六十八話 100と次の村へ
今回は話が短いです。
しかも、短い理由が「ここで切りたいから」という妙な拘りです。
ごめんなさいorz
余り長いのも短いのも避け一定にしたいのですが、文章力がggg……orz
誤字脱字、感想等頂けたら嬉しいです。
「討伐隊……ですか?」
「あぁ、そのうち散ると思われて居た魔物の群れだが、未だに群れている。流石に見過ごせなくなってきた」
レーナ王女は地図を見ながら呟く。
地図には、オレ達が聖殿都市に来る理由となった危険地域が描かれている。
……オレの記憶が正しければ少し南下しているな。
「しかし、王女騎士団だけでは危険ではありませんか?」
「あぁ、だから聖殿騎士団から数隊連れて行く。私も同行するからな。万一の事があっては洒落にならない」
聖殿騎士団は、近衛騎士に比べれば実力は劣るとは言え、個々の実力なら、そう差はない。
カムイさんもいるし大丈夫か……。
「って、聖殿都市の防衛はどうするんですか!?」
「あぁ、数日後に帝国から援軍が来るらしい。なんでも、新部隊を増設したらしく、その試験運用を兼ねているそうだ」
試験運用って……そうそう襲撃される訳でもないが、此処が落ちたら人類終わるぞ。
……考えて見たら数千年守り続けてるのが奇跡な気がしてくる。
「心配するな、リュート」
心配していたのがバレたのか王女はクスッと笑う。
「帝国が自信を持って送り出してくる兵だ。なんでも弓兵を強化した部隊らしい。前衛部隊も居るし、我が国の聖殿騎士団とは言え、抜けるのは数隊。その穴くらいは埋めてくれよう」
「……レーナ様がそう言うなら」
実際に、たかだか商人であるオレが気にした所でどうしようもないだろう。
それゆりも……弓兵を強化した部隊か。
優秀な……と、言わず強化した。
となると現状の弓兵とは少し違うのだろう。
簡単に思いつくのは、弓か矢の改良といった所か。
弓を使う冒険者は多い。
つまり、どうにか、弓矢を手に入れれたら……。
「……リュート。間違っても変な事を考えるでないぞ?」
「あ、ハイ。大丈夫です」
自分で言っておいて何が大丈夫なのかが、わからない。
……下手したら国家間問題か。
流石に止めて置こう。
「帝国は我が国と違い魔法文明は遅れている。しかしながら、鍛冶に優れている。聖殿都市程の名刀は産み出せなくても、中々の品質を量産する事に長けている。新しい技術は、きっと魔人との戦いの役に立つだろう」
王女は、機嫌良さそうに地図に羽ペンを走らせる。
「それで、いいのか?リュート。外にミヅキを待たせているのだろう?」
「そう……ですね。短い間ですが、お世話になりました」
「ふふん、どうせ、すぐに王都に戻って来るのだろう?討伐を終えたら私も帰るからな。必ず顔を出すんだ」
行商は大きな街でなければ成り立たない。
流石にお見通しのようだ。
曖昧に返事を濁し、兵舎を出るとミナが退屈そうにしていた。
思ったより長く話し込んだからな……。
「お待たせ」
「ん、おかえり」
手を差し出して彼女を引っ張り立たせる。
「何を買うの?」
「食料かなぁ。食べたい物あれば好きに買っていいよ。正し、日保ちしないヤツは余り買うなよ?」
「ホント!?」
ミナが目を輝かせる。
道中は王女騎士団の連中と同じ物食べてたし、最近は兵舎の食事だったからなぁ。
兵舎の食事は美味しかったが、やはり自分の好みの食べ物を食べたいんだろう。
ってか、旅路は中々に暇だから食事が一番の楽しみだ。
ミナはさっそく商店を覗いている。
「リュートー、これ!」
「金渡すから好きに買え」
笑いながら懐から金貨を一枚出して渡す。
「……金貨って」
「どういう経路を辿るかわからないからな。食料は多めに買っていくよ」
「まぁ、そういう事なら……」
ミナは、仕方なしといった様子で金貨を自分の財布に入れると……中から銀貨を出し店主に渡していた。
……使いにくいもんなー、金貨。
しかも彼女が抱えて来たのは大量のシャルの実。
確かに金貨を使うような買い物ではない。
ってか、食いきれるのか?この量。
余談だが、オレのそんな心配はまったく意味がなく、ミナは凍らせたり干したり様々な方法でシャルの実を保存し、最後の方は節約しながら食べるまでになっていた。
ホント、魔法ってすごい。
◆
「ケルローン、そろそろ戻って来てー」
「ワウッ!!」
ミナが呼ぶと辺りを走っていたケルロンが、馬車に戻って来る。
荷物を積む間、軽く運動をしていた訳だ。
聖殿都市にいる間は、ずっと町外れで良い子にしていたから、ケルロン自身も体を動かしたかっただろう。
機嫌良さそうに跳ねて走って来る。
「おかえり。また、よろしくね」
「クゥン」
ミナが頭を撫で、鞍をつけると、そんな甘えた声を出す。
オレの知ってるケルベロスと違う……。
「行くのは……東だっけ?」
「あぁ。ケルロンの足なら二、三日って所かな。あの辺りは魔物の襲撃を受けやすい代わりに資源が豊富らしくてな。生活自体は、そう大変でもないらしい」
とは言え、いつ滅びるかわからない村ではあるけど。
ケルロンが走り出すと馬より余程早く景色が流れて行く。
この辺りは、まだ人通りが多く地面がなだらかだけど、僻地に行けば行くほど揺れるだろう。
馬車が壊れないようにある程度は加減して貰わないとな……。
◆
馬車を走らせて数時間。
別に、いつもずっとミナと話している訳ではない。
長い時間、一緒にいれば何も喋らずゆったりと進んでいる事もある。
だから、何も気にしていなかったが、前に座りケルロンの手綱を持っているオレと背中合わせに座っているミナは、いつもより静かだった。
ミナはシャルの実を口にしながら、ポツリと呟く。
「リュート、ここを真っ直ぐ行くんだよね?」
「ん?あぁ、幸い道らしき物はあるしな」
目当ての村は、どうやら聖殿都市と、そこそこ交流があるらしく、道と言うには頼りないが人の通る後があって、走りやすい。
「この分なら二日で間違いなく着きそうだけど……どうかしたのか?」
「んー……なんでもない。多分……大丈夫」
「そうか?具合悪くなったりでもしたら、すぐ言ってくれよ?」
「うん。ありがと」
そして、またシャルの実を食べだす。
……?
ミナは他の世界から来たとあって、道にはかなり疎い。
今までは目的地がどんな所か以外は、ほとんど何も聞かずに着いてきた。
多少心配だけど、本人が大丈夫と言っているのに、これ以上聞くのもな……。
そう思い馬車を進ませる。
しかし、次の変化は僅か数十分でやってきた。
「グルル……」
「ケルロン?どうした?」
ケルロンが突然、速度を緩め唸り出す。
馬が全力で走った時並みの速さだったのが、徒歩とほぼ変わらないまでに落ちる。
その様子は何かを警戒してるかのようだ。
「ケルロンも気づいたんだ……。アレかな?」
背中合わせに座っていたミナが顔だけで、こちらを見る。
前方には……霞む程遠くに、小さな馬車と人が見える。
「村の人か……?」
「ううん、違う。だったら、ケルロンがこんなに警戒する訳ない」
ケルロンは相変わらず、徒歩程度の速さで馬車を引き、少しづつ前方の『何か』に近づいて行く。
「リュート。多分あれが……今代の魔王だよ」
「…………は?」