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世界に蔓延る勇者達  作者: 霧助
三章 仲間を探して
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六十五話 100の不死の王

聖殿中心部、魔剣アウルが安置している部屋の前。


リュートとミナだけが中に入り置いていかれた面々は、そこで各々に時間を潰していた。


「ちゃんと許可は出ているハズなのに、何故私が入れない」

「まぁまぁ、王女。少々の間待っていて欲しいと言われただけではないか。すぐに入れるでしょう」

「……カムイ様、大分王女様に砕けて来ましたね」

「馬車の中で長い時間共に過ごしたからな。婚約者でもある事だしな」

「誰が婚約者か!父上にも勝てぬヘタレが!!」


王女、カムイ、そして聖者の癒し手として同行していた治癒術師のリン。

本来なら今日はリュート達と共に聖殿内部に入る予定だったにも関わらず最後の扉を閉められ荒れていた。

と、言っても荒れているのは実質、王女一人であるが。


カムイは王女と居れれば特に気にしないようで、リンは、そもそも王女と一緒に居る事で緊張して、それどころではないようだ。


「まったく、やっとリュートと行動できると思った矢先に……あの青髪め!早くしろー!!」


レーナ王女は、自分が伝説の勇者パーティー相手に文句を言っているとは露知らず、扉に向かって騒いでいた。







「あぁ、外は騒がしそうだなぁ」


聖殿中心の扉は分厚いから、外の声はまったく聞こえない。

しかし、オレとミナだけが中に入れられた時の王女の不機嫌さから大体予想はついた。


ごめん、カムイさん。王女の相手はよろしく頼んだ。


例え、オレが頼まれたら不機嫌な王女の相手なんて御免だけど。


「悪いが外の連中には少し我慢して貰おう。魔剣に関しては大々的に言わなきゃ、ある程度知られても問題はない。しかし、リュート、お前の能力は別だ」

「確かに強力な能力だけど……」


ひた隠しにする程か?

能力は勿論相手に知られない方が良い。

ただ魔剣にしても、ばれる時はばれる。

しかしアウルの言い方は、絶対にどこにも漏らさない様。そんな言い方だった。


「人の前で大怪我をするな。誰にも、その能力の事は話すな」

「そんな無茶区茶な」


話さないのは良いとしても怪我なんて、いつするか、わかったものじゃない。

特にオレは。


「アウル、ちゃんと説明しなきゃ駄目ですよ」


少しイラつき気味に話すアウルを見かねて、ナギがため息を吐きながら前に出てくる。


「良いですか?リュートさん。その能力……不死の王は初代魔王以来、誰も持っていなかった能力なんです」

「これまでに勇者は数えるのも嫌になるくらい召喚された。その中に只の一人も不死の王はいなかった」

「だから、私たちも能力とは考えていなかったんです。不死の王を持っているのは魔王。そういう認識でした」


そこまで言って二人は黙った。

まるで、何か言いにくい事があるかのように。


「なるほどね。リュートが不死の王を持っているって知られたら、他の人の反応……っていうか、最悪リュートが魔王だと思われるって事ね?」


今まで黙っていたミナが口を開く。

オレにとってはとんでもない理論で否定したくなるが、アウルは黙って頷いた。


「更に言えば、魔王を倒せるのは魔剣のみ。だが、リュートは……」

「魔剣の所有者はリュート。魔剣は所有者を傷付ける事はない。魔剣アウルは無効化の能力はなくなってるしね」

「ああ。これが知れ渡ると無用の混乱が起きる可能性がある」

「ちょ、ちょっと待て!オレは、ただの商人だぞ?いきなり魔王だなんてありえない」

「わかってる。でも、リュートがそうでも関係ない人がどう思うかなんてわからないのよ」


そんな事が事があってたまるか!!


