表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界に蔓延る勇者達  作者: 霧助
プロローグ
2/131

二話 1の一人旅のエンディング

最初からシリアスになってます…。



小さな村ならともかく街ともなればそこそこ多くの魔物に攻められたところで簡単に落とされはしない。


特に今回は「傾国の魔女」の異名を持つ勇者が近辺で魔王に決戦を挑む為に旅立ったばかりだ。


勇者が勝つにしろ負けるにしろ魔王がこの街に攻めてくる事も予想されていた。


勇者が勝ち逃げ込んできたならまだしも、勇者が負け、それでも攻めてきた時は街にとって死活問題である。


その為、万全の用意を持ち備えていた。



現に街にオークの大軍が現れたが門を閉じ自警団が足止めし矢を降らせオークを圧倒していた。




なのに……。



「何……これ……」



少女が急ぎ帰った場所は、すでに街ではなくなっている。




少女は知るよしもないが、自警団がオーク相手に奮闘してる頃、街の中はすでに血にまみれていた。


街を囲う壁を乗り越えられたか壁に穴が空いていたかはわからない。


街の中は多数のウェアウルフが走り住人を自らの食事に変え回っていた。



自警団がウェアウルフに気付くのは後方の弓手が襲われてからと余りにも遅すぎた。




前は人とは比べ物にならない力を持つオーク。


後ろは鋭い牙爪と圧倒的なスピードを持つウェアウルフに襲われ瞬く間に自警団は壊滅し街は廃虚に成り果てた。



少女が来てから数時間、日が沈んだ廃虚にある人影は少女のものだけになっている。












「雷、雷、飛べ!」


私は独自の詠唱を唱え目の前の敵を穿つ。


二つの雷は狙い通り狼を貫通していった。



「動きが早すぎる……!」


狼みたいな魔物、名前はなんだっけ。


さっきから何匹か倒してるけどまだ私を囲んでいるみたい。



普段ならこの程度なんてことないけど今はまずい。

魔力を使いすぎた…。無詠唱で打てばすぐに尽きるだろうし詠唱してたら発動が遅い。

一度に飛びかかられたら対応できない。


体力はあまりある方じゃないのに……さっきから走ってばかり……でも動きを止めたらやられるっ。


私は帰るんだ!元の世界にっ!


多分、私はそんなに幸せな人生を歩んではいない。

幼い頃、父さんが蒸発して後からわかった借金が家に残った。

中学生の頃、母さんは他の男をつくって出ていった。


毎月、最低限にも満たないお金が振り込まれてくる。

けど、このお金がなければ暮らしていけないのも本当。すごく情けない気分。


高校に入って必死に勉強してアルバイトもはじめた。


まともな生活ができるようになったし、成績も結構良い方。


大学にいって働いて、誰かを好きになって、そんな普通の幸せが欲しかった。



「なのに、なんなの!魔王を倒せとか……!」


誰に言うワケでもなく愚痴を漏らす。

こっちにきてからも弱音はなるべく吐かなかったのに大分疲れてるみたいだ。


走るのもそろそろ限界。

魔法なんて力は手に入れても体はただの高校生なんだ。



辺りを見回しても身を隠せそうな建物は何もない。

はとんどが半壊して住処としての役割を果たせない残骸ばかりだ。


それでも数十分もの間必死に駆け回り疲れはてた少女は、残骸のどこかに逃げ込むしかなかった。



少し遠いけど、あの大きな建物なら中に無事な場所、あるかもしれない……!



少女は僅かな希望にかけて元は劇場であった建物に走っていった。





「氷、巨槍、砕!行け!」



漢字…この世界ではなく元の世界の言語での詠唱。

魔法は魔力とイメージさえあれば発動する為、漢字での詠唱は従来の詠唱を早さで遥かに凌駕していた。



私が思い描いた通りに巨大な氷槍は砕けちりウェアウルフに襲いかかる。


広い街中では雷の魔法以外では捉えきれなかったが屋内ならば逃げ場所はない。





あと……何匹いるんだろう……。

魔力がなくなったら魔剣に頼るしかない……それでも私はこんなトコで死にたくない!


「ガルルルル……」


「ホント、きりがないわ……風、風……」


次々と通路にはウェアウルフが現れる。本当にもう、キリがない!


近付かれる前になるべく倒す!

数を減らして隠れて助けを待つしかない!


