四十三話 100と3
さて、いよいよリュートとカムイの試合です。
切り所がわからず随分長くなりましたorz
誤字脱字指摘、感想お待ちしております。
王都武道際最終日……残す試合も僅か数戦となった会場を歓声が包む。
「いや、人入りすぎだろ、これ」
城の中庭まで開放するって話は聞いてたけど、観客はそれだけでは納まり切らず急遽、城内部の中庭を見渡せる場所のほとんどを開放し人を押し込んでいる。
オレとカムイさんの試合まで後数十分くらいだろう。控え室で準備をすませ外を見てみたが、明らかにオレが会場に来た時より人は増えてる。
「……最終試合までにもっと増えるのかなぁ」
オレは冒険者ではなくて商人だから名声とかあまり興味ないし目立ちたくないんだけど。
まぁ、手遅れか。
ちなみにミナは観客席にいる。王女の計らいで良い席をとってもらったらしい。
「ミナがどこにいるかわかれば少しはやる気もでるかな。さて、そろそろ行くか」
勇者同士の戦いなんて歴史にあったのかなぁ。
『お待たせしました!!この大会は次の試合の為に開かれる事になったといっても過言ではないでしょう!!いよいよ勇者と勇者の異例の決闘!今大会最後のカード、勇者カムイ対勇者フェトムです!!』
--わあああああああああああああああ!!
盛大に盛り上がる会場。
まだリングにあがってすらいないのにちょっと耳が痛い。
「リュート殿!今日は良い勝負になるといいな」
すでに先にリングにあがっているカムイさんが笑いかけてくる。
ミナ曰く馬鹿らしいけど、性格自体は良い人だと思う。
「お手やわらかにお願いします」
「そうはいかん。全力だ」
リングに上がり差し出された手を握り返すとそう言って笑われてしまった。
「準備はいいですか?二人とも」
「あぁ、いつでも大丈夫だ」
「こっちも大丈夫です」
さっきまであんなに騒がしかった会場が今は静まっている。
どうせ、またすぐ騒がしくなるんだろうけどな。
『では、リュート様、カムイ様。これより、最終試合を開始します。が、その前に簡単なルールの確認を。武器はご持参して貰っていますが真剣の使用は禁止です。必ず刃を潰してください。大丈夫ですね?リング外への相手への攻撃は禁止です。相手が戻ってくるのを待ってください。20秒以内に戻れない場合敗北となります』
「大丈夫大丈夫、さっさと始めよう」
魔法で声を拡大してるあたりオレたちへの説明ってか観客への説明だろうな。
今回の試合は全ての試合が同じルールではないみたいだし、確認だろう。
てか、カムイさん、そんなに早く戦いたいか。
『ははは、すいません。それではカムイ様、リュート様。行きますよ?……最終試合……始め!』
試合開始の合図が響く。
そして数秒も経たない間に高く鋭い音が会場に鳴り響いた。
「うお……っと!?やる気、まんまんだな、リュート殿」
「正直、これで決まるとは思ってませんでしたけどね」
開始の合図と共に斬りかかったのはオレ。
決まるとは思えなかったけど決まればいいなと希望を込めて斬りかかったがあっさりと剣で防がれてしまった。
やれやれ、すぐ終わらせれば情報も隠せるし楽だし一石二鳥だったんだけどな。
カムイさん、多分強いし……。
「さて、リュート殿。不覚にも先制は奪われてしまったから次はこちらから……と言いたい所だが、できればもう一度斬りかかって来て欲しいのだが」
「……は?」
何を言ってるんだ、この人。
そりゃそのうち嫌でも斬りかかるけど来いと言われて行く馬鹿はない。
なんか、ミナや他の人がこの人を馬鹿呼ばわりしてる理由が少しだけわかった気がする。
「いや、何、このままでは不公平だろう?リュート殿の能力は卓越した剣技と聞いた。しかしリュート殿は俺の能力を知らない。俺の能力は防御系だからリュート殿の協力が必要なんだ」
少しわかったどころか今はっきりとわかった。この人、まっすぐな馬鹿だ。
「えーと……普通に斬りかかればいいんですね?」
……乗るオレも馬鹿か。
しかし、能力を知っておくのは悪い事ではない。
「おぉ、感謝する!」
なんで感謝されなきゃいけないんだ。
ま、あの人なら騙してカウンター決めに来るって事もないだろう……。
これまでの言動が全て演技でオレを騙す為にやってたならオレはこの人を尊敬する。
「えっと、んじゃ、行きますよ……?」
「おう!!」
本当に斬っていいんだろうか。なんか調子が狂う。
とりあえず適当に上から剣を思いっきり振り下ろす。
「聖殿の盾!!」
技名叫ぶの!?
