3 トラウマを回避する為に
「誰だ!」
男達の声が響き、私は接近しながら爆炎の魔法を飛ばし、炎は魔物にぶつかり、魔物の身体を吹き飛ばす。
力はあるが動きが鈍く、嗅覚が鋭くない魔物達ばかりで助かった。
嗅覚が鋭い魔物がいたらこの奇襲は成功していない。
次々に魔物の数を減らし、魔物を駆逐していく。
「襲撃だ!」
男達の慌てた声が響く。
遅い。
最初の一撃で直ぐに反応しないと駄目だけど、おかげで此方は助かります。
上手くいっている。
油断。
後で考えれば、この時、私は男達の前に出る必要は無かったのです。
でも、この時の私は、男達の前に出てしまっていた。
「そこまでです!魔物は倒しました。直ぐにこの場から引き返してください!」
「あぁん、小娘じゃねえか!?」
「うるせぇ、ガキが!」
私の姿を見たことで、男達は怒ったようだ。
「爆炎」
手の平に魔法陣を浮かばせ、力ある言葉で放つ。
男の一人の手前に小さな手加減した爆発を起こし驚かせます。
「こいつ攻撃魔法を使いやがる!」
先程魔法で、魔物達を駆逐したのに男達は今更に驚いていた。
「次は当てます!」
生活魔法は使えても、攻撃魔法はそれなりの魔力が必要に成るので一般的に使える人は限られ。
脅しには十分な筈。
「うるせぇ、相手はガキ一人やっちまえ!」
なのに物凄く使い古された言葉で、向かって来る。
身体強化を使い男の剣を受け止める。私の身体強化は筋肉のパワーを上げるとかではなく。魔力で身体を覆うように補強するパワードスーツのようなやり方。
「雷」
スタンガン程度の電気ショックの魔法で、向かって来る男達を一方的に地面に倒れさせる。
少しすれば、また立ち上がるけど流石に男達も近づいては来ない。
いい加減、諦めて欲しい。
「パル姉ちゃん!」
そこに飛び出して来たのは、お約束の主人公の行動か。ディーくんでした。
そんなお約束いらない。
「こいつ等悪いヤツラだね。僕も倒すの手伝う!」
正に主人公。
うん、主人公なら仕方がないって、ヤメてぇぇぇ!!
ディーくんは私と訓練していると言っても、何処か遊び感覚が残り。真剣に訓練してはいない。
それでも向かった男と互角以上に戦えるのは、主人公だと思わせる。
「ディーくん下がって!」
ディーくんが主人公とは言っても、相手は人殺しを普通に行う様な者達だ。
ディーくんは剣では押していたが、相手の砂かけや石投げに対応出来ず。私も残りを相手しながら援護して下がるように言ったが、遂にはディーくんは捕まってしまった。
「ディーくん!」
「動くな!!」
ディーくんと連携が取れていなかったのも原因だろうけれど。
上手く支援出来なかった。
「おい、剣を置いて腕を上げろ」
ディーくんのトラウマ回避の為に頑張ってきたのに、コレではトラウマをより植え付けてしまう。
起死回生の方法を考えてはいるけど、どうしても高威力魔法ではディーくん迄も巻き込んでしまう。
「おい、動くな!剣を捨てろ!ウデを上げろって言ってんだろ!」
運命には逆らえないのかな。
私は剣を森に捨て、手を上に。
ディーくんが叫んで暴れてはいるけど。逃げ出すのは無理そう。
主人公だろうが、所詮は大人と子供。本気で押さえられれば、ディーくんでは逃げられない。
ボコボコにしていた男が近づいて来る。
「がひゃ!!」
男は渾身の力で私の顔を打ん殴って来て、吹っ飛ぶ。
「パル姉ちゃん!パル!!」
ディーくんの声が響く。
おい、私は一応女だよ!顔は止めて欲しい。
地面に転がされて、馬乗りしてきた男に幾度も顔やお腹を殴られる。
一方的な暴力。
マウントで殴られ、口の中は血だらけ。
内蔵も無事か分からない。
ごめんなさいは絶対に言わない。
「おい、その辺にしておけ」
「あぁん、だが、このガキはよ!」
「ガキでも女だ。顔もいい、楽しみ方はもう一つあるだろうが。身体もなぁ」
別の男の言葉に、馬乗りの男は立ち上がると気持ち悪い笑いを見せ。
「おい、立てよ」
