表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/13

◇7

 あんなに窮屈なドレスを着たくなくて選んだ、騎士の道。


 それなのにどうして、任務で着なくてはいけないんだ。



「あらまぁ、とっても細くていらっしゃいますね」


「どうも」



 何故、貴重な休みの日にこんな煌びやかで華やかなドレス専門店のブティックに足を運ばないといけないんだ。まぁ、すぐそこにいらっしゃる騎士団長様に連れられてしまったのが正解だけれど。


 任務と言われてしまった以上、騎士団員の私に選択肢は全くない。けど……どうして団長様自らここに来るんだ。サイズの採寸だけなら私一人でもよかったのでは?


 はぁ、と心の中でため息をついてしまった。ようやく終わった採寸に安堵し脱いでいた上着を着直した。そして、カーテンの向こう側で待っていた団長様の方にすぐに戻った。



「採寸、完了いたしました」


「そうか」



 ソファーに座り待っていた団長様の近くに立つ。けれど、私この後どうしたらいいの。もう帰っていいか。というか、人払いされてませんか。


 と、思っていたら団長様はソファーから立ち上がり、私の手を引き進んだ。目の前にある、いくつも並べられたドレスを着たマネキンの前に立たされる。



「どれがいい」


「……」



 私が選べと。そういう事ですか。でも、肩を抱き寄せないでほしい。触れられた瞬間肩が上がりそうになってしまい全力で抑えたけれど、気付かれただろうか。



「……右から二番目が、動きやすそうかと」


「好みで選んでくれ」


「……任務、ですよね」


「任務は建前だ」



 ……職権乱用? 思いっきり、自分の口で言いましたよね。


 でも、やめてほしい。そんな事言われたら……勘違いしそうだ。


 何色が好きだ、と言われて青と答えたけれど……流石にドレスを着なさ過ぎて選べと言われてもどう選んだ方がいいのか分からない。ドレスより制服の方がしっくりきてしまうのだからしょうがない。


 今だって、任務だからと裏口から建物に入ったのだけれど……プライベート服とあってスカートではなくズボンだ。スカートからして何年ぶりか分からない。



「……団長様に選んでいただけると、光栄です」


「団長様、か」



 ……気を悪くしたか? と思ったけれど、くるっと身体を回されてそちらに向かされ、顔を至近距離で近づかせてきた。軽く抱きしめられてしまっているから、逃げられない。どうしよう、心臓の音が煩い。



「この前、ベッドの上で何と言った?」


「っ……」



 あれだ。懐中時計を置いていったあの日。その日を思い出してしまうと、顔が熱くなってしまう。ゆだりそうだ。


 それに、あの日はどうかしてて言えていたけれど、今こんな所でそれを言うのはだいぶ勇気のいる事だ。だいぶ恥ずかしすぎる。けれど、今それを言わないと許してもらえなさそうでもある。


 そう、これは任務だ、任務。そう自分に言い聞かせないとどうにかなってしまいそうだ。



「……リア、ム」


「覚えていてくれてよかったよ。さ、私に選んでほしいんだったな」



 何だか、そう言われると違う意味で選んでほしいと言ってしまったように聞こえてしまう。


 これは、ただ私はドレスがよく分からないから助けてもらおうとお願いしただけであって。あ、いや、だいぶ格上の近衛騎士団の団長様にお願いだなんて恐れ多いわけではあるけれども! そう、ただそれだけ。


 だけど……この心臓のバクバクが治まらない。団長様に聞かれでもしたら……なんて思われてしまうだろう。それがただ怖く感じてしまう。


 ドレスの方に向き直ったのに、いきなり手が腰に移動した。そのせいで分かりやすいくらいに肩が上がってしまう。これはもう絶対にバレてしまった事だろう。もう今日の私は最悪だな、はは……



「なら……これにしようか」



 団長様が選んだドレスは、意外なものだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