旧校舎の迷い人『探索』
昼休みに拓磨と賢太が話していた『旧校舎の迷い人』。噂話だと思っていたが、まさか実際に人が消える事件が身近で起きるとは思っていなかった。そんな危ない場所へ行って大丈夫だろうか、不安な思いを抱きつつ放課後を待つ。
放課後になった。皆それぞれ部活に行ったが、俺は写真部に所属しているので活動は基本的に自由だ。普段は外や校舎の中を撮影しているが今は部室で古いアルバムを見ている。というのも、部活に行く前に貴彦から頼まれたからだ。
「写真部で旧校舎撮影してないか??」
「え??俺は撮った事は無いけど…」
「噂が何時からあるか知らないけど、古いアルバムとか残っていれば旧校舎の写真無いかなって」
「………何か写ってないか調べろって事か」
「そういう事。頼んだぞ」
肩に手をポンッと置いて颯爽と部活へ向かう貴彦を睨み付けるが、そんな事しても意味が無いので盛大に溜息を吐いた。
貴彦に言われて、部室の棚に収まっている年度別にファイリングされているアルバムを取り敢えず全て出した。古い物で15年前からあった。開いてみると、色褪せた写真が何枚も台紙に貼ってある。当時は文化祭等の学校行事の撮影も行っていたようで、多く残っていた。
ページを進めていくと、後半の方に敷地内を撮影している写真が多くなってきた。その中に何枚か旧校舎の写真もある。既に使われていないのか、人は写っていない。もちろん、噂にある窓際に出るという人影もいない。
「噂は噂だよなぁ…」
1人で呟きながら、アルバムを次々に開いていく。だが、貴彦が望むようなものは写っていなかった。それどころか、3年前頃から旧校舎の写真が無かった。敢えて撮るのを避けたのか、撮ったけど現像しなかったのか。
不思議に思いながらアルバムを眺めると、不自然な色褪せ方をしている台紙があった。貼ってある写真は夕方に新校舎を体育館側から写したものだが、よく見ると台紙の日焼けとズレている。恐らく、元々別な写真があったが剥がして新しくこの写真を貼ったのだろう。
だが、誰がなんの目的でこんな事をしたのかが分からない。知ってるか分からないが、顧問に聞いてみようと、出していたアルバムを片付ける。一応、アルバムを1冊だけ持って戸締りして職員室へ向かう。
「古い写真が無い??」
職員室に行き、まさか「旧校舎の写真って無いんですか??」とは聞けないので「古い写真を剥がして新しいのを貼ってある」理由を聞いた。顧問の三田先生は3年の物理を担当している先生だ。真面目で冗談が通じないので生徒からあまり好かれてはいないが、授業は分かりやすいと評判だ。先生は渡したアルバムを開きながら、色褪せた台紙をマジマジと見る。
「…………確かに。新しく貼り直してるな。ただ、残念な事に俺には分からない。アルバムの制作は生徒達が自主的にやっていたし、俺が顧問になったのは2年前からだ。前任者は転勤したから理由を知るのは難しいかもな」
そう言うと、話は終わりだと言うようにアルバムを俺に突き返し、パソコンに向き直り自分の仕事を進める。
「………そうですか。ありがとうございました」
お礼を言って、その場を離れようとしたら「あーそうそう」と三田先生が思い出したように続ける。
「確か、旧校舎の写真を撮っていたら変なものが写ったから燃やしてもらうとか言ってたな。その時は担当じゃなかったから詳しくは聞いてないけど。……念の為言っておくが旧校舎には近付くなよ」
「……分かりました」
まさにこの後旧校舎に行く予定の俺は、三田先生にバレたんじゃないかと心臓が早鐘を打つようにうるさい。バクバクいっている心臓を落ち着かせようと、深呼吸をしゆっくり職員室を出た。
部室へ戻る途中、廊下の窓からグラウンドを撮っている部員と遭遇した。同級生の中村だった。
