十七話 100の決断。災厄の襲来。
今日中になんとか投稿できました…。
書き上げるのに非常に苦労しましたorz
最初からこの展開に持ってこうとはしてたのですが、どう文章にしていいものか…。
ぐだぐだかもしれませんが十七話、読んでやってください。
朝、顔を合わせるなりいきなり顔を赤くしたミナにポスンッと殴られた。
いや、痛くはないんだけど……普段ならミナの言いたい事はなんとなくわかるけど、殴ってくる時だけはわかんねぇっ。
昨日、触媒の指輪まであげたのに、なんか途中から目を合わせてくれなくなった。
一応、指輪はしてくれてるし、たまにポーッと見つめてるから気に入ってくれたんだと思う。
ちなみに触媒とは魔法使いが魔力の回復をする際の補助アイテムだ。
普通に休憩しても回復する量は微々たるものだけど触媒を身に付けて寝ると一般の攻撃魔法使いなら半分程度は回復する事ができる。
……つか、オレがミナにあげたのは竜の体内に埋まっていた宝石で作った物だから人間には過分な触媒だけど。
昔、とある事情から竜種と戦って勝ったんだが、その事はなるべく伏せて起きたいので売るに売れなかった宝石だ。竜の涙とも呼ばれる宝石は竜種が自身の触媒として体内で製造した物だから触媒としての効果は高い。
なんだかなー、と思いながら居間に降りるとランディが出掛ける準備をしていた。
「リュート……腹減った……」
どうやら本当にメリアにご飯を貰えなかったらしい。テーブルではミナとコレットが仲良く食事してると言うのに……。
ランディをスルーして朝食食べてるあたりミナもこの家に慣れてきたなー、なんて思う。
ランディからしたら洒落にならないけどランディだしなっ。
「はぁ、とりあえず行ってくるよ……雇って貰えるかどうかはわからないけどさ」
ランディとしても危険な仕事前にメリアが拗ねるのはなれたものだ。
「帰ってきたらご馳走を用意してくれてるさ、きっと」
「いつもの事だな」
二人で笑い合い玄関を出ると気持ちいいくらいの青空だった。
◆
「兄さん!」
ランディが馬に荷物をくくりつけてるとメリアが出てきて手に持った風呂敷をランディに押し付ける。
「……お腹減って負けたって言われても困るから」
「メリア……オレはなんていい妹を……!」
いい妹は兄の朝食を抜いたりしないんじゃないかと思うけど、ランディが感激してんのに水指すのも悪いな……。
「じゃ、行ってくるな!」
「絶対に帰ってきてね……。」
確かに危険な仕事だからメリアが心配するのもわかるんだけどなぁ。
ていうか、台所から出てこないと思ったら、弁当つくってたのか、甲斐甲斐しい。
「ほら、いつまでもランディの背中追ってないで家に入るぞー」
「あ、はい。あの……台所借りててもいいですか?」
多分、ランディをご馳走で迎える準備だろうなぁ…本当にいい兄妹だな。
「好きにしていいさ。明日買い出しに行こうな」
遠回しに冷蔵庫の中身全部使いなって事だが、ちゃんと理解してもらえたらしく喜んで台所に走っていった。
「身重なんだから、気をつけ……」
言ってる最中にガチャンと玄関のドアがしまりオレは取り残された。
聞いてよ!!
ま、そんな訳でメリアは台所に引きこもり。ミナとコレットは編み物。ランディは魔物退治とオレだけ暇になっちまったなぁ。
とりあえず、やる事もないし部屋のベッドでごろごろしてみる。
そういえば、ミナは魔法使えるのかな……。使えそうだよな、あの反応は。
使えるとして、どこまで?
触媒を持ってないって事はあまり回復しなくても今まで大丈夫だったって事だろうなー。
あまり期待はできないか。でも教えたら料理用の魔法くらいは使えそうだな。
ミナの飯はうまい。ちょっと楽しみになってきた。
ふむ、魔力を回復する薬でも作れれば自然回復はしないまでも魔法を使えるようになるんじゃないか?
マジックポーション……なんか偉い高かった気がするな。確か材料に高位魔獣の一部を使うんだっけ?
「ドラゴン……」
魔獣てか神獣って部類だけど保有魔力的には問題ないんじゃないだろうか。
そういえば、クロウって何してるんだ?あいつなら作れるかもなぁ……よし!
