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世界に蔓延る勇者達  作者: 霧助
一章 傷ついた少女
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六話 100に恋する竜と姫

六話です。

相変わらず拙い文章ですが楽しんで頂けたら嬉しいです。

ずっと古い時代、世界は平和だった。

国同士の争いはあったものの概ね平和と言って良かったであろう。


しかしその平和はたった一人の魔人に壊された。

彼は自らを魔王と名乗り世界へと戦線布告した。


瞬く間に世界各国に魔物は魔獣が現れるようになり人々は恐怖と共に生活する事になる。

南の大国が落とされたのはそれから僅か1ヵ月後の事であった。


強大な魔王の力の前に各国は手も足も出ず蹂躙され遂に北、西、東の大国の大同盟が組まれる。

西と東が必死に魔王を食い止め北は食料や物資を援助し戦線を支えていたが、魔王率いる魔軍の軍勢は個々が非常に強力な力を持っており徐々に戦線は押されていった。


唯一平和な北の国、そこまで戦線が押されれば食料や武器の生産がままならぬ人類の敗北は決定的となる。

そしてもう少しで中央の戦線が突破されそうになると北の国はいよいよ伝説の魔術に頼った。

求国の魔法……どんな魔法かは定かではなかったが昔から国の崩壊の危機に使うべしとされてきた魔法である。

複雑な魔方陣に必要とされる膨大な魔力。

何が起こるかわからなかった為、これまで迂闊に使うべきではないとされていたが、世界は形振り構っていられなくなった。


その結果は……たった5人の異世界人を呼んだだけであった。

人々は絶望に打ちひしがれる。


今、世界の希望は……絶たれたのだと。



しかし、召還された者の一人が王様を前にして宣言する。


「希望が絶たれたなら私が希望となりましょう。私たちがこの世界に呼ばれた意味を…ご覧に入れます」


王様はとても感激し彼に勇者の称号を授けた。

そして他の4人も彼に賛同し魔王を倒す旅に出る。


勇者シグルド

大魔法使いアリス

魔剣士アウル

巫女カミナギ

深遠のファルス


世界の命運は5人の若者に託された。


彼らは前線を押し返し魔人を倒し、多くの魔物を振り払い、遂には魔王の城へと剣を向ける。

人々の歓声を一身に受け世界の平和を取り戻す為に戦う5人に人々は希望を見出した。


遂に魔王を目の前にした彼らを襲ったのは魔王自身の圧倒的な強さであった。

勇者達5人を相手に互角に戦う強さ。そして何よりも魔王は受けた傷を次々と回復していく。


戦いは互角でも勇者達は一方的にダメージを受けていく。

一人また一人と勇者は倒れていき魔剣により魔王に唯一ダメージを与られるアウルも遂には魔王の猛攻の前に倒れる。


ついに立っているのは勇者シグルトだけになってしまう。

魔王の勝ち誇る声が聞こえる。

事実、アウルが倒れた今、魔王にダメージを与える術はない。


しかし勇者は諦めずに魔王に挑む。

何合も剣を切り結び傷つき倒れても立ち上がり剣を構える。

絶望的な戦いであった。魔王はあれから一切ダメージを受けていない。


しかし、諦めていないのは勇者だけではなかった。

ファルスが身を隠し魔王から4人の目を逸らせ、アリスがカミナギに魔力を渡し、カミナギはアウルを回復していた。


そして魔剣士アウルがなんとか立ち上がった。

その姿はぼろぼろでどう考えても魔王と戦えるほどではない。

魔王の嘲笑が聞こえてくる。


それに対しアウルも嘲笑で返す。

魔王、お前の負けだと。

アウルは自分の存在全てを魔剣に込めソレを勇者に渡す。


再びアウルは倒れた。

ファルスもアリスもカミナギにももう力は残されていない。


しかし勇者の手には4人が助けてくれた印である魔剣が握られていた。

魔王との激闘の末、勇者は遂に魔王の心の蔵を貫く。

魔王の断末魔が世界中に轟いた。その声はこの世の全てを呪うかのような声で人々は恐怖に陥る。


だけど…人々が恐怖に陥った日はこの日が最後となった。

勇者は魔王に……勝ったのだ!


