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◇6

 また、この恐ろしい魔王城の扉を開くことになってしまった。昨日はなかなか寝付けず、気が付いたらもう朝だ。絶対に遅刻出来ないとすぐに飛び起き準備をして早めにここに来たわけだが……あぁ、帰りたい。


 震える手で、コンコンッと魔王城の扉をノックしたのだ。



「失礼します。第三騎士団団員テレシア・マーフィスです」


「あぁ、来たか」



 またまた、あの恐ろしい悪魔とのご対面だ。


 鉛のような体を動かし、悪魔の座る席の前にまで進み止まった。



「悪いな、いきなり呼び出して」


「いえ、問題ありません。団長からは任務とお聞きしたのですが……」


「あぁ、潜入捜査に協力してほしい」



 ……まじかぁ、潜入捜査かぁ……なるほど、だから女性騎士だったのか。


 あぁ、帰りたい……まぁ、顔には出さないけれど。バレたら大変な事になりそう。殺される?


 任務内容はこうだ。とある外国人商人を追っているようで、なかなかしっぽが掴めないのだとか。誰かが裏で糸を引いているらしいのだけど……今回とあるお屋敷で行われる仮面パーティーに出るそうだ。


 とはいえ、仮面パーティー参加者の中の数人が、その商人の客らしく、仮面パーティーで商人と接触するらしい。そこを抑えるみたい。



「君は会場内に入るための同行者として協力してくれるだけでいい。あとはこちらで処理する」


「了解しました」



 この仮面パーティーでは、一人の男性が参加するのは珍しい。というより、大半が女性。その中の男性は誰か女性とペアで来るのが普通だそうだ。


 まぁ、仮面をつけてのパーティーなんてものを考えるのは女性くらいだろう。趣向を変えた遊び的な。それに便乗する者もいるだろうし、普通のパーティーには飽きてる人達もいるはずだ。


 なるほど、だから私なのか。そこいらの素人のご令嬢や夫人とだと、何かあった時に足手まといになる。自分の身を自分で守れるような人物でないといけない。


 でも、パーティーかぁ……気が重いな。あの重いドレスと締め付けられるコルセットも付けないといけないし……


 まぁ、任務なのだから仕方ないな。


 なんて考えていた時、座っていたはずの彼が私の横まで移動していたことに気が付いた。反対側の頬に手を添えてきて、耳元で囁いてきて。



「君のドレス姿、期待している」


「っ!?」



 すぐに下がり、囁いてきた方の耳を抑えた。恥ずかしすぎて、顔が火照ってしまって。



「協力してもらうのだから、ドレスはこちらで用意しよう」


「え、あ、は、い……かしこ、まり、ました……」



 見せてきた、少し微笑む、彼の顔。


 ダメだ、顔の火照りが全然治らない。心臓だってバクバクだ。


 どうした、私。こんな事今までなかったのに。



「しっ失礼しますっ!」



 頭が大混乱してしまい、勢いでそんな大きな声を上げてから部屋を急いで出てしまった。


 ど、どうしちゃったんだろ、私……


 さっきまであの団長様の早変わりに戸惑っていたのに。それなのに……それなのに……何これぇ……!!


 そんな私の心の叫びは、誰にも聞かれる事はなかった。

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