表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界に蔓延る勇者達  作者: 霧助
それから先のちょっとしたお話
130/131

神に見放された世界

不死の王との戦争が終わって数年がたった。


不死であるオレの体は、あの時と変わらず、身体的な年齢は相方である魔女と並んでいた。

成長した彼女は背丈こそ、ほとんど変わらなかったが体のラインは更に引き締まり顔付きも鋭く、その美貌は増すばかり。というか、少し怖くなりました。本人に言うと殴られるけど。


余談だが、ルーシーは子供を授かったらしい。当然、ケーファーのだ。

他の家族も元気にしているが、それぞれの事情で暮らす場所は、別々になってしまった。

クレアは相変わらず街で働いているが、今はコレットが一緒に暮らしている。ランディは傭兵稼業で王国中を飛び回り、たまにクレアの家に帰っている。

メリアは子を産み、クロウと一緒に、今も小さな村にいる。が、以前とは比べ物にならない活気があるとか。


他にも色々な世界を回ったり、こっそり王都に潜入した時にリズに泣かれたり色々あったが、それを語るのは又の機会にしよう。

これ以上は、ミナに怒


「リュート!?ちょ、え、何、ボーっとしてるの!?信じられない!!」


怒られた。

まぁ、彼女の怒りも尤もだ。何せ今は、高い天井を埋め尽くさんばかりに沸く神の軍勢と戦っているところなのだから。


その世界に信仰心などなく、溢れんばかりの好奇心は、世界を駆け回り、そして遂に辿りついてしまった。

禁断に触れられた神は、見守る事を辞め、世界を滅ぼす。

人同士であれば、平和に暮らしていた世界は、神との戦争になったのだ。いや、戦争というのも、おごがましい。

神の軍勢の力は圧倒的であり、神域……その場に辿りついたのは、異世界の住人であるオレとミナの二人しかいなかったのだから。


「厄介ね。流石、神のホームグラウンドと言うべきかしら?でも、世界を滅ぼそうだなんて……勝手過ぎるのよ!」


人の主張と共にミナは叫ぶ。

その手の魔力は、多岐に渡る異世界から、集められ収束し、彼女の意思を汲み指向性を持つ。


「イグドラシル!!」


神樹の名を付けられた魔法は彼女を中心に樹の根の様に歪な氷柱を伸ばし触れる物、全てを凍結させながら広範囲に渡り広がる全方位魔法。

しかし、神の軍勢すら容易く砕く、その魔法は本来の範囲に拡散しきる前に、その根が消滅した。


それを見た魔女は小さく舌打ちをし、オレと背合わせに立ち天井を見上げる。


聖殿の広間の様な空間で敵対しているのは、白と黒の二対の翼を持ち槍か剣を構えた甲冑の戦士。その数は数十だが、今も増え続け三桁に上るのも近いだろう。

空間にノイズが走るたびに天の軍勢は増え、その処理がだんだんと間に合わなくなって行く。

一体一体の強さは然程でもなく、オレとミナがやられる事は、そうそうないだろう。いざとなれば別の世界に逃げる事も出来る。


だが、この世界の人を見捨てるには……多少、世話になりすぎた。


本来なら、この程度の相手と数なら、成長したミナの敵ではない。しかし、この神域という場所が問題なのだ。

この場所は、居るだけで相手の魔力を食らう。

ミナの範囲魔法が、その効果を発揮しきれないのは、それが原因だ。

放った魔力は、急速に力を失い消滅する。その為、下級魔法は使えない。


そもそも、この場に立っているのが、たった二人なのも、それが原因だ。

幾多の異世界から魔力供給を受け無尽蔵の魔力を持つ彼女と、その彼女と魔力を共有出来る同調状態のオレしか天の軍勢とは戦えない。


「っ……!数が多すぎる!」

「こいつらが、外に出るのも時間の問題だな」

「……リュート。ストックを使うわ。この世界のお陰で不死の王を解く鍵が見つかったかもしれないのに、恩知らずじゃいられない」

「了解。ちなみに、何個あったっけ?」

「後、十」


十。

それは、彼女が使える最強の魔法を撃てる回数を意味する。

その魔法を使うには、ちょっとした前準備が必須で、それには、多くの魔力を消費する為、そうそう気軽に撃てるものでなかった。

うん、過去形だ。

今の無尽蔵の魔力を持つミナなら、わりと気軽に撃てる。


「召還!おいで、多鏡世界」


彼女が手をかかげ、別の世界を、その場に呼ぶ。

それは、全てが彼女の魔力で作られた本来なら存在しない世界。


そして、空間が重なる。今までと変わらぬ神殿のような風景と、彼女が作った世界の空と草原の風景が、半透明な膜を被せられた様に。

その光景に満足した魔女は左手に魔力の塊である黒球。右手を上に掲げ漆黒の魔剣を持ち、振り下ろす。


「剥離、傾国の魔法!!」


彼女の言葉のとおり、重なった世界は剥離する。

だが、同時に天の軍勢は、向こう側の世界へと連れ去られ、オレとミナの二人だけが神域に残る。

今頃、向こうの世界は天の軍勢諸共、消滅しているだろう。


不死の王を相手にミナが使った傾国の魔法は、その形を変え、今も彼女の最強魔法として君臨している。

事前に異世界を作り、彼女がいる空間と重ね召還する。そして、魔力の圧縮を開始し、世界を斬るのと同時に剥離し、彼女が指定したモノのみを攫い消滅する。


正直、使われたら、オレもどうしていいかわからない魔法になってる。


