閑話 ディーくんは男の子
僕の名は、ディルテアル。
数年前迄は、僕には同じ年齢のお姉さんがいた。
と言っても、血は繋がっていない。
その娘はパルミアという近所の子で、小さな山間部の村で家が一番近く。
年齢も同じ、幼馴染の女の子。
でも、考え方や行動が同年代ぽくなく。
女の子と遊んでいると言うよりも同じ男の子と遊んでいる感じだった。
パルミアは村の人達からも、男勝りとか前世男だったとか、生まれて来る性別を間違えたとか言われていた。
僕の一番の遊び相手で、同じ歳なのに色々知っていて、色々教えてくれるお姉さんだった。
そんなパルミアを僕はパル姉と呼んで慕った。
そのパル姉は、ある時から剣術や魔法に興味を示す。当然、僕も真似するけど。僕は、遊びでしかなかったけれど。
パル姉は凄く真剣だった。
村の駐在の兵士さんや巡回で聖都から来る女性騎士にまで、剣術を習う有り様だったし、自己訓練も欠かさない。
そんなパル姉でも流石に攻撃魔法は教えて貰えず。文字を覚えなさいと、教会発行の十ページ程度の書物を貰うしかなかった。
村で読み書きが出来る人は少ない。
それなのに、パル姉はあっという間に文字を覚え、小さな村の小さな教会の僅かな書物を読んでしまった。
そのあとパル姉は、生活魔法から攻撃魔法を独自で作り上げる。
子供の僕は、ただ凄いと思った。
パルは、自分で作った攻撃魔法を、秘密だよと言って、僕にも少しだけ教えてくれた。
そんな日常の日々で、ある日、お父さんたちが話をしているのを盗み聞きした。
パル姉を僕のお嫁さんに貰うっていうのだ。
僕は、ドキドキした。
パル姉は、村の女の子の中でも一番可愛い。
綺麗なブロンドのストレートの髪は何時も輝いていて、お母さんが羨ましいがっていたし、白い肌は毎日訓練しているとは思えない程。
少し背は低いけれど、年上の男の子達が言うには、胸がありスタイルも抜群らしい。
そのパル姉が・・・パルが僕のお嫁さんに成る。
嬉しかった。
嬉しくって、僕はパルが好きなんだと自覚した。
ただ、パルはどう思っているのか。
パルは、僕の事を弟のようにしか扱っていない。
男って見ていないのだと思う。
だからだったパルの作ったサンドイッチを食べながら、ある時話を切り出して見た。
パルの料理は美味しい。
正直、お母さんの料理よりも好きだ。
パルが僕のお嫁さんに成れば、この大好きな料理が毎日食べられる。
でも、パルの反応は困っていた。
挙げ句、モノを言うパルにしては珍しく話を濁し、帰り支度を始めてしまう。
パルにとって僕はヤッパリ弟なのだろうか。
不満だった。
パルの年齢で釣り合うのは村に後三人いる。
そいつらのお嫁さんに、パルが成るのは許せない。
パルは、僕のお嫁さんに成るべきだ。
不満ながら、パルの後ろを歩き村に戻っていると、パルが突然止まる。
パルの視線の先に、それはいた。
数人の男の人と、影が集合した様な薄汚れた見たことのない生き物。
それが魔物と分かったのは、パルがココにいてと言って、男達に奇襲をかけた後だった。
パルが倒した魔物が、泥団子が乾いて崩れていくように姿が壊れていく。
パルから教わった魔物の特長。
僕は、ココにいるように言われた事に怒り。パルの援護に向かった。
パル一人に戦わせはしない。
パルは僕が助ける!
助けるつもりだった。
僕は、男に負けて捕まった。
人質に成った僕を助ける為に、男に殴られ吹き飛ぶパル。
激しい暴力を受けながら、耐えている。
僕が、出なければパルは男達を倒していた筈だ。
僕は叫び。
始めてパルを呼び捨てにした。
男がフラフラに立ち上がったパルの服を剣で引き千切る。
パルの白い透けるような肌とぷるるんとした胸が露わに成った。
綺麗だと思った。
男が謝れば許すと言ったが、パルは挑発し押し倒される。
パルが見たことのない、涙顔で僕に見るなと叫んでいたけど。
僕は、目が離せなかった。
パルが悲鳴を上げた。
何時の間にか、オレが男の変わりにパルに覆い被さっていた。
オレの手が、パルの柔肌を弄ぶ。
パルはオレのお嫁さんに成る女性だ。
「パル、好きだ!」
オレは叫び、泣き顔のパルを蹂躙する。
無理やりキスをして、押し倒したパルに覆いかぶさった。
「あっ」
薄暗い天井が見える。
頭が動かない。
動き出す。
「あ~」
パルを押し倒す夢から現実へ。
何か、生温かい。
乱れた布団を剥ぎ取り。
ゆっくりと立ち上がる。
小さな光を魔法作り、タンスを物色。
パンツとズボンを取ると外に向う。
音を立てないように、外に出ると、別の光。
「あっ」
「お」
目が合う。
そこにいたのは近所のおじさんとパルのお父さんだった。
あの事件の後、パルの嫌な噂が流れ。オレとの結婚話も消えたけど、兵士さん達のおかげで誤解だと噂は消えた。ただ、それはパル自身の聖都での活躍が大きい。
オレは噂を消そうと頑張ったが、ほとんど何の力にも成れていない。
パルの聖都での活躍を巡回の兵士さんや商人に聞くたびに、オレはパルへの不安がつきまとう。
ただの活躍だけでなく。
将来的な話もあり。中には、王都の貴族から許嫁の話があったとかもある。
この村にも、パルの両親を訪ね。貴族の使いが、実際に来てもいる。
オレはパルを下さいと、パルの両親に伝えてはいない。
今のオレでは駄目だと分かっているから。
だから、オレは両親を説得して何れは聖都の騎士養成所に入学するつもりだ。
そして、何時かはと思っているのだけど、このタイミングは見られたく無かった。
手にしたパンツとズボン。
パルのお父さんと視線が絡む。
「異常なしだ」
「そうだな」
巡回警備だったようで、あの事件後。兵士だけでなく、村独自でも警備を始めた。
二人は見なかった事にして、去っていく。
オレは急いで、水辺へと向かった。
乾いて来たのか、ガビガビと歩きにくい。
今は先ず洗濯と体を洗おう。