北の国に帰った4人は末永く平和の国で過ごした。

シグルトとアリスと結ばれ、ファルスは国の魔道機関で気ままに研究し、カミナギは聖女とし神殿で暮らしたという。


そして帰らなかった一人……彼の残した剣は魔剣アウルと呼ばれ今でも大陸の中央に正殿に飾られてるという。

救国の魔剣として……。







「ふぅ……リズ。君は本当にこの話が好きだねぇ」


「あら、素敵じゃないですか。命を賭し戦った初代勇者達の英雄譚ですわ」


オレは今、ニーズヘッグ公爵の屋敷に来ている。

そしてオレの膝の上で絵本を開いている金髪の美少女リズ=ニーズヘッグ。

公爵の溺愛している娘だ。


彼女はこの絵本が大好きで今でも時々、オレに読ませる。


「リュート様、久しぶりにいらしてくれたんですもの。少しは遊んでくれてもいいじゃないですか」


少し拗ねたように彼女は言う。まだ15歳とはいえその整った顔立ちとよく育った体は男性相手に反則的な凶器である。


「リズにあまり構っていると婚約者に焼かれちまうからな」


「あら、アルフレッド様は確かに将来有望で良い殿方ですが今はリュート様の方が上ですわ」


頬に手をそえ囁かれる。たまに本当に15歳かと思うな、コイツは。

しかし、手を出せばニーズヘッグ公爵に殺される為、邪な考えは浮かべちゃいけないな、うん。



ニーズヘッグ家は竜人と名乗った種族の勇者の末裔の名家である。下手な事をすれば本気で命にかかわる。この世界の貴族はなんらかの形で勇者が関わっていることが多い。

それだけ世界が勇者に救われてきたという事だが。


「リュート……なんなの、さっきからその子、貴方に馴れ馴れしくないですか?」


今まで黙ってた王女が不機嫌に話しかけてきた。

というかよく黙って勇者の話を全部聞いてたな、彼女。


「あらあら、レーナ様、御機嫌よう。いらしてたのですね」


とても良い笑顔で返すリズ。

何これ、フラグか?刺されるエンディングだけは勘弁してくれよ。


「さっきからずっといました!リュートは歴史上の英雄と大差ない勇者です!ニーズヘッグ家といえど少々馴れ馴れしいのではないですか、リズ!」


リズの明らかな挑発にわかりやすく切れるレーナ。それに対してリズは余裕そうだ。


「大変でしたわね、リュート様。お父様のお仕事の最中にこんな事に巻き込まれて……心中察しますわ」


あ、ちょっとわかってくれる人がいて泣きそうになった。


「まぁ、ニーズヘッグ公爵のお陰でなんとか家には帰れそうだ。お礼を言っておいてくれ、リズ」


お父様がお役に立ったようで嬉しいですわと笑顔のリズは言う。

ソレに対してレーナはご立腹のようだが触らぬ神に祟りなし。放っておこう。


「あら、レーナ様、どうしたんですか?まさか、リュート様に思いを寄せて……?リュート様と出会ってこんな短期間で王女レーナともあろうお方が以外とはしたないのですね」


おおい、何を仰るんですか、リズお嬢様!?


