5 聖都。セクハラはアリですか?
聖都。
元は山脈にて倒した魔王の復活や魔王の残滓で生まれる魔物と戦う為に、魔王討伐後。教会本部が造られたのが始まり。
そのうち人が集まり。街と成って、更に人が人を呼び。三十万もの人が住む都と成った。
この為、現在の聖都は、二重の城壁と先端の砦が街を守っている。
第一の城壁。内側にある城壁は、最初に作られ。教会関係の建物しか存在しない。
第二の外側にある城壁は、元は砦だったが、教会の周囲に街が出来始めて、街を守るために街を囲む城壁に作り変えられた。
現在はその外側にも街が広がっている。
今回の襲撃で一番攻撃されたのは、聖都から三キロ程離れた場所に作られた騎士団の砦だった。
砦は山脈に向かって造られている。
砦と言っても、現在は、東西に五キロばかりの城壁を張り出した長城であり。
新しい街を囲む様に第三の城壁に成りつつある。
現在は、多くの兵士や騎士が滞在し、育成の為の学園もココにある。
私達は、まだ城壁の無い西側の通りから街に入りそのまま外側の城壁を抜ける。
城壁の門には兵士がいるけど、アスペリナさん達を見て敬礼してそのまま通り。
着いたのは夕方だった 私とアスペリナさんは他の兵士と別れて、教会のある内側の城壁へと向かった。
アスペリナさんの話しでは、外側の城壁は最初の騎士団の住居等の名残もあるようで、今でも騎士や兵士の宿舎として使っている。
ついでに街の治安を守り。市民の要望を聞く為の施設でもあり。警察署みたいな扱いだなと思った。
内側の城壁に入ると正面に大きな広場と教会神殿。
アスペリナさんは広場を迂回するように進み、神殿の裏へ。
裏には門があり、兵士がいる。
外の門を守っていた兵士とは、違う鎧を着ている事から教会所属の兵士らしい。
アスペリナさんに兵士は敬礼。アスペリナさんと私はココで馬から降りた。
「このまま教会のお偉いさんに会ってもらうよ」
一日、馬に揺られてお尻が痛いけれど、そうも言っていられないみたいだ。
家に帰れと言われても困るので、少し心配がある。
「あの人って聖女さまですか?」
馬を降りて神殿を進んでいくと少し先の場所で、修道女らしい人が光の魔法をガラスの筒に入れていた。
通常、光の魔法は夜の明かりとして使われいるが、持って一〜二時間。
ルームライトというよりも懐中電灯くらいの明るさで周囲を照らす。
「いや、普通の修道女だね。聖女はこの辺には居ないよ。あと服装も白を基調にした服を着ている黒は修道女だね」
そうなんだ。
イベントは覚えているけど、修道女の服装なんてそんな細かい事は覚えてないかな。
そう言えばサブヒロインの聖女さんはヒロインさんは、白い服を着ていたね。
そうか、聖女は白い服か。思い出した。
ゲームの細部結構忘れているみたい。
そんな事を考えているとアスペリナさんと神殿奥の建物の一室に着いた。ここが目的の場所らしい。
アスペリナさんがノックして入室の許可が出て部屋に入ると、明るい部屋には一人の男性と言うか人の良さそうなお爺さんがいた。白いヒゲが特徴の痩せ型の見た目にも何か上質な服を着ている。
「こちらは教皇プレーニアさま」
きょ、教皇?!
教会の超お偉いさんじゃないですか!!
よもやのトップ。
因みにゲームでは、そんな人がいるだけの存在。
一気に緊張する。
「は、はじめまして、パルミアといいます」
「アスペリナさん、彼女が報告にあった女性ですね。思っていたよりも少女で驚きました」
プレーニア様は微笑みながらも私を値踏みするように見つめていた。
それは女性に向けるような視線では無く。
何か別の物として値踏みされているような気がした。
「すみませんね。アスペリナさんの報告に気になった事が書かれていたので、無理して来ていただいたしだいです。空を飛ぶとか?」
緊張が更に高まる、
「はい、飛べます」
「・・・では狭いですね。場所を変えましょう」
教皇プレーニア様を先頭に建物の外に出て別の建物に、周囲には巡回の兵士が見える。
「ここで良いでしょう」
十分程歩いて、入った建物は、かなり広いドーム状の場所。天井も一番高いところでは三十メートルはありそうで見えにくい。
「ここは聖女達の祈りの場所です」
聖女の祈りの場所。ゲームではイベントであったと思うけど?
