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世界に蔓延る勇者達  作者: 霧助
四章 不死の王
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九十三話 100と正体不明の敵

「リュートー。これで最後だよー!」


少し離れた場所でケーファーが叫ぶ。

その手では大きな台車を押していて、それは全て入荷した商品だ。


……まぁ、魚だが。


「お疲れ。悪いな、手伝って貰って」

「いやいや、一緒に旅してご飯まで貰ってるんだから当然だよ」


ケーファーは、爽やかに笑う。

コイツ、本当に魔王か?と疑ったのは、一度や二度じゃない。


「でも、結構な量を持って来たつもりだったんだけど……馬車に入りきるの?」

「半分くらいは、ミナが作った空間の門に放りんであるよ」

「なるほど……。ところで、そのミナちゃんは?」

「馬車の中でお眠。日が昇る前から手伝って貰ってたしな」


ケーファーはミナの冷凍作業が終わった後に、ルーシーは、それより更に遅くから手伝って貰っている。


「でも、リュートも朝早かったんじゃないの?大丈夫?」


ケーファーが心配そうに尋ねてくる……が、以前は、これを一人でやってたからな。


……ホント、楽だ。


それから、しばらくして、ルーシーが食料の買い出しから戻って来たのと同時に、妹のアティも合流した。

ルーシーは両手一杯に荷物を抱えているが、アティは肩にソレ以上の大きな筒状の何かを背負っていた。


「どうしたんだ?それ」

「はい?あぁ、コレですか?私の武器ですよ」


アティは背中の物にチラッと視線を送ると事も無げにそう言う。


……オレの記憶では彼女の武器はオレや兄さんと同じ剣だったハズだ。

というか、うちの家系は代々、剣を扱う為に、それ以外の武器を扱うというのは想像しにくいのだが……。


「……剣はどうしたんだ?」

「優秀な兄を二人も持つ私の気持ちが兄さんにわかると言うのですか?」


そう言うと、頬を小さく膨らませ睨み付けてくる。

確かに、アティの剣の腕はオレや兄さんと比べると幾分か劣るが、それでもそこらの騎士よりは強かったんだが。

動きが直線的で予想しやすく、力が強くない為に押し負けしやすかったが、その速さだけはオレと比べても劣るものではなく、十分過ぎる程の武器だった。


「良いんです。私は私で強くなろうとしてるだけですから。この子なら私の欠点も補ってくれますから」

「アティがそういうなら、まぁいいか……。よく父さんが許したな?」

「一悶着ありましたよ。勿論。でも、上を目指す為ですから最終的には。それより兄さん、聞いてほしい事が」


うちの家系で剣以外の使い手を輩出した事が無い訳でも無いが、はやり稀だ。

家名に拘る父さんが、あっさり許可するとも思えない……が、話を聞く限り一応納得しているようだ。


そして、アティは少し言い難そうに切り出す。


「旅立つ前に少し情報収集をしていたんですが、最近、道中盗賊に襲われる事件が多発しているみたいなんです」

「そういう事言うの、辞めて貰える?」


アティが話し出すと、まだ少し眠そうな顔をしたミナが馬車から降りてくる。


「おはよう。もう、いいのか?」

「うん。結構寝させて貰ったから。リュートもちゃんと寝なさいよ」

「わかってるよ。で、どういう事だ?ミナ」

「どういう事も何も……そんな話したら襲われるに決まってるじゃないの……」


ミナは溜息をついてアティを見る。


「えっと……襲われるにしても事前に情報を仕入れて置いたほうが対応しやすいと思ったんですが……」

「その通りよ。ごめん、半分八つ当たり。でも、襲われる気しかしないわね」


ミナは溜息を吐きながら面倒くさそうに言う。

確かに、商人の馬車なんて格好の的だが、そこは運次第なんじゃなかろうか……?