しかし、その聖殿の盾とやらはオレの当初の予想を簡単に覆す程に優秀だった。
金属と金属がぶつかりあう様な甲高い音と共に見えない壁にオレの剣は阻まれる。
「な!?」
カムイさんが使っているのは左手一本。いや、ここまではミナから聞いていた通りだ。
驚いたのはまるで壁を思いっきり殴ったかのような、その手ごたえ。
攻撃が……まったく通ってない……!?
その事に気づくと同時に慌ててバックステップで距離を取る。
「ははは、驚いたか?リュート殿。これが俺の能力、聖殿の盾。見といてよかっただろう?」
カムイさんは朗らかに笑っている。
が、こっちとしては笑い事ではない。本当に見ておいてよかった。
最初、オレはカムイさんの能力を見えない盾のような物だと思っていたが甘かった。
アレはミナの魔剣と同じ……ミナの魔剣がその重量を無視するように、カムイさんの能力は敵の攻撃を完全に無視する。
恐らくは左手を前に突き出し、そこに来た攻撃は全て止まる。
盾なんて生易しいものじゃない。まるで壁だ。
相手は何も感じずこちらだけが一方的に体制を崩す。近接戦闘に置いては防ぐだけで有利になる壁。
盾ならば弾いたりもできるが壁を壊す事は不可能だ。
さて……どうしようかな、これ。
魔法を使えない純粋な剣士であるオレにとっては最悪の相性って言ってもいい。
「諦めるか?リュート殿」
「冗談……!」
ははは、柄にもなく……熱くなってきた!
「うむ、リュート殿は思った通りの武人。次は俺からも行くぞ!」
眼前の敵が剣……いや、彼の武器は刀と言うらしい。
それを振り上げた……と思った次の瞬間、降り下ろされた刃が目の前に来る。
早い!?
冷たい感触が頬を掠める。
ほんの一瞬反応が遅ければ今頃は意識を刈り取られていただろう。
「はは、流石リュート殿。初見で俺の刀を避けるとは!しかし、まだまだ行くぞ!!」
「……っ!?」
なんだ、この人の剣技は!?予備動作が……短すぎる!!
剣とは力ずくで敵を叩き斬るもの。
しかし、カムイさんの技はそんな理屈を無視するかのように軽く、早い。
これが刀……オレの剣技じゃ対応できないな。
避けて一撃を捩じ込もうにも、その前に次の攻撃が襲いかかる上に、それすら避けて斬っても片手で受け止められる。
まったくもって勝ち目がない。
仕方ない……久しぶりにアレを使うか。
襲いかかる連撃の中、深呼吸をして頭のスイッチを切り替え、今まで避け続けてた刀を剣で受け止める。
「流石に避けきれなくなってきたか!!」
カムイさんが得意気に笑うが残念ながらはずれだ。
ただ……魔獣相手の戦い方から人間相手の戦い方に切り替えただけの話。
それにまったく気づかないのは好都合と言う他ない。
「さて、反撃開始と行きますか」
「出来るものなら……うおっ!?」
聞こえないように呟いたつもりだったけど、カムイさんにも聞こえたみたいだ。
せめて警戒すれば良いものを実直に斬りかかってくる。
そして、それを見逃す程、オレはお人好しではない。
カムイさんの刀を受け止め、そのまま全ての力を後ろに流す。
結果、向こうは完全にバランスを崩して、こちらは懐に入った。
近すぎて、できる攻撃も限られるが、これならカムイさんの左手も間に合わない!
