10 数年たちました。
どうにか今回の襲撃は甚大な被害が無く収められました。
今回は、魔物のみの襲撃で助かりました。
私は共に出撃した騎士達を襲撃された町に残して、一人聖都に戻ったのはすっかり日が暮れた頃。
聖都にある町の襲撃の一報が入って、私に知らされたのが朝食後。
それでも早い方です。
夜に襲撃されたとの事で、既に被害が出ているだろうと考えられ。
急ぎ準備をして、数名の騎士を連れて飛びました。
私の飛行魔法では、最大でも四人までしか一緒に連れて行けません。そして、出来るなら風の抵抗は自分で防げる方が良いのです。
それにしても山脈の警戒網をぬけて、更に進んだ町を襲撃するなんて驚きだった。
確かに、山脈に近い町では警戒が強く。
襲撃されても早々に落ちる様な町の警備体制はありません。が、山脈地帯から離れれば離れるだけ魔王の脅威は減るため。
例え、魔物が世界の何処にでも出現するとしても、脅威となる数や襲撃は山脈地帯に比べれば圧倒的に少なく。
遥か遠くの地では、一生のうちに一度、魔物を見れば良い地域さえあるのが現実です。
そのような土地では、魔物の襲撃に警戒や防衛の準備は疎か。
ですが、今回は馬で跳ばしても聖都から三日はかかる町が襲撃されました。
世界で見れば近い場所で、一応は教会の支援で城壁等も造られている警戒地域。
通常の魔物発生では一二体。群れで、襲撃はまず起きません。
それなら十分、対応出来る筈ですが、ただ、今回の襲撃は、攻撃性の高い魔物達にしては異常な行動。
群れでありながら、近場の街や村を通り過ぎて遠くの街を襲撃。
魔人がいる可能性が高いです。
魔人とは、魔物が人に取り憑き。人と混ざりあった存在で、本来の私。魔王の手下と成ったイベントボスである姿が魔人です。
だけど、人に魔物が取り憑いたからと言っても、全てが魔人になるわけで無く。
殆どが本能に忠実な魔獣と化して、姿さえ変わり化け物と成ります。
もう一つ言えば、魔獣は魔物が動物に取り憑いた姿。
それは魔物以上に危険な存在。
「私以外の魔人」
ですが、最初の聖都襲撃も魔人が動いていたはずで、でなければ盗賊如きが魔物を引き連れる事など出来ません。
魔人が出現したとするならば、これまで以上に世界は危険に満ちます。
聖都への再襲撃は何時起こるのか、イベント通りならばまだ先の話ですけど。
イベント?
アレ?
確かヒロインさんが騎士を目指す事と成ったイベントって、山脈から離れた町の襲撃だった様な気がします。
今回の襲撃って、もしかしてイベントでしたか?
確かイベントでは、ヒロインさんは町の領主の娘で町は壊滅。
復讐心から騎士に成ることを誓うのですが、ヒロインさん。騎士に成る理由が無くなったのではないでしょうか?
たとえそうであっても、魔物の襲撃を無視は出来ません。
今回のがイベントだった証拠もありません。
「パルミア様、どうかなされましたか?」
「いえ、何でもありません。私はこれから祈りの時間ですので、教会へ」
「はい!」
聖都に戻って来た私は、アスペリナ様に今回の襲撃の報告をして、援軍が出撃した事を確認しました。周囲感知では、魔物の気配は無かったので、町の再襲撃はないといえます。
一応は、共に出撃した騎士達は残して来ました。
今は、騎士団で待機していた別の女性騎士が、私の護衛として着いています。
私も本来は騎士なのでいらないと思うのですけど、教会も騎士団もそれは許してくれません。
私は、数年前の村の襲撃後。
聖女としての訓練や教育。
騎士としての教育、訓練。
飛行魔法等の自分開発の魔法の解析等の日々。
飛行魔法は良いのですが、その他の攻撃魔法はハッキリ言って本来の攻撃魔法と比べれば本当に素人が発想した魔法でした。
トムリ様に言わせれば、攻撃魔法が生み出され時代を推測出来て楽しかったそうです。
色々ありましたが、結果、アスペリナ様とプレーニア様の推奨で、史上最年少で白の聖騎士の称号を得てました。
現在は、飛行魔法を駆使し。
今回のような襲撃に対して、援軍に駆けつける事をしています。コレこそ、アスペリナ様が私を聖都に連れて来た最大の理由らしいです。
飛行魔法が他の騎士でも使えるならば良しでしたが、誰も出来なくても出来る人間がいるのなら、馬よりも早く救援に駆けつける事が出来る。
その為、私が聖女と騎士の両立を望んだ時は安堵したそうです。
騎士言っても私の戦闘は魔法主体で、剣ではなく身長の倍くらいの棍棒に魔法を掛けて戦闘は行なっています。
因みに棍棒に魔法を掛けないと、私の戦闘能力は中位の騎士程度だそうです。
それは騎士ではなく、魔術師ではと思いますが、棍棒に魔法を掛けるのも能力であり。魔法と戦闘どちらも問題ない事から、私は、白の聖騎士の称号を貰い。
各地の救援要請に対応して飛行魔法で応援に駆けつけ。魔物を倒し、傷ついた人々治療して、傷ついた大地を浄化していると、何時しか、白の聖騎士よりも白の聖女とも呼ばれる様に成りました。
聖女の称号は、金と銀しか無いのですけれど。
白の聖女の名はかなり知れ渡っているようです。
今では、襲撃の救援に向う選抜の騎士達も白の騎士団と呼ばれているそうで、アスペリナ様の思惑通りみたいです。
