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世界に蔓延る勇者達  作者: 霧助
一章 傷ついた少女
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十八話 2人きりの戦い

今回、リュート視点、ミナ視点が何度か入れ替わります。


読みにくいかもしれませんが、ご容赦を…。

地平の向こうに数匹の狼の姿が見える。

ただし普通の狼ではない。全長が2Mほどもあり簡易的ながらも攻撃魔法を使う魔獸……ウェアウルフ。


「来たか……」


何事もなく時間が過ぎるのを期待したけど、やっぱりそうもいかないみたいだ。


オレは腰に腰からミスリル結晶剣を抜く。

普段は3本ほど持ち歩いているが、今回はできるだけ体を軽くする為に1本しかもってきていない。

代わりに家の至るところに武器を置いてきた。折れたら下がってそちらに持ち変えるから武器の心配はない。


「さて、まさか数匹って事もないだろうし……そろそろミナに作動させてもらうか」


オレは持ってきた魔具に魔力を通す。

さて、頼んだよ、ミナ。







私はリュートの部屋にいる。彼は家の真っ正面で魔獸を迎え撃つって言ってた。


私の事なんていいから逃げて欲しかったけど……流石に今からじゃ間に合わないんだろうなぁ。


他の人はもう逃げた後だ。

クロウさんはメリアさんを乗せて……ランディさんは本当は残りたかったみたいだけど、コレットを逃がさなきゃいけないから感情を殺してコレットを連れていった。


本当はリュートにも逃げてもらいたかったんだけどなぁ。


馬に乗れない私が逃げる方法は多分ない。

でも、ここに来て1ヶ月弱の間……私は十分幸せを感じれたから、他の人だけでも生きて欲しい。


……リュートが残ってくれて嬉しい自分がちょっとやだ。

だから残ってくれたリュートに応えよう。


私の持つ硝子の球体がポワッと緑色に光る。リュートからの戦闘開始の合図だ。

目の前には大きなモニター……さぁ、私の戦いを始めよう。







家には対魔獸用の仕掛けがいくつかある。

オレの持つ魔力感知器に魔力を通すとミナが持ってる硝子玉が発光してミナがそれを合図に稼働させる。


ドン!と何かが爆発するような音が聞こえて家を囲うように立ち上る炎の壁。

例外はオレの立つ正面のみ!


「いくら魔獸でも炎に突っ込むのは抵抗あんだろ?こいよ……一匹残らず叩き斬ってやる!」


ウェアウルフ供はすでに目と鼻の先。向こうもオレには気づいてるだろう。


後は真っ向勝負!


ミスリル結晶剣を構えてウェアウルフを待つ。炎の壁の途切れを守る以上オレから攻める選択肢はない。


お、一匹飛び出してきたな。


群れの中でもまだ若そうなウェアウルフ。魔獸は人を相手にする時、ナメてかかる傾向があるが、こいつもそんな思考を持ってるようだ。


好都合!


飛びかかってきたとこを避けもせずに叩き潰す。ミスリル結晶でできた剣は容易く胴体を切り裂き若い狼を地面に叩きつけた。


まずは一匹!


一息もつけぬまま襲撃は続く。次は二匹。タイミングを合わせて飛びかかって来たのを見ると狩には慣れてるようだ。


炎の壁の内側に入れる訳にはいかないから横に避けるという選択肢は取れない。

バックステップで距離をとりながら一匹を切り上げぶっ飛ばす。

そして着地と同時にもう一匹に思いきり剣を振り下ろす。


前者はキャイン!と悲鳴を上げ後者はそんは暇もなく絶滅した。



ハァ……ハァ……最初に斬った奴は仕留めそこなったか…。


しかし、もう一度飛びかかってくるだけの余裕はないだろう。

辺りを見渡すと他のウェアウルフも一応警戒してくれたようですぐには飛びかかってこない。


ありがたい……あんな調子で戦ってたんじゃ体力がもたねぇよ……。


狼供が様子見してくれてる間、ありがたく息を整えよう。







リュートから最初の合図があってから数十分、硝子玉が光らないのは戦闘が順調なんだと信じたい。

私にできるのはリュートの部屋で彼の合図を待つ事だけ…。


私を奴隷状態から助けてくれたリュートは今も私を守ってくれてる。

だからこそ気を抜かず硝子玉が光るのをジッと待つ。


来た……!赤い光!


赤は攻撃用のギミック。続いて緑色に光ったっていうことは炎の壁を抜けられたんだ。

モニターとパネルを操作して急いで庭に配置されてるトラップを起動。


私がどれだけちゃんとリュートの意図通りに動けるかでリュートの負担を減らせる……私が死ぬ前にリュートが死ぬ……。


次いで硝子玉は青く光る。


青、回復系……。

リュート怪我したのかな?


