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世界に蔓延る勇者達  作者: 霧助
一章 傷ついた少女
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十五話 1は感じる穏やかな生活

今日ギリギリの投稿です。

日付で言えば三話投稿になってますけど十三話は個人的には昨日の分なので今日投稿してみました。


ミナ視点のお話になります。

私が……新しい家に来て1週間ほど立った。

みんな良い人だし、ご飯は美味しいし、すごく穏やかな日々……リュートは少しむかつくけど。

一番お世話になってるのに、なんでだろう。リュートが来るとつい睨む。良い人だってのはわかってるけど、一番最初の印象が多分良くないんだ。お金で私を買った最低な人だって思ってたもんなぁ……今は感謝してるけど。


「お姉ちゃん、これでいいの?」


コレットの手を見ると小さな編みかけのマフラーがある。少し歪だけど最初はこんなものだと思う。


そうそう、私に仕事が見つかった。リュートが仕入れたけど売れてないアイテム……珍しい物ばかりだけど値段も張るから売れない事が結構あるそうだ。それを保管してる倉庫にふわふわした糸を見つけたのだ。リュートが言うには一角獣の皮を作る時についでに余る毛を紡いだ物らしい。皮は売れたけど、この糸は耐久力も低くて売れにくいみたい。

それなら、私が欲しいとお願いした時に、笑って、いいよ。って言ってくれた。言葉を喋れないのは大変だけど、リュートは私の言いたい事をよくわかってくれるから、あまり不便はない。


それで、その糸は私の世界にあった毛糸そのものだったのだ。適当に編み棒っぽいものを作ってマフラーを編んでリュートにプレゼントした。今まで貰ってばかりだったから少しでもお返しがしたかったんだけど……リュートは予想以上に驚いて喜んでくれた。


それで、これを市場に出してみてはどうか?と私に言ったんだ。

私がリュートにマフラーを渡してから3日後、新しくできたマフラーをクレアさんとランディさんが街にもっていって雑貨店に交渉してくれたらしい。

帰ってきたランディさんは私に銀貨を50枚ほど渡してくれた。びっくりした。

この世界では編み物って概念がないらしい。雑貨店に持って行って交渉していたら、その場に居たお客さんが即決で55銀貨で買ってくれたそうだ。4銀貨は店主の取り分で1銀貨は街までの移動費用。それで残りは私の取り分……正直、ちょっと多すぎる。


リュートに貰った毛糸はまだまだあるし無くなったら他から買っても良い。

ちなみに、リュート曰く、私にくれた毛糸全部で1金貨くらいだそうだ。うん、マフラーを売ってお金ができたらちゃんと払おう。

セーターとかも編みたいけど機械無しで編むのはどれくらいかかるかちょっとわからないから保留。


そして、今はコレットにも編み物を教えてる。

元の世界でお金があまりなかったから覚えた事だけど、こんなとこで役に立つとは予想外だった。


コレットは可愛い。そして、まだ小学生を卒業したであろうくらいの年齢なのにすごく賢い。

多分、この家でリュートの次に私に気を使ってくれてる。……この年でこんな生き方を覚えるなんて、その前の生活をちょっと想像したくはないけど。

彼女も多分、辛い目にあってきたんだと思う……。


コレットの頭を撫でると、えへへ。と笑いかけてきてくれる。私も思わず笑う。

あぁ、こんなに素直に笑ったのは何年ぶりだろう。


この世界に来てから…それどころかお父さんが蒸発してからこれだけ穏やかな気持ちになった事はない。

少しずつ…自分の中の帰りたいって気持ちが薄れてるのがわかる。


はぁ、本当にここの家族になってのんびり暮らすのも悪くないかなぁ……。







「ん?ミナ、ちょっと待ってろ」


階段を降りているとリュートが駆け寄って私の手を取ってくれる。階段を降りるのは一人じゃ大変だから、嬉しい。

けど、私は相変わらず素直になれないワケで……手を取ってくれるリュートを上目遣いで睨んでしまう。


「はいはい、危ないから我慢してくれ。ほら、ゆっくり降りるぞ」


いつも笑って私の態度を流してくれるリュート……。家族として受け入れられてるって事だろうし、すごく助かるけど、なんだろう。少し寂しい。

一階に行くとクレアさんが大きい鞄を持って、こっちを睨んでくる。


うっ……この人、他の人といる時は優しいんだけど、リュートと居る時、特にこうやって手を引いて貰ってる時に冷たいんだよね……。


多分、リュートが好きなんだろう。


「ミナ。クレアは本来、西にある街に住んでてね。今日帰るんだよ」

「リュート。弱みに付け込んで、その子に手を出したりしたら……」


そんな事したことねぇだろ!ってリュートは言ってる。まぁ、そこは安心してる。できる立場にいるのに二人きりで同じ部屋に泊まった時も何もなかったし。


「クレアお姉ちゃん、もう帰っちゃうの?」

「うん、お仕事もあるからね。体には気をつけるのよ。コレット」


コレットが階段を駆け下りてくる。手には編み掛けのマフラー。何かわからない事があったのかな?

