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世界に蔓延る勇者達  作者: 霧助
二章 魔女の復活
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二十六話 王都の彼女達と+α

19話の最後から数日後の話です。

本編より少し進んだ時間のお話です。


今回あんまり本編には関係なかったりしますが良ければ読んでください。


リズ=ニーズヘッグ。私は、この国でも有数の権力を持つ家に生ました。

とても広いおうち。多くの従者。すごく美味しい食事。


そして優しいお父様。

私は人が望む多くのものを生まれながら持っていました。



でも、ただ一つ…友達がいなくて寂しかったのは今でもよく覚えています。



貴族という立場上仕方がない事なのかもしれませんが、社交界で会う貴族の付き合いではなく、遠慮して気を効かせてくれる王都の子供達ではなく…ただ、思いっきり遊んでくれる友達が欲しかった。


そんな中、私は当事流行っていた病に伏せました。

病といっても死に至るようなものではなく、1ヶ月ほど体温が下がり寒さに震える病気です。


ただ…お父様は私の事を大変愛してくださってて…お恥ずかしながら治療できた人に謝礼をお支払いすると御触れを出したんです。


とはいっても、この奇病は今でも治療方法はありませんから…当然、当事見つからなかったという事になります。


この病気はどうやら自分の魔力が何かの拍子に冷気を帯び、火の側だろうと室内だろうとまったく暖をとれない厄介なものでした。


寒さに震える事、一週間…次々試される治療方法にまったく効果は得れませんでした。

そんな時にお父様に見てほしいものがある。と一人の商人が訪れました。


灰色の髪に所々に傷のある服。

商人というよりは冒険者のほうが似合っている彼は私に小さな鉢植えを差し出さしてきました。


中に入っていたのは花ではなく赤い光を放つ不思議な苔…。


「……!!…暖かい」


一週間ぶりに感じる暖かさ…私は今まで我慢してきたのがくずれポロポロ泣いてしまいました。


「君…!これは一体なんなんだね!?」


後から聞いた話ですが、それは火山に住む魔獸の毛皮に付着してる溶岩苔というものらしいです。

常時魔力を持った熱を発するから魔力の冷気も暖める不思議な苔。


病気を治す方法ではありませんでしたが溶岩苔のお陰で私は残りの治るまでの間、暖かく過ごせました。


これがお父様と彼の…そして彼と私の出会い。



お父様が無言で使い込まれた手袋を差し出し来ました。

片方は焼け焦げていて着けていた人の手も無事ではないと思います。


「…遺体は見つからなかった。だが、周囲には夥しい数の魔獸の死体もあったし、馬の蹄の後も見つかってはいない。…絶望的だろう」


リズはニーズヘッグ公爵から手袋を受け取ると、その場に膝から崩れ彼の名前を呼び出す。


「リュート様…リュート様…!!」


五年前に初めて出会ってからお父様もリュート様を気に入って王都に来た時にはうちで一緒に食事をしたり遊だりしてくれました。



まだ小さなリズにとって彼が友達から初恋の人に変わるのにそう時間はかからなかった。

そして、それは今も…である。


「惜しい人を亡くした。彼は…素晴らしい商人で…私の友人だった」


公爵さえも助けれなかった事を悔しがるように俯いている。



リュート様…私はリュート様と結ばれる事はありませんが…それでも残り数年は甘えさせて欲しかったですわ…。


不思議と涙が出てこないのは…いつか、こんな時が来る覚悟していたからでしょうか…。


リュートの仕事は余りにも危険すぎる為にいつ死んでもおかしくない。

生きているのは単に運が良かっただけだ。



それでも…しばらくは立ち直れそうにありませんわね…。


リズが手袋を手に自分の寝室に戻ったのは、それからしばらく立ってからの事だった。
















「騎士の道を捨てた不祥の弟は…勇者としての道も進めなかったようです」


近衛騎士団長コガ=フェトム。彼は今私の前に片膝を付き父上に報告をしてる。

けど、何を言ってるかわからない。

いや、わかりたくないだけだ…。


リュートが…死んだ…?


「勇者として召喚されようと…やはりただの商人であったか」

「申し訳ありません」


父上とコガは何を言ってるんだろう。

私は初めて父上の言葉に腹が立った。


リュートがただの商人と言うなら、この国の近衛騎士はソレ以下ではないのか。


私だって長年、騎士を見てきたんだからリュートの剣がどれだけすごいものかはわかる。


父上は…治世は素晴らしいかもしれないけど人を見る目がない…。


初めて父上の至らぬ部分が目につく。


「父上、少し体調が優れないので失礼させて貰っても宜しいですか?」

「おぉ、レーナよ。大丈夫か?すまんな、コガよ。レーナを部屋まで送ってやってくれないか?」


…報告はどうしたのかしら?

