『戦争の天才』は対神判作戦を立案する!
「作戦はおおかた決まってはいるが、その前に少し質問したい」
私はイレーナの方を見てそう問う。
「敵の数、敵に魔法使いがいるか。いるとしたら何人か。それと、事前にその場所には潜入可能か?」
「詳しい数はわからないが10は超えるだろうな。恐らく魔法使いもいると思う。もし正確な情報が欲しいのであれば私が潜入してみようか?」
「潜入できるのか?」
その言葉は私にとって思ってもみない言葉だった。
「実はエルベルト暗殺に私も誘われていてな。保留にしていたが承諾すれば色々調べられると思うぞ」
いくら知らなかったとはいえ、まさか暗殺対象と魔法省長官の深い関係があるとは夢にも思っていなかっただろうな。
今回の計画はある意味外交において重要な局面なことを考えると、敵ながら同情せざるを得ない。
尤も、だからなんだという話だが。
「では、少しの間調査を頼みたい。その間に私はいろいろ準備をしておく。エルベルトとステンホルム殿にはエメの訓練を頼みたい。期間は2週間程度を予定しているがいけるか?」
「私は問題ない。人数と内訳を調べる程度なら一週間で終わる」
「わしらも大丈夫じゃ。そのくらいあれば今の2倍は強くできる」
どうやら問題はないようだ。
---二週間後---
準備は整った。
イレーナの情報によると、敵の魔法使いは4人。
その他剣士が8人の計12人で全員が戦略歩兵級の強さらしい。
敵の拠点は首都のなかにあり、ぱっと見は普通の古物商らしい。
近くにも八百屋やパンやがあるがそこら一体は全て国が管理しているらしく地下には巧妙に偽装された『神判』のための拠点があるそうだ。
上の建物は普通に営業してはいるものの、それもすべて町中に溶け込み、拠点に気づかれないためのものらしい。
国有であるなら、容赦なく爆破できるので良かった。
「では、作戦を話す」
私はそう言って全員を集めた。
「まず、イレーナが神判に差し入れを持っていく」
私はそう言って箱を取り出す。
「これは中に手榴弾が入っていて、開けると起爆するようになっている。
そしてそれと同時、あらかじめ仕掛けておいた爆薬も起爆させる。
建物の爆発を合図にエルベルトとステンホルムとイレーナが突入する。
その際、イレーナは瓦礫の撤去を一瞬で行ってもらいたい。
一瞬でできなければ奇襲の効果が薄れる。
できるか?」
「ああ、問題ない」
「そしてその間、マルテは遠距離から援護射撃を頼む。
恐らく、戦闘が始まると敵は陣形を組むだろう。
詳しくはわからないが、剣士は前衛、魔法使いが後衛なのは確実だ。
そこで魔法使いが後ろに下がった瞬間にエメを投入する。
同時に対魔法結界を発動させ、敵魔法使いが動揺した瞬間に一気に片を付ける。
法使いの撃破が完了したら、エメはエルベルトたちの援護に向かう。
そして敵剣士と正面戦闘し、これを撃破。
後は退散するだけだ。
どれだけ建物を壊そうと、どれだけ大きな音を立てようと恐らくジェストカン神聖国の方で隠蔽して
くれるので、後処理なんかはせず、ただ退散すればいい。
以上が作戦だ」
神判。
今度は裁きを下される側だ。




