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『戦争の天才』はヴァリス要塞を攻略する!

 攻勢準備が整った。


「第一作戦開始!」

 

 私の号令で戦車が一斉に動き出す。

 今回は雄型20両、雌型10両の計30両が作戦に参加している。

 

 今回、敵は3万の兵力を用意したらしい。

 更に城壁には多数の野戦砲を配備している。

 敵が高所を取っているため、おそらく、射程距離は我が国の野戦砲と同じくらいだろう。

 それと、敵の指揮官にヴァントリアス帝国から来た作戦参謀がいるらしい。

 その指揮官は『作戦の神様』と呼ばれていて、頭脳は頭一つぬけているらしい。


 少しして、戦車の進行方向になにやら棘のようなものが見えた。

 木でできたそれは3本の丸太が組み合わさってできており、それが無数に並べられている。

 

 間違いない、あれは『チェコの針鼠』だ。

 前世、戦車の前進を止めるために開発されたもので、単純なつくりでありながらも、その効果は絶大。

 戦車はその先に進めず、工兵が取り除こうとすれば無防備をさらすことになる。

 

 前世の戦車なら木でできたものなら押して進むなり、踏みつぶすなりできたかもしれないが、この非力で走破性の低い一式戦車には厳しい。

 

 まさか、戦車を投入してからこんなにもすぐ対策方法を発見されるとは思わなかった。

 魔法で突破しようかとも思ったが、どうやら対魔法結界が貼られているようだ。

 

「陛下!このままでは進軍不可能です!」


 マヌエラ・トラウトマン少将が私に報告する。

 

「戦車全軍停止!第二作戦を発動!」


 戦車はまだ、敵の射程圏内に入ってはいない。

 今のうちに厄介な敵の野戦砲をかたずけたい。

 野戦砲をかたずけるための作戦こそが第二作戦だ。


 さて、気が付けば、なにやら上空には観測用の気球が沢山空に浮かんでいた。

 それは異様なほどの数だ。

 観測用であるなら一機や二機あれば十分だが、上空には10を超える気球が浮かんでいる。

 そしてそれはゆっくり要塞にちかづいている。

 

 気球が要塞の真上に気球が到達した時、気球から2つの何かが投下された。

 そして城壁に接触した瞬間、けたたましい轟音とともに爆発した。

 その爆発は砲弾も誘爆させ、敵に甚大な被害が出る。

 

 気球が投下したものとは爆弾だ。

 前世の気球では爆弾を積むことはできなかったが、ここは異世界。

 戦車同様、重力軽減のスクロールを使えば気球に爆弾を積むことができる。

 

 地上に障害物があるのなら空から突破すればいいのだ。

 

 この気球による空爆を受け、敵の防衛体制は崩れ始めた。

 次々に落とされる爆弾に対処できず、被害はどんどん拡大していく。


 そんな中、なにやら小刻みな重低音が空に響いた。

 それはだんだんと近づいてくる。

 空を見ると、そこにいたのは3機の攻撃機だ。

 

 今回試験的に参戦しており、パイロットは前世の地球より青木少尉が召喚した『ハンス』という人物だ。

 搭乗機は「キ1」を改良し、攻撃機にした「天穹」だ。

 20(ミリ)機関砲を1門搭載し装弾数は25発。

 正直、試験的な意味合いが強く戦況を変えられるだけの兵器ではない。

 が、今後の戦争に影響を及ぼす兵器であることに間違いはないだろう。


 天穹のうち一機は城壁ギリギリまで接近し、野砲にぶつかる直前で射撃した後一瞬で離脱した。

 その一発は見事命中し、野砲は破壊された。

 更にまた、その一機は同じ要領で野砲を破壊する。

 

 しばらくして弾をすべて打ち尽くしたのかその一機は僚機とともに帰っていった。

 他の機の命中率が1割程度なのに対して、その機だけは命中率9割をたたき出していた。

 その機体の成果と気球による爆撃によって敵野砲の正面戦力は瓦解した。

 とてつもないエースパイロットだ。

 後で勲章を授けよう。

 今回の戦果は戦況に十分すぎるほどの影響を残した。


 「第三作戦開始!」


 私が三度号令をかける。

 それに合わせて、歩兵がチェコの針鼠を撤去していく。

 敵が野砲を失った今、これを傍観するしかない。

 この世界の人間は身体能力が非常に高い。

 丸太が3本まとまっている程度のものなら3人いれば軽々と持ち上げてしまう。

 

 そして、チェコの針鼠を撤去し終えると、戦車は全身を開始した。

 敵はもう、それを防ぐ手立てはない。


 戦車の主砲が城壁を射程圏内におさめると、雄型戦車は一斉に砲撃を開始した。

 その威力はすさまじく、ものの数分で城壁は破壊された。

 戦車はさらに前進し、要塞本体への砲撃も行う。

 要塞を雄型戦車が破壊し、逃げる敵兵を雌型戦車で掃討する。

 それはあまりにも一方的だった。

 

 本来効率よく迎え撃つためにつくられた要塞内部は侵入されることなく、破壊されていく。

 籠城すらも許されない。

 それが近代戦争だ。


 3万の小銃を持った兵士がいようとも、戦車の前ではあまりにも無力だ。

 

 それと同時、2万の兵をもって要塞内を包囲した。

 敵は城壁を突破されてすぐ要塞内部に立てこもる籠城戦に切り替えたため、城壁内の左右後ろの野戦砲は意図せずに無力化できていた。

 従来ならそれで正しいが、今回はその判断が仇になった。

 我々は何の損害もなく包囲することができた。

 

 少しして、敵将から、降伏の申し出が来た。

 辺りは包囲され、城壁内部には戦車が侵入し要塞を破壊している。

 勝てる見込みはないだろう。

 我々は降伏を承諾し、これによってヴァリス要塞攻略戦は終わった。


 


 ヴァリス要塞攻略から数日後、要塞を落した我々は無防備な首都を占領した。

 それをもってリノ・バステルから、無条件降伏の申し入れが来た。

 我々はそれを承諾。


 ついに、クライスト公国内戦は幕を閉じた。

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