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間話  著書 『異世界最終戦論』

 この世界に転生してきた日本人のためにこの書を記す。



第一章 この世界について


 私は7年前、この世界に転生してきた。この世界は前世の中世、近世ヨーロッパに近いが、相違点も多々ある。まず、この世界は日本語を話している。私の前世の日本語とは若干の相違点があるも、基本的には同じ言語である。ただ、文化的に似ているかと言われればそうではない。この世界は名前を付けるとき、片仮名を使う。基本的には漢字は使わない。例えばフェアンベルゼン王国は前世のドイツ風の名前が多い。ヴィクトワール王国ならフランス風が多いし、クライスト公国はポーランド風の名前が多い。また、この世界には魔法が存在しているが、その魔法に使われている言語は英語が多い。そう、この世界では前世の様々な言語が混在して、一つの言語として扱われてれているのだ。

 文献を見ると、何度か地球人がこの世界に転生したようだが、多くの者はこの世界を『異世界』と言っている。私の部下も事実、この世界を異世界と言っている。だが、この世界は相違点は在れど、全くの別世界というわけではなくどちらかと言えば似ている世界だと私は思う。となれば異世界という名称より並行世界というほうが正しいと私は思う。ただ、転生者たちの間では異世界で通っているので、今更名称を変更したりするつもりはない。

 さらに、この世界の生活もまた、前世の中世、近世ヨーロッパとは大きく違う。前世では、貴族は食器を使わず手で食べていたとされているが、この世界ではそんなことはない。しっかりと皿に盛りつけ、ナイフとフォークで食べている。また、排泄物も然るべきところに処分されていて、衛生的である。前世ではそこらへんに捨てていたと聞くのでこの世界は全体的に衛生的である。衛生という点でさらに、入浴という文化がある。一般市民の家にまで普及しているわけではないが、多くの貴族の家には設置されており、地域によっては温泉が整備されていたりする。そう言った点からみてもつくづくこの世界は不思議である。




第二章 この世界の個人の能力と魔法について


 この世界は前世と比べて大きな違いがある。それが魔法だ。魔法の発動方法は主に2種類で、個人が体内にある魔力を消耗して発動させるか、スクロールを使うかだ。個人が使う魔法は初級、中級、上級、超級、神級と別れており、初級は誰でも扱うことができ、中級もほとんどのものが使えるが、中には使えない人もいるらしい。上級以上は才能がなければ使えないらしく、超級や神級はほとんどのものが使えない。そしてそんな魔法はかなりの種類がある。火、水、雷、土、重力など様々なものを操る魔法や、声を遠くまで届ける魔法がある。現状仕組みはほとんどわかっていない。が、その力は強力で、過去の文献には千対一の状況でも超級魔法で覆したと言われている。そう、この世界では前世に比べて、個人の能力が異様に高い。これは魔法に限った話ではない。剣士も例外ではなく、猛者は音よりも早く移動し、岩をも砕く一撃を放つことができる。剣に魔力を込めれば恐ろしいほどの切れ味を誇り、身体のどこかに集中させればその部分は鎧のように固くなる。さらには可動部の場合、その部分の速度は極めて速くなり、力も上昇する。

 この世界では兵器、戦術、戦略より、個人の強さが勝敗を決する重要なものとして位置づけられているのだ。だが、どこまで個人が強くても、魔力が尽きてしまえば戦うことはできない。この世界では魔力が尽きると人は気絶し、いくらか回復するまで起きることはない。そんな魔力を閉じ込めたものが魔力石である。魔力石は鉱石の一種で膨大な魔力を内包している。その魔力量は、鉱石の大きさにもよるが、平均的には優秀な魔法使い100人に匹敵すると言われている。そしてそれをスクロールの上に設置することで大規模な魔法を発動することができる。膨大な魔力量からなる魔法は効果、範囲、ともに人が発動する魔法を大きく凌駕する。以上のことからこの世界では総合的に個人の能力が高く、兵器というものが発展しにくい。それを踏まえて以下、この世界で兵器は活躍できるかについて述べていきたいと思う。




第三章 この世界での兵器の位置づけ


 戦術の通りこの世界では兵器があまり発達していない。せいぜい攻城兵器が少しあるくらいだ。では、なぜ個人の能力が高いと兵器は発展しないのだろうか。一例として大砲の歴史を見てみよう。まず、この世界にも火薬は存在する。そして鉄を円柱状に形成する技術もある。なので中世で使われていた大砲程度ならすぐにでも作れるのだが、戦場でその大砲を使用したところで強者によって砲弾は斬られるか、躱されるのだ。ましてや飛距離もそうないため近づかれたら、砲兵はろくな抵抗はできない。さすがに重い鎧を身に纏い、帯刀しながら砲撃するわけにもいかない。それなら、魔法のほうが合理的である。大砲は一門発射するのに4人5人と費やすが、魔法なら一人で事足りる。しかもそんな大砲より、高威力で射程も長く扱いやすい。それなら、魔法で戦うのは当たり前である。そして当然大砲が進化しなければ銃なんてものは作られることはない。

