7 街の散策。え、追加パッチがあるんですけど。
ルーファリアさんと街に向かって草原を進む。
来た時はアスペリナさんの馬だったけど、今度は歩き。
騎士団の砦から三キロ程。見渡しの良い草原が広がって、所々で巡回の兵士を見かけた。
兵士さんたちは私達を見つけると近づいて来て、ルーファリアさんに気がつくと駆け寄り。
ルーファリアさんと話して去って行く。
街に着くとまずお昼にする事に成った。
この世界、一応は一日三食が普通。
朝と昼はガッツリ食べて、夜は簡単に済ませるのが一般的。
私はお腹が空いている。
ルーファリアさんのオススメの酒場に向かった。
「ここ、安くて美味いから覚えといいですよ」
聖都所属の騎士って高級取りじゃなかった?
と思っていたのですが・・・。あー。
目の前に盛られた大盛りパスタにお肉の塊。
お肉が主食。
ワイン。
食事のエンゲル係数が異常。
私は普通にチーズクリームパスタとワイン。
「それだけで足りるの?もっと食わなきゃ筋肉つかないよ」
「いえ、十分ですので」
見ているだけで胸焼けするとは聞いたことがありますけど、実感したのは初めてです。
私が口の中に残った最後のパスタをワインで流し込むと同時に、ルーファリアさんも食べ終えた。
大食いも早食いも身体に良くないですよ。
私は呆れながら、食事を終えたルーファリアさんを見る。
こんなキャラだった?
ルーファリアさんは、三杯目のワインを飲み干し一息つく。
「さて、買い物と街の案内ですね。泊まるのは宿舎ですか?」
宿舎は元の砦の事。
「はい、昨日は宿屋でしたが、アスペリナさんが今日から入れるように手配してくれています」
「むぅ、隊長。手間暇かけていますね」
ルーファリアさんにしてみれば、見慣れない新人に尊敬するアスペリナさんが時間を使うのが嫌なのだろうとは想像がつく。
私としてはルーファリさんと溝が出来るのは困る。
「すみません」
「あー、大丈夫です。確かにアレだけの事が出来る者を学園に入れるわけにはいかないでしょうし。正直、私もあの魔法はビビリましたから」
ルーファリアさんにしても即戦力は歓迎と言ってくれる。
溝は出来なくて済みそうかな。
食事を終えて、街に二人で繰り出す。
「日用品とかを見ますか」
私が持って来た荷物は数日の着替え、それもただの普段着。小物類と剣が一本。アスペリナさんの馬と一緒に持って来たので、荷物はそれだけ。
ルーファリアさんに連れられ、雑貨屋を巡る。
歯ブラシにコップ。
コップはいらないけど、歯ブラシは新しい物が欲しいな。村では行商人が来ないと買えなかったしね。ところで、歯ブラシの毛は馬の立髪使っている。プラはない。
手作りなのでいい値するんだ。
お金はアスペリナさんから支度金としてちょっとビビる金額を貰っているけど、持って来た物で事が足りれば別にいいけど・・・。
「これなんか可愛いですよ」
ルーファリアさんが、何やら可愛らしいコップとかを勧めてくる。
「パルミアさんは、見た目可愛らしいのに堅実ですね」
見た目と堅実は関係ないと思うのですが、ルーファリアさんの持つ私の印象は可愛い物が好きのようです。
「服とか可愛らしいから」
「服や下着は母の趣味です」
どうやら服装で、可愛らしい物が好きと見られていたみたいです。剣とかやっていたせいで、母は私を可愛らしくするようにしていました。
環境に引っ張られると言うのでしょうか。
肉体に馴染むと言うのでしょうか。
脳が女脳とでも?
洗脳とも。
ま、十数年女の子でいると、元・・・の感覚はもうチリ程度にしか残っていません。
元から、元・・・の記憶はゲーム以外曖昧でしたしね。
はい、可愛い物好きですよ。
それでもいらない物まで可愛らしいを理由に買いなおす気はないです。
消耗品をいくつか買い、服を見に行くことにします。
私はロングのスカートタイプの服装しか持っていません。
確かに村では一般的な服装ですが、決して女性がズボンを履かないなんて事はないです。作業なんかはズボンを履きますし、風強い日や雪の日もズボン履きます。
履かないのというより、履かせて貰えないのは私くらいでした。
おかげで風の日とかはスカートが捲れて大変な思いをしていました。
原因は、私なので母の決定に文句は言えません。
ルーファリアさんが案内してくれた洋服屋さんは何か高そうです。
「あのルーファリアさん、ここ高級店じゃ」
「其処まで高くないですよ。でも、騎士たる者は普段着でも気にしていないと駄目ですから」
安い服でダラダラ着ていてはいけないらしいです。
アスペリナさんくらいになると、本当の高級店で仕立てるらしいです。
私は勿論、ルーファリアさんも其処までの服はいらないらしいですが、身なりはキチンとしてないといけないらしいく。
そのうちドレスも用意しないといけないと忠告されました。
アスペリナさんがビビる金額をくれる理由です。
日用品より此方がメインだったらしい。
仕方なくルーファリアさんとお店に、まずは動きやすい服は買いましょう。
ジャージとかは当然無いのですが、ルーファリアさんから話を聞くと訓練着は支給されるらしく。
ルーファリアさんが勧めて来たのはやはりワンピース系の服でした。
ズボンを買おうと思ったのに何故!?
因みに、ルーファリアさんはズボンを履いています。
「いえ、ズボンが欲しいのですが」
「パルミアさんには似合わないと思いますよ」
私は先程の飛行魔法の事で欲しいのだと伝えますが、ルーファリアさん、それならこっちではと裾が広がっているパンツ系を持ち出して来ます。
「でも、パルミアさんには、やっぱりスカートかな」
何でしょうか?
