9 金と銀の聖女
魔力を解放していると、ドームの魔法陣がまた光出しました。
周囲から小さないながら驚きの声が上がり。
「パルミアさん、そのまま続けて」
プレーニア様に言われ、そのまま解放するけど。祈りのポーズにした方が良いかなと勝手に考え。
膝を着いて、目を瞑り祈りのポーズをする。
何に祈っているかと言えば、祈ってはいない。
目を瞑っているので、分かりませんが周囲のざわめきが大きくなり。
何でしょう?
目を開けると。
床の魔法陣が輝き、その上に二つの魔法陣が浮かび上がって回っています。
私は魔法陣の中心にいて、更に上を見れば複数の魔法陣が重なり球体の魔法陣を形成していた。
凄い。
魔力を解放し続けていると、天井の球体魔法陣は徐々に大きくなります。
そして、地上の魔法陣から光の柱が上がると、ゆっくりとですが地上の光が広がりだしました。
「そこまで!パルミアさん、魔力解放はもうよろしいですよ」
プレーニア様に魔力解放を止められ、私は祈りを止めました。
魔力解放を止めても、魔法陣は輝き続けていますが、地上の光は広がりが止まりました。
「素晴らしいですよ。パルミアさんは第二魔力期は未だですよね?」
「第二魔力期ですか?」
何でしょうか?第二魔力期って。
「おや、知らないですか?第二魔力期とはそのまま魔力が一段上がる事です。小さな子供にとって大きな魔力は身体を壊す原因に成りますから、生き物は成長に合わせて魔力が上がるように出来ています。簡単に言えば女性では初潮を迎えるような事です」
アスペリナ様がコホンコホンと咳をした。
「男性で言えば声変わりですね」
ちょくちょくセクハラを言う人だね。プレーニア様。
しかし、そうなのか。
魔法は生活魔法しか教えてもらってないし、自分で調べた限りは第二魔力期何て言葉は聞いたことがない。
生活魔法くらいしか使えない人にとっては、余り関係の無い事なのかも知れない。
「それって自分で分かるのですか?」
「はい、明確に、第二魔力期を向かえると体力がついたような感じで、魔力がついたと分かります。パルミアさんの年齢では数年後でしょう。多くの人々は、成人の儀くらいの年齢で起こり。魔法が使える様になるのです」
そのような感覚はないので、第二魔力期は来ていないと思いますが。
第二魔力期から魔法が使えるようになると言うのは驚きです。そう言えば、村の子供って生活魔法さえ使っていなかった様な気がします。
ディーくんも普通に使えていましたが、アレって主人公だからだったのでしょうか。
「それにしてもこの魔法陣は」
魔力を切ったのに、未だ輝いている魔法陣を眺め。
「かつて魔王を倒した六英雄と二人の聖女。金の聖女と銀の聖女が神の啓示を受けて対魔王用に作り上げ、残した魔法陣ですよ。この魔法陣があるからこそ、この地に聖都を建設したのです」
六英雄は今では聖騎士の六色として引き継がれ、金と銀の聖女は、世界から聖女の力を持った女性たちが、更に覚醒する事で誕生するらしい。
「第二魔力期とは違うのですか?」
「えぇ、伝承では、全くの別物。パルミア様は、金の聖女としての力が強い様です」
様?
浮かび上がる二つの上下の魔法陣。上が金色に光り、下に銀の魔法陣があり。銀の魔法陣は輝きが弱く。
上に浮かぶ球体の魔法陣も金の魔法陣の方が輝いています。
「これ、消えないのですか?」
「もう魔力は送っていないのですよね」
「はい」
「それなら数時間で消えますよ。」
それまで、このままですか。
それにしても聖女って、こんな感じで探しているなら効率悪そうですけど。
つい疑問が口から出る。
「それは心配ありません。聖女としての力が目覚め始めると、何処にいる誰かを知る術がありますので、その方を招き。パルミア様と同じ様に調べます」
だとすればサブヒロインさんはそれで見つかるとして、ヒロインさんは突然目覚めるので教会は其れまで気が付かないと言う事?
あと・・・様?
