2 努力は運命(イベント)を退けられるか?
あの日、自分がエロゲーで主人公にトラウマを刻む人物だと。気がついてから、努力は始まった。
両親からは何度も注意されたが辞める事なく。
剣と魔法の鍛錬。
剣は村に在中する兵士や見回りに来る騎士たちに習いました。
特に顔見知りに成った。女性騎士アスペリナさんというのですが、よく教えてくれ。最近は村に来ないですが、なんか出世したとか。
ただ、その装備はどう見ても防御力あるの?て感じの鎧。エロゲーだしね。
因みに彼女、記憶に御座いません。
まぁ、モブ中のモブなのかとも思いますけど。
魔王の話は、昔話や教会の教えを利用しながら、この騎士たちに本当に大丈夫とか怯える感じで伝え。警戒して貰えるように誘導しました。
上手く行っているかは微妙。
攻撃魔法は騎士たちも教えてくれず、何か正規の教育機関でないと違法らしく。最初は生活魔法、あとはその生活魔法を工夫して攻撃魔法に昇華してみました。のだが、うん、流石はラスボス前のイベントボス。
魔法に関してはチートレベル。一応、記憶にある設定では、魔王に力を与えられ異常な魔力を持った筈ですが、元々の素質が笑えないレベルでした。
一般的な人の魔力は大したモノでは無いようですが、私は最初からかなりの魔力を持っている。
ただ、コレだけでは心もとない無いので、どうにかゲーム知識をフル活用して魔力を上げていく。
数年後、魔力測定なんて出来ないけど、異様な上がり方をしたのは実感しました。
「やり過ぎよね」
目の前には、直径百メートルはあろうクレーターが出来ていました。
「パル姉、今日も何時もの所でな!」
ディーくんが手にした桶を振り回し、声をかけて来る。最近、言葉使いが男の子に成って来た。
私の訓練に、基本は剣の方だけだがディーくんも付き合って訓練している。魔法は少し教えたけど、攻撃魔法って犯罪にも使えるので多くは教会や国から秘匿されているらしい。
だから、少し身を守れる程度の魔法しか教えていない。
お陰で、この村の兵士さんとも手加減アリだけど。十分にやり合える腕は、ディーくんも持っています。
流石は主人公。チートですね。
私も家の手伝いを先に済ませ、村では子供も労働力。
村から少し離れた森に向かいます。
この森は、自然発生の魔物もいないので訓練には最適なのよね。
けど。
そろそろかな。
あの襲撃が何時かはハッキリと知らない。でも、私の姿はあのオープニングイベントの姿に似て来ているのでそろそろかと。
考え事をしているとディーくんが来て、打ち合い稽古を開始する。
軽い打ち合いのあと。
「あっ!」
バックステップでディーくんの剣を避けるとスカートが小さな木の枝に引っ掛かってしまう。
勢いもあって大勢を崩し。
「もらい!」
ディーくんがこの機を逃さす追撃して来きた。私は膝を曲げその剣を受け止めると反動を利用してディーくんの剣を弾き返した。
「甘いよ!ディーくん」
ディーくんは尻もちをついて倒れ、私は笑う。
「やっぱ、パル姉ちゃんは強いや」
ディーくんの成長が嬉しい。
「ありがとう、ディーくんも力上がって来てるね」
「そうかな?へへ」
ディーくんは照れた笑いを浮かべる。
やっぱり男と女。
腕力に差が出来始めているみたい。元々、私はイベントの戦闘では物理攻撃はほとんどしない。魔法特化とも言える敵です。
筋力差は、筋トレは欠かしていないのにも関わらず負けていくのでしょう。
「ところでスカート大丈夫?」
ディーくんに指摘され、あっ、と慌ててスカートを確認する。
最近の悩みは私が女性らしく成って来たこと。
コレもイベント補正かな?
