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『戦争の天才』は戦後改革を断行する!其の三!

 ジェストカン神聖国との戦争が終わってから三ヶ月。

 私はジェストカン神聖国に対して様々な改革を行った。


 まず、国教はグレイル教であることに変わりはないが、ヴァルディオスを信仰する『ハンルネ派』とテラスを信仰する『キリア派』どちらも許可することにした。

 現在、首都含む南部ではキリア派が、北部ではハンネル派が主に信仰されている。


 次に、この国のおもな工業は魔力石の製造にした。

 というのも、現在、我々大陸同盟はスクロールを必要とする魔導兵器並びに魔導機械を製造しているが、そのせいで魔力石が品薄になっているのだ。

 紙の方は製造が容易なのだが、魔力石は少々製造が困難なのだ。

 フェアンベルゼン王国には魔力石の原料もそう多くはない。

 しかし、ジェストカン神聖国にはその原料が多く眠っている。

 なので、ジェストカン神聖国には魔力石を大量生産してもらう。

 また、新魔法の開発もジェストカン神聖国が主体となって行ってもらうことにした。

 

 更に、奴隷制の廃止だ。

 この国には奴隷制があったが、それは人道に欠ける行為として、即刻廃止を命令した。

 私は奴隷制が大嫌いだ。

 同じ人間でありながら、まるで物として、消耗品として見ているのが非常に不愉快だ。

 なので廃止した。

 もし、奴隷の持ち主が、今後も奴隷を使用したいのであれば、正式に国が定めた賃金で、労働者として雇わなければならない。

 もし、それに違反するものがいれば、どんなに権力のある王侯貴族でも、即刻逮捕だ。


 これに関して厄介な人物が一人いる。

 それは奴隷商で有力なヴィンセント・モントローズ侯爵。

 彼は様々な商売をして成り上がった商人貴族だ。

 そしてこの国の奴隷制の第一人者だ。

 彼は未だ我々の下についておらず、新政権と敵対関係にある。

 当然、奴隷制の廃止を良く思っていない。

 こいつのせいで奴隷制の廃止案が未だ段階的にしか行われていない。

 早急に何とかしなくてはならない。

 

 軍事においてはいつも通り、銃や火砲と言った近代兵器の配備を急がせ、フェアンベルゼン王国のような軍になってもらう。

 その他生活面においても近代化を行う。


 後は貴族制を廃止する。

 位は残すが、領地は全て国のものとして、各領地に知事を置く。

 前世の廃藩置県のようなものだ。

 これはフェアンベルゼン王国やヴィクトワール王国、クライスト皇国でも行っている。

 挙国一致を行うためには必要不可欠な改革だ。

 知事は民衆から選挙で選んでもらう。

 優秀な貴族ならその選挙で当選するだろうし、無能な貴族や悪徳貴族なら当選はしないだろう。

 勿論、貴族が民衆に脅しをかけないように、国が監視する。

 選挙も秘密選挙、無記名投票で行われる。

 まさに能力主義を代表するもう一つの改革だ。


 その程度だ。

 

 それと、この国の首相にはガナスで市長をやっていたデクスター・デインを任命した。

 彼のガナスでの采配は見事で、国を導く立場においても問題ないと判断した。

 他にも、彼を首相に置くことで、実力のある者なら身分が低くても成り上がれるという、実力主義の開始を象徴する意味もある。

 王侯貴族が胡坐をかいていても国の重役になれる時代は終わったのだ。

 

 と、大まかな改革内容はこんな感じだ。


 

 さて、私は今、フィストの冒険者として街に出ている。

 戦後の混乱期、街の治安というのは劣悪になりやすいので、直接それを確かめに来たのだ。


 街を見ると、たいして治安は悪くなさそうだった。

 市民は普通に買い物をしているし、子供たちも大人を連れずに歩いている。

 神が見ているという考え方があるせいか、思いのほか、治安は良さそうだった。

 恐らく戦火に巻き込まれなかったので、国民にあまり敗戦意識がないのだろう。

 前世程国が総力を挙げて戦っているわけではないので、国民にはその意識が薄い。

 私たちにとっては好都合だ。


 思いの他治安が良かったのでフィストの我々はジェストカン神聖国の王城へ戻った。

 道中、フェシリテが私たちに言う。


「少し、買い物をしてから戻ります」


 フェシリテはそう言って食料品店に入っていった。

 

 フェシリテに限って道に迷うこともないだろうと思ったので、私たちはそのまま真っすぐ城へ戻った。

 よくある会話だ。

 私はその時は何も思わなかった。

 しかし、後になって、それが過ちだったと気づいた。


 それから数時間、いつになってもフェシリテが帰って来ないのだ。


「ねぇ、ちょっと遅くない?」


 エメが不安そうにそう言う。


「ああ、いつもならもうとっくに帰っている時間だ」


 エルベルトがそう返す。

 

「少し探してみよう」


 私はそう言って、城を出た。

 まず最初に向かったのは、あの食料品店。

 

「店主、金髪碧眼の少女がこの店に来なかったか?」


 私は店主に質問する。


「ああ、確か来たよ。ちょっとした食料を買ってから出て行ったよ」


「その時不審なことはなかったか?」


「いや、特にはなかったよ」


 フェシリテはこの店を出て行ったと言っていた。

 となればその後に何かがあったのだ。


 この中で考えられるのは2つ。


 一つ目は何かしらの理由で意図的に失踪した可能性だ。

 しかし、もし計画的だったのなら、わざわざ近くの食料品店による必要はない。

 もし食料を買いこんだとしても、店主は「ちょっとした食料」と言っていたので、買い込んだとは言いずらい。

 そもそも、今回は街を見るだけなので軽装だった。

 遠出はできないはずだ。

 それに、何も言わずに失踪するような子ではない。


 となれば2つ目、誘拐された可能性の方が高い。

 治安はいい方ではあるが、可能性は零ではない。


「私は一度城に戻る。そして手の空いている諜報員、兵士を総動員してフェシリテを探させる」


 フェシリテは軍内での地位は大佐だ。

 しかも、今回の戦争では非常に優秀な成果をあげてくれた。

 そんな重要人物が失踪したのなら、軍を動かしても問題はない。


 私はすぐさま、城に戻り、ハベルゼンにフェシリテを捜索するよう命じた。

 幸い、ジェストカン神聖国内に潜入させていた諜報員が戦争終結で手空きになっていたので、多くの人員を割くことができた。


 フェシリテは一体どこに行ってしまったのか。

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