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20/21

先は長い

 小島は流彗星号改とサバーブ達の強化防護服アーマースーツが立つだけの大きさしか無く実に小さな小島であり、芝生の様な下草があるだけで木一本生えていない。

 周囲が断崖に囲まれているのか砂浜らしい物は見えず、彼らの視線の先には大きく渦を巻く海が見えた。

 よく見ると大きな渦の周りには断崖に囲まれた小島が無数存在し、サバーブ達もその小島の一つに立っている様だった。

 サバーブ達が唖然とした様子で大きな渦を見ているとその視線の先に映画のスクリーンの様な物が空中に浮かび上がり見覚えの無い場所が映し出される。

 少し薄暗くどこかの洞窟を思わせる様な場所の様だ。

 そこには人では無い生き物、青や赤、緑の鱗を持つ二足歩行のトカゲが大きな祭壇の周りに集まり祈りを捧げていた。所謂トカゲ人という連中だろう。

 その中の一人。ひときわ体格の良い大きなトカゲ人、派手な衣装に身を包み周りに語りかける。


<マンキーヤードは……。>


 どうやら彼がトカゲ人達のリーダーらしい。トカゲ人の規模から言うと村長もしくは酋長だろうか?

 トカゲ人達の様子を見ていた連宋が少し小さな声で呟いた。


「……これはエンディングか?」


 サバーブ達がしばらく見ているとスクリーンの場面が切り替わり、かやぶき屋根の民家とその前に立つ少年と女性、親子らしい姿が映し出された。


<ねぇねぇ、お母さん。僕を助けてくれたあの人達は……。>


 スクリーンの中で話す少年の言葉を聞いた瞬間、サバーブ達の三人の脳裏には全く同じ言葉が浮かび上がった。


(((だれだ?こいつは?)))


 目の前に映し出される光景がエンディングとすればここでの経験で映し出される物だと思うのだが、スクリーンに映る親子には全く見覚えが無かった。

 サバーブ達が一様に首を傾げていると再び場面が変わる。

 どこかの一室らしい西日の差す部屋に木製の事務机が置かれ、ヒゲを生やした男が両肘をつき手を組んでいた。

 その事務机の前にはギルド職員の受付の女性が立っている。どうやら何かを報告に来たらしい。


「……やはり帰ってこなかったか、運命とは言え……。」


 ヒゲの男の呟きに受付の女性は異を唱える。


「私は同じことが繰り返されるとは思いませんわ。きっと何かが、違っているはずです。」


 彼らのやり取りを見ていたサバーブ達は先ほどと同じ様、三人の脳裏に全く同じ言葉が浮かび上がった。


(((この人、一度しか会っていないよね?)))


 雄大な音楽が流れ始めスクリーンの場面が切り替わる。

 スクリーンには大きく渦を巻く海が映し出され、その画面の一部が音楽に同期してゆっくり拡大されてゆく。

 拡大されつつある画面には小さな島が映っておりその島には見覚えのある宇宙船が見える。やがて画面は更に大きく拡大され、流彗星号改と側に立つ三人の後ろ姿が映し出された。

 何かを感じ取ったのか、首から軋む音が鳴る様にゆっくりと顔を後ろに向けた。


 ---------------


 サバーブ達は流彗星号の船橋ブリッジで情報端末に表示された画像を見ていた。

 どうやら”冒険惑星サバイブ”のクリアー記念データーという物の様だ。クリアー後、三人が流彗星号改の前で驚いた顔をしている姿が映っている。

 連宋はそれをじっと眺めていた。


「クリアーして何だかあまり感動が無いな。あっという間に終わった感じだな。冒険惑星と冠があるから、もう少し期待したのだけどねぇ……。」


 そう呟き深いため息を吐いた。その連宋に艦長席に座るシルビィは、さも当然という顔で首を傾げる。


「当たり前ですね。途中のイベントを全てすっ飛ばしてラスボスなのだから感動も何もあるはずは無いでしょう。いくつかのイベントをクリアーしてラスボスなのですから。ほら、その証拠にクリアー以外の記念データーは無いでしょう。イベントをクリアーすれば記念データーが追加されているはずですよ。」


 通常はクリアー時以外のデーターもある様なのだが、サバーブ達の端末には入っていない様だ。

 シルビィから聞かされた内容に連宋は気落ちし落胆している様だ。

 そんな連宋とは対象にリランドは少し明るい表情で笑う。


「……ま、済んだ事は仕方が無い。気になるなら又来たら良いじゃないか。この星系の発見者と言う事で俺たちに権利があるはずだしな。」


 そう言って頷くリランドに対しシルビィが異を唱える。


「リランド、それは正しくありません。我々に惑星所有の権利は存在せず、我々が初秋している権利は中継ステーションの一部所有権ぐらいです。」


「一部所有権?」


「範囲としては流彗星号が係留された宇宙港設備とその周辺と言った所でしょうか……。」


「じゃあ、俺たちが自由に使える惑星は……。」


 慌てて身を乗り出し尋ねるリランドにシルビイは深く落ち着いた様子で返答する。


「一つもありません。」


 リランドは一瞬動きを止めると頭を抱えて天を仰いだ。


「なんてこった!今度こそ悠々自適な生活が出来ると思ったのに……。」


「まだまだ……先は長いと言う事ですね。」


 肩を落とし残念がるリランドを見たシルビイは軽くため息を吐くと肩をすくめるのであった。

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