だが、傾国の魔法で一時的に全て消滅した天の軍勢も、またノイズと共に新しく湧き出す。

最初の一匹を魔法剣ミヅキで貫き、二匹目をレーザーカノンが焼くが、その間に別に3体湧き出している。

数の暴力も、ここまでくれば大したものだ。


「さて、どうしようか」

「……封印するしかないのかな、これ」

「だが、封印も魔法だ。この空間じゃすぐに破られる」


魔力を吸収する空間。伝承によれば、この空間そのものが神らしい。

これが無ければやりようは、いくらでもあるのだ。


「リュート」


不意に名前を呼ばれ、後ろから暖かい感覚に包まれる。

彼女が両腕でオレを軽く抱きしめ、笑いながら、とんでもない事を言い出す。


「私が、しばらく封印しとくから、なんとかする方法見つけてきて。同調すれば、リュートは何でも出来る。頼りにしてるから、お願いね?」

「な、馬鹿!それくらいなら、この世界を見捨てたって……」


元々は、この世界の自業自得だ。

知らなかった事であり、悪ではないと思うが、それでも、彼らの行動の結果には変わりない。

だけど、彼女はオレの口に人差し指をあて諭す様に続ける。


「私も、この世界の為に死ぬ気なんてないわよ。でも、この世界の知識は貴重よ。秘術に関しての文献は、もっと詳しく見て見たい。ついでに、この世界の人を助けるのも嫌じゃない。大丈夫よ、時間ごと止めるから、リュートが魔剣で解除してくれたら、私にとっては一瞬の出来事よ」

「……オレはどうなるんだよ」

「リュートだって、私を置き去りにしたじゃないの」


ミナは頬を膨らませ抗議の視線で刺してくる。

不死の王との戦いは未だに根に持っているらしい。


「どうせ、リュートには無限の時間があるし、私にとっては一瞬の出来事。だから、ちょっとお願いね」


そう言い、魔女がオレの返事も待たず無骨な門を開く。その向こう側に広がる景色は見慣れた……けれど懐かしいオレの実家が見える。

彼女に軽く押され、よたよたと、門に近づく。


「行って、リュート!何年後でも何十年後でも何百年後でも待ってるから!」


その声援に押される様に、門へと近づく。

最後の彼女が、その手に極大の魔力を抱え、空間そのものを負温度で凍結していた。その魔力は異世界から彼女へ、彼女から魔法へと供給され半永久的に途切れる事のない神すら封じる凍結魔法。

その圧力が開放され、オレは強制的に後ろへ歩まされ、門は破壊された。

魔剣を使い同調状態になれば、オレはいつでも、あの世界へと戻れるだろう。しかし、それは出来ない。

神の軍勢をどうにかする方法を見つけ出すまでは……。


「……惚れた女一人、守れないのか。オレは!!」


地面に乱暴に魔剣を叩きつける。

余りにも突然の別れに頭がついてこない。

かつて、オレに置いてかれたミナも、こんな気持ちだったのだろうか。


ここからオレとミナの長い長い別れの時間が――――――


「……やっほー、リュート」


はじまらなかった。


「……は?」

「貴方のミヅキ・ミナです。うん、ちょっと、実際、リュートが、ああいう所見せてくれるのは嬉しいもんだね、てれてれ」


口で変な擬音を出しながら頬を掻きながら赤くなっているミナが浮いていた。


「え、いや、だって……は?」

「うんうん、混乱するのもわかるよ。私も予想外だもん」


うまく言葉が紡げず混乱するオレとは対照的にミナは訳知り顔だ。どうやら、ある程度、状況を理解しているらしい。


「すまん、説明を頼む」

「はいはい。言っとくけど私も予測だからね?」


彼女曰く、今のミナは冷凍されていて仮死状態らしい。

魔法による蘇生魔法と再生魔法が掛けられていて、オレが凍結封印を解除する際に意識を取り戻す予定だったのだが、又しても魔剣が原因らしい。


思い出してみると、以前にも、オレたちは、この状態を知っている。


アウルだ。


彼は死後、魔剣そのものとなり、ナギに憑いて現代まで、その自我を保っていた。

それと同じ事がミナにも起きて、つまり彼女は今はオレに憑いている状態な訳で……更に言えば本体が異世界で氷漬けな以上、オレの傍にいる魔剣ミナがダメージを負う事は、恐らくアウルと同じで年をとる事もない。

その存在を消滅させるには、オレを殺すしかないが、オレは不老不死。つまり、彼女も不老不死。


「また、魔女がとんでもない存在に……」

「そろそろ、私が魔王を名乗ってみようかしら?」


こうして、不死の王との戦争以来、特に目的もなく、なんとなく不死の王の解き方を探していたオレ達は神域を潰す為の戦いを始める事になり、それには一年くらいの時間がかかった。


……にも関わらずミナは、また自分を封印し魔剣ミナとして、しばらく――――と、言うにも長い長い時間、オレと一緒にいた。


「不死の王を解く手掛かり探してたのに、まさか私が不死になるとは思わなかったけど、これはこれでいいわね」


ちなみに、魔力に余裕さえあれば、実体化も出来るとかなんとか。

PCがぶっ壊れて携帯のメアドが古いものを使っていたせいでログイン出来なくなったり

そんな事が色々ありましたが、なんとか復帰できました。

久しぶりの更新だ……。


恋愛物であるライファーフェイスもそろそろあげようかと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