剣を持ったままの右腕の肘をカムイさんの顔面に当て、よろけた所に後ろ回し蹴りを放つがガンッ!!とまるで巨大な岩を蹴ったような感触が帰ってきた。
痛っ……聖殿の盾かぁ。
どうやら肘打ちの後、咄嗟に左手を前に出したらしい。
まったく厄介な能力だ。
カムイさんは鼻を抑えながら刀を構え直す。
「痛たた……なんだ、その剣技……いや、知っているぞ。その動き……王宮剣術か!!」
お、バレた。
そういえば、この人、こっちの世界に来て近衛騎士に負けたんだっけ。なら、王宮剣術を知っていても不思議じゃない。
……一年も前の事をまだ覚えてるのはすごいと思うけど。よほど悔しかったんだろうか。
「一応、騎士の家系に生まれたので……小さな頃から父に王宮剣術を仕込まれてたんですよ。もっとも……魔獣相手には役に立たないので強い人間にしか使いませんけど」
そしてカムイさんは紛れもなく強い。
刀の腕もかなりのものだし聖殿の盾は彼と相性が良い。
対魔獣用の剣術でどうにかなるほど甘い相手ではない。
「ははは、なるほど。ついているな、俺は。まさか、ここで王宮剣術を破れるとは思っていなかった」
「そう簡単には負けませんよ?」
「あぁ、だからこそ良い試合にもなる。回りを見てみろ」
回り……?
ぐるっと見回してみるが異常な量の観客に囲まれてる事以外至って普通だ。
つか、ザッと客席を見てみるがミナが見当たらない。
これだけ大人数なら見つからなくても不思議ではないけど。
アイツの黒髪、目立つんだけどなぁ。
「気づかないか?」
「へ!?あー……」
やばい、試合とはまったく別の事を考えていた。
少し焦ったけどカムイさんは気にした様子もなく続ける。
「これだけの観客がいるにも関わらず俺たちが会話できるくらい静かなのは変だろ?みんな、俺たちの闘いに夢中なのさ」
「あぁ、そういえば……」
他の試合の時はもっと盛り上がっていたハズだ。
「感謝する、リュート殿。これだけの闘いはそうそう味わえない。これだけ価値のある勝利も!」
「あまり目立ちたくはないんですけど……ま、負けるつもりもありませんけど!」
互いに剣を構え直す。
休憩時間は終わりだ。客席からも息を呑む音が聞こえるような気がする。
「行くぞ!」
高速で降りかかる一撃をなんとか受ける。
速さではカムイさんの方が上だが、少しずつ自分に有利な状態を作っていくというのが王宮剣術の特性な為、ニ、三撃と重ねられても対応は難しくない。
……とは言え、決定打がないんだよなぁ。
弾き、受け流し、そしてできた隙を狙い剣を降り降ろすが……。
「聖殿の盾!!」
ですよね。
あっさりと剣は弾かれる。
打ち合いで少しずつ有利になっても、こっちが攻撃した瞬間、片手で防がれ振り出しに戻るの繰り返しにしかならない。
「リュート!!」
「……!」
どこからか聞き慣れた声が聞こえた。
あぁ、魔女の声援なんて貰っちゃ負ける訳にはいかないなっ。
そして、その声援をきっかけに会場に一つの変化が起こる。
初めは遠慮がちに……しかし、やがては叫ぶように。
『リュート!!リュート!!リュート!!リュート!!リュート!!リュート!!』
『カムイ!!カムイ!!カムイ!!カムイ!!カムイ!!カムイ!!カムイ!!』
魔女の声援に乗せられリュートに声援を送る人達が現れた。
そして、それに対抗するようにカムイに声援を送る人達も現れたのだ。
予想を上回る戦いに思考停止状態だった観客だが、完全に状況に追いつきお祭り思考になっていた。
目立つのは嫌だ……ったハズなんだけどな。
カムイさんの言う通り、こんなに良い試合ができる事なんてそうそうないだろう。
そんな状況で自分に送られてくる声援。
嫌な気分になるハズがない。
自然と口の端が上がってしまうのがわかる。
この騒ぎでは先程までの様に会話はできないけど、向こうも楽しそうだ。
延々と変わらない、然りとて気を抜けない斬り合いを繰り返し、隙を作る。
また聖殿の盾とやらで防がれるだろうが、見逃す手はない。
手にした剣を降り下ろす。
「…………っ!?」
慌てて頭を降り、回りを見渡す。
今、何が起きた?