「それで、兄さん。もう出れるんですか?」

「積荷も食料も良し。他の人の準備が良ければ行けるな」

「僕とルーシーは大丈夫だよ」


視線を送るとケーファーがそう答えてくれた。

人数が増えても相変わらず腰の軽いパーティーだ。


「良し、出るか。ケルロン、少し距離が長いが、よろしくな」


そう言いながらなでると、心地よさそうに唸りながら目を細める。

そうして、久しぶりに実家への道を馬車は走り出した。







それから一日たった頃、馬車は森の挟まれた道を通っていた。

夜間である今、襲撃を一番受けやすい場所とも言え、その予想通り外で番をしていたミナがうたた寝していたオレの肩を揺する。


「リュート、何か起きたみたい」

「盗賊か?」


そう聞くが、ミナは首を横に振る。


「多分……違う」

「どういう事だ?」


不穏な会話をしているうちに、ケーファーも目を覚ます。

そういえば、気づけば馬車は止まっている。ケルロンがたかが盗賊相手に足を止めるとは考えにくい。

夜間は当然ながら襲われやすい。それでも、この道を気にせず進んだのは、ケルロンの強さ故だ。

多少の、弓や魔法を打ち付けられた所で、ビクともしない。忘れがちではあるが、それが魔獣ケルベロスだ。


「外に出る。ケーファー、ルーシーとアティを起こして準備を」


準備と言うのは勿論、戦う為の準備だ。


外に出るとケルロンが警戒したように唸っていて、風が草木を騒がしている。

……が、ソレ以外の物音が一切しない。戦場でたまにある、独特の不自然さが漂っている。


「ミナ、ケルロンの鞍を外しておいてくれ。オレは少し外を見てくる」

「……うん、わかった」


少し不服そうにミナが答える。

それも当然で、この状況で外を見てくるだなんて危険極まりない。

オレの不死性に頼ったゴリ押しでしかない。


……こんな凶悪な力を持った初代魔王をよく倒した物だと思う。


魔剣を召還し、森に近寄る。

気配はないが、こんな時にそんな感覚はアテにしない方がいい。


「……ッ!?白い!?」


思わず無意味な事を叫ぶ。

藪の中から白い何かが顔目掛け突き出され、それを間一髪避けた。


無様に後転しながら距離を取ると、オレの横を炎の矢が数本通り過ぎる。


「リュート!怪我は!?」

「ない!けど、気をつけろ。相手はやる気満々みたいだ」


ミナの炎の矢は小さく早さを重視した物だったが、それでも彼女の魔法力が十分に乗った物であり、小さな爆発を起こす。

魔獣相手には効果も薄いだろうが、人相手であれば只ではすまないだろう。


しかし、今のは……人間なのか?