「お疲れ、野球部の撮影??」
声を掛けるとシャッターを切ってから「お疲れ」と返す。
「祥は何撮ってたんだ??」
「俺はちょっとアルバムを見てた。んで、気になる写真があったから先生に聞いてきたとこ」
「ふーん」
中村はアルバムの件は気にせずに、自分が撮った写真を確認している。中村が知っているか分からないが一応聞いてみる。
「……あのさ、旧校舎って撮った事ある??」
「旧校舎??」
中村は記憶を辿るように視線を天井に向け、考え込むがやがて首を横に振った。
「俺は無いな。そもそも、先輩から禁止って言われてただろ??」
「そうだっけ??」
俺は言われた記憶が無かった。まぁ俺は校舎とか建物を撮るより、自然や人を撮るのが好きだから興味が無かったから聞き漏らしたのかもしれない。
「お前、建物撮らないもんな。何年か前に旧校舎撮ったら、変なものが写って大騒ぎになったからそれ以来禁止らしいぞ」
中村も三田先生と同じ事を言っている。やはり写真に写ったのは本当だったんだ。背中に嫌な汗が流れ始める。もしかして、これから俺達はとんでもない事をしでかそうとしているんじゃないかとさらに不安になる。このまま旧校舎に行っていいのだろうか…。
俺が黙り込んでしまったのを不思議な目で見る中村が続ける。
「まぁ、旧校舎には近付かない事だな。夏休み中にも騒ぎあったみたいだし」
「そ、そうだな。気を付けるよ」
再びグラウンドにカメラを向けた中村の邪魔をしないように、俺は部室へ急いだ。
部室に戻り、アルバムを元の位置に戻して溜息を吐く。部室の時計を見るといつの間にか17時半になっていた。取り敢えずすぐに帰れるように荷物まとめてリュックを背負い旧校舎へ向かう。校舎の外に出て、体育館の裏側で賢太と一緒になった。
「お疲れ、卓球部は終わり??」
「いや、用事あるって言ってちょっと早めに抜けて来た」
「それでいいのかよ……」
「晶なんてサボってずっと旧校舎付近ウロウロしてたぜ。体育館から見えたわ」
「マジかよ」
改めて旧校舎を見ると、所々雨や風で痛み黒ずんでいる箇所もある。窓や屋根も風で飛ばされたのか破損が目立つ。そんな古びた木造は廃墟感が漂い、より一層不気味さを感じさせる。流石に「怖くない」なんて言ったら嘘になるが、俺だってこんな古い建物に入りたくない。危ないのが容易に想像出来る。尚更、この中に入ろうとする気持ちになるのが信じられない。まだ日があるからいいが、これが夜になったらと思うと入るのを躊躇う。
旧校舎へ近付くと、賢太が言った通り晶が近くの木に寄り掛かり、暇そうにスマホを見ていた。俺達に気付くと「遅い」と言ってきた。すかさず賢太が呆れたように言った。
「遅いってこっちは部活してきたんだぞ。サボったお前と一緒にするな」
「へいへい。俺、ずっとこの辺を彷徨いてたけど、人影も何も見なかったぞ」
旧校舎を見上げながら晶が言うが、賢太が真面目な顔で言う。
「俺も何も無いと思うんだが……。実は、6人がこの旧校舎に入る前にAが呟いた事をCが聞いていたんだと」
「何を??」
「『誰か手を振っている』って」
賢太の言葉に俺も晶も何も言えなくなる。俺は先程も感じた嫌な汗が背中を伝う感覚が蘇る。
「……なんだよそれ。見える人には見えるってか」
晶が顔を引き攣らせながら少し旧校舎から距離を取った。俺達もそれに合わせて少し離れる。旧校舎まで大体200mくらいの位置にいた。
「え、マジで中に入るのか??」
「さぁな。発案者が来たら……って言ってるうちに来たぞ」
賢太が指差す方を見ると、拓磨と貴彦が一緒にこっちに向かって歩いて来るのが見えた。
「待たせたな」
「待ちたくなかったよ。マジで入るのか??」
俺は入りたくないから嫌々拓磨に聞くが「もちろん!!」と拓磨は譲らない。
