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世界に蔓延る勇者達  作者: 霧助
一章 傷ついた少女
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十六話 1の心情と状況

今日は十六話のみの投稿となります。


明日も一応更新するつもりですが、どうなるか…。

穏やかな日々はゆっくり過ぎていく。あれからまた何日経ったかな。

お昼ご飯も食べ終わると私は庭に出て、すでに日課になっている編物をしていた。


少し向こうでは、リュートとランディさんが剣の稽古をしていた。

リュートの強さは酒場で少し見ただけだったけど、改めて見るとすごい。

多分私が城で戦った近衛騎士さんより強いんじゃないかと思う。


ランディさんも強いけど、彼曰く、ずっと稽古をつけて貰ってて対策がわかっているだけらしい。

それでもランディさんが勝った所は見たことない。


手数では圧倒的にランディさんが勝っているけど、リュートが模擬剣を一振りするだけでバランスを崩す。受け止めればいいのに、と思ったけど魔獸相手に通用するリュートの剣撃を受け止めるのは普通の剣士では無理みたい。

だから避ける事しかできず、そのうち避けきれないで吹っ飛ぶ。


あ、また吹っ飛ばされてる。痛そうだよね……あれ。


ちなみにリュートがランディさんの剣に当たった所は見たことがない。一応数えるほどはあるらしいけど、私はリュートが剣で防御したとこすら知らない。

全部軽々しく避けてる。


地面に転がってるランディさんにコレットが駆け寄りお水を渡す。彼は立ち上がってお水を受け取るとグイッと飲み干すとリュートに向かって叫んだ。


「お前、ミナの前だと張り切りすぎだろ!居ない時より数段動きがいいぞ!」


軽く1Mくらいは飛んだと思ったけど……ランディさん頑丈だなぁ……て、私?


「ミナにはオレの恰好いいとこ見て欲しいからな」


とか、リュートはリュートで言ってる。

自分の鼓動が少し高まるのがわかるけど、リュートにそんな状態にさせられるのが気にくわない。


一緒に宿屋に泊まった日から意識してるのは認めるけど、誰がコイツになんか惚れるか!


訓練が終わって隣に座ってきたリュートをポスンと殴る。

私の力くらいじゃあまり痛くなさそうだし、ただの憂さ晴らしだ。


「ミナ、昼のスープが飲みたい」


リュートが背筋を伸ばしながらそんな事を言ってくる。

今日のお昼は私が初めて一人で作ったものだ。

リュートは食事中もすごく美味しそうに食べてくれたし、そんな事を言われて嬉しくないはずがない。


わざとちょっと面倒くさそうにして立つけどリュートに手を引かれ台所に向かう私の心は間違いなく弾んでいた。


手袋越しに握られる感触も大分慣れたな。

少し前にリュートが手袋外したトコを見たことあるけど……すごく傷だらけでゴツゴツしてた。

剣術の鍛錬の結果だって言ってたけど、どれだけ剣を振れば、ああなるのか、想像できない。


少し考えこんでたら頭の上にぽふっと何が乗せられた。

……リュートが人の頭に手をのっけてる。なんかまたニヤニヤしてるしっ。


髪には気を使ってるんだ、乱れる!


頭を動かして頭の上の手を落とすけどリュートはまた笑顔。

……なんか、また気を使われたのがわかってムカつく。


私はぷいっとそっぽを向いて、そのまま台所に一緒にいく。

……それでも一緒に行くんだな、私。

なんか凹んだ。



お昼に作ったスープをそそぐとリュートがテーブルに持って行ってくれた。

食事を作ることはできても運ぶのは難しいから有難い。


本当は夜の分まで作ったつもりだったけど、意外に好評でもう残り少ない。

特にリュート。何杯飲んだのよ……嬉しいけど。


中途半端に余ってるから私も食べよう。


「ミナの料理ってなんていうか……珍しいよな」


テーブルでスープを飲んでるといきなりリュートがそんな事を言い出した。


……確かにこの世界にはない方法で料理してるけど。

漬物や乾物がないのはまだしも、煮るって概念がないのは驚いた。

この世界のスープはお湯に具を投げ入れて味をつけたものでしかない。

野菜を小さく切って塩湖沼で味付けした後にリュートに貰った常時数百度の熱を帯びた石で煮立てた簡単なスープが大好評だったほどだ。

とはいえ、元の世界にない料理もあるんだけど……。

魔法を使ってお肉や魚の中の部分だけしっかり焼く技法……外はレア、中はウェルダンで旨味がまったく逃げてなくて美味しかった。


世界の違いって大きいなぁ、やっぱり。


お水に入れておいてもずっと発熱したままの石とかあるし。


「そう言えば、ミナは魔法まったく使えないのか?」


む……一応魔法は使える。ただ、よくわからないけど魔力が回復しない……どうなんだろう、これ。


「もしかして魔力が空っぽ?」


……リュートはなんで、こうも私の言いたいことわかってくれるんだろう。嬉しいけど表情には出さずに頷く。


「もしかしてミナ……奴隷の首輪の効果を知らないのか?」


……なにそれ。私がずっとしてるこの首輪?


