイヴン来た理由やねん。」
「シェフ・ルタオ、『海の至宝』いただけますか?」。
ルタオは、暖炉の火を見つめながら、鋭い炎を宿した瞳をソラに向けた。
「……あいにくだな、ソラ」
彼女は、苛立ちを抑えきれない声で答えた。
「海の至宝は作れないんだ」