「それで??写真はあったか??」
貴彦の質問に皆が「写真??」と不思議そうにする。俺は貴彦に写真を探すように頼まれた事、15年前には既に使われていなかった事、3年前のアルバムから旧校舎の写真は無かった事を伝えた。
「3年前から??何で急に無くなるんだ??」
貴彦の質問にまぁそうなるよなと思い、職員室での話を聞かせた。
「燃やした!?そんなヤバいもん写ってたのか!?」
晶が顔を青くしながら聞いてくるが俺は首を振る。
「そこまでは知らん。先生も当時は顧問じゃなかったから詳しくは聞いてないって。ただ、写真部の間では旧校舎の撮影は禁止だ」
皆が静まり返った。こんな話を聞かされたら好奇心より、恐怖心が強くなるのは当たり前だ。ましてや人が消えた後だから尚更だろう。
「……そもそも、入るって言っても鍵付いてんだろ??」
賢太が確認するように拓磨に聞くが、拓磨は得意げに話す。
「鍵はまだ壊れたままだ。何でも修理業者の予定がつかず、鍵の交換は明日来るんだと。だから、簡易的な鍵しか付いてないから簡単に入れる」
「いつの間に聞いたんだよその話」
「先生達が話してるの聞いた」
「めっちゃ入る気満々じゃないか」
貴彦が呆れながら溜息を吐く。
「さて、何時までもここにいるのも時間の無駄だから、入るならさっさと行こうぜ」
拓磨が乗り気で旧校舎に近付くので「待て待て待て」と晶と賢太が拓磨の腕を引っ張り止める。
「何だよ、離せよ」
「闇雲に入ろうとするな!!役割決めようぜ」
賢太がそう言うと拓磨は素直に足を止める。
「中で何かあった時、皆出て来れなくなったらヤバいだろ??外で待機する人決めようぜ」
「ついでに、中で誰がどの階を見るかも決めよう。取り敢えず俺は入ってみたい」
貴彦が挙手をしながら中に入るのを立候補する。意外と好奇心が強い貴彦に驚いた。たなみに、俺は入りたくないので外にいる方を希望した。
「入んないのかよ、祥。カメラマン欲しいだろ」
「撮るのは禁止だって言ってるだろ。それに、変なの撮って俺のカメラお釈迦にするつもりか」
リュックに大事に仕舞っているカメラを守るように手を後に回す。頑なに拒否をする俺に拓磨は「分かったよ」と諦める。
「んじゃ、祥はここにいてくれ。スマホの電源は切るなよ」
「分かった」
俺は素直に頷き、スマホのバッテリー残量を確認する。86%あるから大丈夫だろう。電波が通じるかは怪しいが、3組の人も電話を掛けれたからそこは心配していない。
「じゃあ、後は誰が何処を見るかだけど…」
賢太と晶、貴彦が話を進める中拓磨がチラッと旧校舎を見上げる。賢太達は気付いていなかったが、拓磨の目が一瞬大きく見開いたかのように見えた。だが、すぐに3人に視線を戻したので気のせいだと思う事にした。その後も話が進むうち、拓磨は何度か旧校舎を見ていた。けど俺は早く中に入りたいのかなとしか思わなかった。だが、さっきまでの勢いは無く少し挙動不審なのが気になる。
「……なぁ、拓磨。落ち着かないようだけど、どうかしたか??」
俺に声を掛けられ驚いたのか、肩をビクリと震わせた。
「い、いや。何でもないよ」
「でもさっきから旧校舎の方気にして「何でもないってば!!」……あっそ」
俺の言葉を遮り、声を荒らげて否定する拓磨に賢太達は驚いていた。
「大丈夫か、拓磨。中に入るの止めるか??」
貴彦が気を遣い、止めようか提案するが拓磨は首を横に振り「大丈夫だ」と言うので皆それ以上は何も言わなかった。
話し合いの結果、1階は晶と賢太が行き2階は拓磨、3階は貴彦が行く事になった。てっきり3階を拓磨が行くと思ったから意外だった。
「じゃあ気を付けろよ。晶、一応電話繋いどくわ」
「おう。旧校舎入ったら掛けるわ〜」