ルーファリアさんの様子が変わってきているのですが、何かお姉さんぽく成っているような。
戸惑いながらどうにか予定通りにズボンを一つと下着を一式。
胸の成長が止まりません。
エロボス担当とはいえ、肩が凝るとは比喩では無かったのだと実感している日々です。
下着でも何故かルーファリアさんが色々着せようとしてきて、困惑しました。
過激なのは必要ないです。
村でしたら、男の人との結婚は仕方なく諦めるところですが、村から出たのですから無理に男を喜ばせるつもりは無いです。
自分用でもいらないかな。
その後、今履いているのがサンダルなので、ブーツも買いました。
思った以上に買ってしまった。
もう少し買い物と街を見て回りたかったけど。大荷物に成ったので、そろそろ宿舎に向かう。
「明日は、街を見て回ると良いですよ。ただ、この街でも治安の悪い場所もあるから後で教えるね」
ルーファリアさんに、迷った時の聖都の歩き方を教わりながら宿舎の旧砦に向かう。
「あ、ルーファリアさん!」
戻る途中、兵士に声を掛けられる。
「ちょうど良かった。ルーファリアさん少し良いですか?」
兵士とルーファリアさんは何やら話している。
「パルミアさん、少し用事が出来たので先に宿舎に戻るから、荷物は持って行くわ。まだ、買いたい物あったでしょ。七の鐘が鳴ったら八の鐘が鳴るまでに宿舎に来てね」
兵士さんが私の荷物を持ってくれ、私は一人で買い物に戻る。
「さて、何処に行こう」
ゲームでは選択式なので、現実で歩くと方向が良く分からない。
「あるはずなのよね」
とにかく歩いて目的の店を探しながら街を観光する事にした。
目的の店は見つかればラッキーくらいに考えといた良さそうかな。
ごちゃごちゃした街並みと行き交う人々を見ながらそう思う。
時間は、まだ五の鐘が鳴ってたいして経っていないはず。
でも、一日で見て回れる程。この聖都は狭くない。
ルーファリアさんは聖都の城壁内で買い物を済ませていたけど、私の目的は城壁の外側に有る筈なので、城壁の外側に向かう道を進む。
基本、外と内の街の行き来は自由。治安的に大丈夫かなとは思うけれど、イチイチ調べていたら切りがない程に、今でも多くの人々が行き交っている。
私が門を通ると兵士さんはチラッと見てくるけど、内側から外向かうので何も言っては来ない。
私の格好は、一般的なワンピースの服に剣を下げているから、声を掛けられてもおかしくない変な格好とも言える。
街の外側は、内側が街並みとしてあったのに対してメインの通りはしっかりしているものの少し離れると道が迷宮のようにウネッていたりする。
メインの道から外れ。初めのうちは馬車が行き交うくらいの広さがあるものの、更に奥に行くと馬車一つ分あるかどうかくらいの道に成った。
そこから奥は完全に人一人くらいの道が外側の城壁にぶつかるように出来ていた。
土地の所有権何て無いんだろうなと、思う感じで建物が出来ている。
最悪飛べば良いのだけど、怒られるのでやらない。
ゴチャゴチャした街並みだが治安は良いらしく。行き交う兵士を偶に見る。
何かあれば直ぐにやって来るだろう。
私は感じていた。
迷ったと。
六の鐘が成ったので、そろそろ探索を終えて城壁が見える道に出たいのだけど。
参りました。
どうしましょうか?
小道に入ったのが間違いなのですが、目的の店はこの様な小道にある筈なので入らないといけないのです。
小道の先から喧騒が聞こえて来る。
「はう」
小道から突然大きな道に出た。
異常な明かりが街を包んでいた。
まだ、日射しはあるのに赤や黄色、紫に青と光が灯されている。
「何、ここ?」
行き交う人も門の辺りとは全然違う。
女性は華やかと言うか、過激、セクシーな服装で着飾り。街では余り見かけなかったメイクもしている。
行き交う男性に声を掛けている?
あれ・・・。
店を見れば、酒場らしき店やガラス越しに店の中から手を振る女性達?
ここって。
「追加パッチの裏ルートの繁華街じゃない?!」
久々にエロゲーだと思い出した。
このゲーム、主人公はディーくん。
裏ルートのパッチを追加する事で、繁華街が加わり。色々楽しめる要素が増える。
ダーク主人公を遊べる仕様に成っている。
繁華街でモブと遊ぶのもよし、カジノに入り浸るのもよし。
金が無くなれば、仲良く成ったヒロインにその手の店で働かせるもよし。
攻略目的ヒロイン以外をセレフにするも自由。
うわ~、マジですか?
「君、こんな場所で何をしているんだい」
困惑していると、声を掛けて来たのは兵士さん。
「ここは君の様な子供が来る場所ではないよ」
た、助かった。
私は兵士に駆け寄り、道に迷った事を伝える。
兵士さんは巡回警備の途中らしく。私が道に迷ったと伝えると、親切に城門のある大通りの方に抜ける道まで案内してくれた。
私は一先ず繁華街への道を覚えた。
私の知るディーくんがこんな場所を使うとは思わないけど。
使わないよね。
使ったら嫌だな。
弟のように思っているディーくんから、男を感じるのは嫌悪感が半端ない。
肉体に、引っ張られているのか。女としての本能なのか、そんなディーくんに気持ち悪さを感じてしまった。
ところで、この繁華街は、例の店を探すのに役に立つので道を覚えておく。
繁華街から抜け出し再び城壁の内側に戻ると七の鐘が鳴ったので宿舎に向かうことにした。