私も最初に編み物を覚えようとした時は結構時間がかかった。案の定コレットはクレアさんに、いってらっしゃい。と笑顔で言った後、こっちに駆け寄ってくる。


「えっとね、ミナお姉ちゃん……これ……」


ごめんなさい、と差し出されたマフラーを見ると編んでる途中で絡まっちゃったみたい。まぁ、これくらいならすぐ直せるかな。

コレットから編み棒を受けとって毛糸を解いて行く。これくらいの失敗するのは普通だけど、コレットはすごく申し訳なさそうな顔をして私をみてる。

あー、こういう時に喋れないのは少し不便だなぁ。本当は大丈夫だよ、っていってあげたい。


だから、私は代わりになるべく笑ってコレットの頭を撫でる。


「えへへ……ミナお姉ちゃん、ありがとう!」


うん、良かった。コレットが笑ってくれた。

彼女は多分、この家族のムードメーカー…精神的に大きく家族を支えているんだろう。

私は解き終わったマフラーをコレットに渡すと、ありがとう!と眩しいくらいの笑顔を見せてくれて階段を駆け上がっていった。

また私の部屋で編み物の続きかな?


「ミナ、私が居ない間リュートを見張っておいてね?変な事されそうになったらぶっ飛ばしていいからね?」


クレアさんが私の耳元で囁く。それだけ言うと彼女は、じゃ、またね。と言って扉を開いていった。

見送りとかしなくていいのかな?と思ったけど、西の街まで馬を使えば1時間くらいだって聞いたし、会おうと思えばすぐ会えるんだろう。

私も部屋に戻ってコレットの様子を見よう。自分の分も作らなくちゃいけないし。


……戻る時、リュートは当然といった顔で私の手を引いてくれた。





部屋に戻るとコレットがマフラーをもってくる。

うんうん、4分の1くらいの長さにはなったのかな?この子は覚えるのも本当に早い。

編み目も段々丁寧になってきてるし、すぐに街に持ってけるレベルになるんじゃないかな。

コレットに大丈夫だよ。と頷くと彼女はまた編み編みしだす。私も自分の分を編もう。


自分の部屋を見渡すとほとんど何も無いことがわかる。

流石にちょっと寂しいし許されるなら欲しい物もある。こんな自分でも仕事ができるのが……ちょっと嬉しい。

高校入ってすぐにアルバイトを始めたから働くのにはちょっと慣れてるしね。


今編んでるマフラーは素材がリュートから貰った最高の物だから、かなりの値段がつくんだと思う。

普通の毛糸を使ったらどのくらいの値段がつくのかなーなんて考える。


それに編む技術が広まったらそれこそ仕事になんてならないかな。

うーん、他のお仕事も考えないとなぁ……。移動はできないし、声がでないから一人でできる仕事……あるのかな?


ちょっと困った。まぁ、食べさせてはくれるらしいし、少しずつでも稼げば一応暮らしていけはするんだろうけど……。

リュートの手伝いとか……できないのかな?ううん、ちょっと前の私ならともかく今の私じゃ足手まといになるだけだ。


まぁ、今考えても仕方ない。とりあえず編み物で少しお金を貯めよう。

リュートから貰った毛糸で……後、5~6個くらいは多分編める。

全部銀貨50枚として……金貨4枚くらい?ちなみに銀貨100枚で金貨1枚。

20金貨くらいで平均の年収くらいだから結構な値段になるかな。6個なら2~3週間で編めるだろう。急げば1日1個だけど、食事の料理くらいは手伝いたい。


これでも、一人暮らしだったから料理には多少自身ある。今はメリアさんと一緒に料理してるけど、彼女は子供生まれるらしいし、そうなったら私が一人で作ってもいいかもしれない。

それまでに、この世界の料理法をある程度覚えなくちゃ。


メリアさんとの料理はお互い知ってる料理方法を教えあって作るため、とても楽しい。

この世界は下手に魔法が普及してるから、干したり漬けたりして保存するってことがあまりない事には驚いた。


氷の魔法で冷凍保存で簡単に持ち運びできるからなぁ。

冷凍魔法くらいなら誰でも使えるほどに、魔法というのも珍しい存在ではない。

攻撃魔法や神聖魔法になると難易度が上がるらしいけど、凍らせる焼くなどの行為は時間さえかければ簡単にできる……らしい。


私はこの世界にきてすぐに魔法を使えたからその辺はよくわからなかったりするけど。

お城の人たちは未だに私の能力を異常な魔力量だと思ってるらしい。


あまりもの出来事に激怒してお城に穴を開けて飛び出したことを思い出す。

見つかったら怒られる程度じゃすまないんじゃないかな……私。


リュートも勇者らしいし、そのうちまたお城の人たちと会う機会もあるかもしれない。


はぁ……。




でも……一週間前、リュートに買われる前よりはだいぶ落ち着いていられる。

こんなに穏やかな生活ができるなんて本当に嬉しい。


編み物して料理してコレットと一緒に遊んで…元の世界で私が求めてた生活に限りなく近いものがここにはある。


コレットの頭を撫でると彼女は微笑んでくれる。私もいつか誰かと結婚して子供を生んで、こうやってのんびり過ごすのかな。


未来、誰かと一緒に暮らして手を引かれて一緒に歩く姿を想像する。

その想像の相手が、リュートで……私はちょっと落ち込んだ。


リュート以外に信用できる人なんて知らないから仕方ないけど、なんだかなぁ……。



異世界召還物で日常生活ってどうなんだろう?と思いますが次の展開まで少しほのぼのした内容になると思います。


今回説明文みたいな感じで長いし読みづらかったでしょうか…orz

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