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世界に蔓延る勇者達  作者: 霧助
二章 魔女の復活
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四十六話 100と王都と聖殿と

少し投稿が遅くなりました。

展開に多少迷っておりました。


本来ならこの話で王都での話は終わりになる予定だったのですが、次の話まで食い込んでしまいました。


次話でちゃんと纏めれるんだろうか……。




「ふぅ……流石に疲れた。ってもう、こんな時間か」


水晶球から手を離して背筋を伸ばす。

朝から調べ物をしていたが、夢中になる余り時間が過ぎるのを忘れていたらしい。

太陽は真上に登りつつある。


王立大書館。

以前から気になっていた事を調べようと思いオレは開館と同時に籠っていた。

名前の通り大量の本が保管されていて北の王国で調べ物をするならここが一番だろう。

最もオレが使用していたのは情報が魔力によって保管されている水晶だ。

効率はいいんだけど情報を引き出すにもわりと馬鹿にできない量の魔力を消費する為、使用者は多くはないが、オレは魔法が得意ではないから魔力がすっからかんになろうと大した問題はない。




「腹減ったな……。一人で外食しても詰まらないし帰るか」


公爵とリズはアレで貴族だから忙しいかもしれないけど、ミナくらいは居るだろう。


それにしても……流石は勇者召還国と言うべきか。

調べたい事の大半はあっさりと見つかった。


まずはケルロン。

魔獣ケルベロスが人に懐くなんて聞いた事無かったが調べてみるとわりとあった。

ケルベロスはおろか魔狼フェンリル……獣型魔獣では最強クラスの魔獣ですら従えた勇者がいたそうだ。

まぁ、ケルロンに関しては最初はともかく今更警戒してた訳ではないのでほんのついでだ。

庭で尻尾追いかけてくるくる回ってたり、あくびしながら寝転がる姿なんて見たらなぁ……。


次に魔剣。

有名なのは言うまでもなく魔剣アウルだ。

しかし、記録には他にも召還された勇者の中では魔剣使いが居たようだ。

ただ、これに関しては詳しい事はどこにも書かれていなかった。


「王国が意図的に隠してるとしか思えないくらいに情報がないんだよなぁ」


ただ、最初の魔王を倒した能力ではあるものの攻撃力も防御力も取り立てて高い能力ではない。

隠す意味がわからない。



そして最後に、オレの能力。

一定条件下で発動する回復とでも言うべきか?

これに関しての情報がまったくない。

こっちは隠されてると言うより本当に前例がないんだろう。

わかっている事と言えば……。


一定以上のダメージを負っている事。

他人の傷も癒す。

発動すれば全てのダメージを癒せる。


こんな所か。

とは言え、此れにも確証はないわけだが。




他にも細かい事は色々あったが大事なのはこれくらいだろう。


考え事をしているうちにいつの間にか公爵家に帰り着いていたので思考を中断してドアを開ける。


「リュートです。今戻り……」

「だから、起きたらもう居なかったって言ってるでしょう?」

「心当たりくらいないのですか!?今すぐにお父様とちゃんとお話を……!!」

「あら、リュート様。お帰りなさい」


広間に入った瞬間、そこは魔女、王女、令嬢による混沌空間だった。


「ただいま……リズ」


うん、公爵令嬢は別に関係ないか。










「ですから、あの試合はリュートの反則とは言え、カムイを地に這わせたのはリュート。弱い方を私の婚約者にしようだなんて間違って……って聞いてる!?」

「聞いてます……」


面倒だし聞きたくないけど。あ、これ美味い。


昼時も近い事もあり、空腹なオレの要望も叶い食事をしつつ王女の要望を聞いていたが、なんとも面倒な話だ。


要約するとリュートの方が強いんだからカムイとの婚約は間違ってます!という事らしい。


「試合に負けたのはリュートでしょ?大人しく馬鹿勇者と婚約すればいいじゃないの」

「……自分でしたら、カムイと大人しく婚約するのですか?」

「絶対嫌」


カムイさん、そんな悪い人じゃないんだがミナとレーナ王女からの評価は著しく悪いようだ。


「とにかく!どうせ王城には来て貰いますから父上にリュートからも一言お願いします」


王族の婚約権をただの商人にどうこう言える訳もなく聞きながしていたが、聞き捨てならない事を言われる。


「いや、王城に行く予定はないのですが」

「父上の命令です」


「なんで!?」


まったく心当たりがない。


「よくわかりませんが魔剣がどうこう言ってました」

…………。

あ、はい。また面倒事ですか?


