表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界に蔓延る勇者達  作者: 霧助
三章 仲間を探して
73/131

七十三話 1と2つの可能性の話

さて、前がちょっと自分の書きたい所までかけなかった為に、少し早めに投稿させて頂きました。


この章もそろそろ終盤な訳ですが……いい加減、章管理とかをちゃんとしないと……。

後、過去の話の修正もサボって……orz


さて、しかし、ここまで長かった気もしますが次の章からやっと話は大きく動く事になるかと思います。

当初の予定はで100話くらいで終わらせようと思っていたのですが、どこまで行くやら……。

「リュート!私、子供達の所に行ってくる!」

「ん?あぁ、話が終わったら適当に探すよ!」


リュートに村長と話してくるから、待っててくれと言われたけど、何をしていいかわからなかった。

この村は余程、外から人が来ないみたいで、目立つお店すらないんだもの。

だから、適当にリュートの後ろを着いていったけど……遊んでいる子供達の中に見覚えのある女の子を見つけた。


リュートに一言告げて駆け寄ると、そこにいたのは確かにコレットだった。


リュートの家族で私に懐いてくれた女の子。

怪我をした私に無邪気に笑いかけてくれた。

私にとっても妹みたいな存在だ。


駆け寄け足を止めて子供達を見ていると何人かの子はチラチラと、こっちを見るけど、すぐに気にせず遊びに戻る。

少しして、コレットがこっちに気付いた。


「コレッ……」


名前を呼ぼうとした声が止まる。

こっちを向いたコレットは……他の子供達と同じように、すぐに遊びに戻ったから。


「あ…………」


そっか……。

他の人も、そうだった。

怪我が治った私は、前とは随分印象が違うみたい。

当たり前か……。


話かけたら気づいて貰えるかな?

でも……もし、気づいて貰えなかったら……。


そう考えると足が前にでない。

あー、駄目だ。

私、怪我をしてた時の人間関係に臆病になってる。


これじゃ駄目だ!

とは、思うものの中々足は前に進まない。


子供達は相変わらず、多人数で走り回っている。

鬼ごっこみたいな遊びなのかな?

その割には入り乱れて走ってるけど。

うん、こっちの遊びはよくわからない。


「ミナ、何やってるんだ?」

「!?……リュート。早かったのね」


びっくりした。

いきなり話しかけるな。


「早……くもないと思うけど。ずっと、ここに居たのか?」


どうやら私は結構な時間ここで、ぼーっとしていたらしい。

まぁ、良い時間潰しにはなったのかな……?


「んっと、ほら。あそこに……」

「あぁ、コレットだな。ずっと、ここで見てたのか?」

「だって……」


うるさいなー。

どうせ私は臆病だ。


「遊んでる最中で悪いけど……ちょっと話もあるしな。おーい、コレット!」

「ちょ、ちょっと……!」


まだ心の準備ができてない私を無視してリュートが大声を出す。


あー、もぅ!

……自分じゃ動けなかったからありがたいんだけどさ!

けど!


なんて混乱してる間にもコレットはリュートに気づいて駆け寄ってくる。


「リュート!来てくれたのね!」

「おっと……!久しぶりだな、コレット。少し背が伸びたか?」

「えへへー、伸びてたら嬉しいな~」


コレットは嬉しそうにリュートに飛び付く。

本当に無警戒で父親に甘える娘そのものだ。


ふと、コレットが私の方を見てきた。


「えと……あの……こんにち……わ?」


馬鹿。

私の馬鹿。

何を言ってるんだ。


けどコレットは、そんな私を気にする事なくマジマジと見つめている。


「もしかして……ミナお姉ちゃん?」

「えっと、うん。久しぶりね、コレット」


と、ワンテンポ置いてコレットが飛び付いてきた。


「ミナお姉ちゃん!」

「きゃっ!?」

「私、ミナお姉ちゃんも無事だって信じてたの!お怪我はどうしたの!?」

「……ありがと。怪我はリュートに治して貰ったの」

「そうなんだ!今はリュートと一緒に旅してるの?」

「うん。リュートと皆を探しに来たの。クロウやメリアも無事よ」

「そっかー。ミナお姉ちゃん戦えるの?」

「そうよ?私、すごい魔法使いなんだから」


矢継ぎ早にコレットが質問を浴びせてきて、お陰でみるみる緊張は溶けていった。

コレットは頭が良い。

これも、もしかしたら気を使われちゃったのかもしれない。


うん、やっぱり駄目だ。

お姉ちゃんの私がもっとちゃんと、しっかりしよう!


「ねぇ、コレット。ランディは?一緒じゃないの?」

「えっと……ランディは……」


コレットが居るならランディもいるハズ。

そう思って聞いたら、コレットは暗い顔をして言い淀む。


「どうしたの、コレット」


ランディに何かあったのかな?

私は嫌な予感を押さえてなるべく優しくコレットに尋ねる。

何か知っているのか、リュートも少し辛そうな顔をしている。


「あのね、リュート。ミナお姉ちゃんの怪我はリュートが治したんだよね?」

「あ、あぁ。オレがって言うか……一応そう言うことになるのかな」

「リュート。こっちに来て」


コレットが立ち上がりリュートの袖を引っ張る。

向かっているのは少し大きめの家だ。

穴が空いているのか角の一つに大きな布が被せられている。


扉を開けると……一人の青年がベッドに寝転がっていた。


「ランディ!生きてたのか!」

「お?おぉ!?リュート!お前、よく此処がわかったな!」


リュートは喜んでランディに近寄りランディは上体を起こして、二人はガッチリと手を握りあった。


「これだよ。この依頼状。これを商会に預けたのランディだろ?」

「ん?これは……確かに俺が受けた依頼だけど、商会になんて預けてないぞ?」

「へ?いや、だって……」


私とリュートが、てっきりランディが預けた物だと思い込んだ依頼状は、ランディではなかったらしい。


じゃあ、誰が?


