表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/43

『戦争の天才』は戦後改革を断行する!

 私のもとに、エルベルトが亡命し他との報告が入った。

 私はすぐに捜索隊を派遣させ、エルベルトの保護を命じた。


 それと、附微戦争が終わってから数日、私はヴィクトワール王国に大改革の指令を出すことにした。


 まず、農業、工業分野について。

 最初に優先するべきは蒸気機関を用いた殖産興業の振興。

 さらに国中に線路を敷き、交通網を発達させる。

 勿論我が国とも線路をつなげる予定だ。

 さらに7年前我が国で行った農業改革をこの国でも行う。

 我が国と同じく混合農業を行ってもらう。

 

 後はこの国特有の産業として製紙工場と活版印刷工場を大量に建てる。

 この世界で紙や印刷物は非常に高価だ。

 それこそ貴族や裕福な商人でないと使用できない。

 だが、紙や印刷物は間違いなくこれからの生活で必要になるだろう。

 幸いにもこの国には豊かな自然がたくさんある。

 鉄道網を発展させれば木材の輸送もしやすくなるのでまさにこの国に向いていると言える。

 なのでこの国の主要産業として製紙と活版印刷を振興させる。

 紙の生産が安定次第、新聞を大衆化させていくつもりだ。

 

 次に政治と文化。

 まず政治だが、今回の附微戦争での戦争犯罪者はアルノーのみとし、アルノーは半年後に公開処刑する。

 アルノーの家族は全員僻地に流刑だ。

 それ以外の将校や貴族を咎めるつもりはない。

 今回の戦争責任はすべてアルノーにあるとし、ヴィクトワール王国国民にもそう言ったプロパガンダをすることにした。

 ここで大切なのは国民は皆アルノーに騙されていて、今、フェアンベルゼン王国によって解放された。

 なのでフェアンベルゼン王国は友であり、憎むべきはアルノーである、という意識を植え付けるのだ。

 

 実際、我が国はヴィクトワール王国に屈辱的な行為を迫るつもりはなく、これからは盟友として外交をしていくつもりだ。

 

 それと、新国王の選定は少し後とし、とりあえずは我々が国営を行う。

 というのも、我々で直接内政に干渉したほうが改革を実行しやすいのでそうしている。

 改革が終わり次第、新国王を選定するつもりだ。

 

 また、製紙工場が安定的に稼働次第、国民に採算度外視でトランプを配る。

 これは国民に向けたプロパガンダだ。

 正直、今フェアンベルゼン王国にむけられている感情というのは必ずしも、いいものとは限らない。

 相手は戦勝国でこっちは敗戦国なのだから当然だ。

 そこで娯楽の少ないこの世界に娯楽用品としてトランプを配れば、フェアンベルゼン王国国民も多少はわが国への見方を変えるだろう。


 後は配布はしないが、囲碁や将棋、リバーシといったものも世に流通させる。

 そうすれば国民の意識はさらに友好的なものになるだろう。

 

 最後に、我が国もフェアンベルゼン王国も行う改革についてだ。

 

 まず、以前国際会議で提案した、『大陸同盟』を締結する。

 これによって共同での技術開発を行うことができる。

 さらに通貨を統一することで経済的にも双方が物流を流動的にすることができる。

 連合軍に関しては必要時に結成するということにした。

 