「すみません。プレーニア様、先程から私を様呼んでいますか?」
「はい、パルミア様は聖女と認められました。教会の組織運営は教皇である私が上ですが、聖女様方はそれだけ特殊な立場と成られますから、これから呼び捨てはありません」
うわ~、マジですか。
「さて、パルミア様の聖女としての確認も済ましたので、次に移りましょう。パルミア様を聖女の館に」
プレーニア様の言葉に、奥にいた聖女様達はドームの向こうに、私は修道女さん達連れられ後を追う。
その横に、アスペリナ様も続く。プレーニア様とは一旦お別れだそうです。
「あの、アスペリナ様」
「どうしました。パルミア様」
アスペリナ様も私を様付けで呼びます。
「そのように微妙な顔をしないで下さい。ケジメは大事です」
顔に出ていたようです。
聖女と呼ばれる方々の住まいである聖女の館に到着すると、玄関ホールに皆様並びました。
聖女と思われる服を着ているのは、八人。
その後ろに修道女さん達が立ち。一人が前に。
「では、パルミア様ようこそ聖女の館へ。貴女の住まいはこれより此方に成ります。私は銀の聖女候補で、現在、聖女達のまとめ役をしています。レルメイといいます」
レルメイ様は見た所、二十歳くらいでしょうか。
「私と同じ年齢ですよ」
顔に出ていましたか?!
アスペリナ様がボッソと耳うちして来ました。
アスペリナ様は三十歳くらいなので、レルメイ様は見た目がかなり若い。
疑問。
「あれ?あの、私、騎士見習いではないでしょうか?」
「それは両立して貰います。勿論、パルミア様が聖女のみと言えば騎士の訓練は無くなります。それと、騎士の方のみは無理ですので」
答えのはアスペリナ様。
「両立か聖女のみですか?」
「はい、騎士との両立は問題はありません。事実、ここにも一人。聖女と騎士を両立している方がおりますので」
アスペリナ様の言葉に、一人の聖女が手を上げ。アピール。
「金の聖女候補で騎士を務めるエバンケリン。ようこそパルミア様」
褐色の肌に赤毛のショートヘアー、年齢は十代後半に見えますが、二十歳超えだそうです。エバンケリン様はニッカと笑います。
「エバンケリン様は南方系の方ですか?」
「そうだよ。大陸から伸びるパーリュー諸島の最大の島。アウンガーゼンの出身。アウンガーゼン知ってる?金と銀の聖女信仰で銀の聖女が生まれた島。亜流の銀の聖女信仰が国教なのに、私は何故か金の聖女候補。銀の聖女は武も卓越していたと言われていたから、銀の聖女信仰では武術も鍛えるので騎士団にも登録はしている。籍はあるけど、活動は今は聖女よりかな」
エバンケリン様は南方聞いただけですが、騎士団の事や南方の信仰まで教えてくださいました。
あと活動が聖女よりとかあるのですね。
サブヒロインの一人は最初から銀の聖女候補として登場し、後のイベントで銀の聖女として覚醒する。もう一人の金の聖女であるヒロインは最初は騎士を目指し、覚醒後は聖女として活躍する。
二人共に聖女として活躍するのなら、私は騎士よりに訓練した方が良さそう。
「それにしてもプレーニア様が子供と言っていたけど、本当に良いの?」
「前魔王が金と銀の聖女と六英雄に倒され、八百年。前例は沢山あるわ。パルミア様よりも幼くして聖女と成られた方もおりますしね」
「それにパルミア様が聖女の魔力を発現した以上は、教会にて保護しなければいけません。こんにちは、パルミア様。私は金の聖女候補のスカーレス。金の聖女候補は三人しかいなかったので、とても嬉しいですわ」
黒髪ロングのお姉さんな、スカーレス様。
「教会に保護というよりも、教会で囲うが正し気持ちもするけれどね。こんにちはパルミア様、私はエルティ。エバンケリン様、スカーレス様と同じ金の聖女候補です。これで銀の聖女候補が五人、金の聖女候補が四人。歴代の聖女候補の最大人数に成りそうですね」
聖女の魔力保持者が八人、私を入れて九人。
「そうね。でも、聖女候補が少ないとか多いとか。ハッキリ言ってしまえば、その数に意味は無いのよ。聖女の魔力持ちなんて本来は数年に一人現れれば良い方だし。下手すると十年現れ無かった時もあるし、今代の様に大人数の聖女がいた時期もあるわ」
「ようは金と銀の聖女が覚醒し誕生するかどうか。金と銀の聖女は八百年前の二人しか存在しない。以後の聖女の力を持った聖女候補で覚醒した聖女は一人としていないのが問題」
「魔王という実際の脅威が無かったから、不在でも問題は無かった。でも、現在、魔王が再び現れた。もしくは復活した。それが今代の聖女の魔力保持者の多さに繋がるけれど」
「で、パルミア様ね」
聖女の皆様の視線が私に向けられたままです。
いえいえ、ネタバレするわけにはいきませんが、金も銀も別におりますから。
どうやら皆様の中で、私が最有力に成っているようです。
「でも、プレーニア様の話しではパルミア様もまだ覚醒はしていないとの事だから、この話はここまでにして銀の聖女候補の方も自己紹介して終わりましょう」
レルメイ様の言葉に、銀の聖女候補の皆様とも自己紹介して私はアスペリナ様と修道女の方と割当られた部屋に案内され。
言葉を失いました。
広いです。
一部屋で私の実家くらいの広さです。
備え付けの家具や机。ベッドもどれも立派な品だと素人でもわかります。
「えっ」
「はい、今日よりパルミア様の私室に成ります。まずはお着替えしましょう」
戸惑っていると修道女さんに着替えるように促されましたが、私の私室って宿舎ではなかったでしょうか?
