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世界に蔓延る勇者達  作者: 霧助
二章 魔女の復活
33/131

三十三話 100と盛大なるパーティーと。

また更新少し遅れました…orz


気を抜くと3~4日とかすぐ過ぎますねぇ。


書くのは好きなんですが…。


「うわー、久しぶりに正装なんてしたな…」


前にちゃんとした恰好をしたのなんて商人になる前じゃなかろうか。


あの後、公爵に王宮まで連れてこられ、そこで無理矢理着替えさせられた。


パーティーなんて柄じゃねぇし、第二ラウンドが始まるかと思うと更に気が重い。


「ま、ここまで来た以上は後戻りなんてできねーか…」


パーティー会場のど真ん中。すでに人溢れる会場から開催前や直後にいなくなるなんて、あまりに礼儀に欠けている。

因みに中盤以降はよく会瀬に二人きりで抜け出す人も珍しくはない。


パーティーとは貴族達の仮初めの自由恋愛の場でもあるのだ。


「あの…もしやフェトム様ではありませんか…?」

「あ、いえ、オレはコガ隊長の弟でして…今は家名無しのリュートと申します」


リュートはいきなり身なりのよい女性に話かけられ兄と間違われたのではないかと判断した。

兄と自分は髪以外の顔立ちは似てると言えば似ている。

だが、リュートに話かけた女性は目を輝かせて喜んだ。


「まぁ!そうですか…今は家名無しなのですね。事情は存じませんが、それならリュート様とお呼びしてよろしいですか?」

「え、あの…ですから、自分はただの商人でして…」


リュートがどうにかわかって貰おうと説明するが女性はクスクス笑ってリュートに微笑みかける。


「コガ隊長とリュート様では髪の色がまったく違いますから見間違えませんよ。私は、リュート様とお話したかったのです」

「オレと?それはまた随分変わったご趣味で…いや、失礼」


リュートは失言とも言える無礼な言葉を使うけど、それでも女性は笑うばかり。


「あらあら。リュート様は御自身の事をよくわかってないご様子で」

「オレ自身を…?」


いいですか?と女性は人差し指を立てて説明を始める。


「凄腕の剣士でありながら多大な富を生み出す商人。元々は知る人ぞ知る希少物商だったリュート様ですが、王都に召喚された日から、この世界で生まれた勇者と話題にはなっていたんです。それが、つい先程、行方不明とされていた傾国の魔女を保護して絶対絶命と思われる千の魔獸軍との戦いを見事切り抜けての帰還。今やパーティーの話題は聖者を押し退けて剣王と魔女の新パーティー一色です!」


なんだかオレの知らないトコでとんでもない英雄譚ができあがってるらしい。


ミナと一緒に居たのは偶然だし魔獸の数も千にはほど遠い…。街を襲った魔獸の数をいれても半分くらいじゃないか?多分。


ミナではないが、民衆は本当に勇者が好きだなー。と思う。

とはいえ、自分がこの立場に立たなければオレも客とわいわい話していた事だろうけど。


目の前の女性は嬉しそうに剣王と魔女について語るがオレの耳には半分も入らない。

というか脚色され過ぎてて、どっかの物語を聞いてるかのような気分になってくる。


ま…一人でぼんやりしてるよりは楽しいか。


王女様はともかくとしてミナもリズの来ない。

構ってくれる人は貴重だろう。










どれくらい彼女と他愛ない話をしてただろうか?