「切り裂け……きゃっ!?」


私が風の魔法を放とうとした瞬間、天井が崩れ落ち瓦礫と共に黒い影が襲いかかって来た。



「狼!?天井から来るなんて……!」


手元に黒い剣を召喚しウェアウルフの爪を受け止める。


「きゃぁ!痛っ……」




剣で防御したまではいい。

しかし少女の筋力では到底受け止める事はできるハズがなく私は吹っ飛ばされ壁に叩きつけられる。



「ガルルルル!」



痛みに意識を持っていかれそうになったが唸り声でそんな暇はないと気づく。



痛いっ。けど動かなきゃ食べられる!


「はぁぁ!」



飛びかかってきたウェアウルフの口に魔剣を突き立てるがガキン!と高い音がなり歯に防がれてしまう。

ウェアウルフはあまり力の強い魔獣ではないが、それでも少女に受け止めるだけの力はなく、あっさりと押し倒されてしまう。



「くっ……あああああ!!」


右足に激痛が走る。自分では見えないがウェアウルフに踏まれ爪が食い込んでいうんだろう。。

日本で暮らしてきた私には未知の痛み。

でも生き残りたいと思う気持ちは痛みをも超え空中に魔剣を数本召喚する。


「魔女だからって……迂闊に近寄らない事ね」


召喚した魔剣は重力に従いただ落下する。


「ギャン!」


落下先は私の真上。

細かいコントロールは効かないけど自分の上にくらいは制御できる。


必然、落下した剣は私に覆い被さっていたウェアウルフを貫いた。


もちろん自身も魔剣は貫いていたが自分の魔力で造られた剣は自分を傷つけない。



「いい加減……退きなさい!」


ウェアウルフの死体を左足で蹴飛ばす。

右足はほとんど動かない……。



……痛いはずよ。すごい血。



魔獣相手に接近された最大の危機は乗り切った。


けど、それこそが油断に繋がった。


気づくと目の前には拳大の火球が飛んできていた。


「きゃ……かはっ!」



熱い!喉が痛い……声が……でない……?


まずい、慌てて魔力をぶつけたから直撃は免れたけど喉をやられた……!?



さっき天井から襲われる少し前、風の魔法をウェアウルフに放とうとしていた。


そのウェアウルフ……最大の危機を乗り切ったとこで忘れていた。



通路の向こう側からはまだ口元に少し火を吹いたままのウェアウルフが走ってきている。


溜め時間が長い為、ウェアウルフは滅多に火球を吐かない。しかしその威力は侮れない。




声が出せなきゃ詠唱はできない…でも詠唱しなきゃ多分この一発で魔力は尽きる。

何もしなきゃやられるんだっ。まずは目の前の狼を倒す!吹き飛んで!



爆音とともにウェアウルフを吹き飛す。威力からしてまず動けないと思うけど……。


炎の高位魔法である爆発。さっき魔王が使ってたものを真似てみたがうまくいったかな。



もう……魔力空っぽ……。

痛いし熱い。

助け……来るかな?



「おい、こっちだぁ!すげー音がしたぞ!」


通路の角から男が現れる。

一瞬期待したがどうにもおかしい。


救助がくるには早すぎるし、その男の人の風貌は騎士には見えない。


「お、生き残りか?可愛いじゃねーか」


「おいおい、ロリコンか、テメー?ま、いい。ついでにコイツも持っていこう。」


次々と男達が現れる。

どう見ても盗賊の集団に見える。


後から知った事だけど事実、彼らは襲撃された街から物資を盗み出す火事場泥棒だった。


「犬避けの香が切れる前に逃げるぞ。そこの女には首輪をつけておけ」



リーダーらしき男の人が部下に首輪を投げ渡す。


その首輪には私も見覚えがある。非合法な奴隷達が付けられていたものだ……。


「ちょっとデカイ帽子取らせてもらうぜ。お?黒髪…お嬢ちゃん勇者の子孫か!こりゃ高く売れそうだ」



首輪を付けられた私は虚ろな思考で考える。



声……全然でないな……。右足の感覚もない……。


私……どうなるんだろう……。


声もでず歩けもしない。

そんな女の子の奴隷がどう扱われるかなんてあまり考えたくなかった。



怪我や疲労、それに緊張の糸が切れたことにより私は意識を手放した。最後に叶わなかった願いを思い出して。



誰かと一緒に……幸せになりたかったな。




次の話から本編の主人公100番目の勇者の話になります。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