リュート曰く、この首輪はどこの奴隷商が売ったかの印らしい。ハンスさんじゃなくて、その前の誘拐集団の事かな。

で、その印の他にも……魔力が回復しなくなる機能があるらしい。

魔法そのものが使えなくなるのもあるけど、高価な為、ほとんどは回復の阻害。

奴隷として扱おうにも戦闘魔法の使える魔法使いは油断ならない。だから魔法使いとしての能力を制限する為の機能だってリュートは言ってる。


「首輪を外したら魔法は使えるようになるよ。はずすには奴隷商人に納金するのが一番だ」


どんな仕掛けがあるかわからないからな。ってリュートは言う。


そっか……私、魔法はまだ使えるんだ……。

今までは戦ってばかりだったけど自衛にも生活にも役に立ちそうだから嬉しい。


少しだけリュートと一緒に仕事できるかもと思ったけど、やっぱり足がネックになるだろう。声は……リュートとなら、なくても大丈夫な気がするけど。


「そういえば、ミナ。触媒は?」


……人がいろいろ考えてるのにリュートはまた私の知らない単語を出す。


「いや、睨むな。流石に魔法使えるなら触媒はわかるだろ?ミナが触媒持ってるの見たことないなーって思ってさ」


少し前まで魔王よりも魔法使えてたけどわかりません。

なんだよー、どうせ常識もわからずに飛び出したわよ……。


私はとりあえず首を横に振っとく。


「そっか。んー、倉庫になんか触媒あったかなー。ま、あっても首輪があったら意味ないんだけどさ」


結局、触媒とやらの説明はして貰えなかった。

ちなみに首輪を外すには金貨20枚くらいが相場らしい。

今、手元にあるのはあれからさらに一角獸の毛糸で編んだマフラーを5つ売った分…銀貨250枚くらい。

新しい毛糸が欲しいけどリュートが、「ちょっと待ってろ」とか言って、買わせてくれない。


銀貨は100枚で金貨1枚……遠いなぁ……。


リュートが貸しとくか?って言ってくれたけど私は頷かない。

だって私の体を気にして言ってくれてるから。

私はリュートに普通の女の子として扱って貰いたいんだ。

……手、引いて貰えるのは嬉しいけど。事実、一人じゃ歩きにくいし。

コホンっ……まぁ、他の家族と同じ扱いしてほしいの!


一通り話し終わるとリュートは、ちょっと倉庫にいってくる。といって三階に上っていった。

もう、こんな時間だし、私も夕食の準備をしよう。今日は夕食も私が一人で作る事になってる。


台所に来るまでは一苦労だけど、台所自体は狭いしつかまる場所も沢山あるから料理は辛くない。

昼はスープと炒め物だったから夜はシチューと……なんか、パンみたいな物にする。

似たような食べ物はいっぱいあるけど、微妙に違うから困る。パンにしてはすごくぱさぱさしてるし……まぁ、だからシチューには合うんじゃないかな。


メリアさんが料理上手だから少し気後れするけど、この世界にない煮込み料理なら私も自信を持って出せる。

全部、それっぽい材料を使ってるからできあがりはちょっと不安だけど……。

あぁ、でも醤油だけは真似できる物が無い……すごく醤油が欲しい……。


そんな事を考えつつ料理を作っていると時間はあっという間に過ぎていった。





「うめえええええ!!ミナの料理って本当にメリアと同じ材料使ってるのかって思うなっ」

「あはは、兄さん、ご飯抜きにするわよ?」


ランディさんのリアクションは大げさで楽しい。メリアさんのご飯もすごくおいしいけど……多分、食べなれちゃってるんだろう。


「お姉ちゃん、今度私にも料理教えて欲しい!」

「あぁ、コレット。メリアの代わりに俺に飯を作ってくれ!!」

「コレットが包丁を持つのはまだまだ危ないんじゃないかなー。僕は心配だよ」


食卓は賑やかだ。だけど……リュートがいない。まだ倉庫で探し物してて先に食べてて欲しいそうだ。

せっかく美味しくできたのに冷めるぞ、ばか。


「あぁ。そういえば後でリュートにも言っとくけど、俺、明日遅くなっかもしれねぇ」


不意にランディさんがそんな事を言う。あぁ、メリアさんが心配そうな目をしてる……やっぱりアレなのかな?


「南の方で魔物が結構出たらしくてなぁ。魔獣を見たって報告も上がってるみたいだし、王都で討伐隊を組むんだんだってさ」


それが明日来るから合流して傭兵として志願してくるそうだ。ランディさんは傭兵や魔物退治でお金を稼いでいるらしい。

ま、心配いらないさ。王国兵士と一緒だし雇ってくれるかどうかもわからないからな!なんて気楽にいってるけど、そのたびにメリアさんは心配してるんだろう。

クロウさんも真剣な顔で話を聞いてる。この家で一番優しい人だからな、彼は。


「ふぃー、見つかった、見つかった。ミナ、お待たせ」


そしてやっとリュートが降りて来た。彼のシチューを見るとまだ湯気がたっていて私は少し安心する。

シチューを口に運びながらリュートは、ミナは本当にお肉好きだな。と笑う。

作ったのはビーフ……かどうかはわからないけど、似たお肉を使った似非ビーフシチュー。

悪いかっ、1年くらいずっとパスタ食べてたから美味しくて仕方ないのよ!



「ミナ、おかわりっ」


って、リュート、食べるの早い!ていうか、夜は余分に作ってないからないっ!

ぺしぺしと隣に座るリュートの頭を叩く。


「そっか、残念。うまかったのに」


……なんで、リュートは私の言いたい事がわかるのか本当に不思議だ。

リュートは今度はパンを食べている。アレも一応私がやり方を教えてもらって焼いたものだ。

どうにかして、もう少しふわふわにできないかな……。


「そだ、ミナ。これあげるよ」


リュートが私に何かを手渡す。それは……リュートの髪と同じ灰色の宝石の指輪だった。


「オレが駆け出しの頃に見つけた触媒だよ。首輪取らない限りは意味がないけど一応着けとけ」


だから、触媒って何!

私の視線に答えずにリュートはもうランディさんとさっきの魔獣退治の話をしていた…。




……て、指輪を着けろって言った!?



ほのぼのほのぼの…異世界召還物としてこれでいいのだろうかorz


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