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世界に蔓延る勇者達  作者: 霧助
三章 仲間を探して
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七十二話 100とコレット



「なんて言うか……予想よりずっと活気があるね」

「こんな辺境の危険地帯に住むのは、それなりの訳がある。ここは魔力を含んだ鉱石が良く採れるんだ。だから、田舎だけど金回りはそこそこ良い」


都市はともかくとして、今まで立ち寄って来た村よりは幾らか発展している。

とは言え、規模は大きくはない。

しかし、流石に魔界の近く。

防衛設備にもかなり気を使っているなぁ。


そう思いぐるっと見回す。

金属製で高い柵。

村側には魔法使い用の櫓まである。

柵の外は堀になっているから、いざとなれば炎か水辺りで侵入を妨害するんだろう。


しかし、こう見てみると、どうにも破損と言うか整備が行き届いてないように見える。


「最近、戦闘でもあったのか?」

「うん、そうなんだ。魔界で四天王って言われてる魔人の一人が来てさ。大変だったよ……」

「……四天王って、よく撃退できたな。流石は魔王って所か?」

「う~ん……もう一人居たから僕だけじゃ守りきれなかったかも。ルーシーが手伝ってくれたんだよ」

「ルーシー?」


聞き覚えのない名前に首を傾げる。

ケーファーも、その事に気付いたようで何かを言いかけたが、遠くから叫び声が聞こえた。


「ケーファーーー!!」


そして、人形の白い何かが高速でケーファーの胸元に突っ込んだ。


……いや、今地面と平行に飛んでこなかったか!?


「おっと!?……ルーシー。そんな速度で飛んできたら危ないよ?」

「おかえり!早かったね!」

「あぁ、うん。道中で色々あってね。村長さんいる?」

「ルーシーは天使だからケーファーの気配は遠くからでもわかるんだよー」


なんか素敵に会話が噛み合ってない気がするけど仲は良さそうだ。

そうか……この子がケーファーの言ってた……。


「ケーファー。恋人って、この子か?」

「うん。名前はルーシー。見ての通りの天使さ」


ケーファーに抱きついている女の子は確かに、この世界の人間ではないように見える。

いや、実際に人間ではないのか。


髪は確かに白いが若干青みがかっている。

背中には大きな白い翼。

その翼で地面と平行に飛んできたんだろうけど、有翼の亜人でも、あそこまでうまくは飛べない。

それほど魔力の制御に優れているのだろう。


「ルーシー。この人はリュート。道中でお世話になったんだ」

「こんにちわ。ケーファーの恋人さん?」


オレが話しかけるとルーシーは、とても人懐っこい笑顔で喋りだす。


「こんにちわ、リュート。私はルーシー!よろしくね」


その笑顔だけで本当に天使に思えてくる。

うちの魔女とはえらい違いだ。


なんて考えているとミナがオレの隣に立って少し居心地悪そうに口を開く。


「……どうも。こんにちわ」


……そういえば前に魔王と戦ったんだっけ?