まだまだ聞かなきゃいけない事は沢山あるはずだ。


魔獸の残党の予想、周囲の街の被害状況…父上は王都しか見えないのか…。


部屋を出て無駄にきらびやかな廊下を歩く。

レーナは少しイライラしてるのか早歩きで部屋に向かっていく。


「リュートは…素晴らしい剣士だったと…私は思います」


ふいに後ろに付き添ってたコガが口を開いた。

レーナは驚いて振り向く。


「アイツは確かに騎士ではありませんでした。その道は自分で捨てましたしね…。それでも…剣の腕だけはオレよりも上です。まぁ、戦闘となれば負ける気はありません。もっとも…今となってはそれもできなくなってしまいましたが…」


レーナはコガも王よりの考え方だと思っていたので、彼の発言には驚いていた。


「コガ。貴方は…弟の事をよくわかっているのですね」

「…ありがとうございます」

「私…彼の事、尊敬してました。いえ、尊敬してます」


死んだと言われて敬意がなくなるはずもない。


傾国の魔女が圧倒的な力を持つばかりに、他の勇者は頼りなく感じた。

でも、リュートは違った。最初は今までと同じかと思ったけど、いきなり近衛騎士を相手にさせられて冷静でいて…しかも勝った。


でも…その頼りになった勇者は二人共いない。


あと魔王を倒せそうな勇者は聖者カムイくらいのもの…。


「コガ。本当に…自分達の世界を勇者に任せちゃっていいのかしらね」

「伝統…ですからね。そうそう変える事はできますまい」


…リュートとも話してみたかった。商人の…王宮に関わりない人の意見も重要だろう。

他の人に聞いても本心を話して貰える訳はない。


「コガ、送ってくれてありがとう。貴方の事、少し見直したわ」

「いえ…それとレーナ様、これを…」


コガは布に包まれた物体をレーナに渡す。

レーナが首を傾げながら布を取ると中には美しい剣がくるまれていた。


ただし…それは中程で真っ二つに折れている。


「リュートが使ったいた剣です。…家の中に捨てられたように落ちてました」

「…私が貰ってもいいの?」

「…はい」

「ありがとう、コガ」


それだけ言うと私は部屋に戻った。

あまり長い間、顔を合わせるとまずい…。

私は王族。王族は…弱味を見せてはならない…。


「…リュート…なんで…ふ、ふぇ…ひっく…なんれ、しんらの…うぅ…」


外に漏れないように声を圧し殺して泣く。

たった二日間会っただけの相手の為に泣くとは思ってなかった。
















「王都も久しいな」


人が大勢集まる南門。それに紛れてとあるパーティーが広場へと入って行く。


「さぁ、まずは城に行って王女に会おうじゃないか!」

「このロリコンが!!」


元気良く叫ぶ馬鹿に赤髪の男が頭を思いっきりひっぱたく。


「何をするか、アウゼル」

「お前のロリコンっぷりは本当に危ねぇんだよ」

「ま、どうせ王宮には行かなきゃならないのですれど」


聖者カムイ率いる勇者パーティー。

彼らは魔王に負け一度王都に戻ってきたのだ。理由は簡単…。


強くなる為だ。


「ケーファー殿は強かった…。俺も剣の腕を磨きアウゼルも炎の扱い方をロザリーも格闘術を極めねば勝てまい!」


元々、侍であったカムイとは違いアウゼルやロザリーはこの世界に来てからの付け焼き刃。今まで能力任せで戦っていたが魔王にほとんど通用しなかったから、一度、鍛え直そうと結論が出た。


「え~と、カムイさん、私はどうしたらいいですか?」


勇者パーティーの一人。治癒術師の少女。

彼女は王都出身の為、実家に帰ったり友達と遊びたかったりする。


「貴女は昼間王宮で私達の手伝いをしてくだされば後は好きにしてよろしくてよ」

「なんでロザリーが答えてるか!?」

「とりあえず今日は疲れたし修行もしねぇ。家にでも帰って両親に顔を見せてきな。心配してるだろうしな」

「アウゼル!?」


本来リーダーであるカムイを無視して適当に進める二人。

少女も、ありがとうございます!!といって走っていった。


大事なとき以外、カムイがスルーされるのはよくあることである。


「ハァ…まぁ、泊まるトコもないし二人とも、早く王宮に行こうではないか」


気を取り直して話しかけたカムイだがそこに二人の姿はなく遥か先を仲良さそうに歩いていた。






彼女と彼女と彼等がリュートと会うのは翌日の事である。





リュート、ミナ。

リズ、レーナ。

カムイとその他が王都に集結しますがまだ少し先のお話です。


次話は旧鉱山が舞台のお話になります。

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