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『戦争の天才』は攻勢を開始する!

 先ほど、捷撃作戦が実行されたという旨の報告があった。

 ここから要塞まではどんなに急いでも1週間はかかる距離なので、恐らく1週間前からすでに包囲戦は始まっているのだろう。

 この作戦は短期決戦にすることこそが最も大切だ。 


 私は早速精鋭攻勢部隊に進軍の指示を出す。

 今回の攻勢作戦はフェアンベルゼン王国と国境を接することができればいい。

 たとえ攻勢途中に後方が遮断されても国境さえ接することができればあとはフェアンベルゼン王国の義勇軍で再度反転攻勢し、今度は占領地を義勇軍で守備させ輸送路を確保、エルベルト軍の戦力を増強しフェアンベルゼン王国の義勇軍とともに包囲されている軍を解放、包囲された軍の戦力も増強した後、首都を奪還する。

 そのための攻勢だ。


「石原陛下、準備完了です」


 伝令兵がそう言った。

 今回の攻勢は全員馬を使い、電撃的に攻める。

 今回作戦に参加するのは戦術歩兵19人と戦略歩兵3人の計21人だ。

 

 後は前線指揮官として私も参加するので21+1だな。

 

「よし!進軍開始!」



 こうして、超精鋭による前代未聞の攻勢が開始された。

 



‐‐‐




 攻勢開始から2日。

 今のところは接敵することなく進軍できている。

 それと追加の報告として敵はフェアンベルゼン王国の国境に塹壕を掘り銃を所持させた歩兵を配備しているらしい。

 それが2重の陣地になっているとのことだ。

 まぁ、問題はないだろう。


「間もなく敵陣地に到着します」


 部下がそう言った。

 私たちは一度止まって、最終確認をする。


 自分たちの体調、武器、装備に異常がないことを確認して、私たちは覚悟を決めた。


「突撃!」


 私の合図とともに全員が突っ込む。

 先頭に立っているのは黒い鎧に黒い鎧を装着したエルベルトだ。

 その特徴的な鎧は敵の気をひくのにうってつけだ。


 こうして5分程度全力で馬を走らせていると、ついに塹壕が見えた。

 それを発見すると、すぐにエルベルトが魔法を放つ。


超空の天撃(ライトレイ・インドラ)


 次の瞬間、空から光の矢が無数に塹壕に向けて放たれた。

 そしてその一撃一撃が地面と接触した時に爆発する。

 超空の天撃(ライトレイ・インドラ)は神級魔法。

 その威力は圧巻と言わざるを得ない。


「まだ生き残っている者がいるな」


 エルベルトはそう言って馬を止め、もう一度身構える。

 我々もそれを見て一度馬を止めた。


極限極寒の世界(アブソリュートゼロ)


 次の瞬間、一瞬にして塹壕が氷に包まれた。

 その氷の厚み、大きさはともに規格外。

 辺り一帯は氷河期よりも悲惨な状況だ。

 極限極寒の世界(アブソリュートゼロ)も神級魔法。

 まさしく、神の名にふさわしい魔法だ。


 エルベルトが放ったこの二つの魔法は別格の強さだった。

 いくら銃を所持していようとも、いくら塹壕に籠ろうともかなうはずがない。

 あの魔法はそれほどまでに圧倒的なのだ。


 私は少々エルベルトという人間を誤解していたかもしれない。

 戦略歩兵などという枠で収まる強さじゃない。

 『剣士』であそこまでの魔法を放てるのだ。

 となれば剣士の実力は計り知れない。


 あれはもはや『戦略兵器』だ。


「おそらく数名はまだ生きている。対処してくる」


 エルベルトはそう言って馬から降りて走る構えをとる。

 そして一瞬にして塹壕までを移動した。

 もう私には、それが身体能力での高速移動なのか、魔法なのかさえ分からない。


 私たちも急いで馬に乗って突撃する。

 