「あの、アスペリナ様。私、宿舎に」
「大丈夫です。既にこちらに移動してあります。元より宿舎は仮で泊まってもらっただけですから」
「え?!」
あの歓迎会は何だったのでしょうか?
アスペリナ様はクスッと笑い、アレはアレで飲む口実でもあった事を教えられた。
修道女さんに着替えとして差し出されたのは、黒い修道女の服ではなく。聖女様達が着ていた白い聖女服でした。
聖女服は私のサイズが無く。一番小さい物を修道服と同じ様に手直し、正しコチラは幾度も測っては脱いでを繰り返し。手直しを何度も行います。
「聖女服は金の候補か銀の候補で見れば分かる様に、前掛けに金の候補は金の刺繍が入っています」
修道女さんの話し通り、首から足元迄ある前掛けに金の刺繍が入っています。
「着替えが済ましたらもう一度プレーニア様を訪ねます」
「はい」
聖女服は白いワンピースに金の刺繍が施された前掛け、ベールは無いそうで好きにアクセサリーを着けて良いそうです。
着替えが終わり、修道女さん達は一人を残し帰られました。
残っているのは、スメラギさんと言う名の五つ上の修道女さん。
今年、修道女として教会に入ったそうです。
その年齢で神への奉仕を望みますか。
聖女と修道女との違いに、聖女は引退がある事だそうです。
聖女はあくまでも聖女としての魔力がある事が条件で、三十くらいを目安にその能力は落ちていくらしく。引退をするそうです。
三十といえば、この世界では聖都でさえ晩婚にあたりますが、結婚の申込みは例年凄いそうです。一般的には、聖女の魔力は遺伝しないとされてはいますが、聖女との結婚を繰り返す貴族の中には歴代の中で三人もの聖女を輩出した家もあるそうです。
それに見た目が若い。
一方の修道女は、聖女とは違い。自らの意思で神に仕える事を選んだので、基本は、一生修道女として生きます。
稀に、抜ける人もいるそうですが、その人は静かに消えるようです。
本来のシナリオなら、魔王の手先として聖都を襲撃する役目の私が、聖女候補者。
何の冗談かとも思いますが、その能力があったから魔王の側近に成れたとも考えられ。
複雑な心境です。
アスペリナ様ともう一度ドームに戻ると、プレーニア様だけがまっておられました。
プレーニア様って教皇ですよね?
護衛とかいないのでしょうか?
「おぉ、馬子にも衣装ですな」
その言葉あるのですか、と言うか、失言多いですね。プレーニア様。
「さて、パルミア様には明日より聖女としての勉強していただきますが、騎士としての訓練はどうするかを聞きたいのです」
最後の意思確認でしょうか。
「私としては両立したいですが、聖女の勉強とは何をするのでしょうか」
「聖女特有の魔法。治癒、解毒、浄化、再生。聖女の魔力を発現した人しか使えない魔法で、パルミア様にも使えるように成ってもらいます」
治癒、解毒、浄化、再生。
魔法を覚え始めて、直ぐに聞いた聖女特有の魔法。
長年研究はされているようですが、未だ、聖女の魔力保持者しか使えない。謎多き魔法。
どんな著名な魔術師でさえ、聖女特有の魔法は使えないとのこと。
どうやら私の飛行魔法にもこの聖女の魔力が関わっているらしいというのは、トムリ様の意見。
だとすれば、ココの聖女様達も飛べる?
「アスペリナ様、騎士団の訓練はどのようなものでしょうか?」
「まずは棒術等の訓練で対人戦、それと攻撃魔法の訓練ですね。当然、体力訓練等の基本も行います」
「現在、教会と騎士団でパルミア様の育成について協議していまして、実は両立してもらうと本当に助かるのです」
教会と騎士団が私の教育を話しているって何でしょう?
「プレーニア様、それ以上は」
アスペリナ様がプレーニア様の話しを止めるように遮りました。
よけい気になるのですけど。
「パルミア様、先程、両立とおっしゃいましたが、もし嫌に成れば騎士の方の訓練は中止しますので何時でも言ってください」
何でしょうか。アスペリナ様はプレッシャーを与えないように振る舞っていますが、逆にプレッシャーを感じています。
ですが、私が取るべき道は両立しかありえません。
ディーくんとヒロイン達を手助けするにはそれが最善と考えるからです。
私は、プレーニア様、アスペリナ様に両立ともう一度答えました。