 もちろんこれは兵器のみに当てはまるわけではなくほかの分野でも同じことだ。そのためこの世界では文明が発展が極めて遅い。この世界では技術より魔法に頼るのだ。では、兵器は魔法に打ち勝てないのだろうか。否、兵器は十分この世界で通用する。兵器が発達しないのは魔法があるからと言ったが、逆を言えば魔法に打ち勝つ技術まで高めることができればいいだけの話だ。厳密にいえば、兵器と魔法の融合こそが最も効果的な兵器と言える。要は『魔導兵器』だ。従来の砲に魔法を組み合わせれば膨大な射程と高い威力を発揮する事ができるだろう。今後登場するであろう戦車に搭載したら防御力は高く尚且つ軽量という、前世では不可能なことを可能にするかもしれない。おそらく今後世界は『魔導兵器』有用性に気づくと同時に、開発を進めていくことだろう。




第四章 この世界の戦争について


 この世界では、前世の中世とあまり変わらない戦争形態である。魔法や個人の能力の大幅な向上はあるものの本質的には変わらない。そして今後も変わっていくことはないと予想する。私は戦争を2種類の分けている。『決戦戦争』と『持久戦争』だ。本来戦争とは武力の衝突、要は武力を直接使ったものでり、私はこれを『決戦戦争』と呼んでいる。『決戦戦争』は戦争本来の姿であり、太く短い、陽性の戦争であると言える。が、いろいろな理由で時々、武力をあまり衝突させずに決戦を避け、回り道をして戦争に勝とうとするときがある。これが『持久戦争』であり、細く長い、陰性の戦争であると言える。持久戦争は武力の直接衝突を嫌うた長期戦になる傾向がある。それを踏まえて、今後の戦争を予測していきたいと思う。

 まず、この世界では持久戦争が行われたことはほとんどない。なぜなら、両者が戦う時、数的不利な時は要塞に籠り、有利な方は要塞を攻略する。同数の場合は平野で両軍が真正面から迂回する。ということが恒常化しているからだ。また、個人の能力の差が大きいため、戦場は強者たちが力比べをする場になっているのも一つの理由と言える。ゆえに決戦戦争が当たり前なのである。が、近い将来、間違いなく持久戦争が起こる。兵器が発達すれば人間は迂闊には動けなくなる。兵器の前に人間はあまりに無力だからだ。真正面からぶつかればその被害は計り知れない。となれば迂回やにらみ合いの機会が増えるわけだが、そうなれば当然戦争は長期化する。そう、『持久戦争』になるのだ。よってこれからは持久戦争に向けた、長期間の戦争に耐えられる国家づくり、要は国が一丸となって戦う、国家総力戦、挙国一致が求められるのだ。と、私は予想する。




第五章 この世界の国々について


 最後に今後の世界情勢について考えていきたいと思う。まず我々フェアンベルゼン王国は先日ヴィクトワール王国に勝利した、これからはヴィクトワール王国の工業化を推進し、我々の心強い同盟国となるだろう。そして近いうちにクライスト公国かジェストカン神聖国が我々に戦争を仕掛けてくるだろう。現在、彼らは経済的に裕福とは言えない。持たざる国が追い詰められたときにとる行動はいつだって戦争だ。それは前世の日本や独逸が証明している。

 そして当然、我々はそれを撃滅する。2か国と戦争になるか、それとも一か国が降伏した段階でもう一か国があきらめて大陸同盟に加盟するかは分からないが、いずれにせよヴィクトワール王国、フェアンベルゼン王国、クライスト公国、ジェストカン神聖国で同盟を結成し確固たる国際的な地位形成する。そしておそらく別大陸にあるヴァントリアス帝国が最後の敵となるだろう。ヴァントリアス帝国はすべてにおいて規格外で、国力も我が国の比ではない。が、それ故我々の同盟を危惧し、敵視するだろう。この世界での戦争の認識は軽い。兵士たちの力比べという一面が大きいからだ。となればヴァントリアス帝国は戦争を回避しようとはせず、我々を危惧し、戦争を仕掛けてくる可能性が高い。出る杭は打たれるというものだ。

 そしてそこはおそらく近代兵器がぶつかり合う、まさに凄惨なものになるだろう。それを機に人々は戦争は避けるべきものであり、行ってはならないという認識を持つ。そのため戦争が終われば二度と戦争を起こさないための対策を講じる。これは前世の第二次欧州大戦と同じである。前世も凄惨極まりない大戦を経験した者は二度と戦争を起こさないように努力した。そして少なからず大国間ではあれほどの戦争は行われなくなった。ならばこの世界でも凄惨な戦争が起これば前世同様、恒久的に国際平和がもたらされるのではないかと予想する。その世界平和実現に向けた重要な一戦がヴァントリアス帝国対大陸同盟の戦争であり、私はこれこそがこの世界における『最終戦争』だと確信している。

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