その時間もやがて終わりを告げ薄暗い会場の一点に魔法による灯りが灯る。


自然と静かになる会場。

さきほどまでオレと話していた女性でさえ、うっとりと照らされたステージを見つめている。


幻想的とも言える光景の中、そこに立つのは国王と…六人の男女。


って、なんか見覚えがあるのが二人ほどいるんですけど。


3人は見たことが無い……けど、髪の色から察するに勇者だろう。

1人は久しぶりに見たけどレーナ様の弟シャルンだと思う。で、見たことある1人のレーナ様。


で、最後にやたら妖艶な雰囲気を醸し出す美少女。


白い刺繍で飾られた黒いドレスは彼女の髪や瞳の色と合わさっていつもの可愛らしさよりも美しさを前面に出し、その黒の中に映える刺繍が神秘的な雰囲気を感じさせる。


オレの知ってる彼女とは少し違うけど…ミナがそこに立っていた。


えーと、なんでミナが他の勇者と一緒にいるんだ?って、アイツも勇者か。

……あれ?オレは?


別に目立ちたいわけではないけど何故か自分だけ除け者にされててショックを受ける。


舞台上のミナは会場をきょろきょろと見渡している。見るからに興味津々といった様子だ。

王が開催の言葉なんて口にしてるが、この場の人は誰一人として聞いてはいない。

みんな今代の勇者達に夢中になっている。


「ところで、なんでリュート様は、あそこに並んでないのですか?」

「……さぁ?」


オレが聞きたい。まぁ、並びたくもないけど。


だけどその答えは意外な方向からとんできた。


「あそこに居る方は自分の希望で立っているんですもの。リュート様がいないのは当然ですわ」


聞き覚えのある声に振り向くとそこには金髪の美男美女が並んでいる。


「リズはあそこに立たなくていいのかい?それにアルフレッド、お久しぶりです」

「久しいな、リュート。今日は俺の我がままでリズと一緒に居られる事になってな」

「そういう事ですわ。私としてはミナさんやレーナ様とご一緒であれば前に立つのも面白いかとも思ったのですが」


リズの言葉にアルフレッドは肩を竦めて苦笑する。

彼はアルフレッド=アギス。

とある貴族の息子で…リズの婚約者。


まぁ、リズはあまり相手にせず、ふらふらと好き勝手やっているが…。


「たまにはアルフレッド様のお願いも聞かないとお父様に怒られてしましますから」


涼しい顔でそんな事を言う彼女。


「アルフレッド様も大変ですね…」

「いずれ、俺が彼女に見合う男になるさ」


昔のアルフレッドは典型的な下を見下す貴族の子で、父親も手を焼き、リズも嫌っていたが、今では大分更生し人の上に立つ人物としての器ができ始めている。


ま、リズはアルフレッドにもっと上を目指して貰いたがってるけどな……大変だなぁ、貴族も。


今の彼はリズに育てられたと言っても良いくらいだ。


「そんな事よりいいんですか?リュート様」

「ん、何がだ?」


少し心配そうな声でリズに訪ねられたので、聞き返してみたが彼女はオレの隣を見て視線を動かさない。


て、隣?