そう言うと、俺を残して4人は旧校舎に向かって歩いて行った。入口の鍵は拓磨が言った通りまだ直って無かったのですんなり開いた。皆が旧校舎に入ったのを確認すると、晶から電話が掛かってきた。
「もしもし??」
『あ、通じた。取り敢えず中には入れたぞ〜。入口は開けっ放しにしといた方が良いよな??』
「その方が良いな。中の様子は??」
中の様子は話に聞いていた通りだった。左手側に階段があり、廊下は奥まで続いて非常口で行き止まり。晶達は既に別れたようで、階段を上っている拓磨と貴彦の背中が見えた。
「今、階段に拓磨と貴彦が見えた」
『りょーかい。……やっぱり扉は開かないな。内側から鍵掛けたみたいにガタガタするだけだ』
「ふーん。何あるか分かんないからさっさと戻って来いよ」
『賢太が「案外ビビりだな」って言って笑ってるぞ』
「うるせぇ」
賢太の笑い声と晶の呆れた声が重なって聞こえて少しイラッとした。
ふと上の階を見ると貴彦は3階に着いたようだ。窓から見えたり隠れたりしているので、部屋を開けようと見て回っているのが分かるが、問題は拓磨だ。2階に着いた時は見えたがそれ以来姿が見えない。俺は不安になって、電話の向こう側で見える物全てを話し続ける晶に伝える。
「晶、上の足音聞こえるか??」
『足音??………特に聞こえないけど。3階の方は流石に聞こえないかな〜。………おい、まさか誰もいないのか??』
「いや、貴彦の姿は見えたりしているんだが、拓磨が見えない。……ちょっと俺見てくるわ」
そう言って旧校舎に入ろうとするが、晶に止められる。
『いや、賢太に行かせる。祥は外から賢太が見えるかどうか教えてくれ』
「分かった」
晶の後から「じゃあ行ってくる」と賢太の声とそのまま走り出す音が聞こえた。窓からも賢太が走る姿が見え、晶も後に続く。
『拓磨ー!!いるか!!』
晶との通話越しに賢太の叫び声が聞こえるが、拓磨の返答は聞こえない。18時過ぎているし、夏とはいっても暗くなって来ている。ライト無しで旧校舎の中を見て回るのは難しい。けれど、見える光は2つ。3階の貴彦と恐らく今2階にいる賢太だろう。晶は階段の下で待機しているようだ。
『祥、拓磨は外から見えるか??』
「見えない。そもそも2階に着いたのは見えたが、それ以降姿は見えなかった。流石に扉が開くのは見えないから中に入ったら見えないけど…」
『扉を開ければ音がする。開けようとするだけで凄い音が響くからな。でも、下にいた俺達にはその音は聞こえなかったぞ』
「じゃあ一瞬で消えたって事かよ……」
もっとよく拓磨を見ていれば良かった。拓磨から目を離した事を後悔した。旧校舎に入る前のあの挙動不審な様子は明らかに変だった。もしかして、拓磨には人影が見えていたのでは…。そんな予感もしてくる。
「なぁ、旧校舎入る前に窓に人影って見えたか??」
『人影??いや……俺は見えなかったな。祥は見えたのか??』
「俺も見ていない。ただ、拓磨の様子が変だったから……。もしかしたら拓磨には見えたのかって思って」
『……その可能性はあるな。あいつ、ここに入ろうと執着してたし。その人影に呼ばれたのか??』
「今結論を出すのは無理だ。それより、拓磨は??」
賢太がずっと呼んでいる声は電話からも聞こえてくる。だが、拓磨の声は一切聞こえてこない。外からも姿は見えない。貴彦は賢太の呼ぶ声が聞こえたのだろう。急いで階段を下りる姿が見えた。賢太と合流し2人で扉を開けようとしたり、窓を開けてみようとしているのが見える。俺も非常階段の方に回ってみるが、誰もいないし人影も見えない。晶にもその事を伝えようとするが、その前に晶が慌てて旧校舎から出てきた。その顔は真っ青だし、足も震えている。通話を切り、慌てて晶に駆け寄り体を支える。震える声をなんとか絞り出し、話す。
