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世界に蔓延る勇者達  作者: 霧助
一章 傷ついた少女
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四話 100と近衛騎士の模擬戦

四話目です。コメディメインで行くつもりですがコメディに入れるまでは少し時間がかかりそうです。


最初の方の話は短い期間で投稿していこうと思います。

どうぞ、よろしくお願いします。



正直に言おう。訳がわからない。

勇者召喚の儀が一年ほど前から行われてるのは、王国に住む者なら誰でも知っている。


だがしかし、オレはこの世界の住人だ。

異世界から呼ぶんじゃないの?これって。



『勇者よ。この会話は魔法を用いて私が貴方に送っている思念です。残念ながら私達の言葉は違う為、貴方の言葉は私にはわかりません……。しかし勇者よ、私達は貴方を理解したい。ですからまずは名前を教えて頂けませんか?』



目の前にいる美人が微笑む。

あぁ、頭に直接響くように聞こえると思ったら念話か、これ。



「セシア様、オレはリュートと申します。勇者ではなく……しがない商人ですが……」



『ありがとうございます、勇者リュート。しかし貴方の言葉は私達の知らない言葉なのです。大変だとは思いますがこれから王宮で言葉を学んで………て、え?』


「え?あれ……?言葉が……わかるのですか?」


「えっと、はい。南西のロファン地方に家を持つ商人です」



セシアと名乗った女性が固まる。

これまで99人の勇者を召喚してきてそれはもう色々あったんだろう。


打倒魔王に燃える者、帰りたいと言う者、口説いてくる者、信じない者……予想できるのは、こんな所か?つまり、どんな反応をされるかわからない。

その為、近衛騎士団を部屋に入れ召喚を行っていると聞いた事がある。


しかし歴史を紐解いてもこの世界の者を召喚した話なんて聞いた事がない。


「ですが、リュート!貴方のその灰色の髪はっ」


この世界の髪の色は基本的に白か金色である。オレの灰色は比較的珍しい。


しかし召喚された勇者は様々な色の髪をしている。

そして少ないがこの世界の住人でも例外的に違う髪を持つ人もいた。


「セシア様。そいつは、先祖返りなんです」


金色の鮮やかな髪の青年がセシアさんの傍に立つ。


昔、勇者の血が入った家系は希にその勇者の髪色の子供が生まれる事がある。

先祖返りを起こした赤ん坊は将来その勇者の力を引き継ぐ事が多い為、祝福される。


「我が騎士の家系の血を持つ……私の弟です、間違いありません」


近衛騎士団長を勤めるオレの兄、コガ。コガ兄さんが言えばセシアさんもオレが異世界の住人ではないと認めるしかなくなるだろう。


「そうですか……わかりました。下がりなさい、コガ団長」



自分とは違い騎士の礼節を重んじるコガ兄さんが場をわきまえず口を挟むのは珍しい。


「兄さん……さんきゅ」


セシアさんに一礼して下がろうとするコガにオレが言うとコガは満面の笑みでリュートの肩に手を置く。


「父上は怒っているが……母さんもオレも妹もお前には感謝してる。気にするな」



オレが商人になったのは家の再興の為である。


騎士の家系であるフェトム家は金銭に疎くどんどん借金を積み重ねていった。


それを返済したのがオレだ。

家名を捨てる事に抵抗はなかったが兄と妹と離れたのは少し寂しかった。




ま、妹はたまに父さんに内緒でオレの家族のとこにくるけどな。




ただ兄さんとは家を出て以来ロクに話していなかった。


忙しかったのもあるが騎士の道を閉ざした事により怒っているのではないかと怖かったと言うのもある。


「はは、ありがとう、兄さん。気になってた事が一つ解消されたよ」


ん?とよくわからない顔をして下がるコガ兄さん。回りを見ると騎士団もセシアもどうしたものかと首を傾げている。

ただ一人……第一王女レーナが不思議そうな顔をしていた。


「なぁ、セシア」



王女に呼ばれセシアさんは咄嗟に膝をつく。

オレも一応ゆっくりとだが膝をついておく。


自分は商人としての力はそこそこあるが相手は王族。


わざわざ無礼を働く理由はない。




白と言うよりは白銀というほうがしっくりとくる美しい長い髪。