 後は貴族制の廃止と私兵の廃止だ。

 これからの時代、間違いなく戦争は国家総力戦になる。

 そう言った場合、貴族制と私兵という制度は国家総力戦を妨げるだろう。

 なのでフェアンベルゼン王国、ヴィクトワール王国双方で貴族制と私兵は廃止する。

 要は前世の廃藩置県だ。

 ただ、現状領地を治める貴族にはこれからもその土地を治める知事になってもらう。

 だが、貴族の地位に胡坐をかき、ろくな政治をしない貴族がいるのもまた事実。

 そこで、少ししたら無能を排除するために選挙行う。

 投票権はその土地に住む者とし、現在の領主を存続させるか、降ろすかを投票してもらう。

 もし降ろされたら、こちらから新たに人を派遣する、といった感じだ。

 ただそれは、貴族にとっては何のメリットもないので、貴族制廃止の際、その土地の名前は永遠にその領主の名前を使用する事とする。

 そうすれば名誉を重んじる貴族たちにとっては喜ばしい事だろう。

 それでも納得しない場合には武力をちらつかせる。

 各諸侯には今回の戦いの詳細を伝えてある。

 3万で12万を打ち破った軍隊が来たら、おそらく貴族達は潔く従うだろう。

 それでも従わない場合は戦をする。


 また、今後の共同技術開発として、電気の研究、レシプロ発動機の研究、戦車の研究、航空機の研究を重点的に研究していく。

 勿論、他の分野も、特に魔法の分野も研究していく。

 私の予想だが、これからは兵器と魔法を組み合わせたものが主力となっていくだろう。

 科学的な兵器と非科学的魔法、その二つが交われば、間違いなく強力なものが生まれる。

 名付けるなら『魔導兵器』だろうか。

 私的には『魔法兵器』でもいいのだが、青木少尉が絶対にこっちのほうがカッコいいと言っていたので『魔導兵器』にした。

 未来人の感性はよくわからないな....


 最後に各国の動向について。

 各国は今回の戦争にたいそう驚いているらしく、各々銃についての研究を始めたとのことだ。

 ほかにも今回行われた塹壕戦についても研究しているらしい。

 

 後はクライスト公国は新国王としてリノ・バステルを就任させた。

 リノは正式に国王になったとして私のもとに手紙を送ってきた。

 内容は国王になった経緯、エルベルトの悪口、これからよろしくということだった。

 ただ、私としては彼を国王としては認めないので返信の手紙は送らないことにした。


 そうそう、国際会議の時、私に「神の神罰が下らんことを」などと言っていたイザベル・シードにはしっかりと、今回の戦争についてまとめた手紙を送っておいた。

 せっかくなので最後には『Gott ist to(神は死んだ)t』と書いておいた。

 この世界にはドイツ語は無いので意味は分からないと思うが、私からのささやかな仕返しだ。


 と、話が少しそれてしまったが、以上の内容を本にまとめて、ハベルゼンに渡した。

 これをもとに戦後改革を行ってもらう。


 正直、改革や技術革新には限界が見え始めている。

 というのも、私一人の知識量には限度があり、それ以外は地道に研究していくしかないからだ。

 前世は陸軍に所属していたので陸上兵器についてはいくらかはわかるが、それ以外、例えば海軍や航空機はほとんど知らない。

 

 私があの魔法陣でこの世界に連れてこられたように、ほかの人もつれてこれたらいいのにと思ってしまう。

 待て。

 魔法陣を使っていたということは、あれはおそらくスクロールだ。

 となれば魔力石さえあれば、また呼び出すことができるのではないだろうか。


 私は部屋を出て行ったハベルゼンを呼び止めて質問した。


「なぁ、もしかして私がこの世界に来たように、ほかの人もこの世界に連れてこれるのか?」


「はい、いくつか制約はありますが、可能ですよ」


「その制約とはなんだ?」


「まず、あれは特殊な魔法石を使用しているため、あと呼べる回数は3回までと限られています。あとは別世界で死んだ者でないと呼び出せません」


「呼び出す人は指定できるのか?」


「ええ、魔法陣に手を当ててその人を強く思い浮かべたら、高い確率でその人が呼び出されると思います」


 その言葉は私にとってこの上ない僥倖だった。

 海軍や航空機について知っている者を呼び出せば、技術革新はさらに早い速度で進む事だろう。

 となれば早く行うべきだ。

 私はハベルゼンに準部ができるかどうか質問した。


「その準備は今からでもできるか?」

 

「ええ、スクロールはそのままですので2時間後くらいにはできるかと」


「ならばすぐにとりかかってくれ。最優先事項だ」


 私が少し興奮しながらそう言うと、ハベルゼンはわかりましたといって、その場を去った。

  

 後は誰を連れてくるか。 

 ここは、前世で同じ日本人だった青木少尉にも意見を求めてみよう。

 確かこの時間、青木少尉は練兵場にいるはずだ。


 私はさっそく練兵場に向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