そう疑問に思ったが、相手の方から答えをくれた。

ミナの炎を受け燃えながら飛び出してくる、何かは人ではなく、ましてや魔獣にも見えない。


「ウ、グ、オオオ……」

「何だ……コレは……?」


目の前にいるのは、オレの知らない何か。白と黒のまだら模様の人型。

ソレが手を差し出してくると、腕そのものが伸び、槍のように突き刺してくる。


一番初めに藪から飛び出してきた攻撃も、コレだったのだろう。

動作さえ見えていれば然程早いという事もなく、余裕を持って剣で打ち払う。いや、打ち払ってしまった。


「斬れない?」


本来なら、腕らしき物を切り落とそうとしたのだが、変に弾力の様な物があり、微妙に硬く、非常に斬りにくそうな感触が手に残る。


「リュート、私がやる」


そういうミナの周囲には、氷柱が大量に敵の方に向けられていた。

馬車から出てきたケーファーがソレを見て、うわぁ……。と、言う。そういえば昔戦ったって言ってたっけ。

嫌な思い出でもあるんだろう。


『氷。槍、槍、飛べ!!』


詠唱後、氷柱は直線的にではなく、全てが曲線を描き、しかし敵を中心にし高速で飛ぶ。

まだらの何かも、腕を使い数本を打ち払ったが、圧倒的な数の前に徐々に串刺しになり、最後には地面に縫い付けられてしまった。


「意外と硬いのね、これ」


攻撃を終えたミナが、後ろ髪をかき上げながら事も無げに言う。

……てか、今の魔法は、あの量の氷柱を全てコントロールしていなかったか?本当に、この娘は怖い。


「兄さん、もう終わったんですか?」

「あぁ。ミナがやってくれた。にしても、なんなんだろうな、コイツ」


倒した何かに近づく。一応警戒はしているが、ちゃんと息絶えているようだ。


「待ってください!まだ終わってません!!」


倒れた何かを見てアティがそう叫ぶ。

それに反応し、魔剣を構えるが、確かに何かは息絶えているようで反応はない。


「リュート、後ろに飛んで!!」


ミナが叫ぶ慌てて叫ぶ。

理由はわからない。が、彼女が言うなら飛ぶべきなのだろう。そう判断して、軽く後ろに飛ぶ。

しかし、これが判断ミスだった。後ろに飛んだオレの横っ腹に硬い物がぶつかり、軽々と吹っ飛ばされる。

幸運だったのは吹っ飛ばされた先がミナの居る場所だった事だろう。


「コイツは集団で来るんです!父様が直接王城に来なかった理由がコイツなんです」

「アティ、コイツを知っているのか?」

「知っています。けど、わかりません。最近、魔界近くの僻地に突然現れるようになったんです。集団で行動して、とても頑丈です。今の所、弱点と呼べる物は……」


どうやら、他の所にはすでに姿を現している敵のようだ。

しかし、それなら安心できる。


「つまり、コイツらは倒せるんだな?」

「はい。多少骨が折れますが、いつも撃退しています。それにしても、なんでこんな所へ……」

「リュート怪我は?」

「……あぁ、多少強くやられたからな。怪我はない」


一見したら、矛盾した言葉。

しかし、その言葉の意味をミナは正しく受け取ってくれた。


「そう。気をつけなさいよ。心配くらいはするんだから」

「わかった。だが、それも……後回しだ」


気づけばすっかり囲まれている。

敵の数は不明、こっちは5人……と1匹。

しかし、1匹も十分過ぎる程の戦力であり、オレ以外の4人も屈指の実力者である。


「戦況は不利。でも、負ける気はしないな」

「当然。私とリュートが一緒に居るのに負けるなんてありえない」

「あはは、こういう時があった方が僕も役に立ってる実感があっていいね。ルーシーは援護をお願いね」

「うん。今日は何使おうかなぁ」


この程度ならなんとかなる。

普通なら絶対絶命である状況に、そんな確信を持って武器を握る。


「あの、皆さんわかってます……?これ、結構まずい状況ですよ?」


唯一、アティだけは不安そうだ。

だが、彼女も騎士の名門の娘。その腕に不遜があるハズもなく、大きな筒を包んでいた布を取る。


そこには、彼女の体形には不釣合いな程の大きさの、本来なら馬上で使うハズである突撃槍があった。








まずは更新遅くなってごめんなさいorz

ちょっと、違う小説の読みきりを書いていたのが原因の一つです。


ついでに、宣伝させてください。

my HERO 異世界召還物です。短く続きを書くつもりも今の所ありませんが、この小説の雛形といいますか、最初に考えていた形でもあります。

魔王が出しにくかったり色々な条件がかみ合わず挫折しましたが……。


http://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/322968/


此方になります。良かったら読んでみてください。

……アドレス張っても大丈夫なのかな?大丈夫だよね。タブン。


それと、もう一つ。携帯電話を交換したらデータの引継ぎはできず、電話番号を変えたらメールアドレスまで変わってログインできなくなってました。

や、本気で連載中止の危機かと思いました、うあー。


とりあえず、なんとか復旧しましたので、これからも連載できそうです。


……良かった。

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