右側頭部が痛む。多分、殴られたんだろう。相手は一人しかいない。
カムイさんは完全に体制を崩していたハズだ。あの状況では聖殿の盾を使う以外に選択肢はないハズ。
あそこから攻撃するなど、普通ではありえない。
目の前にいる彼を捉える。予想外の反撃に混乱し、状況把握が遅れたがカムイさんを見た瞬間、何が起きたのか大体は理解できた。
彼は頭から血を流し、片膝をついていたのだ。
出血は大した量ではなく致命傷には程遠いが、明らかにオレよりも大きなダメージを負っている。
つまり、カムイさんは……聖殿の盾を使わず崩れた体制から無理矢理、剣を振り上げたのだ。
結果、確かにオレは意識の外からの攻撃により一瞬意識が飛び状況把握が遅れた。
しかし、自分はオレの降り下ろしを無防備に食らったのだ。
明らかにカムイさんの方がダメージは大きい。
あそこで聖殿の盾を使わない理由なんてないハズだ。
何故、そうしなかった……?
使えなかったのか……?
理由は分からないが、それ以外に考えれない。
まぁ、そんな事は後で考えればわかる。
今は勝ちに行く!
カムイさんはまだ立ち上がれていない。
対してオレはほとんど戦闘に影響はない。
オレは、それが罠とも知らず剣を横薙ぎに降った。
「掛かったな、リュート殿」
方膝をついたまま、カムイさんがそう言った。
ガキィィン!!と甲高い音を鳴らして片手で受け止められる剣。
まるでミスリルの塊を殴ったかのように剣を持つ手が痺れる。
やばい。そう思った時にはすでに遅かった。
「一刀に斬り伏せる!!」
全身のバネを使い振るわれた刀は太刀筋がわかりやすく普段なら避ける事も簡単だろう。
ただ、全体重を乗せた一撃を防御された後のオレは一歩も動く事ができず、刀を盾代わりする事しかできなかった。
――あぁ、今日は良い天気だな。
景気良く吹っ飛ばされてる最中は空の青さが目に焼き付いた。
そして、一瞬の現実逃避を終えるとオレの体は一度、地面にバウンドし更に四回転半ほど転がってようやく停止した。
体の痛みを無理矢理圧し殺して頭を動かす。
完全にしてやられた……。
盾を使わず相討ちに持ち込んだのは次のオレの一撃を誘う為。
完全に好機だと思ったオレの全力の一撃を聖殿の盾で防御し、反撃する。
盾で防がれ続けた所に生まれた隙を狙わないのは、よほどの警戒心が必要だろう。
現にオレは疑いを持たず嬉々と斬りかかった。
最初の相討ちさえ凌げれるなら、なんて有効な手だ。
……いや、一番最初の相討ちでオレが手加減した事すら計算のうちか。
延々と盾で防がれて来たのだ。
防がれれば岩を殴ったかのような手応えに自分の手が痺れるだけ。必然、無意識のうちに防がれると思った攻撃は手加減してしまう。
そして……そんな一撃なら歯を食いしばれば耐えれない道理はない。
やれやれ、まったく嫌になるほど計算され尽くした罠だ。
馬鹿呼ばわりされていても戦闘に関しては天才的だな。
次いで自分の状態の確認を急ぐ。
ダメージは……立てない程ではない。
剣でガードしたとは言え直撃した脇腹が痛むが打撲程度だろう。
後は吹っ飛ばされた時にできた擦り傷。背中が多少痛むのは恐らく地面に強打したからだろう。
ゆらりと立ち上がると思ったよりダメージは小さい。
致命傷には至らなかったようだ。だが……。
こっちが致命的かなぁ。
どうにか離さずに持っていられた剣……いや、半分に折れたソレを剣と呼ぶのかも怪しい。
流石に折れた剣でカムイさんクラスの実力者に敵うとは思えない。
静まり帰った会場は、まるでオレのギブアップを待っているかのようだ。
ここまで戦ったんだ。今、敗けを認めても誰も攻めはしないだろう。
一応、手がない事もないが……。
ソレを使っても良いものか?そう考えて見たが、その思考すら霧散させてくれる叫びが耳に届く。
