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『戦争の天才』はフェシリテを探す!

 フェシリテを探し始めてから2週間が経過した。

 いまだにフェシリテは見つかっていない。

 国が総力を挙げていると言っても過言ではないこの状況でも見つからない。

 エルベルトとエメは奴隷商に誘拐された線を疑って、すでに十数の組織を壊滅させた。

 しかし、見つからないのだ。


 そんな中、今夜は食事会がある。

 新たな首相の就任パーティだ。

 正直、そんなものに参加するくらいならフェシリテ捜索をしたいが、国王の仕事を投げ出すわけにもいかない。


「陛下お時間です」


 私の部屋にハベルゼンが入ってきた。


「フェシリテ大佐はきっと見つかりますよ」


「顔に出ているか?」


「ええ、過去見たことないほどに落ち込んでおります」


 私は基本どんなことがあっても顔にはでないと思っていたが、今回ばかりは違うらしい。


 私は気を引き締めなおして、会場へ向かった。

 中へ入ると、すでに多くの人が食事を楽しんでいた。

 おいしそうな食べ物が各テーブルにこれでもかと置いてあり、会場は至極の空気が蔓延している。


 と言っても各貴族にとっては料理はどうでもよく、各々利益を求めて上の者にごまをすって、敵に見栄を張る、そういうろくでもない場だ。

 私はそう言う会食が苦手だし嫌いだ。

 私が何かつまもうとすると、貴族たちが集まってきた。


「私はクリフ領を治めておりますジラーノ・クリフでございます。今回は.... 」


「私はノンドレッテ領を治めるキタル・ノンドレッテです。ぜひ陛下にご紹介したい人が.... 」


 諸侯たちが挨拶してきたが、その声のどれも、私には届かなかった。

 そんな中、私に集まる人だかりを寄せて一人の男が私に話しかけてきた。


「私はヴィンセント・モントローズと申します」


 名前は聞いたことがある。

 こいつは商人貴族で侯爵まで成り上がったかなりの実力者だ。

 しかし、その実情は奴隷を売買し、貴族にいい奴隷を横流しして懐に入るような奴だ。

 奴隷制の廃止が遅れているのはこいつのせいだ。


「ぜひ石原陛下の正妻にしていただきたく.... 」


 馬鹿な話だ。

 よくもまぁ傲慢にもそんなことが言えたものだ。

 私は内心彼をコケにしながら、話を聞いていた。

 尤も、その話の八割は聞いた瞬間に頭から抜け落ちたが。


「ほら、こっちへ来なさい」


 そう言って奴はその正妻候補とやらをこちらへ呼んだ。

 少し顔を見て断ろうと思ったその時、私は心底驚いた。


 彼女は金色の髪に青い目、髪は肩よりも少し長いくらいでどこか儚い表情をしている。

 私はこの顔を知っている。

 フェシリテだ。

 化粧は濃く、華美な装飾に包まれているが、間違いない。


「フェシリテ、どうしてここにいるんだ.... ?」


 私はフェシリテにそう聞くが、フェシリテは答えてくれない。

 全くもって理解不能だ。

 どういうつながりでヴィンセント侯爵の横にいるのか。

 ただ一つ分かるは、何かが起こってこうなったということだ。


「ヴィンセント侯爵、少し場所を変えましょうか」


「ええ、構いませんよ」


 彼は嫌な笑みを浮かべながらそう言った。

 私たちは一言も会話することなく、別の小さな小部屋に移った。


「単刀直入に聞く、なぜフェシリテが貴公のもとにいるんだ?」


「それは、彼女が自分の意志で、私のもとに来たんですよ。なぁ?フェシリテ」


「ええそうです..... お父様.... 」


 私は理解できなかった。

 今間違いなく、フェシリテはヴィンセント侯爵の事をお父様と呼んだ。

 しかし、フェシリテの本名はフェシリテ・ジルベールで、ヴィンセント侯爵はヴィンセント・モントローズという名前なはず。

 苗字がジルベールとモントローズで一致しない。

 しかし、フェシリテの経歴は謎が多い。

 もし何かしらの理由で偽名を名乗っているのなら大した問題ではない。


 それより、どうしてフェシリテがそっち側にいるのか、ということだ。

 フェシリテはいままで、裏切るような行為はしてこなかったし、諜報員だとしたら正体を明かす必要もない。

 となれば、無理やりさせられている、何か脅されている可能性が高い。

 しかし、その脅迫内容が分からない。

 もし、殺す、なんていう単調なものであれば、今ここで私のもとに逃げればいい。

 ここはヴィンセント侯爵からしたら敵の本陣。

 フェシリテが逃げればヴィンセント侯爵はどうもできないだろう。


 なら、フェシリテ本人ではなく、フィストの誰かに何かしらの脅迫をしていたらどうだろうか。

 それなら、フェシリテは逃げず、素直に言うことを聞くしかないだろう。

 だが、内容が分からない。

 わからない以上、どうしようもない。


「それで、石原陛下。彼女を正妻として迎えた時、私をこの国のそこそこの立場において欲しいのです。フェアンベルゼン王国の国王であればジェストカン神聖国のどの役職に誰がいようと大した問題ではないでしょう?」


 それが狙いか。

 要は奴はフェシリテを取り返したいのなら、自分をこの国の重役に置けと言っているのだ。

 私はフェアンベルゼン王国の国王。

 他国の重役に誰が付こうと対して問題ではないから、この話を切り出したのだろう。

 

「どういたしますかな。石原陛下」


 奴は笑みをこぼしながら私にそう聞く。


「すまないが、ここですぐはいと言えるようなものではない」


「それもそうですね。しかし、フェシリテは既にほかの者からのお見合いも来ておりまして、早く決めていただかないと、取られてしまいますので、是非お早めに」


 そう言って、ヴィンセント侯爵はそのまま部屋を去った。


「大至急ハベルゼンとフィストのメンバーを呼んでくれ」


 私は近くの者にそう命じた。

 ほどなくして全員が集結する。


 私は今さっき起こった事をなるべく詳細に話した。


「なにそれ!意味わかんない!」


 最初に怒りを露わにしたのはエメだった。


「フェシリテ大佐の兵站管理能力は我が国に必要不可欠です。すぐに奪還作戦を立案しましょう」


 ハベルゼンもエメに便乗する。


「まて、相手は貴族。迂闊に手は出せない」


 エルベルトはそんな二人をなだめる。


「フェシリテは私たちが強いことを知っている。それでも言いなりになるしかないということは恐らく単純にこの中の誰かを殺すとかではないのだろう。現状、脅迫内容が分からないままでは迂闊に動けない」


「つまり、フェシリテに接触できればいいんだな?」


 そう言ったのはエルベルトだった。


「何か策があるのか?」


「策というほどでもないが、私がヴィンセント侯爵の邸宅に潜入してフェシリテに接触してくる」


「できるのか?」


「必ず成功させると約束しよう」


 確かに以前、エルベルトが亡命した時、我が国の諜報員はエルベルトを探し出すことができなかった。

 エルベルトの潜伏の才能は間違いない。

 

「ではまず、エルベルトが潜入して、脅迫内容を聞き出す。それから、今後の作戦を決める」


 ヴィンセント侯爵。

 フィストを敵に回したらどうなるかを思い知らせてやる




 


 

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