「クロウー!クロウー!!」
とりあえずどこにいるかわからないから叫びながら探し回ってみた。
◆
「恥ずかしいから大声で名前呼んで走らないでよ!!」
ちなみに、裏庭の薬草畑を弄ってたらしい。
「まぁまぁ、どうせ家族以外には聞こえやしないって」
「それでも恥ずかしいんだよ!」
てれ屋さんめ。普段から温厚な彼が怒るのも、まぁ珍しいんだけどさ。
まぁ、コイツはなんだかんだ言って優しい。
「はぁ。それでどうしたの?一応用があって呼んだんでしょう?」
溜息吐かなくてもいいじゃないか。
「いやな、マジックポーションを作れないかと思って……」
人が言ってる最中にまたクロウは溜息を吐く。
「はぁ、リュート……?マジックポーション自体は作るのは難しくないよ。でも材料が絶望的だよ?いいかい、まずは……」
つらつらと普通のライフポーションの材料があげられてく。ライフポーションはあれだ、飲む治癒術だと思えばいい。
治癒術は人体の回復能力を高める事で傷の治りを早くする事ができる。だから、自然治癒しない傷は治すことができない。ライフポーションも同じだ。
「まぁ、ここまでは簡単だよね。普通のライフポーションでも使われてるし。後は聖水と太陽ハーブ……これも貴重だけどあるけどさ……。最後の一つが絶望的だよ。魔力を多く持った生物の血」
「えっと……ドラゴンの鱗とかじゃ駄目?」
「鱗に血液は流れてないよ……ていうか、ドラゴン?どうしたんだい、それ」
「いや、前にちょっと倒してさ。じゃぁ、翼とか……?」
「また無駄使いしたんだね、リュート……。って、翼!?うん、それならいけるけど……いったい幾らしたんだよ」
また溜息をつかれる。いやいや、一応本当に倒したんですよ?数年前に。
二人で倉庫に言ってミナに渡した宝石があった場所をがさごそ漁る。
心なしかクロウの顔も弾んでいるように見えるな……。こいつ怪しい薬作ったり、希少なアイテムをいじるのが好きだからな……。
「すごい!リュートの倉庫は何度か見たけどこんなとこにドラゴンの部位があるだなんて……」
「高値つくけど売れにくいんだよなー、どうにも」
ちなみに、依頼で倒したんだが依頼主が欲しいのはドラゴンの角だけだった。普通ならドラゴン退治なんてまず引き受けないけど、たまたま山に巣を作って近隣の街を襲ってるドラゴンがいる話を聞いた後、竜種的に下位な種族であった為、大博打にでてみた。
まぁ、もう一度戦ったら死ぬ自信があるな。途中から折れたアダマンタイトソードで戦ってたし。
「一応、もって帰って来れそうなトコだけ持って帰ってきたんだが……ドラゴンなんてもの市に出して目立つのも嫌だしなぁ」
「その目立つ物を買ったのは君だよ……」
いや、だから倒したんだって!!
結局、クロウは信用してくれなかった。泣くぞ。
ま、マジックポーションはちゃんと作ってくれたからいっか……。
◆
ちくしょう…どうなってやがる!
俺達、傭兵が王国軍に掛け合うとすぐに雇って貰えた。西の街の冒険者も何人か来ているようだ。
人手不足……いや、王国軍の数は十分居たが、ソレ以上に敵を警戒していたんだろうな。
ここよりもっと南の街が魔王に滅ぼされた後だからな……。数は多いに越したことはないし傭兵連中が消耗した所で国にとっては痛くも痒くも無い。都合がいいんだろう。
だが、冒険者にも国にもオレにも誤算だったのは……魔物達が手を組んでいた事だ。
魔物が他種の魔物と手を組むだなんて聞いたことがない!
ウェアウルフに翻弄されオーク共の力に押され、空からはガーゴイルが魔法を放ってきているが、数で勝る王国軍は隊列を入れ替え、なんとか凌いでいた。
敵方に魔獣がいたのは報告にあったし、魔獣相手への対策も充実してる。だけど、それは単一種を相手にした時のみの話。複数種の魔獣を相手にする時の対策なんて……ない。
魔力を持って変化したとはいえ、ただの動物が他の種族と協力して狩りをするなんてありえないのだ。
「退却!!退却ーーー!!西の街まで下がれ!」
くそ!ついに撤退命令かよ!
……西の街の防衛施設を使って戦えば恐らく勝てるだろう。
でも、家はどうなる?
くそ!本当に来て良かった……!急いで帰って、みんなと逃げないと!