 エルベルトは塹壕に突撃してすぐ、接敵した。

 エルベルトは剣を抜いて、斬撃を繰り出すをする。

 その速度は尋常ではないが、敵もあの二つの魔法をくぐり抜けただけあってその軌道を読んで防御をする。

 が、なんとエルベルトは敵の剣ごと相手を切り捨てた。


「私のこの剣の切れ味は世界一でね。なんでも切れるんだよ」


「降参だ!」


 敵のうちの一人がそう言った。

 その声につられてほかの人も降参を宣言する。

 エルベルトの剣はまさに名刀で切れ味がいい。

 それこそ魔力が込められた剣でさえ斬ってしまう。

 

 こうして塹壕の第一陣は制圧完了した。


 だが、私たちに休む暇はない。

 急いで進軍を再開しなければならない。


魔力回復(マナヒール)


 私がそう思っていると、エルベルトは横で何やら魔法を使っていた。


「エルベルト、その魔法は何だ?」


「これは魔力を回復させる魔法だ」


「そんな魔法、聞いたことがないぞ」


「私が自分で作ったんだ」


 もはや、自分で魔法を作れることに驚かなくなってしまった。

 エルベルトならそのくらいできるかもしれない。


 そう思った後、私は気づいた。


「それじゃあ魔法をいくらでも放てるじゃないか!」


 魔法使いの宿命と言われるのが魔力切れだ。

 魔力は魔法を放つために必要だが、その回復方法は自然に回復するのを待つ他ない。

 だからこそ、魔法は強力だが扱いが難しく、軍においても管理が難しい。

 だが、それを意図的に回復できるとなったら話が違う。

 先ほどの恐ろしいほどの破壊力の魔法をいくらでも撃てることになる。

 これは魔法の歴史において重大なことだ。


「もっとも、この魔法はみんなが使えるわけじゃないんだがね.... 」


 そのあと、エルベルトが言っていたが、どうやら魔法を極めたものしか使えないらしい。

 私は魔法が使えないのでわからないが、極めたものしかわからない何かがあるのかもしれない。


 こうして、私たちは再度進軍を開始した。

 

 進軍してから30分ほどで第二陣の塹壕を発見した。

 先ほどと同じようにエルベルトが神級魔法を放つ。


神の咆哮(プロミネンス)


 塹壕は一瞬にして炎の嵐に包まれた。

 その火力はすさまじく、そう近くないはずなのにこちらにまでその熱気が伝わってくる。

 しかもそんな大火力を人が一人で起こしているのだから驚きである。


 さらにエルベルトはダメ押しと言わんばかりにもう一つ神級魔法を放つ。


神級爆破(イグニッション)


 放たれたのは爆破魔法の最上位神級爆破(イグニッション)だ。

 放たれた瞬間に爆発が起こり、とてつもない量の煙が昇る。

 そしてその煙はキノコ雲となった。

 まさに、前世の原子爆弾に匹敵する威力だった。

 

「殲滅完了だ」


 エルベルト曰く今度は、誰も生き残ることはできなかったらしい。

 皆、塵になったとの事だ。

 正直、今回の攻勢で戦ったのはエルベルト一人だけだ。

 まさか、こんなにもエルベルトが強いとは思ってもみなかった。

 

 私は今まで前世の戦術を参考に作戦をたててきたが、もしかしたら前世の戦術はあまりあてにならないのかもしれない。

 こうも圧倒的な力を前にしては兵器も意味をなさない。

 

 少し、この世界の戦術については再考の余地ありだ。




‐‐‐




 塹壕突破から1日。

 我々はついにフェアンベルゼン王国の国境と接することができた。

 国境付近にはすでに大量の支援物資を抱えた、フェアンベルゼン王国義勇軍が待機していた。

 その数は1万。

 勿論、近代化は済んでいる。


 私が驚いたのは全員が軍服を着ていたことだ。

 青木少尉考案の軍服がどうやら軍隊に行き届いてきたらしい。

 

 服は旧ドイツ国防軍の制服にそっくりで野戦服は野戦灰色を基調としている。

 非常にかっこいい。


 準備は整った。

 さぁ、勝ちに行こう。

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