1-7:神の加護がありますように
「と、言うことらしい。通報だけはやめてくれ」
「通報なんてしませんよ。
だって今日のアズマさんは、その、らしくないっていうか。言わなそうなことを言っていましたし……で、でも耳が幸せでした」
「そうか。それなら良かった」
詳しく説明をすると、ニニリーはこの入れ替わっている状況を受け入れてくれるようだ。
結果論だが、こうやって信じて貰えるとすれば、ニニリーになら話しても支障はない。誰彼構わず言いふらす性格でもないしな。
「えーっと、エウロスさんは女神様なんですよね?」
「そうよ!見なさいなアズマ!力を使わなくてもこうやって信じてくれる人間もいるの!見習いなさい!」
「見習うも何も、ニニリーはお前、エウロスの加護を受けているからな。感覚とかで分かるんだろ」
「そうなの?」
「はい。私はエウロスさんの加護を受けています。ですから、同じ加護を受けている人は分かったりしますよ」
この世界では生まれた時から何かしらの神からの加護を受ける。
その受けた加護で神を判断し、適正の職業に就くのが成人までの流れだ。
神は上から下まで格付けされており、ゼオス神が一番上で、ポ神が一番下。一番下、下級神ポ神の加護は豆をとても美味しく煮る事ができる。
まぁこのとおり、神の加護を持っていたとしても、上位の神でないと常日頃使えるわけでもない、加護を受ける事もある。そうした場合は普通の人間となんら変わらない。また上位の神の加護を受けても、最大限の加護を受け取るとも限らない。だから同じ神からの加護でも出来不出来が違ったりもする。
なのでニニリーはエウロスの加護を受けているが、恩恵が少ないので、加護としては風をそよ風くらいで操れる。
そういえばエウロスは俺の身体で自分の力を使っていたが、加護とかはどういう扱いなのだろうか?
「あんた!ニニリーとか言ったわね!」
「は、はいぃ!ニニリー•ハンナリー16歳です!」
エウロスは自分が女神だと認知して貰えて、興奮した勢いでニニリーに詰め寄る。
「あたし、貴女の事好きよ。本当に好き。あたしはあたしの事が好きな人が好きなのよ!」
「しゅっ!しゅしゅしゅしゅっ!きっ!」
勢いつけてグーパーンチ!
エウロスの顔面に拳がクリーンヒットしたが、大木でも殴ったのかと錯覚する。流石は首まで鍛えている俺だ。
「何すんのよ!」
「こっちの台詞だ!なんでそう言うこと平気で言うの!俺の身体だって言ったよな!?」
「はぁ!?ニニリーにはもう説明したじゃない。だったら素のあたしを出してもいいじゃない!」
「人間いきなり入れ替わりに慣れるわけないだろ!段階を踏め!段階を!てか、なんで加護を受けているだけで好きになるんだよ!」
「………はぁ、やっぱりあんた無知蒙昧ね」
なんかあからさまなため息吐かれたんだけど。もう一発殴る元気が残ってない。
「あんたは誰の加護受けてるのよ」
「何だ?藪から棒に」
「いいから、答えなさい」
「睡神オネイロウスと闘神エレス」
眠りの神オネイロウス。俺はこの神の加護のおかげで寝れば傷や病気が普通の人よりも何倍も早く治すことが出来る。
そして闘いの神エレス。この神との加護が本当に相性が良くて、闘いに関して鍛えた事柄が倍々になって成長するのだ。
この二つの加護のおかげで闘技場の覇者になれたし、勇者であるユウヒとも出会えたし、今日日まで生きてこられた。
「あー……エレス兄様ね……」
「おいなんだその顔、俺の顔なのになんの表情か分からんぞ」
しいて例えるなら苦虫を噛み潰したような表情。
「まぁ、何、ご愁傷様?」
「勝手に憐れむな!てか憐れんでる顔じゃないぞ!?
まぁそこはとりあえず置いといて、何の質問だったんだよ!」
「あたし達の加護って、あたし達の事を潜在的に好いていると受けるわけ。
だからニニリーはあたしの事を潜在的に好きなのよ。それをお互いにビビっと感じて力を分け与えるの。そーいう仕組みよ」
「つまり、俺は潜在的にオネイロウスと、エレスを好いていると」
「そういうことになるわね…」
だからなんで憐れんでるような、蔑んでるようななんとも言えない表情なんだよ。
「とにかく、ニニリーには慣れるまで段階を踏んでくれ」
「分かったわよ。エレス兄様の加護を受けていることに免じて意見を呑んであげるわ」
そう言うと、隣でまだ顔を紅潮させてしゅっぽしゅっぽ言っているニニリーに向き直った。
「あたしの事を好いてくれているのは分かったわ。だけど、まずはお友達から始めましょう」
「はえ?ぜ!是非にも!よろしくです!アズマ君!」
エウロスが差し伸べた手を両手で握りしめるニニリー。
「いや既に俺とは友・・・人・・・」
そんな光景を見て、良き友人だと思っていたのは俺だけだったようだ。
ま、まだ入れ替わりになれていないだけだよな?そうじゃなければ心が貧しくなりそうだ。
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