◆
夕食前、ミナにまた色々聞いているとコレットが怪我をしたランディを運んできた。クロウが慌ててライフポーションを持ってきて、メリアが手当てをする。
「ばか!ばか!!ばか、ばか!!」
メリアは半分錯乱気味だ。けど、見た感じ怪我は大したこと無いな……ちゃんとライフポーションを使えば明日には直るだろう。けど、今の問題はそこじゃない。
「ランディ……王国軍はどうした?一人なのか?」
様子が妙だ。怪我をして帰ってくるなら王国の付き添いくらいはあってもいい。
途中に野盗にでも教われない限り、一人で怪我をして帰ってくるなんて不自然すぎる。
「ハァ……。ちょっと落ちついた……ありがとな、クロウ。メリア、悪いちょっと話をさせてくれ」
ランディは今日の朝からあった事を語りだす。
王国軍に掛け合うとすぐに雇って貰えて他の傭兵達と進軍していた。
最初は数匹の魔物との散発的な戦闘。それから段々と増えてきてオークの大群と戦闘に入った。
優勢だったけど、気づいたらウェアウルフに囲まれて、密集しかけていた所を上空からガーゴイルに魔法を打たれた。
「王国軍は撤退を決意、西の街で迎撃をする……。ここも危ない。みんな、急いで逃げようっ」
魔獣が手を組むだなんて話は聞いたことがない……けど、ランディが言ってるんだから本当だろう。
よくわかってないコレットはともかくメリアとクロウは顔色を変えている。魔獣の大群……全部が来るわけではないだろうけど、ここに留まるのは危険だ。だけど、一つ問題がある……。
「ミナ……馬には乗れるか?」
ミナが馬で逃げる事を期待したけど残念ながら彼女は首を横に振る。
馬は三頭いる。けどコレットも馬には乗れない。馬に乗れるのは二人…。
オレが馬にのってミナを後ろに乗せるか?……駄目だ。腕だけでオレを掴んでるんじゃ無理がある。乗馬経験がないんじゃ、ミナの足じゃ馬の全力に振り落とされる確立が高すぎる。ゆっくり走ってる暇は……多分ない。
「クロウ、メリア。二人で馬にのって逃げてくれ。行き先は任せるけど、西の街は駄目だ。もう魔物が行ってる可能性が高い……クロウ、頼んだよ、二人を」
メリアとその子供……その二人の命を失うわけにはいかない。メリアが緊張から強張っているけど、クロウに任せるしかない。
クロウはしっかり頷いてくれた……次は……。
「ランディ、君も逃げてくれ」
「馬鹿言うな!お前残る気だろう……?オレだけ逃げろとか言うな、一緒に戦う!」
直情型で剣の腕が立つランディはこういう時、非常に頼りになる。だからこそ逃げてもらわなきゃいけない。
「コレットをどうする?彼女を連れて一緒に逃げてくれ。後、お前しかいないんだ」
ランディはハッとした表情でコレットを見た。心情的には残りたいんだろうけど、それにコレットを巻き込む訳にはいかない。
「ランディ、一緒にどこかにいくの?」
「コレット、君とランディでちょっとお出かけして貰うことになったんだ。ちょっと急ぐから気をつけてな?ランディの言う事をよく聞くんだぞ?」
「うん!」
コレットは元気よく返事してくれる。ランディもそれを見て悔しそうにしているけど、納得してくれた事だろう。
後は……。彼女だけだ。
「ミナ」
名前を呼ぶとすぐにこっちを見てくれる。彼女の表情は予想よりずっと穏やかだ。
多分……覚悟してくれてるんだろう。そして、オレはその覚悟に甘えなければいけない。
「ミナ、君は……この家に残ってもらう……ごめん、それしかないんだ」
驚いた様子もない。むしろ笑ってオレに頷いてくれた。
今まで一度も素直に笑ってくれた事なんてないのにな……。でも……。
「大丈夫、オレも一緒に残るから」
今度はミナの表情が驚愕に歪む。馬はまだ一頭ある。けど、彼女を残してなんていけない。
オレが戦えば……もしかしたら、王国か西の街かから助けが来るかもしれない。最後まで足掻いてやるっ。
彼女を見るとオレを睨んでいる。頭を撫でようと近づくと頬パンッ!ろ思いっきり叩かれた。
痛っ……普段殴ってきてるのより痛いぞ!
「逃げろってか?ミナを置いては逃げれないよ。でも、ごめんな。ミナと一緒に逃げれる手段が見つからないんだ」
ミナはオレの胸に顔を埋めて両手で叩いてくる。まったく態度と違って優しい子だ。
……まぁ、これくらいはしたって許されるよな?
オレは彼女を両手で抱きしめて耳元で囁く。
「大丈夫、ミナはオレが……守るから」
1章ラストスパートに差し掛かりつつあります。
無駄に展開早くなってますけど、ここからはさらに展開早くなっていくかもしれませぬorz
更新ペースを元に戻せるよう頑張ります。