まだ少女としての顔立ちが強いが将来は母親似の美人になる事が容易く予想できる。


「世界は数多くあるのだろう?たまたま今まで違う世界であっただけでこの世界から勇者が選定されてもおかしくないのではないか?」


この王女。可愛い顔してとんでもないこと言いやがる。オレはただの商人だ。


「しかしレーナ様、民を戦わせるわけには……」


「召喚された勇者とて人の子。私達と何の違いがある?」


いえ、あの、それは……と口ごもるセシアさん。

美人で仕事できそうに見えたがこの人想定外の事に弱いな。


「ふむ、コガよ。召喚された勇者には勇者特有の能力が付くのであったな?」


なんかすごく嫌な予感がする。何さ、能力って。

召喚される前とされた後で変わったトコなんてわからないんですが。


「よし、ならばリュート。近衛の一人と勝負をしてくれ」

「な、レーナ様!いくら勇者とはいえ行きなり近衛に勝てるはずありません!」


セシアさんがレーナ様に詰め寄る。



兄さんのほうを見てみたが余り気にしてないようだ。

まぁ、兄さんはオレの剣の腕はある程度知ってるもんな。



「リュートを追い詰め能力を見るだけだ。何もなければわからぬが能力さえあれば勇者だと言う証拠になるだろう?」
















結局セシアさんはレーナ様に言いくるめられオレは訓練所につれてこられた。

なんか流されてるなー、オレ。



オレの前には温和な笑みを浮かべた騎士が一人。

王女の命令故に逆らえはしないが本気でやるつもりもないようだ。

それも当然でよね。騎士の中でも王国最強である近衛騎士と商人では勝負になるはずがないし。


「災難だね。まぁ、剣の稽古くらいに思ってくれ」

「あはは、助かります」


わざわざ勝つ必要もない。適当にやるかー。等と考えているとレーナ様がまたとんでもない事を言い出す。


「よし、勝った方には私がハグをしてやろう」


一瞬固まる近衛騎士。というかオレ以外の全員。


「よし、リュート。命をかけてかかってこい」


ちょ、えええ!?


いきなり目の前の騎士から殺気が溢れ出す。先程までの温和な雰囲気などどこにもない。


向こうではセシアさんがレーナ様に、レーナ様!?何を言って……等と騒いでいる。



兄さんは頭を押さえている……あぁ、あの王女はいつもこうなのか。と納得するリュート。


「困惑する気持ちはわかる。しかし世界と言うのは理不尽なものなんだ」


悲しそうな顔をして語る近衛騎士。

お前そんなに王女の抱擁が欲しいか。


やる気……もとい殺る気満々で構えてる近衛騎士。


仕方ないからオレも刃を引いた模擬剣を構える。

目の前の近衛騎士とまったく同じ構えを。


「ほう、これは王宮剣術の構えだよ、見よう見まねにしては堂にいってるじゃないか」



目の前の近衛騎士の雰囲気が少し柔らかいものに戻る。

向こうでは兄さんがニヤニヤしてるのが見なくてもわかる。


王宮とは堅苦しい場所かと思っていたがどうにもそうでないようだ。


「よし、ではこの試合、この私、王女レーナが見届ける!」



どうやらセシアさんとのごたごたが終わったようだ。いや終わってない、まだ横で騒いでる!?スルースキル高いな王女……。



「双方存分に力を奮ってくれ!始めっ」



王女の合図と共に近衛騎士が距離を詰めてくる。


商人なんて警戒する必要もないって事かっ。


そのまま繰り出される突きを避ける。

近衛騎士の少し驚いた顔が心地いい。


近衛騎士がそのまま横に剣を薙いでくるが、それも避けると素早く剣を引いた。



ん……雰囲気が変わったな。ま、近衛騎士がこの程度って事もないだろう。



そして次の瞬間、近衛騎士の怒涛の連撃が打ち込まれてくる。


斬りからの払い。切り返して突き。薙ぎ払い袈裟に斬り振り上げ全力で振り下ろす。


しかしその全てを軽々と避ける。


普段から人以上の魔物や魔獸を相手に戦っているオレに幾ら近衛騎士と言えどそうそう当てれるものではない。


剣の腕だけで言うなら兄をも上回る自信がある。



うわー、本気で殺しにかかってきてるよ、この人。

ふぅ、適当にやってたら怪我するな。



仕方ない……とりあえず反撃の準備をしよう。


ただの振り下ろし。

しかしそれは近衛騎士と言えど軽々しく受け止めれる一撃ではない。



ガキィン!