オレの隣には先程から話し相手になってくれてた女性が一人。どうやら貴族の中でもかなり上に位置する二人を前にして緊張してるらしい。

カチコチに固まっている。


「あぁ、彼女は……えっと、ここに来て話かけて来てくださって。リズとアルフレッド様を前にして緊張してるみたいだな」


隣の女性はハッとして頭を勢いよく下げる。ってか、名前を知らない事に今になって気がついた。


「いえ、リュート様。そうではなくて……」


リズの視線が女性からもっと遠くを見るものに変わる。その先にあるのは…王と勇者達の立つ舞台。


そして、恐らくはその中の一人。


「あー……えっと、怒ってるかな?あの子」

「多分、怒ってると思いますわ」


理由は多分、自分を無視して、知らない女性と仲良く喋ってるのを見つけた…とか、そんなんだろう。


舞台上の魔女は、こっちをおもいきり睨んでいた。


「はぁ……ちょっとミナを迎えに行ってくるよ。挨拶もそろそろ終わるだろうし」


あら、羨ましいですわ。と微笑み手を振ってくれたリズの横でアルフレッド様が凹んでいた。



「リズ……俺は必ずリュートに負けぬくらい強くなる」

「くすっ、強さだけではないのですよ?あの方の魅力は。でも……ゆっくり待っていますわ、アルフレッド様」












……なんだ、これ。


舞台の近くまで来たはいいけど、そこにあったのは人、人、人の人の山。


挨拶が終わった後、王族の回りに人が集まるのは、いつもの事だけど今日は多すぎる。


回りの人の声に耳を傾けてむると、聖者様恰好良い!これで頭も良ければ……。とか、ロザリーぃぃ!!だの、アウゼルが一番素敵よ。とか声が聞こえる。


名前は多分勇者のものだろう。


あー、なるほど。普段は散らばって異性のトコに行く人達が勇者目当てでここに足を運んできたワケか。

本当に勇者好きだなー、この世界。


良く見ると人が特に固まっている場所が幾つかある。

このどれかにミナもいるんだろう。


なんとか中心にいる人物を見ようとするが流石に人が多すぎる。

さて、どうしたものか……。


少し悩んでいたら少し遠くの集団から、美しい黒髪がどうこうと女性を口説く声が聞こえて…って、あれか?


勇者の中で黒髪は二人。うち一人は男だから口説いてるヤツが、ちょっと変わった趣味を持ってない限り、あそこにミナがいるんだろう。

オレはそう判断して人混みを掻き分け入って行く事にした。


「傾国の魔女と呼ばれるのも納得がいく……貴女の美しさは、国の上層部を篭落して思いまま操りかねない……」

「え、えっと……ありがと」


中心にはやたら身なりののいい男…多分、貴族。と普段より三割増しで美しい困っている少女がいた。


「随分、もてるな、ミナ」

「っ!?リュート、遅い!」


ミナはこっちにツカツカ音を立てて歩いて来て…オレの胸に軽くパンチして来た。


「そっちこそ…随分おもてになるんですね、剣王様?」


…恥ずかしいから流石に、その名前で呼ばないで欲しい。

ていうか、やっぱ怒ってんな。


「ミナ。ドレス似合ってる。綺麗だ…って、うお!?」


人が誉めてるのに最後まで言う前に素早く正拳が打ち込まれてきた。

一応、手で受け止めたがパスンッ!といつもと違い良い音が響く。


…モロに食らったら絶対に痛いぞ、これ。


「ははは、こんな人が沢山いるトコでいちゃつくのはどうかと思うぞ?」

「だ・れ・が、いちゃついてるって?」


冷や汗をかきながら軽く長そうと思ったら、やたら殺気を込めて怒られる。

回りからは、流石魔女!と歓声とも動揺ともとれる声が聞こえて来る。


まぁ、よく見ると頬が少し赤い。

多分、半分以上は照れてるんだろう。


オレも慣れたモンだなー、とか思いつつ彼女の手を取り引っ張る。とりあえず、この人混みからは抜け出したい。


「ほら、いくよ。ご飯はあっち」

「なっ!?いつも食べてるみたいな言い方するな!」


…わりとシャルの実とか食べてないか?


とりあえず彼女の発言は無視して引っ張る。彼女もそれに抵抗なんてしない。


ただ、ミナを口説いてた貴族が何か言ってるのだけは聞こえた。


「…この闇商人が」




「…リュート、今のは?」

「あー、気にしないでくれると助かる。たまにある事だ」


闇市を嫌う貴族は多いからなぁ。

面倒な事にならなきゃいいんだが。


「そっか…リュートがそういうならわかった」



「ありがと、ミナ。それと改めて…ドレス似合ってる。今日のミナはすごく綺麗だ」



さっきは途中で遮られたから改めて言ってみた。彼女はさっきよりわかりやすく顔を赤くして答える。




「…バカ。普段は綺麗じゃないみたいな言い方ね?」




オレは苦笑するしかなかった。


いつもはまだ綺麗ってより可愛いって感じだからなー。




パーティー(前編)です。


次回は後編になります。

少し区切り悪いかったかなぁ…。



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