私は、殴られた痛みを我慢して立ち上がる。
「へへへ、動くな怪我するぜ」
男は手にした剣を私の服の中に通すと。肌に触れない様に引き上げていく。
衣類は高いんだぞ。
私上半身は、男達とディーくんの前に晒され。
男が私の胸を見て下卑た笑いをし、ディーくんは顔が真っ赤。
「ディーくん、見ないで!!」
急に恥ずかしく成って、ディーくんを見る。
「お〜、思った以上にいい身体してんじゃねえか。あっちのガキも見とれているぜ」
魔王側のエロ担当ですので、スタイル良いに決まっていますからね。
「おら、謝れよ。そしたらコレで止めて貰える。かも!しれんぞ」
かも・・・ね。
この男は、女にボロボロにされたプライドから言っているんだろうけど。止める気ないだろうし、嘘でーすとか言って続けるだけ。
「包茎のクセに粋がってさ。弱い男はソッチも役立たずでしょ。犯るなら早くしなさいよ、ゴミ」
ムカついたので、煽るだけ煽ってやった。
私はそこまで感じないが、この世界、傷物の女性の立場は酷いもの。
両親は傷物の私を抱え、村で肩身を狭い思いをさせるとなると申し訳なく思う。
こんな私を育てくれたのに、本当に申し訳ない。
男は怒ったのか、私を地面に押し倒した。
上に乗ってきた男から顔を背けると、ディーくんと目があった。
見てる!!!
運命は回避出来ないのかな。
心の中で、両親に謝りながら、馬乗りの怒り狂った男に乱暴に扱われた。
好き放題に、男に蹂躙され。
脚を開かれ、男も服を脱ぎ捨て覆い被さって来る。
抵抗はもう力が出ない・・・。
あとはもう・・・。
・・・勝った。
ディーくんを捕らえていた男が悲鳴を上げ倒れ、見ればディーくんは解放された。
私を凌辱しようとしていた男達は何が起こったか判断する前に、私は馬乗りの男に電撃を叩き込む。男は悲鳴を上げ離れた瞬間、移動して来た影に切り倒され。
「ざまぁ」
人の死を見ているのに、地面に横に成ったまま笑う。
「大丈夫かい!?て、パルちゃん」
助けてくれたのは、一年ぶりのアスペリナさんだった。
このイベント関わっていたんだ。では、本ルートでディーくんを助けたのアスペリナさん?
でも、彼女のイベントは知らないし。一年会わない間に赤い肩掛のマントを着ている。
赤い肩掛ってたしか・・・。
「助かりました」
「すまない。もっと早く気がついて来ていれば」
「いえ、本当に大事前でしたから、大丈夫ですよ」
胸や何やらは触られたけど、一線は越えていない。
それでも普通の女性だったなら、もうPTSDもの。元・・で良かったと思う。
アスペリナさんはすまなそうにしているけど、本当なら、私は男達に誘拐され此処にはいない。
見ればアスペリナさん以外に数人の兵士と村の男もいる。
「きゃあああ!!」
私は慌てて、胸を隠し身を屈めた。
何故か物凄く恥ずかしい。
自分でもこんなに羞恥心があったのかと思うほど。
忘れていたと言うか、アスペリナさん以外に目が行かなかったから仕方がないじゃない。
私はボロボロな服で胸を隠し、泣いているディーくんに近づく。
「ディーくん、泣かないで、私は大丈夫だからね」
「でも、パル」
「私が人を殺すのを躊躇ったのが原因だから、ディーくんが気にする必要は無いの」
私が躊躇無く、魔物と同じように男達を倒していればディーくんが人質になる事も無かった。
よく転生モノで盗賊とかでも人を殺せるものだと実感している。私には、無理だった。それが、躊躇と成って男達の反撃を招いた。
「おい、コレ!?」
「スゲェー」
兵士さんが私が倒した魔物達を見つけ驚いている。
「アレ、パルちゃんが倒したの?」
「はい」
私はイベントボスですから出来ました。とは、当然言わない。
「遠くから見てたけど、パル凄かったよ。魔法で次々と魔物を倒して」
アスペリナさんは、そうなんだと少し感心しながら何か考えているようだった。
一先ずディーくんの大きなトラウマは回避出来たかな。
次は・・・。