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『戦争の天才』は海軍の軍拡を決行する!

‐‐‐3年前‐‐‐



 私の名前は石原孝雄。

 つい先日、クライスト皇国での勝利をおさめ、今は戦後処理に追われている。

 私は急ぎ足で城の中をかける。

 そして、海軍大臣室と書かれた部屋の前に立つ。


 私は勢いよく扉を開ける。

 

「高野!」


 私が大声でそう言うと、高野は驚いて、見ていた書類を落した。

 

「なんだ貴様!ノックもしないでいきなり入ってきて叫ぶ馬鹿がどこにいる!」


 高野は大分怒っていた。


「すまない時間が無くてな」


 私はそう言って、高野の机に書類を叩きつける。


「ジェストカン神聖国海軍に勝ちたい。どのくらい軍拡すれば勝てる?その見積もり分予算を取る。この書類はジェストカン神聖国海軍の艦艇情報だ」


「どうして戦争が終わってすぐにまた戦争の準備をするんだ」


 高野は筋金入りの平和主義者。

 軍拡は快く思わないだろう。

 ましてや戦争が終わってすぐの今は。


「ジェストカン神聖国が貿易の大幅な縮小をしてきた。それに軍拡を宣言。さらには大陸同盟に対して同盟解消を求めてきた」


「だからと言って戦争になるとは限らないだろう」


「この世界の戦争は前世の我々よりも軽いものだ。簡単に起こるぞ」


 今、この世界の戦争は転換点を迎えている。

 地位や名誉を求める『個人主体の戦争』から国家が利益を求める『国家主体の戦争』に変わろうとしている。

 当然、個人主体であれば言い方は悪いが戦いはスポーツに近く、被害はそう大きくない。

 なので簡単に戦争を起こす。

 しかし、国家主体であれば、それは凄惨の一言に尽きる。

 簡単に数万人が死ぬ、簡単には起こせないものになる。


 ただ、この転換点に置いてはどっちつかずになってしまう。

 国家主体であるにもかかわらず、人は今まで通り戦争を軽視する。

 凄惨であるものの、簡単に戦争を仕掛けるのだ。

 前世で言うところの第一次世界大戦のあたりだ。


 当然、我が国は、私は前世の一次大戦、二次大戦を見てきたので簡単に戦争を仕掛けたりはしない。

 ただ、ジェストカン神聖国が同じかと言えばそうとは限らない。

 

 だからこそ、有事になった時のため軍拡は必要なのだ。

 

 高野も前世の歴史を知ってるものとしてそれは理解している。

 高野は書類を次々に見ていく。


「航空機の研究の進捗はどうなんだ?」


 高野が書類を読みながら聞く。


「すでに陸軍用の攻撃機、戦闘機は配備を開始した。あと半年もあれば海軍用の艦上戦闘機、艦上攻撃機も実用化できると思う」


 正直、ここまで急激に成長すると思わなかった。

 前世では1903年にライト兄弟が初の有人飛行を成功させてから、本格的に戦闘機や攻撃機という区分が生まれてから運用されるようになったのは1915年、第一次世界大戦中だ。

 12年かかっているわけだが、この世界では7年しかかっていない。

 国家が常に総力を挙げて研究しているというのもあるが、すでに最適解を知っている堀越技師の召喚、そして、魔法、スクロールによる前世ではありえない方法での問題解決のおかげだろう。

 実際、前世の第一次世界大戦の航空機と比べて加工技術も発動機の出力も未発達だ。

 それを魔法でカバーすることによって同程度の性能まで引き上げている。


 話がそれてしまったが、高野はそれから紙を取り出し、何かをまとめ始めた。

 少しして、ペンを止め、私に書類を見せてきた。


 そこには 空母4隻 重巡4隻 軽巡10隻 駆逐艦25隻 潜水艦15隻


 と書かれていた。

 

「この数があれば必ず勝てるだろうな」


 空母はやっと設計が終わったのみでまだ実験段階。

 重巡は現在一隻が建造中で配備済みの艦艇は無し。

 潜水艦に至っては まだ設計段階。


 無茶だ。

 しかし、その手はずを整えるのは高野だ。

 何か策があるのだろうか。


「この数を建造するための予算を通すと言ったら作れるのか?」


 高野は自信満々に答える。

 

「当然だ。俺は現実的な選択肢しか出さない。しかし、外交も絡んでくるのだがな」


「どういうことだ?」


「他国でも簡単な船を建造させるのだ。駆逐艦25隻を他国で作ることができればそのた主力艦建造に注力できる。それに、この国の造船所の数は私が転生してから大幅に増加した。前世の米国を見習った徹底的な効率重視の建造。これを行えば不可能ではない」


 正直、疑念が残るところではある。

 高野がヴィクトワール王国の造船所に近代化改装を行ったことは聞いている。

 なのでヴィクトワール王国でも艦艇建造は可能ではあるのだろうが、それでも本当にあの数を建造できるのだろうか。

 

 だが、海軍の事は高野に一任すると決めている。

 それに、彼の腕は本物だ。

 

「わかった。艦艇建造の予算を通そう。それと、外務大臣にも話を通しておく。今回の艦艇建造計画は高野に一任する」


 高野はこれを了承し、私は部屋を去ろうとした。

 私がドアノブに手をかけた瞬間、高野が呼び止めた。

 そして睨みながら私に言った。


「これは自国をひいては国民を守るための計画だ。間違っても戦争を引き起こそうとするなよ。侵略戦争を起こしたら、我々海軍は貴様を殺す」


「わかっている。貴様は私をなんだと思っているんだ」


 私はそう言って部屋を後にした。


 どうやら、前世満州事変を起こした私は、信頼が無いらしい。

 それでもいい。

 私はこの世界が平和になることを望んでいる。

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