「今、中で賢太達が探してる声や足音は聞こえたんだが、その声に混ざって女の声が聞こえた……」
「女の声??」
「気のせいだよな!?なっ!?そんな声が聞こえるとか誰も言ってなかったよな!?」
晶は必死に俺の肩を掴み揺さぶりながら言う。俺は前後に揺れながらも落ち着くよう晶の手を掴む。
「落ち着け!!ホントに女の声だったか??」
「ああ!!女の声で「誰か…」って聞こえたぞ!!」
そんな事は賢太も拓磨も言っていなかった。晶の聞き間違いかもしれないが、怯えようが通常じゃない。賢太にも聞いてみようと思い賢太に電話する。
電話は通じてすぐに賢太が出た。
『祥!!拓磨が何処にもいないぞ!!上にもいなかった』
「窓から見てたよ。こっちからも姿は見えなかった。それより、女の声聞こえたか??」
『声??俺は聞いてないぞ??貴彦は………聞いてないって』
それならやはり晶の聞き間違いだったのかとも思うが、晶は必死に首を振り「聞き間違いじゃない!!」と言い張る。取り敢えず、このままここにいるのは危険だと思い2人に下りてきてもらう事にする。
「賢太、貴彦。拓磨の事は心配だが、俺らだけではどうしようも無いから、1回下りて「こら!!お前達何をしている!!」……えっ??」
突然、体育館の方から怒鳴り声が聞こえてきて、振り向くとそこには校務員の佐々木さんがいた。
「やべっ!!見つかった!!」
晶が慌てて俺の後に隠れるが手遅れだろう。佐々木さんは走りながらやって来る。
「ここは立ち入り禁止だろ!?……まさか中に入ったのか!?」
俺がスマホを手にしているのを見て、まだ誰かいるのか判断したんだろう。晶が「まだ2人、中にいます」と答える。佐々木はすぐに出てくるように言うので、2人にそのまま伝えた。
2人が出て来たのを確認した佐々木は、辺りを見回しかなり大きめの石を見つけるとそれを旧校舎の入口に置いて、誰も入らせないようにした。そしてから俺達に1回ずつ拳骨を落とした。
「ついこの前人が消えたのを知らんのか!!何故入った!!」
まさかその消えた人を探しに来たとは言えないし、複数人で入ったら消えるのは1人だけなのか検証したかったとは尚更言えない。どうしようかと思っていると、貴彦が口を開いた。
「立ち入り禁止の旧校舎に入ったのはすみませんでした。でも、まだ友達がいなくなったままなので何とかしたいんです」
貴彦は入った理由を述べず、ただ友人を捜しているとだけ伝えた。正直、理由になってないと思うが、暗がりでも分かるほど佐々木は顔を青くしている。
「………まだ中にいるのか??」
佐々木は恐る恐る訊ねるが、俺達は首を振る。
「いえ、捜しましたが見つかりません」
貴彦が4人で入り、3手に別れて旧校舎の中を探索した事、その間に拓磨の姿が見えなくなった事も話した。佐々木は「その時」と話の途中で口を挟んだ。
「その時、人影を見たか??」
一人ひとりの顔を見て確認するが、俺達は見ていないので静かに首を振り否定する。ただ、俺は拓磨の挙動がおかしかった事を説明した。
「旧校舎に入る前、拓磨がチラッと旧校舎を見上げたんです。その時、拓磨の目が一瞬大きく見開いたかのように見えたました。その後も旧校舎を気にするように何回も見上げてました」
それを聞いた佐々木は大きく溜息を吐いて俯いた。そしてたった一言「そうか」とだけ言った。そこで晶が「で、でも!!」と声を荒らげる。
「女の声で「誰か…」って言ってた!!」
佐々木は目を見開いて驚いており、深呼吸を一つしてから「場所を移すぞ」と言い、新校舎の方へ歩き出す。俺達は、旧校舎から消えた拓磨が気になるが「早くしろ」と佐々木が言うので急いで後を追った。
急展開に話を進めてしまい、申し訳ありません!!
最後まで読んでくださると嬉しいです!!