「聖女達はここで祈りのを捧げ、魔物退治に同行するのですよ」
祈りの場所と言うには、この場所にはただ広いだけで、彫像も教会のシンボルも何も無い。
何も無いけれど、何処よりも大事な施設。
プレーニア様の言葉からはそんな印象を受ける。
そんな場所で、魔法を使って良いのかな。
「始めてください」
良いのかなぁと思いながらも教会トップに言われれば、まぁ、怒られ無いだろうと私は浮き上がる。
「おぉ、本当に飛んでいる」
そのまま一番高い場所に移動して、ドーム内を飛び回っていると。アスペリナさんやプレーニア様が立っている床が光だし魔法陣が浮かび上がった。
この魔法陣は知っている。
思い出した。終盤のイベントで、大事な場面でヒロイン達が祈りをする場所。
こんなのがあるなんて、確かに重要施設だ。
「降りてきて下さい」
プレーニア様の言葉に床に降りて魔法を解除すれば、魔法陣はゆっくりと消えていく。
「素晴らしい。空を飛ぶのもそうですが、魔法陣をここまで輝かせるとは素質も申し分ない」
どうやらプレーニア様は、ただ単に飛行魔法を見るだけでは無かったようで、流石は教皇。人の良さそうなお爺さんでは無かった。
「ところでパルミアさんは処女ですかな」
突然のセクハラ発言。
教皇。それはパワハラ、セクハラですよね。
と言っても、そんな言葉この文明の成熟ではないのかな。
セクハラ、パワハラってあの世界でも近年言われ出した倫理感だし。
「プレーニア様、それは普通にセクハラです」
と、思ったらアスペリナさんがプレーニア様を嗜める。
あるんかい!
「すまんすまん。まぁ、そうだね。そう言えば、パルミアさんの剣技はアスペリナさんの見立てでは四級だったね」
「はい」
四階級とは、剣技や魔法技術に関して国が定める実力を測る為の基準で、剣技も魔法も階級無しから始まり。五級、四級と上がり。一級の上に特級がある。七階級で示される。
で、四級は普通に一般兵士レベル。個人剣技で多数は相手出来ないくらいの実力。
「あとは魔法そのものか、それは明日、騎士団でしらべて報告して下さい」
「はい」
「それではご飯でも一緒にいかがですか。お腹が空いたでしょう。まだ、教会の食堂は開いているはずですから」
プレーニア様は、教皇がそれで良いのかというようなノリで、私とアスペリナさんを連れて教会の食堂に向かう。
話しを聞くと、プレーニア様。食べ歩きが趣味らしく、教会を抜けて下街に行くことも多いらしい。
教会の食事。根野菜たっぷりのスープとパン。
美味しかったです。
その日、プレーニア様と別れて寝泊まりに利用したのは、内側の旧騎士団砦の側の宿屋。
遠くから来た別の場所の騎士団や兵士が泊まる常連の宿らしく。
常に二室は開けて置いてくれるらしい。
それがなければ、魔王復活の前兆が起きた為に遠方から招集された騎士達で宿は満室状態らしい。
アスペリナさんが朝迎に来てくれて、他の騎士達と一緒に朝食を取る。
朝食は、所謂ベーコンエッグとスープ。
この世界でパンやご飯の代わりに食べられている。ママンと呼ばれる具なし蒸し饅頭。
朝食を食べていると、視線が来ているのを感じる。
アスペリナさんと一緒にいるガキは何だって感じの視線。
アスペリナさんは村ではそんな感じは出さなかったし、村在住の兵士さんもそんな感じは出さなかったけど。
アスペリナさんかなりの有名人で、且つ、騎士団でもお偉いさんだった。
赤い肩掛しているものね。当然か。
赤い肩掛は赤の聖騎士の証明。
聖騎士は騎士や兵士の最上に立つ者の地位で、赤・青・緑・紫・白・黒の六色。つまり、騎士でも六人にしか与えられない。
二十代の若さで、異例の出世。因みに、騎士団は性別・年齢は考慮されない実力主義。
魔物相手をするなら当然の話。
今回の奇襲でもアスペリナさんが中心に再編した部隊が活躍したらしい。
視線の痛い朝食を終えて、アスペリナさんの馬の後ろに乗って今の騎士団の拠点である外側の砦へと向かった。
馬だと砦迄直ぐ。
砦に着くと、門番の兵士さんが敬礼をしてアスペリナさんの馬を預かるり。アスペリナさんと一緒に城壁にそって東側に向かう。
そこにあったのは巨大な訓練場。
巨大と言っても建物があるわけでなく。グラウンドって感じの開けた場所。
既に数人の騎士や兵士が訓練に励んでいた。