必然的に、その事を考えるとランディと、ずっと一緒に居たであろう少女に視線が集まる。


「え、えへへ……」


コレットは……本当に頭が良い。


「確かに依頼状だけだなんて妙だと思ったけど……」

「ランディが、リュートに何も教えないから……急いで預けたんだからね!それ!」


コレットが、ぷんぷんと拗ねて頬を膨らませる。

まぁ、ランディにも考えはあったんだろう。


「まったく恰好悪い所を見られたもんだな……」


ランディは苦笑いをしている。


「ランディ、怪我してるの?」

「えっと、君は……?」


ランディが、知らない人を見るような目で私を見る。

でも、大丈夫。

説明したら、ちゃんとわかってくれるもの。


「久し……」

「リュート!ランディの怪我を治して!」


……。

コレット……?


私の声をコレットがかきけす。

別にわざとじゃなくて何かに必至みたいだ。


「コレット……。何回も言っただろう?俺の怪我は天使のお姉ちゃんにも治せないんだ。普通の治癒術じゃ尚更だ。でも、大丈夫だ!こんな怪我、俺は乗り越えて見せるから。な?」

「でも……」


ランディはコレットの頭を撫でながら笑う。

それでも、コレットは納得してなさそうな顔だ。


「どこか、怪我したのか?」

「あぁ、ドジってな……。ウェアウルフのゾンビみたいなのに片足持ってかれちまった」


ランディが笑いながら布団の中から右足を出す。

そこには、赤い包帯が巻かれておりそれから突き出している健康そうな右足があった。


「……ん?」

「足を怪我したのか?確かに血は出てるみたいだが……」

「いや、あれ?確か脛から先を全部持ってかれたような……え?は?」

「……あぁ、そういう事か。丁度良かったな」


ランディさんは混乱してるみたいだ。

……なるほど。私にもわかった。

リュートの能力か。そういえば、入ってすぐリュートはランディさんと握手してた気がする。


やれやれ。

本当に便利な力だ。


少し呆れながらも安心する。

ランディさんはどうやら、かなり大きな……っていうか傭兵生命に関わるような怪我をしていたらしい。

命があるだけ、運が良かったんだろうけど、その怪我さえもリュートの「不死の王」が治したみたいだ。


「……?……なっ!?痛っ!?痛たたたた!?」


と、ふいにランディさんが足を抑えて蹲る。


「どうした!?ランディ!」


リュートが近寄るけど、ランディさんは答える余裕が無いほどに痛がっている。

コレットに至っては半分泣きそうだ。


っていうか、私もどうしたらいいかわからない!


「リュート!どうしたの、これ!?」

「わからん!とりあえず、お湯とタオルを誰かから貰ってきてくれ!」

「私、行って来る!」


コレットはすぐにリュートの言葉に反応して飛び出す。


結局、ランディの激痛が治まったのは、それから1時間程しての事だった。







「ランディ、痛みはもう大丈夫なのか?」

「大丈夫って事もないが……騒ぐほどじゃないな。それに足が戻ったとなれば、このくらいの痛みなんて事ないぜ」


ランディさんは冷や汗を流しながら無理して笑顔を作る。

強いなー、この人も。


ランディさんの足の痛みについては、とある仮説を立てた。

それ以上、話し合ってもわからない物はわからないんだから、考えない事にした。


理由は……拒絶反応だ。

数日間無かった物がいきなり戻った事により、なんらかの不都合が体に生じたんだろう。

リュートの能力も反則的だけど、何もかもうまく纏めてくれる訳ではないらしい。


「でも、歩けるのよね?」

「あぁ、まだ歩きたくは無いがな」


私の自己紹介も、リュートの能力を説明した時に済ませた。

ていうか、リュートの能力を説明するには、私の怪我が治った時の事を説明するのが一番手っ取り早い。

本来なら、内緒にしといたほうが良い能力だけど……リュートの家族間なら問題ないだろう。


「でも、治ってよかったね~」

「あぁ。流石に傭兵は廃業かと覚悟してたからな」


コレットは一転して嬉しそうだ。

あぁ、今の騒ぎで私も疲れた。

ていうか、汗でびっしょり……。


「リュート、落ち着いたし私、ちょっと着替えてくる」

「ん、わかった。村長が食事用意してくれるみたいだし、すぐ戻って来いよ」

「わかった」


とはいえ、今着てる服の洗濯もしたい。

魔法でちゃちゃっとやるとは言え、そんなすぐには戻ってこないだろう。

なるべく急がないと。

家の外に出ると冷たい風が吹いてくる。


うぅ……寒っ。


冷たい風が頭を冷やしてくれると色々と考える余裕が出てきた。

これで……家族探しも終わりか。

なんか色々あったけど、あっという間だったな……でも、みんな無事で良かった。


この後は、どうするんだろう?

と、私はリュートとの約束を思い出す。


リュートのやりたい事。

それが終わったら……告白の返事をくれる。


今まで意識しなかった訳じゃない。

でも、考えないようにしていた。


……流石に今日は、意識しちゃうな。


鼓動が高鳴る。

自分でもどうしていいかわからないくらいに体が熱くなる。

風はこんなに冷たいのに。


リュートの返事が良い物でも、私たちの関係は多分、表面上は余り変わらないだろう。

けど……振られたら私はどうしたらいいんだろう?


そう考えると居てもたってもいられなくなって、何処へという訳でもなく私は走り出した。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