やっぱり試合で魔剣を使ったのはまずかったかな……。

いや、どうせもうすぐ王都は出る予定だった。というか、ミナの許可次第で明日には出る予定だ。

商人にとって急な出立なんてよくある事。

謁見の日にち前に王都を出れば……。


「それでは、食事が終わったら一緒に行きましょう」

「…………はい」


敵の行動はオレの予想より遥かに早かった。










「父上、リュートをお連れしました」

「うむ」


いろいろ駄々を捏ねてみたが結局、連れて来られてしまった。

まぁ、王都で王族の命に逆らうなんて流石に無理な話だ。


「すまんな、リュートよ。どうしても話しておかなければならない事ができたのだ」

「どうしても……ですか」

「うむ、魔女もよく来てくれた」


別に呼ばれた訳ではないがミナも謁見にはついてきた。

流石に今回は自分から来ただけあり悪態もつかずに軽く頭を下げていた。


しかし試合翌日の急な謁見……どうしても話さなければならない事、か。

面倒くさいだけだったが流石に気になる。


「リュート、君の能力の事だ。そう、魔剣の事なのだよ」

「リュートの能力が魔剣だったらどうしたの」

「貴様、また……!!」


ミナが機嫌悪そうに食って掛かる。

元々ぴりぴりした空気だった事もあり騎士の一人が剣を抜こうとするが王が手で制す。


「構わん。彼女にとっては勝手に呼ばれた違う世界。良い感情を持たないのは当然だ」


不服は残るようだが騎士は柄から手を離す。


「ミナも押さえて。まず話を聞いてみよう」

「……ごめんなさい。でも、そうじゃなくて」


ミナが立ち上がり王と視線を合わせる。


「この際だから召還がどうとかはもういい。恨んでもない。代わりに……リュートに手を出すなら許さない」


明らかに王に対する敵対発言。

いや、気持ちは嬉しいけどここでは逆効果だ。

先程の騎士がまた剣を抜こうとしてるし、他の護衛も文官も戸惑っている。

ただ、王本人はそれを豪快に笑い飛ばす。


「ハッハッハ!!いやはや、魔女はすっかり商人に夢中だな!」「だったら何?」

「否定もしないか。ふむ、最初の頃と比べると大分変わったな、魔女。いや、勇者ミヅキか」


最初って言うと城を半壊させた時か?

ミナが城での評判が良くないのもこの事件のせいだろう。


まぁ、王本人は気にしていないみたいだ。抜けた所はあるが器は広いのかもしれない。


「それもリュートに助けられたからよ。だから守ろうとするのも当然でしょ?」

「なるほどな。まぁ、警戒しなくていい。勇者リュートに害を成したりしない。ただ魔剣について知って欲しい事があるのだ。それならいいだろう?」


王がそう言うとミナは黙ったまま片膝を付く。


てか、公爵とかには礼儀正しいのに王相手にだけ切れすぎだ。


「まぁ、簡単な話だ。魔剣についてはほとんど何も記録に残っていない」


おい。


「えっと、何かの冗談ですか?」


わざわざ呼び出して何もわからないとか、ふざけてるとしか思えない。

心なしかミナの回りの空気も黒くなった気がして怖い。


「はは、すまん。記録に残ってないというよりは残してないのだ」


何故記録に残さない?という疑問は浮かぶが恐らく本当の事なんだろう。

今朝、魔剣について調べてもほとんど情報がなかったのが事実だと指し示している。


「で、それならなんでリュートを呼び出したの?」


若干切れ気味な声でミナが尋ねる。

同感ではあるけど怖いです。


しかし王は気にした様子はなく彼女の疑問に答える。


「魔剣の情報は全て一ヶ所に纏めているのだよ。理由はここでは言えん」

「一ヶ所……召還国である此処以外だとしたら……聖殿?」


ほとんど感だったがどうやら正解だったようで王は大きく頷いた。


「その通りだ。そこで魔剣アウルの守護をしている者が居る。彼に魔剣の事を教えて貰うといい。何、勇者リュートも知っている人だ」


オレの知っている?誰だ?

生憎見当も付かない。


「明日の昼に馬車と護衛を用意しよう。観光気分で楽しんで来ると良い」










「はぁ、疲れた」

「まったくね……」


長い話も終わりミナと二人帰道につく。


本来の話はアレだけだったみたいだが、あの後、王女が介入してきて婚約騒動の話となり結構時間がかかった。

とはいえ婚約の件は王の預かり知らぬ所で広まっていたようで、国としてもどう扱うか決めかねているようだ。


とりあえず、しばらくオレは無関係でいられるだろう。


「それにしてもリュート。やっぱりもてるのね」

「王女の場合純粋な好意とは違う気もするけど……。とりあえず、機嫌直せ」


大きな三角帽子の上からミナの頭をポンポン叩くが相変わらず機嫌は悪そうだ。

一緒に歩いてれば帰る頃には機嫌を直してくれてるとは思うがどうにも居心地が悪い。


「って、リュート。帰るんじゃないの?」


明らかに公爵家とは違う方向に曲がるオレにミナが尋ねた。

帰るには帰るが、少し買わなければいけない物がある。


「少し寄り道。一緒に来てくれるか?」


そう言って彼女に手を差しのべると視線を反らしながら手を握り返してくれる。


その横顔は真っ赤になってる。どうやら機嫌は直してくれたみたいだ。


本当に気分屋だなぁ、なんて呆れつつも嫌な気分ではない。


「ところで何を買うの?」

「ん、塩」

「……塩?」


言うまでもなく生活の必需品だ。


「後、明日は朝早くから港に行くから付き合ってくれないか?」

「別にいいけど……何しに?」

「行けばわかるさ」


明日は忙しいくなる。ニーズヘッグ公へのお礼と挨拶もあるし、さっさと買い物を終わらせて帰ろう。













次の話で久しぶりの魔王様視点の話を書く予定だったのですが、もう少しだけ(多分次話まで)王都の話が続きます。

そこで第二章も終わりです。


そしてそして次は久しぶりの魔王様!

強くも世界なんて興味ない魔王と天然で魔王大好きな天使のお話です。


人間の知らない所で魔人にもいろいろあるのです。



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