アスペリナさんが訓練場に入ると、アスペリナさんに気がついたのか訓練していた人達が訓練を止めて近づいて来る。
「アスペリナ様、言われた通り本日午前は貸し切りにしてあります。で、その娘が連絡のあった」
「そう、で、皆には立ち合いをお願いしたい」
「分かりました」
訓練していたのは、私を判定する為の立ち合い人の人達でした。私達が来るまで暇だから訓練していたみたいです。
「それじゃ、紹介するわ。この娘の名はパルミア。私がよく話していた村で剣の稽古を見てあげていたの」
「アスペリナ様から良く話しは聞いていました。私はガー。本日の立ち合い人を務めます」
白髭の渋いオジ様って感じのガーさんが、数人の立ち合い人の代表みたいだ。
ガーさんはゲームでは見ない。
「それでは早速、剣技からでよろしいですか?」
「そうですね」
アスペリナさんの頷きで一人の兵士が前に出る。
「よろしく、俺は学園で教師をしている剣術科のバグロイ。今日の相手だ」
バグロイ・・・そう言えば教官役で見たことある人だ。
「よ、よろしくお願いします。パルミアです」
緊張しながら挨拶すると。
「まて、その服装でするのか?」
私の格好は一般的な女性のワンピース。
剣を振るう格好ではないけれど。
「大丈夫です。村ではこの格好で稽古していましたから」
そうじゃないと両親が許してくれなかったし。
「そ、そうか、それじゃ軽く剣の素振りをしてくれ」
戦うのかと思えば、剣の素振りをしてくれときた。
戸惑いながら言われた通りに、素振りを開始する。
素振りっと言っても剣道のように打ち込みではなく、打ち込み横撫切り返しを組み合わせたのが、この世界の打ち込みだ。
「ほぉ、じゃ、次は軽く手合わせか。剣はそのままで良いぜ」
バグロイさんが木剣を持って、私の前に立つ。
私は訓練用の木剣ではなく。細身だが普通に剣を使っている。
二三度、フェイントを混ぜながら打ち込む。当然、防がれ。次に、上段から下段からの切り上げ。
コレも防がれる。
その後、何度も打ち込むが全て不発。
私は息が切れ始めているのに、バグロイさんは何も変わっていない。
「よし、ココまで」
バグロイさんは突然中止を言い放つ。
「確かに四級程度はあるな。ただ・・・少し待っていろ」
そう言ってバグロイさんは砦の方に向かう。
「バグロイは剣術に関しては一流だよ。私でもそうそう剣術だけでは勝てない」
アスペリナさんは砦に向かったバグロイさんを見ながら、微笑む。
アレ?
バグロイさんが戻って来るまでに話しを聞くと、バグロイさんは剣術では騎士団でもトップクラス。教官をするくらいなのだからそうなのだろうが、魔法がカラッきし駄目らしい。
使えるので生活魔法がやっと。
この為、騎士ではなく。兵士なのだとか。
騎士と兵士の違いは、攻撃魔法が使用出来るかで違うそう。
それでも実力主義、剣術の優れた兵士には騎士達でも頭を下げて教えをこうらしい。
バグロイさんが戻って来た。
手には何やら長い棒が握られている。
「コレを使ってみろ」
私は差し出された二メートル程の棒を掴んで途方にくれた。
「パルミア、お前は剣術はあるがリーチが不足だ。同じ四級いや五級でもリーチにモノを言わせれば負けるだろう。だが、それならリーチ分は補える」
理由は解るけど。
棒術って。
そこからしばらく棒術の訓練に成った。
「思った通り筋は良いな。正直、その服装で良くそれだけ動けるとは感心するし、基本とはいえこうも早く出来るとは、よし軽い手合わせだ」
棒でバグロイさんと二回目の手合わせ。
と言っても棒はさっき始めたばかり。当然、相手何てならないけど。
「おー、危ない。そこから突きを出すか」
精一杯のフェイントで突きを繰り出すが、コレも避けられた。
「よし、コレで終了だ。どうだ、アスペリナ様」
「うん、そうだね。流石、バグロイさん。剣では届いていないとは思ったけど。コレなら背の低いパルミアちゃんでも十分に戦える」
私は少し不満だけど、アスペリナさんの評価は高い。
「まぁ、心配するな。棒術は様々な武器のタイプがあり。応用も効く。騎士団には面白いモノがあるから、用意しておくぜ」
「それでは次は魔術ですが」
ニッと笑うバグロイさん。ガーさんが次はと言うけれど。
一先ず休憩する事に成った。