「な、違っ。私は最高の勇者としてリュートを尊敬しているだけです!」


真っ赤になって言い返すレーナ。ほお、ほほお、と軽くあしらうリズ。

王女の方が年上じゃなかったっけ、確か…いや、リズが大人びすぎてるだけか。


女三人揃えばかしましいと言うが二人でも随分賑やかだ。


「おぉ、随分と賑やかだね。リュート、いつも娘と遊んでくれて感謝するよ」


遊んでいるとニーズヘッグ公爵が来た。公爵にはミスリル結晶を渡し値段付けをして貰っていた。


「今回のものは私の求めてた物よりもずっといい。勿論、値段は弾ませてもらう。君に頼んで正解だったよ」


良かった、今回の物には公爵もご満悦のようだ。

リズが今回は何をくれたんですの?と聞いてきたが誕生日プレゼントなら伏せてた方がいいだろうと思い、そのうちわかるよ、とだけ返す。


「お金の事は後にしよう。今夜は泊まって行ってくれないか?」


いきなり王都にきて行く場所もなかったので遠慮なく甘えさせて貰う。

伯爵は今夜の食事は豪勢にしよう!と張り切ってくれていた。

まぁ、ここの食事はオレの感覚だと普段から異常に豪勢だがな……。





夕食は大変美味しゅうございました。

まぁ、少女二人が若干騒がしかったが。



二人の少女が寝静まった後、リュートはニーズヘッグ公爵の私室に招かれ酒を交わしながら商談に入っていた。


「今回のミスリルの結晶、娘も喜んでくれるだろう」

「公爵にはいつもお世話になってますから……。またいつでも言って下さい」


公爵は厄介な物を頼むことは多いがその分金払いはいい。

仕事の相手としては遣り甲斐もあるし成果も高いから贔屓にしてくれるのはとても嬉しい。

現にオレの手には小さな袋に金貨が詰め込まれている。王城の民が1年間は暮らしていける額である。


「さて、明日には家に帰るのかい?家族が心配だろう」


家族は確かに心配だ。しかし、明日帰るとなれば旧セラ鉱山から帰るよりも1~2日ほど早く帰れるだろう。

多少寄り道してもいいかもしれない。


「そうですね……明日は商会の暗部に顔を出してそれから帰ろうと思います」


公爵の顔が一瞬強張る。

暗部とは名前の通りオレの所属する商会の闇の部分である。

違法な品やひいては人身売買等も行っている。


だが国の経済の一端を担っている為、国も大きく介入できずやりすぎない限りは見逃しているのが現状だ。


「まぁ、君も暗部の人間だ……。だが、私は君を信頼している。身分さえあればリズを嫁に出してもいいと思うほどだ、非道な事だけはしてくれるなよ?」


公爵はリズが将来は婚約者と結婚をする事を条件に、今はオレに甘え恋する事を黙認している。

リズもそれがよくわかっているから今はオレに遠慮なく甘えてくる。

レーナに対する態度も嫉妬……もしくは警戒しているのだろう。

後、何年か後にはリズはアルフレッドという名の貴族と結婚する。


それまで甘えられるのもオレとしては悪い気はしない。


「その暗部の人間を信頼してくれる貴族様も珍しいですよ」


リュートが肩をすくめながら言う。事実、暗部は貴族からは毛嫌いされる。


「君が暗部の人間でも君自身は他では扱えない商品を売っているだけというのを私はよく知っているさ」


オレの周りにいる貴族は概ね自分に好意的ににしてくれる。暗部の闇市を利用する事はあっても自身の売り物は清廉潔白な物だけと言うのが理由として大きいのだろう。最も、一般市場では値段と希少性ゆえに売れにくいものばかり扱っているから暗部ではあるのだが。

しかし、中には暗部というだけで毛嫌いするものは当然いる。

勿論オレの商品を知らない貴族も少なくはない。


公爵は数年前に初めて商売の関係を持ってから親しい貴族を紹介してくれたり、パーティーにまで招待してくれたり色々良くしてくれている。

公爵無しではオレの今の国を代表する商人の一人という名誉はありえない。


「公爵には……本当に感謝しています。騎士の名を失った名無しの私にここまで良くしてくれている」

「リュートの商品にはそれだけの価値がある。気にするな。まぁ、私としては家に戻ってくれてリズの婿に来てくれるのが一番なのだがな」


公爵は笑いながら酒を煽る。

自分自身もそれは不可能だとわかりつつも満更ではない。


色々あったが今夜は気分良く寝れそうだ。



明日、商会に顔を出そう。そして馬の一頭を買い、途中で田舎の町で一泊してから家族の待つ家に帰ろう。


そこそこハイペースでアップしてるつもりだけどどうなんだろう…。

七話はまだ書きあがっていないので今日中にアップできるかは微妙なトコです。


誤字脱字あれば指摘よろしくお願いします。

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