「リュートー!!」
試合中、一度、聞こえた声。静まり帰った今は余計にはっきりと聞こえた。
あぁ、そんな所に居たのか。
近くはないが、中庭を一望できる城のバルコニーにミナは居た。
彼処からなら試合もハッキリと見えただろう。
「リュート!本気で……戦え!!」
いや、さっきまでも本気だったんすけど。しかも剣は折れたし……。
「武器なら……あるでしょう!?使えっ!!」
「……っ!!」
彼女が何を言いたいかは、すぐにわかった。
と言うか、オレも戦い続けるならソレしかないと思っていた。
「リュート……勝って!!」
「はは、あはは。やれやれ、我が侭だな、うちの魔女は」
余りの身勝手っぷりに笑いが込み上げてくる。
しかし、それは嫌なものではなく心底楽しい。
使わないって言ったんだけどな。
「ほほう。今ので決めたつもりだったんだが、まだ手があるか?リュート殿」
カムイさんも意外そうに話かけてくる。しかし、その顔はまだある何かを期待してるように見える。
あぁ……こんな楽しい試合をここで終わらせるなんて勿体無い。
幸いにも魔女の許可も貰えた事だ。
「えぇ、一応、切札がまだ残っています」
「そうか。見てみたいものだ」
カムイさんがニヤリと笑う。
多分、オレも笑っているんだろう。
体は動く。カムイさんが重さではなく速さを重視した剣を使う人で良かった。
オレは両手を前に突き出し、この力を使う。
面倒な事になる気がするが、後で考える事にしよう。
「魔剣召還」
――風が吹いた気がした。
瞬時に黒と銀の剣がオレの手に握られる。
唖然とした観客の中で誰かが呟いた。
「魔剣……魔剣、アウル……!!」
「はは、驚いた。この世界に来て初めて聞かされた伝説に出てくる魔剣か!」
驚いたとか言ってるわりには心底楽しそうだ。
いや、カムイさんだけではない。
観客からも次々と声が上がり、ちょっとしたアウルコールが響いて来ている。
……別にアウル関係ないんだけどな、この剣。
確かに伝説の魔剣アウルと同系列の武器ではあるけど、これはミナがくれた物だ。
……よし。
スッと右手に剣を持ち掲げると会場は今までで一番、静まり帰る。
「この魔剣があるのは……魔女がオレを助けてくれたから」
観客とカムイさんが「何を言ってるんだ?」と不思議そうな顔をする。ミナだけは何か嫌な予感でもしてるのか警戒心を抱いているようだ。うん、正解。
「だから、オレはこの魔剣に、彼女の名を借りよう!」
魔剣アウルも能力者の名前を継いでいる。なら、オレの魔剣も彼女の名を貰ってもいいよな?
「ミヅキ!!魔剣、ミヅキと!!」
一呼吸。
観客がオレの言葉の意味を飲み込むのに掛かった時間だ。
―――ワアアアアアアア!!
「――、――!!――――!!」
中庭に鳴り響く大喝采。
それに紛れミナが何か言ってるが聞こえない。
とりあえず後で殴られるのだけは覚悟して置こう。
『ミヅキ!!ミヅキ!!ミヅキ!!ミヅキ!!ミヅキ!!ミヅキ!!ミヅキ!!』
先程、オレとカムイさんに送られた声援が全て『ミヅキ』になったかのような大声援で中庭は満たされる。
ミナは何か赤面して顔を伏せている。可愛い奴だ。
「さて、お待たせしました」
盛り上がりは最高潮。
決着には相応しい舞台だろう。
オレは目の前の敵に剣を構える。
「何、構わない。しかし、これ以上は楽しみで待てそうもないがな」
魔剣と聖盾。
互いに信じる武器はどちらがより優れているのか。
当然、オレはミナの剣が負けるだなんて微塵も思っていない。
「さぁ、第二ラウンド開始と行きましょうか」
長い上に、書ききれずに途中までになっておりますorz
文章を綺麗に纏める才能が欲しいっ。
中途半端なのでなるべく早く次話投稿できるようにしよう……。