ケーファーの時はどたばたしたから……っていうかミナが、いきなりキレたんだが。

まぁ、結果的に話せるようになったけど、ルーシーとも何かあったんだろう。


どうしたもか……。と思いケーファーに視線をやると向こうも、少し困ったように笑いかけてきた。


様子見か。


するとルーシーがミナの手を両手で握る。


「初めまして!リュートの恋人なの?」

「へ!?いや……ちが……くないような……ノーコメント!!」

「お名前は?」

「ミ……ミナ!」

「ミナ、よろしくね!あ、ケーファー。私、みんなと遊んでる最中だったんだ!また後でね!」


と、一方的に捲し立ててルーシーは村の真ん中の方に飛んでいった。


いやー、飛ぶのうまいなぁ。


「えっと……ルーシー……あんまり物覚え良くないから……普通に仲良くして貰えると嬉しいな」

「いいけど……いいの?」


過去に何があったのかは知らないけど、ミナは少し後ろめたいんだろう。

けど、当のケーファーは余り気にしてないようだし、ルーシーは覚えてない。


「うん。僕もルーシーも人間と仲良くやっていきたいからね」

「わかった……。ごめん、ありがと」


そのやり取りで過去の出来事は精算されたようだ。


全てに置いて、こう上手くいけばケーファーも平和に暮らせるんだろけど……難しいか。


「ケーファー。とりあえず、村長に挨拶したいんだけどいいかな?」

「うーん……今居るのかなぁ。忙しい時期なんだよね。ルーシーは教えてくれなかったし……」

「行ってみないとわからないって事か。ミナ、少し村の中を見て待っててくれないか?」

「ん、わかった」


そうしてオレとケーファーは村長の家へと向かう。

ミナも途中まで付いてきたが、子供が遊んでる広場を見つけると、そっちの方へ向かった。


結論から言うと村長は居た。

ケーファーの余りに早い帰還に驚いたみたいだけど、部屋に通し飲み物を入れてくれる。


「ささ、どうかお座りください」


……絵に書いたような村長だ。

初老で真っ白な髭が生えている。


しかし、村長の家と言う割には他の民家と大差がない。

どうやら、権力者と言うより単純なまとめ役みたいだな。

城や屋敷みたいな馬車よりは落ち着いて良いが。


「それで、ケーファー。随分早いけど、何か問題でもあったのかい?」


村長は心配そうに尋ねる。

雪が振れば安物の馬車は走らせにくいから村から出れなくなる。

その前に現金を作りたかったんだろう。


「少し安めだけど、この商人……リュートが途中で買い取ってくれたんだ。代わりに経費には一切手を着けてないからいい話だと思うんだけど……」

「初めまして。聖殿都市での滞在費を考えれば、多少安く買い取らせて頂ければ双方に利のある話かと思い提案させて頂きました。取引を簡単に纏めさせて頂いたのが、こちらです」


今回の取引に関して簡単に纏めた紙を差し出すと村長は真面目な顔でにらめっこした後に目を細める。


「確かに。私どもに取っても安定して、そこそこの収入を得れました。ありがとうございます。帰って来た男衆を別の仕事に回せると考えれば非常に良い取引です」


これで冬を安全に越せそうです。と村長は続けるが一転して、また真面目な顔になる。


「して……村にどういった御用ですかな?」


そう。

別に取引だけが目的なら、此処まで来る必要はない。


……大した用件じゃないんだけどな。


「現地まで足を運べば、鉱石を売って頂けるかと思いまして。それと……人探しです」

「鉱石は交渉次第……と言った所ですが、人探しですか?」

「はい。これは、こちらの村のクエストですよね?知人が……此に参加していたのではないかと」

商会の窓口で受け取った依頼状を差し出すと村長は難しい顔で押し黙るが、やがて意を決したように口を開いた。


「ケーファー。お疲れ様。今日は、もう休んでいい。私はリュートさんとまだ話があるから先に帰ってくれ」

「あ、うん。わかったよ」


重い空気を察してかケーファーは何も聞かずに席を立つ。

出ていく時に心配そうに、こっちを見たのがわかった。


はは、アイツは本当に魔王かよ。


ケーファーが扉を閉めると空気が一段と重くなったような気さえする。


「確かに、うちの村のクエストです。しかし、残念ながら……このクエストに参加してくれた傭兵の方は、ほとんど……」

「そう……ですか……」


金払いは良かったが、その分危険なクエストだ。

アンノウンが居るクエストは、何がどうなるか一番予想が付かない。

だから……こうなる事も予想していなかった訳じゃない。


「一応、少人数ですが生き残った方もいらっしゃいます。今は皆、怪我をして村で療養なさってますから会いに行ってみてください」

「……わかりました。ありがとうございます」


そうは言われても期待する気には慣れなかった。

大規模な討伐クエストで少数の生き残り。

期待しろって方が無理だ。


「何分、辺境な村なので宿もありません。泊まる場所を御用意させて頂きますので、暫し外でお待ちを」

「はい。ありがとうございます」


立つと意外と足元はしっかりしている。


ランディ……。

ただ、そうなると一つ気がかりがある。

コレットは、どうなった?


ケーファーの話では、此処にいるような話だったが……。

扉を開けて外に出ると、すぐに広場が見えた。


広場では子供達が走り回って遊んでいる。

その端っこで子供達を見ているのは……ミナ?


何、やってるんだ?


気になり彼女の視線を追うと、子供達の中に一人……見慣れた少女が居た。


綺麗な金色のショートカット。

服も出た時のままだ。

いや、多少、ボロくはなっているか。


女の子なんだから、多少は気を使えよ。と居ないランディに悪態を吐く。


ミナが見つめている楽しそうに走り回っている女の子は……間違いなくコレットだった。



一応、書いておきますがランディ、死んでません(笑

あくまでリュート視点でそう思えるって話という事で。


しかし、余り進まなかった…もう少し進めようと思ってたのですが、思ったより文章量が多く…。


誤字脱字感想等あれば頂けると嬉しいです。

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