表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
発売日の悲劇  作者: しろ組
2/5

二、忠告

二、忠告


 羊史は、朝食のトーストを(くわ)えながら、通りへ飛び出した。行列へ、一刻も早く並びたいからだ。そして、しばらく進んで、左ヘ曲がった。次の瞬間、何かにぶつかるなり、「わっ!」と、声を発した。その直後、尻餅を突いた。

 程無くして、「まさか、トーストを銜えながら走って居られる方と出会えるとは、思いもしませんでしたねぇ」と、やんわりとした口調の男性の声がした。

 羊史は、我に返り、起き上がった。その刹那、茶色い背広(スーツ)の男が、視界に入るなり、「す、すみません!」と、詫びた。完全に、不注意だからだ。

「いえいえ。大丈夫ですよ~。車じゃなくて、良かったですよ」と、茶色い背広の男が、にこやかに返答した。そして、「こんな朝早くから、お急ぎのようですけど、お時間、大丈夫ですか?」と、尋ねた。

「あ、ああ。今日は、新作ゲームの発売日なので、早く並ばないと、買えないんですよ~」と、羊史は、にやけた。後少しで、手に入れられるからだ。

「その先の猿吉電器ですね?」と、茶色い背広の男が、左腕で、通りの先を指した。

「そ、そうです!」と、羊史は、はっとなった。足止めを食っている場合ではないからだ。

「かなり並んで居ましたから、急いで下さい」と、茶色い背広の男が、告げた。

「そ、そうなんですか!」と、羊史は、ようやく立ち上がった。列に並んでも、買えないかも知れないからだ。そして、「おじさん、先を急ぐんで、これで、失礼させて貰いますね」と、断りを入れた。早く、列へ並びたいからだ。

「これは、失礼致しました。早く、向かって下さい。但し、一言だけ忠告させて下さい。曲がり角では、一度、立ち止まって下さいね。何にぶつかるか、分かりませんので…」と、茶色い背広の男が、助言した。

「わ、分かったよ!」と、羊史は、話半分に、返事をした。気分は、列へ並ぶという方向になっているからだ。程無くして、猿吉電器の方へ、足早に向かうのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