リゾート惑星
サバーブ達を包んだ白い光が徐々に薄くなってゆく。
光が薄くなるのと同時に体全体に負荷がかかってきた。その負荷は明らかにサバーブ達の動きを阻害している。
サバーブは両腕や足腰を軽く動かし負荷の掛かり具合を確かめた。
「……この負荷の掛かり具合……重力か?リランド、連宋、今の重力はどうなっている?確認してくれ。」
二人に重力の確認を要望したサバーブも自らの端末を操作し現時点での重力を計測する。
「……0.50G……0.51G……0.52G……どんどん上がって行くな……そちらはどうだ?」
「俺も同じだ。」「わしも同じく……。」
リランドと連宋の端末もサバーブと同じ様に重力の増加が計測されている様だった。
そして端末が1.00Gを示すと同時に白い光りが完全に消え去り、サバーブ達三人の目の前には草原に包まれた小高い丘があった。
空には一つの雲がゆっくりと流れ、小高い丘の周囲には草原が広がっているだけで山も谷も無く他に何も見えない。
太陽が真上から照らす小高い丘へ一本の細区長い道が続いていてその方向へ進む事を促すかの様に矢印が空中に出現した。
「……この先に進めと?」
同じ様に矢印を見ていた連宋が呟く。
「まるでフルダイブ型のVR・RPGだな……昔流行った。けどこの場合はAR・RPGか?」
「VRとかARとかは判らないが……とりあえず進めば良いんだな?」
そう言ってリランドが一歩前に進むと目の前に赤く点滅する逆三角の印が出現し警報音が鳴り響く。
<警告、警告、持ち入り禁止器具が存在します。禁止器具を該当エリアに持ち入った場合、禁止器具は自動的に消去されます。警告、警告……>
「禁止器具?何だそれは?何か判るか、連宋?」
「いや、わしにもさっぱりだ……。」
「判らないか……かといってこのままここに立ち止まる訳には行かないだろう。どうするサバーブ?」
「該当エリアというのも判らないが……仕方が無い。周囲を警戒しつつ前進しよう。なに、消去と言っても瞬間的に消去される可能性は低い。何かが消去されそうになれば速やかに後退すれば良いだろう。」
「「了解。」」
リランドと連宋の二人は頷きサバーブに同意する。
三人は先頭から連宋、サバーブ、リランドの順に隊列を組みゆっくりと丘の上を目指して進んで行く。警報音や点滅する逆三角の印は消えないがそれを物ともせず三人は進んでいった。
そんな中、連宋は時々立ち止まって周囲を確認している。
「……。おかしいなぁ?」
首を傾げる連宋にサバーブが声を掛ける。
「連宋、何か気になる事があるのか?」
「……見た感じ何も無い様に見えるし、そう思える。でも、何だろう?何かの中に入っている様なそんな感覚がする。」
「何かの中に入る感覚か……それは能力で何か感じ取れるという物か?」
「そう思ってくれてかまわない。」
「連宋が捉えた感覚が何かを見つける為にはこの場に留まり周辺を詳しく調査する必要があるか……。」
彼らはその場に留まり調査を開始するが端末には何も表示されなかった。
「何も無いか……進むべきか引くべきか……難しい判断だな。リランドや連宋はどう考える?」
サバーブの問いかけにリランドは少し周囲を見廻すと口を開いた。
「進もう。留まっても戻っても現状は何も変わらない。」
進行を進めるリランドに連宋も同意する。
「リランドの言うとおり進まない事には何も変化は無いと思う。妙な感覚がするけど今のところ原因がわからない以上、それについては保留するしか無い。」
サバーブはリランドと連宋の顔を見廻すと大きく頷く。
「判った。進もう。丘の上まで進んで周囲の観測だ。」
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サバーブ達が登った丘から先は急勾配になっていてその先に大きな平原と森、そして城塞都市があるのが見えた。
どうやら最初に降り立った場所からは丘が邪魔をして城塞都市が見えなかった様だ。
点滅する逆三角の印に混じって城塞都市の名前が浮かび上がる。その名前を見たサバーブが首を傾げた。
「シタディール?城塞都市なのにシタディールとはこれいかに?」
「そう言うな、サバーブ。わしがやっているゲームでもよくある名前の付け方だぞ?」
「そんな物か?」
眼下に見える”シタディール”は城塞都市の名前の通り高い石壁を持つ都市の様だ。
一辺が500mほどの正方形の形になっていて中には様々な建物が見える。ひときわ白く大きく輝く建物は領主の屋敷か教会であろうか?
その都市に向かってサバーブ達が一歩を踏み出した時、警報音がひときわ高くなり点滅していた逆三角の印が大きくなった。
<持ち込み禁止器具を確認しました。消去を開始します。>
次の瞬間、サバーブ達が身につけていた禁止器具、通信端末と武器が消滅した。