訓練場に高い音が響く。


剣と剣が打ち合った音ではあったが近衛騎士は自分の剣を落としていた。


予想以上の成果に口元が思わず釣り上がる。



オレの王宮剣術は基礎こそ同じだが中身は我流が多くを締める。


人相手の技は魔物通じない事も多いからだ。


剣を打ち合い自分に有利な状況を作り上げて行く詰め将棋のような王宮剣術に対してオレの剣技は決して相手の攻撃に触れず一方的に強打を打ち込む。


魔獸クラスになると力では絶対に敵わない為、打ち合えないのだ。


慌てて距離をとった近衛騎士は一瞬迷ってようだが自身の最大の武器を使ってくる。


「炎よ、その力にて我が敵を討て!」


近衛騎士の手元に小さな火球が出現する。


近衛騎士は全員宮殿の加護を受け神聖魔法を行使する。

これこそが彼らを王国最強と言わせている武器である。



おいおい、マジかよ。ていうかマジでやってんじゃねーよ。


オレの鎧は魔力は通さないが防いだ後に拡散する熱まではどうにもできない。

その為、鎧で守られてない部分が焼かれてしまう。



仕方ない……本気で終わらせるか。



「悪いけど終わらせるよ。ファイアボール!」


近衛騎士の手元から火球が放たれる。

けど、慣れた物だ。何も魔法は人だけの物じゃない。


この程度の魔法、ウェアウルフでも使ってくるさ!


オレは体制を低くして飛び込み近衛騎士の魔法を掻い潜り間を高速で詰める。


「な、爆発しろ!」


後ろで先程の火球が爆発する。だがタイミングが遅い。

背中が多少焼けたがその程度だ。


「く、まだまだ!」


距離を詰められた近衛騎士は懐から短刀をとりだす……って、ちょっと待て。


おいおい、それ本物じゃねーか。

まぁ、大した問題ではない。


突き出される短刀を避け籠手を切り上げる。

鉄製の防具に守られてるとは言えど剣で殴打されればそうとうな痛みを伴う。

近衛騎士はあっさりと短刀を落とした。


後は簡単だ。

胸当てをおもいっきり蹴り転ばせて喉に剣を突き当てる。


魔獸を相手に戦う事に比べれば簡単すぎる戦いだった。


「ま、参った……」


近衛騎士から降参の声があがるが誰も動けない。


兄でさえも固まっている。

リュートの才は知っていたがまさかここまで強くなっているとは思わなかったのだ。

そんな中最初に動いたのはレーナ様だった。


「リュート!」


レーナ様はオレに駆け寄ると……思いきり抱きついてきた。


「おっと、レーナ様、これが賞品のハグですか?」


おどけて言うとレーナ様は満面の笑顔でオレに囁く。


「リュート相手にならいつでもしてやろう。なんだ?今の強さは!剣術は!最強を誇る王国近衛騎士が形無しではないか!」


非常に嬉しそうなレーナ様。

まぁ、オレとしても可愛い女の子にこう言って貰えるのは嬉しかった、が…


「伝説の勇者パーティーの魔剣士アウルを彷彿させる圧倒的な強さ……!リュートこそが真の勇者だ!今すぐ父上との謁見の準備をするから少し待っててくれ!」


レーナ様は勝手にまくし立てると嬉しそうに走り訓練場から出ていった。





「いや、オレはただの商人……どうしてこうなった!?」




一応5話までは書きあがってるので少し時間を置いて投稿していこうと思います。


メインヒロイン再登場まではペース維持したいなぁ…と思ってます。

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