そう反論したくなるが残念ながら心あたりがある。


オレは真っ当な商品しか扱っていないが、高額な物が多い為に闇市をよく利用する。

普通の市場では売れにくいのだ。引き換え闇市は金持ちが多い。


しかし、それだけでも闇商人と毛嫌いする貴族も少なくない。


「……分かった。制御できる物でもないが、頼らないようにする」

「そうしてくれると助かる。さて、話はこれだけだ。待ち人もいる事だし、修行をはじめよう」「はい、私、外の方々を呼んで来ますね」


ナギが扉に向かい歩いて行く。


不死の王を前提とすれば危険が多い場所にも行けるのに、余り頼れないのは残念だ。

待てよ?誰もいない秘境なら発動しても……。

と、そこまで考えた所で袖を引っ張られた。

引っ張った相手はオレが振り向くと、楽しそうに話す。


「でも、良かったわね。これで、リュートが大怪我しても心配ないし」

「まぁな。でも、ミナに危険な事はさせれないから、怪我するような事はしないよ」

「……?大丈夫よ?リュート、私より弱いし」


……毎度悪気はないんだろうな。

この子。


相手が反則クラスとは言え、見た目は女の子なのだから、無駄に傷つく……。





「魔法剣フレイムブレイド!」

「はい!」


アウルが指示を出してナギが魔法剣を発動する。

魔剣アウルは瞬く間に燃え上がる炎に包まれ、刀身の二倍程の炎の剣となった。


「直撃はしないでくださいね、リュートさん」


ナギが剣を振り下ろすと熱風と火の粉を撒き散らしながら、リュートに襲いかかる。

しかし、リュートはそれを右にステップを踏み体を一回転させながら前方に踏み込む。


「当たったらタダじゃ済まないだろうけど……単純過ぎる」


対魔法戦に慣れているリュートにとって、魔法剣と言えどナギの実力で当てるのは難しい。

前回の戦闘で魔剣戦を学んだリュートなら尚更だ。


「くっ……!?」


ナギが慌てて斜め上に剣を切り上げるが、無理な体制だった為に力が入らず手甲に防がれてしまう。


ナギは魔剣の透過を使おうかとも考えたが、手甲だけすり抜けるなんて芸当が簡単に成功するハズがなく、壁や人体の中では魔剣の具現化ができない為、リスクが高すぎた。







改めて冷静に見るとナギの剣は速い。

そして魔法剣なんて技もあって厄介だけれど、力が弱く剣筋が素直過ぎて読みやすい。


魔剣アウルを手甲で止めた瞬間、ナギは何をしたら良いのかわからないらしく、動きを止めてアウルに視線を送っていた。

本職の近接戦闘を得意とする者にはあり得ない行為だ。


そして、オレも、その隙を逃がそうとは思わない。


「下がれ!」


アウルが叫ぶのとオレが上段蹴りを放つタイミングは、ほぼ同じだった。

そして人から指示を仰ぐ場合、どうしたって行動は一手遅れる。


ナギは咄嗟に魔剣を透過し両手で防御したが、型が無茶苦茶だ。

本当に咄嗟に手が身を守ったのだろうけど、痛くないハズがない。


得手は剣だが、昔は多少の体術習っていた。

それくらいの事はわかる。


ナギはそれでもアウルの言うとおりに、バックステップで距離を取ろうとする。

対したオレは右の拳を付き出しているが、絶対に届かない。


が、それで狙い通りだ。


ナギが少し痛がりつつも、距離が空いた事で仕切り直しになった事で安堵しながら、地に足を付けた瞬間にオレは呼んだ。


「ミヅキ!!」

「きゃっ……!」


空いた二人の空間の間に魔剣ミヅキを召喚する。

さっき、蹴りの前に送還した為に素手状態だったが、魔剣の使い方を教えてくれたのはナギだ。


魔剣の切っ先は丁度ナギの喉元にある。


「……参りました。飲み込みが早いですね。流石に、純粋な剣の腕では勝てません」

「あー!俺が直接戦えればなぁ!」


ナギが柔らかく笑い敗けを認めアウルが地面を踏みつけて悔しがっている。


うん、昨日散々練習した甲斐があって、魔剣の召喚送還は大分自由にできるようになってきた。


最もオレのは完全に消してしまうから、ナギみたいに透過ができるように練習は続けようと思うが。


後ろを振り向くと試合を見ててくれた四人が、それぞれの態度をとっている。


レーナ王女は、手を振り歓声をあげてくれている。


カムイは真剣な表情だ。

……何を考えてるか気になる。

今の試合にそんな参考になる部分あったか?


もう一人の女の子……聖者パーティーの癒し手だっけ?

彼女は王女を宥めている。


そして、ミナは興味なさそうに、こっちを見ているが……喜んでくれてると信じよう、うん。


王女と聖者パーティーは、聖殿内部に入る許可を貰ったらしい。


それなら魔法剣を覚えるまでは、この面子で修行をする事になるだろう。

それでも危険地域を迂回してるよりは、余程早いだろうな。


それに……魔法剣は魅力的だ。


余り、のんびりしてる暇はないが、しっかり覚えていこう。



…………全然、覚えれる気がしないけどな。



五月は更新頑張るとか言って、六月……。


申し訳ないですorz



王女様が難しすぎて何度書き直したか……そして時間空けすぎるのも嫌なので、少しかかるよ話を変えて更新させて頂きました。


なるべく早くしようとは思いますが次話は少し遅いかもしれません。


いつも読んでくれてる方々、本当にありがとうございますorz

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