表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界に蔓延る勇者達  作者: 霧助
五章 天に住まう者
107/131

百七話 不死の王の実験教室

今回、非常に短いです。

前の話と合わせておけば良かったと思うくらいです、ごめんなさいorz

「ふむ」


小さな魔剣アウルの破片に黒い炎を浴びせながら不死の王はつまらなさそうに呟いた。

大急ぎで城に戻ってきて、魔剣アウルの破片を引っ張り出して、凡ゆる魔法を投げつけて見たが、無効化するだけで、まるで成果はない。


「こんな事ならば、アイツの使っていた魔剣を持ち帰ってくるべきだったか。いや、魔剣は確か所有者の意思で自在に出し入れできるのか。ならば、アイツを魔人にすれば……」


大きな城の中、その中では、さほど大きくはない部屋の中で呟く不死の王の姿は一見して不気味ではあったが、その姿こそが、彼の本来の姿だ。

これで、何度目になるかもわからない、凍結の魔法を魔剣にあびせる、その目には諦めなど微塵も浮かんではいない。

実験とは、成果の無い事の積み重ねであり、極僅かな変化を拾い組み合わせて行くものである以上、同じ事の繰り返しでも、気づけなかった差異があるかもしれないのだ。

凍結の魔法は放射される冷気である為に、魔剣に触れたからといって、根本の魔法から消える事はないが、十分な時間放射し、破片に触っても、まったく冷えておらず魔法の影響を受けてない事がわかる。


元々は、飛び込んできた勇者の一人の魔剣が自分に効果が無かった事から、その原因が気になり、こうして実験を繰り返している訳なのだが、全ての魔法は、いとも簡単に無効化されており、原因は、あの魔剣そのものにあるのではないかと疑ってしまう程だ。


不死の王は煮詰まった思考を解す為に一度、魔剣から離れ備え付けられている小さな椅子に座り上を向き目を閉じる。

そして、魔剣に貫かれる少し前の出来事から整理する。


まずは、過去の勇者アウルとの戦闘。

アウルの状態も気になるが、隣に居た巫女カンナギは恐らくはヒーリングで自身の老いを止めているのだろう。

単純な回復との併用は恐らくは不可能である為に、回復している時は老化はしているハズだ。これは、彼女が数千年前より少しだけ大人びているからこそわかる憶測……だが、これは恐らく関係ない。


次いで現れたのは横倒しになった光の柱。

魔法攻撃かとも思ったが、不死の王本人ですら、あの威力の魔法を練り上げる事は不可能……だが、それより強力な魔法使いがいないとも限らなければ、勇者の能力という可能性もある。

わざわざ気に止める程の事はないだろう。


そして、三頭を持つ犬の魔獣のなんて事のない魔法攻撃から数瞬遅れて現れた……灰色の男。

本来なら、あの程度の間隙なら対応はできたが、光の柱が余りにも印象的だったのと、不死身だという驕りの御陰であっさりと心臓を貫かれた。

そして、その瞬間確かに死んだ……のだが、文字通り生き返った。しかも、壊れていた心臓も再生された最高の形で、だ。


「いや、何故、俺は一度死んだんだ?」


そうだ。まず、死ぬ事がありえないのだ。

何故なら今の不死の王には本来の不死身の能力の他にもネクロマンサーである勇者の能力が掛かっている。

死ぬ事がなくなり、体が機能している限りは動き続けて居られる能力の御陰で不死の王は動けるようになったのだから、剣で貫かれた程度で死ぬということはありえない。

ならば、何故死んだか?単純に考えるなら、魔剣が無効化した為だろう。


では、何故、不死身の能力は無効化されなかった?

魔剣アウルでは確実に不死身の能力は無効化され、不死の王は殺された。


「そうか……試してみるか」


不死の王は再び椅子を立ち、魔剣の破片の前へと立つ。


「余り出力を上げすぎては氷が溶けてしまうな……」


そう言い右手から触れても火傷程度の軽傷で済みそうな熱風を魔剣に浴びせるが、熱風の中、魔剣の持つ熱はまったく上がらず、不死の王の魔法の効果が何もない事を示している。

そして、熱風を浴びせたまま、左手に短剣を模した氷柱を出現させ、それを魔剣に投げつける。


キーンッ―――――――!!


と、甲高い音を立てて魔法で出来た氷柱は魔剣アウルの破片を事も無げに弾き飛ばす。


「くくく、ははは―――――ハッハッハッハッハ!!なるほど!そういう事か!!」


長い間、気づく者のいなかった魔剣の特性を知り、不死の王が抑えきれず高く笑う姿は絵に書いたような狂科学者であり、悪役の見本とも言うべき姿だった。

その声を聞き女性の魔人が扉を開く。


「王、実験は終わったのですか?」

「あぁ、たった今わかった。魔剣は、どうやら同時に二つ以上の魔法を無効化できないらしい。つまり、だ。あの男の魔剣が俺を貫いた時に、操り人形の魔法は無効化された。そこで心臓の壊された俺は一時的に死んだが、新しく壊された心臓は不死身の能力で再生し、生き返った訳だ。しかし、勇者の能力は無効化されても、無くなる訳ではない。俺の体から魔剣を引き抜かれた時点でネクロマンサーの能力は再び効果を発揮する」

「はい。ええと……王が死ぬ事がなくなった、という事でいいのでしょうか」

「くくく、その通りだ。今の俺には、すでに魔剣という天敵はなくなった」


ヨミは、王の説明に付いていく事はできなかったが、再び王が死ぬ事はないと聞き歓喜の声をあげる。

不死の王の天敵として存在した魔剣は、裏切り者の勇者の力によって不死の王相手には効かなくなった。


そして、実験の終わった不死の王は再び人間側に侵攻を開始する。

その戦いには、四天王と呼ばれる魔人と不死の王こそ現れなかったが、戦いは徐々に双方に取って存在の大きな物になっていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