表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/20

生徒会

「私が、生徒会に……?」


「そうだ。そろそろ生徒会選挙の時期だろう?そこで、君を推薦したいと思っている」


放課後、レオナード皇子に話があると呼び止められたときは、まさかこんな話だとは夢にも思わなかった。

それは、生徒会への誘い――この学園において、生徒会は憧れの象徴だ。選ばれし者だけがその一員となれる、特別な存在。

学業、芸術、運動……いずれかの分野において群を抜く者にしか、その資格は与えられない。


「君は数学に秀でているだろう?会計の役職に、ぜひ君を推したいんだ」

「それでしたら、レオナード皇子の方がお得意なのではなくて?」

「俺はもう、生徒会長に推薦されている」

「まあ、そうでしたの!それなら安心ですわ。皇子なら、きっと立派に生徒会長をお務めになられるでしょう」


さすがは皇子。学業にも芸術にも秀でた方だもの、それくらい当然なのかもしれない。

「そこで副会長の推薦だが……俺が決めていいと言われていてな、誰を──」

「はーいっ!私、副会長に立候補しまーす!」


突然声を張り上げて会話に割り込んできたのは、リリスだった。


「お前は……」

レオナード皇子は苦笑いを浮かべ、明らかに困った様子だ。

最近、リリスは何かと皇子に付きまとっている。その執着ぶりは、目に余るものがある。


「ちょっと、リリスさん。今は皇子のお話の途中ですわ。立候補は勝手にできるものではありません」

そうたしなめると、リリスはムッとした顔で私を睨み返す。


「エレノアさんに話しているわけじゃありませんから!」


──明らかに、以前より態度が刺々しくなった。私に対してだけ、特に。


……ああ、やっぱり、前世からそうだったのかもしれない。

なにかと私に張り合い、私の後ろを歩くのが我慢ならない。手柄は横取り、褒め言葉は自分のもの。

男の視線が少しでも私に向けば、すぐさま擦り寄って奪っていく。

私と親しげに話していた男性社員がいた?——その日のうちに、私の悪評を捏造して吹き込む。

「裏で誰かに媚びているらしい」「あの人、既婚者にも近づいてるって噂よ」……そんなくだらない嘘を、いけしゃあしゃあと。


そして私に恋人ができれば、決まって奪いにくる。

可憐なふりをして近づき、女の武器とやらで籠絡する。

いいえ、それも一度や二度じゃない。

何度、私が泣いたと思っているの……?


極めつけは、雄司だった。

彼となら、ようやく穏やかになれると思ったのに。

温かくて、優しくて、未来を信じられたのに。

なのに——彼まで、智美に奪われた。


馬鹿よね。信じた私が。

でも、もう違うのよ。

今の私は、ただの“いい子”じゃない。

“悪役令嬢”という名の仮面をかぶり、どす黒い感情を飾って生きる者。


だから遠慮はいらない。

慈悲も、情けも、捨ててきたわ。

私を地獄に引きずり込んだその手で、今度はあなたが墜ちていきなさい。

ひとつひとつ、丹念に、冷たく。

微笑みながら復讐させていただくわ、智美さん。


「そうですわね……委員長のシャーロットさんはいかがかしら?責任感があり、皆をまとめるリーダーシップもお持ちですもの。副会長にはぴったりだと思いますわ」


「なるほど」

レオナード皇子が頷いたその瞬間——


「ちょっと!私が立候補すると言っているのが聞こえていませんの!?」

尚も食い下がるリリス。


「あら、リリスさん。ご自分の行いを本当に理解していらっしゃらないの?掃除当番をサボり、宿題はシャーロットさんに押しつけ……他にも、色々と耳にしておりますのよ。私が知らないとでも?そんな方に副会長など務まるはずがありませんわ!」


私はピシャリと扇子で机を叩いた。


「そ、そんな……違います!掃除当番は、ただゴミが重かったので他の殿方にお願いしただけで……宿題も、分からないところをシャーロットさんに教えていただいただけなんです!」


「そうか……」

レオナード皇子はただ一言、そう呟いた。


——そして、結果は明白だった。


生徒会長にはレオナード皇子、副会長はシャーロットさん。そして私は、会計という要職を任されることに。

ふふ、リリスさん? ええ、当然ながら、彼女を推薦する者など一人としておりませんでしたわ。

ホホホ……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