両親は私がズボンを履くことを許さず。足首まであるスカートを履いて、何だか胸も育ちブラの様な物も着させられ。髪も切ることを許されず、腰まである長い金髪を靡かせている。
イベントボスなら別の色にしろよと思った記憶がありますが、それで正解ではあるのです。。
イベントでは金色の髪を広げ当場する姿は、茶髪等では出せない。圧巻で強敵である事を印象付けていました。
スカートは無事でした。
女性らしい姿をしていることで、両親は何とか私が剣の鍛錬を黙認してくれているので、破くと訓練を止められる可能性がある。あと、田舎では布生地は高い。
一区切り鍛錬を終えると、手早く小枝を集め。生活魔法で火をつけ、お湯を沸かし白湯を作る。
生水は危険。
バックから、持って来たお弁当を取り出す。言っておくが、普通のバック。マジックバック等という収納魔法は存在しない。
「はい、ディーくんの分」
「ありがとう!」
お弁当と言っても、サンドイッチ。挟むものは工夫して魚や肉の燻製や卵焼きマヨネーズ等で味付けはしている。
流石はこの辺はご都合主義なのか普通に存在しています。
食事チートは出来なそうだ。まぁ、知識も無いけれどね。
「パル姉ちゃんは料理上手いよね」
「ありがとう」
食事を終え、簡単な雑談をしていると。
「そう言えば、パル姉ちゃんて、結婚するの?」
そこでディーくんが爆弾を投げ込んできた。
思わず飲んでいた白湯を吹く。
ゲホゲホと咽ながら何でと聞くとディーくんの両親が話していたと言う。
私の両親は恋愛結婚らしいが、ディーくんの両親は昔ながらに二つの家で決まった結婚だったと聞いた。
あー。
「うん、それは無いよ。少なくてもあと数年はね」
「本当?」
ディーくんは半信半疑だが、年齢的にもまだ早い。
「ところで何で、おじさんたちが私の結婚話していたの?」
「申し込むかって言ってた」
もう一度、白湯を吹く。
それって、ちょっと待て!
私がディーくんの嫁に成るって事!?いやいや、ディーくんはどうしても弟感覚。
こうして一緒に訓練していて、弟感覚のそれは抜けない。
でも、思うところはある。
幼い頃から、毎日一緒に居る。
そりゃあそうだ。ディーくんの両親にしてみれば、当然の結論に行き着くわけだよね。
いわゆる唾つけとこじゃぁなく。許嫁。
でも、ディーくんを助けてその座につくのはヒロイン達の役目。私の仕事じゃない。
「パル姉ちゃんは、僕とは嫌?」
おい!
照れながら、ディーくんがそんな事を言うものだからこまってしまう。
あ〜、何か訓練て感じじゃぁ無いね。
「今日はココまで、帰ろうか」
「パル姉ちゃん!」
火を水で消し、荷物を纏め。帰り支度。
なにか言いたそうなディーくんを連れ、村に戻る事にした。
き、気不味い。
帰り道。
私は背を屈め、ディーくんに静かにの合図を送る。
今までも危険な動物や獲物を見つけた時にしていた仕草でディーくんも慣れた行動で背を屈めた。
ディーくんは、何だろうと思っている様子だったが、私は血が引く思いをしていた。
何で!?
私の視線の先には、数人の男達と数体の魔物が見えました。
山脈には他の地位域よりも古代の魔王の影響で魔物が誕生しやすいらしく、私は二回。兵士と魔物が戦うところを見たことがあります。
村が襲われる。
この襲撃の為に訓練してきた。
今こそ成果を出すときだというのに、私はビビっている。
「パル姉ちゃん、アレ何?」
横にいるディーくんを見て、勇気を振り絞る。
拙い。ココで逃げたらディーくんにトラウマを植え付ける事に。
それに村が襲われる。
私は今の家族が大好きですから、酷い目に合わせたく無い。
「ディーくん、ココから動かないでね」
私は決意を固め。
風を纏って茂みから飛び出し。
先手必勝!
先ずは、魔物。
「ほの!くっ、氷柱!」
差し出した手の平に魔法陣が浮かぶ。
爆発系の魔法を放とうとしたけど、私は人を殺す事に躊躇し。的確に魔物だけを狙える氷系の魔法に切り替えた。
魔物は、魔王の魔力の余波で作られる。生命を模した、一種のゴーレム。
私の氷の魔法は、ただ氷を放つのではなく。氷柱上にした氷を放った。
放った氷に魔力を込めて、氷柱は真っ直ぐに魔物達に向かい命中する。
魔物達の咆哮が響き、男達が私の襲撃に気がついた。
気合い入れろ、私!!