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世界に蔓延る勇者達  作者: 霧助
プロローグ
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一話 1と魔王の決戦

初投稿なんで至らぬ所、多々あると思いますが楽しんで頂けたら幸いです。


最初二話まではプロローグ的な物になります。

「まったく……厄介な剣だなぁ」


黒い翼を持った少年が困ったように呟く。

その視線の先には黒い剣と黒い髪を持つ少女がいた。


「そもそも何故、君達……異世界から召喚された勇者かい?なんで勇者達は僕らを狙うんだい?僕らは別に人間に危害を加えちゃいないさ」


黒い翼の少年は困ったように尋ねる。

自分は魔王と呼ばれる存在ではあるが、進んで人に危害を加えたことはない。


魔物の多くは人を襲うが自分が指示したワケでもないし、彼等の上に立っているわけでもない。


ただ単に…強いから魔王と呼ばれるだけだ。


「そう……。そんなのはどうでもいいの。ただアンタを倒せば私たちは元の世界へ帰れるのよ」


少女は冷めた声で話す。


「別に元の世界がそんなに恋しいワケでもないけどさ……いきなりこんなトコに呼ばれて敵を倒せ。なんて言われても困るのよ。だから、アンタを倒して帰るの!」


言い終えるのと同時に少女の手から黒い剣が消え、代わりに数多の氷の槍が出現する。


少女がこれまで頼ってきた最大の武器である魔法。

少女は誰よりも多い自分の魔力を誰よりもうまく使う事ができた。


「まったく……詠唱も無しによくもそんなっ……!」


魔王はその翼を広げ高く跳躍する。


「逃がさないっ!」


氷槍は魔王の跳躍より一瞬遅く着弾したものの新しい槍が次々産み出され、マシンガンのように空にいる魔王へと打ち出される。

魔王とて翼を羽ばたかせ高速で軌道をかえるが全ては避けきれなかった。


「痛っ……だが……やられっぱなしってわけにもいかないのさ!」


魔力では少女は魔王を上回るが、魔法での戦いとなれば経験の差が出る。


「火竜の咆哮よ、打ち貫け!」


となれば少女に大きな魔力を使う時間を与えず小さな魔法では防げない攻撃をすればいい。


「……っ!」


魔王の放った魔法は、まるで閃光のように瞬く間に氷槍を薙払い少女を襲う。


「避けても防御しても巻き起こる熱風からは逃げれないさ!少し痛いかもしれないが、降りかかる火の粉くらいは払わせて貰う!」


魔王は以前にも勇者を名乗る者達に襲撃される事はあったが、皆、この魔法により撃退された。

直撃しなければ殺すほどの威力はないが、熱風に巻き込まれるだけでも戦闘続行は難しい為、魔王も好んで使っていた。


しかし少女は変わらず冷たい声でささやく。


「うるさいな……この程度で」


少女が片手を振り上げると、そこには先ほど消えた黒い剣がまた握られていた。


「嘘だろう……」


魔王は目の前で起こった事を信じられずにいた。


自分の放った魔法は黒い剣に斬られた瞬間、消滅した。


「やれやれ……どこまで厄介な剣なんだよ」


黒い剣に魔法を消されたのは始めてではない。むしろ、これまで放った魔法のほとんどは消されていた。


しかし、それはなんらかの力による相殺だと思ったがどうやら違うらしい。


自分の魔法は熱風すら起こさず消滅したのだから。


「幾ら攻撃しても無駄なのよ。だからさ……諦めて」


少女の武器が魔法ならば、黒い剣は武器の形をとってこそいるが、それは何にも勝る盾であった。


魔法を連発している為、少女の消耗は激しいものの、それは魔王とて同じ。

しかし、少女は全て魔王の攻撃は消滅させ、魔王は決して少ないとは言えないダメージを負っていた。



(やばいなぁ……このままじゃジリ貧だ……)


この分では恐らく本気で殺すつもりで打った魔法も消滅させられるだろう。


「ケーファー!やっとみつけた!」


さて、どうするか……次の手を考えていると頭上から慌てた声が聞こえた。


「ルーシー!」


少女と魔王が上を見上げるとそこには魔王とは正反対の色の翼を持つ少女がいた。


「ケーファー!大変だよ!早く逃げるよ!」

「逃げるのは賛成だが、そんなに慌ててどうしたんだ……って熱ぃ!?」


ケーファーと呼ばれた魔王とルーシーと呼ばれた…どうみても天使の少女が話していると魔王に火球がぶちあたる。


「ちょっと!アナタ、ケーファーに何をするの!」


火球をぶつけた犯人にルーシーが怒鳴るが、犯人である少女はまったく動じない。


「逃がすワケないでしょ。私はソイツを殺して帰るの」


少女の冷たい声に逆にルーシーが怯んだ。


「ケーファー。この人怖い……」


涙目になりながら少女を見つめるルーシー。


「あー……うん。僕も怖い。殺されかけてるし。反則的な物もってるし……」


ケーファーとしては命掛けの為、本気で怖い。

しかしルーシーがいるなら逃げるのは簡単な為、安堵していた。


「ん……そういえばルーシー。逃げるってどうしたんだい?」


「そうだよ!逃げるよ、ケーファー!ここで大暴れしてるせいで魔獣の大群が興奮して突っ込んできてるんだよ!」


言うが早いかルーシーが手をかざすと光のゲートが現れケーファーを引っ張り込む。


「魔獣か……また厄介な……。勇者!君も逃げるんだ!魔獣は僕らと違って知性がない。問答無用で襲われるよ!」


「もう、ケーファー!自分の命を狙ってきた相手なんて放っておいていくの!」


二人のやりとりを見て暫し唖然としていた少女だが、いよいよ逃げる二人を見て怒りが込み上げてくる。


「そもそも私は逃げる事を許可なんてしていない……!」


火や氷では間に合わない。風でさえ怪しい。恐らくはゲートを潜られたら逃げられる!


少女の両手から発せられたのは雷。

光の魔法の次に早い雷撃はゲートを潜ろうとする二人をとてつもない早さで強襲する。


「下がって、ケーファー。」


先にケーファーをゲートに押し込め前に出たルーシーを雷は貫き、トラックが衝突したような轟音が耳をつんざく…が、ルーシーは平気な顔でケーファーをゲートに押し込め終わる。


「……っ!?効いてないの……?」


今度ばかりは少女が驚きの声をあげるが、ルーシーからしたらさも当然の事だ。


「空に住む天使に雷が効くわけないでしょ!バイバイ。今度ケーファーをいじめたら許さないんだから!」


「ちょっと、待ちなさ……あぁ、もうっ」


ルーシーは言いたいことだけ言うと少女には目もくれずゲートに消えて行った。

少女は追いかけようかとも思ったが、ゲートがそのまま存在してるはずもなく消え去るのを見て諦めた。



(……帰るチャンスだったのにな)


あの天使が一緒にいる時はすぐに逃げられるだろう。

自分は絶好の好機を逃がしたのかもしれない。


(ま……帰っても待ってる人なんかいないか)


暗いことを考え少し泣きそうになる。




駄目、泣いてる場合じゃない。

二人の会話が確かならここには魔獣が押し寄せてくる。


普段ならいざしらず、最近は魔王に会うために無茶をしすぎた。

そのうえ、魔王との戦闘でも魔法を乱発している。


今、魔獣の大群と戦うのは分が悪い。



「南に街があったはず。そこまで急がなきゃ」



今は自分の決めた目標。


元の世界に帰る為に少女は走り出す。





誤字脱字あれば指摘して頂けたら嬉しいです。



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