すごく心配だけどまずはパネルを操作してリュートが立っているだろう辺りにライフポーションを撒き散らす。


ただひたすら彼の無事を信じて。







「なっ、しまった!!」


再度始まったウェアウルフの猛攻。

次々と襲いかかってくる狼に思わず反射的に避けて壁の中への侵入を許してしまう。


ミナ……頼んだよ……!


探知機に通す魔力を調整、緑と赤に光るようにする。

一呼吸置いた後、庭の地面が爆発しウェアウルフはギャン!と鳴いて吹っ飛ぶ。


合図から発動までが早い……!それに簡易的な合図しか考えてる暇がなかったのに、こっちの意図をしっかり読んでくれている。


これなら安心して戦える……ありがとう。


心の中で自分を手助けしてくれる黒い髪の少女にお礼を言う。

前を見ると今度は四匹のウェアウルフが一斉に飛びかかってきてる、けど……。


「負ける気がしないな……」


力を込めて剣を横に薙払うと楽に三匹を切り裂いた。いずれも致命傷だろう。残りの一匹の爪を避けきれず脇腹を斬られたが大した傷じゃない。また飛びかかって来たから口の中に剣を突き立てる。


一匹一匹は大した事ないけど、これだけ数が多いと流石にきついなぁ……出し惜しみしてる余裕はないか。


青の光の合図を送るとすぐにライフポーションの雨が振ってきた。ミナの反応の早さに本当に感謝する。


少し傷に沁みるけど徐々に痛みは和らいで体力も戻ってきた。


「よし、まだまだいける!」


気合いを入れ直してウェアウルフと対峙する……けど、何かが変だ。


何がおかしい……?何か違和感がある……感覚!?まずい!


慌てて後ろに飛ぶとさっきまで自分のいた場所に数本の炎の矢が突き刺さった。

感じた違和感は魔法詠唱の時に生じる魔力の揺らぎ。

それに気づかなければ今頃上空からの狙撃で焼かれていただろう。


「ガー……ゴイル……」


空には5体ほどの黒い石像のような魔獸が飛んでいる。

その手には再び炎で作られた矢が出現し、オレ目掛けて飛んできた。


ファイアアロー……ガーゴイルがよく使う下級攻撃魔法だけど空から一方的に攻撃できるなら非常に効果的な魔法だ。


「魔獸同士が本当に手を組むなんて!」


ファイアアローを籠手で打ち消し、飛びかかってくるウェアウルフを一刀両断する。

竜毛で編まれた籠手は下級魔法程度は完全に打ち消す。


って言っても空と地上……いつまでも防ぎきれるものじゃないっ!


前から来る敵だけに集中してた先ほどまでと違い今は上からの攻撃にも気を払わなければならない。

例えダメージを防ぎ続けても、すごい勢いで体力を失ってしまう。


そしてオレにとってさらに状況は悪い方向に転がる。


「ガルルルル……ガアァッ!」

「な、後ろに!?」


急遽、後ろから襲っきたウェアウルフの牙を剣で受け止めた……が、そのまま牙に強く噛みつかれる。


やばいっ、幾らミスリル結晶とはいえ魔獸と真っ向で耐久勝負は……!?


慌てて剣を引き抜こうとするがもう遅かった。

ガリッ!と金属が砕ける音がした。


リュートにとって唯一の幸運は剣を咬み千切ったウェアウルフがミスリル結晶を飲み込んでしまい悶えていた事だろう。

半分ほどの長さになった結晶剣をウェアウルフに叩きつけると、ソイツは動かなくなった。


一連の動作を終え辺りを見回すと、そこには信じがたい光景が広がっていた。


なんで、こいつら……炎の壁を潜りぬけてるんだよ!?


別に炎の壁でウェアウルフを倒せるだなんて思っていない。けれど下位の魔獸なら間違いなく躊躇して飛び込み難いはずなのだ。


そして飛び込ませない為に隙間を作りそこを自分が守っていたのに……現にウェアウルフの一部は炎の壁の内側にいて、今でも炎の壁に飛び込み内側に入ってきてるウェアウルフもいる。

くっ、また魔力が練られてるっ。


ウェアウルフの動きに少し自失していた為に気づくのが遅れたが、上空から飛来してきたファイアアローをなんとか避けれた。


上空のガーゴイル……四方八方からウェアウルフ……流石にここで戦うのは無理か……。

仕方ない……。


魔力感知器に手を伸ばしてミナに合図を出す。







来た!……白い光!?


白は撤退の合図……なるべくなら外で食い止めたいって言ってたのに……。


さっきのライフポーション使用から時間はあまり立ってない。

それほどまでに状況は厳しいんだろう。


戸惑ってる暇はない、やれる事をやらなくちゃ!


ミナはパネルを操作して家の外の魔力核に炎の属性をつけて起動させる。さきほど庭で爆発したのと同じ物だ。ただし、数だけは違う。

家の回りに埋まっている数十個……それを一斉に爆発させた。これで少しは数が減らせただろう。






リュート……私も…戦いたいよ……。




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