ですが、そろそろ銀の聖女であるサブヒロインが教会に来る筈です。
サブヒロインの銀の聖女。
何処かの国の孤児院にいるのですが、その孤児院で流行り病が起こり。彼女も病に倒れます。しかし、熱にうなされる中、魔力を解放し無意識に治療魔法を発動し発見されるのです。
流石はサブヒロイン。
ところで聖女を見つけ出す。
プレーニア様が言っていた見つけられる話ですが、どうにも思い出せません。そのような方がいた記憶が無いのです。
伝説なら思い当たる事もあるにはあるのですが。
イベントは起きています。ならば、そのような方がいた記憶はある筈なのですけど。全く思い出せません。
イベント記憶も曖昧な事が多く。
起きて始めて、イベントと気がつく事もあります。
一先ず、ここ聖都には何処よりも多くの情報が来ますので、流行り病には気を付けているしかなさそうです。
教会に戻り目指すは、大聖堂。
本来、この教会おいて最も重要な施設は金と銀の聖女が魔法陣を残したドームですが、信者対して開かれている施設ではなく。信者にとって開かれている施設で最重要は大聖堂に成ります。
教皇や司祭、聖女が儀式をする時間は決められていますが、私の場合は騎士との兼ね合いで特に決められてはいません。
ただ、教会もアピールは大事で、私も時間があれば大聖堂にて祈りを行なって下さいと頼まれています。
大聖堂向かいながら考えます。
これからの事。
たぶん後一年でディーくんが騎士に成るために聖都にやって来ます。
その時にヒロインと残りのサブヒロインも登場する筈です。
ディーくんと彼女達の出会いがイベント通りに進むのかは分かりませんが、一先ずはそれは静観します。
上手く行ってくれると良いのですが。
問題は、確かサブヒロインの中に魔人がいたと記憶します。
聖都で暗躍するのですが、自身の意識が強く残っているので、取り憑いた魔物との意識で苦しみ続けています。彼女だけは、早急に助ける必要があるでしょう。
ヒロインではなくサブヒロインですので、大きな問題は無いと良いなぁとは思いますが、私自身、最大の初期イベント潰しているのでどの様に影響しているか。
本来であれば、今の私は魔物と融合して山脈を越えた地にある。イースランドで国を潰し乗っ取っています。
イースランドは山脈の向こうにある細長い土地で、小さな国が一つ。夏の海が穏やかな時にしか船での交流はありませんが、ここ二年程、海が夏でも荒れて情勢が入って来ていません。
一応、教会と騎士団は山脈ルートでも諜報員を送っているようですが、戻ったとはどちらも聞いていません。
一度、私が山脈を越えて偵察に行きましょうかと進言した時は、アスペリナ様以下多くの人に却下されました。
山脈の魔物の数は増えており。空を飛ぶ魔物もまるで山脈を守るようにいることから、私は再三に渡って行かないように注意されています。
どうやら教会も騎士団もイースランドは魔物の手に落ちたと考えているみたいです。
記憶通りなら、その通りではあるのですが。
少し訂正するならば、魔物よりも魔人の手に落ちたと言うのが正しでしょうか。
ただ、その魔人が誰なのか。
それは私の役目だったですから、気になります。
考え事をしているうちに大聖堂に着きました。
私はそのまま大聖堂に入らずに、一般信者が立ち入らない通路を通って、修道女控室に向かいます。
司祭控室、修道士控室、教皇控室など控室はいくつもあるのですが、修道女は一つだけです。
その分、部屋は大きく。
仮眠用のベッドもあります。
流石にこの時間では、修道女さんはいないようです。
私は個人ロッカーから鎧の上から羽織る聖女着を取り出て上に羽織って大聖堂に向かいます。
この時間は余り信者はいません。
お腹も空いていますし、聖女としての祈りは手早く終わらせたいです。
ただ、この時間は気に掛けなければ成らない信者さんが多く。
特に、自分と近い少女達は気にしています。
この世界では、奴隷はいかなる人でも禁止されています。
最大の理由は、聖女の地位にあり。
もしも、誘拐等で奴隷だった人から聖女が出現した場合。奴隷であった事が原因で、聖女としての活動に支障が出ないなとも限らない為。
遥か昔に、世界中で禁止と成りました。ただ、その身の上で夜の仕事に付く女性はいます。
エロゲー要素は何処行った!?とは、思いますが奴隷制度が無いのは良いこととして、問題は身の上で仕事に付く人たちです。
こればかりは教会でも国でも
その中にサブヒロインが一人いるのです。
彼女は表向きは娼館付きの見習いですが、裏では教会が送り込んだ治安維持を受け持つ仕事をしています。
彼女の仕事は、黙認されている裏街が乱れ過ぎるのを防ぐ役目を担っています。
ディーくんとは、何処からか流れて来た麻薬の出所を探るイベントで親しく成ります。
今日は、居ないようです。
千人以上入れる大聖堂には数人の信者が夜遅いのに祈りに来ていました。
私は祭壇の前に進み。
信者達と祈りを始めた。
流石が敬虔な信者さんたちです。
私が出たくらいでは祈りを中断しません。
私は既に飽きているというのに凄いですよね。
・・・・お腹空いた。
一先ずここまで




