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5-12:患いの追放剣闘士とポンコツ堕女神

 魔王の使徒ラヴィ•オクタンを倒した俺達は全員無事にヴェルサスの街へと帰還した。


 最初に転移させられたイマテラスさんはどうやらオネイロスに変身できていたようで、一っ飛びで世界樹へと飛んできていたらしいが、世界樹の葉と枝の中で迷子になっていたようだ。


 世界樹の上層部は上に行こうにも下に行こうにも分厚い葉と枝の迷路になっていたらしい。


 そこで面倒くさくなったオネイロスが枝を斬ったら、世界樹の夜露が発生して、俺とエウロスの頭上に落ちてきた。


 あの水滴はやはり世界樹の夜露であり、丁度俺がエウロスにヘッドバットをしたことで身体が入れ替わったのではないか。と、これまた転移させられてから、地図と記憶を頼りに、帰り方が分からない俺達の元まで迎えにきてくれたナナリーが予想していた。


 ラヴィに殺されたクエピーは泣きながら目を瞑ってラヴィの肉を食べていたが、咀嚼している間に、ちょっと辛味があって美味しいと言っていて、純粋に引いた。


 そしてことの元凶であるエウロスはヘッドバットの威力が強過ぎたのか、ヴェルサスに帰ってきても目を覚さなかった。一応息はあるので、世界樹林から馬車までは癪だが俺がおぶって来た。


 結局世界樹の夜露は降りかかったのが振り絞った最後の一滴だったようだが、俺は身体が元に戻ったので、あとはこいつがかけた恋患いの呪いを解くだけである。


 それにしても俺は理想の姿に変化していたといえども、このポンコツ堕女神に恋心を抱き、ときめいていたのがなんとも解せない。なんなら悔しい。


 ユウヒ達にこのことを話せば理解はしてくれるだろうか。いや、それはよそう。結局俺がユウヒ達を頼れなかったのだ。ユウヒ達を俺が信頼をしていないと思われても仕方ないしな。


 俺はこのままこの馬鹿にツケを支払わせなければいけない。ユウヒは勇者の使命として、俺は呪いを解く為に魔王に出会わなければいけないからな。お互いに魔王と出会う目的ならば、いつかまたお互いに背中を預け、剣を並べる日が来るだろう。


 それまでは俺は患いの追放剣闘士でいい。


「あんた何綺麗にまとめてんのよ!これじゃあ俺たちの戦いはこれからだ!って煽り入っちゃうじゃない!終わりな訳ないでしょ!あたし天界に帰ってないじゃない!」


 世界樹林での出来事や、エウロスと出会った時の事を日記に書いていると、隣から覗き込んでいたエウロスがそう言った。


「何勝手に見てんだ!そもそもお前の目的を最優先でするわけないだろ。自分がしてきたことを胸に当てて考えろこの馬鹿」


 ヴェルサスに帰ってきて、皆と別れてから、ボロ家に帰宅すると同時にエウロスは涎を垂らしながら目を覚ました。世界樹林から帰ってきたのでもう昼過ぎである。


「馬鹿って言ったー。馬鹿って言う方が馬鹿なんですー。はい!あんた馬鹿ぁ?いだっ!ぶった!麗しきあたしの顔面をぶったの!?DVよ!ドメスティックバイオレンスよ!社会問題よ!提訴するわよ!」


 まだ俺に刃向かえる勇気がある様なので無言で拳を握りしめた右手を上げると、エウロスは身体をビクつかせて防御姿勢を取る。


 俺だって異性にこんな暴力で言うこと効かせたくない。だがこいつは痛い目見ておかないと理解できない馬鹿だと思うのだ。


「叩かないで!叩かないで!」


 防御姿勢を取りながらそう懇願するエウロス。加虐心が刺激されることはなく、俺は拳を納める。俺がまともな性癖と性格で良かったと感謝しろ。


「お前が俺に呪いかけなければ、こうはなっていないのは理解しているんだよな?」


「え、えぇ、そこは本当に反省しているわ。あたしの暇つぶしでアズマを巻き込んだことを申し訳ないと思っているわ」


「本当は?」


「もうちょっと上手く誤魔化せれば、完全犯罪も目じゃなかったわね。いだだだだだだ!」


 ノーモーションでエウロスの顔面を片手で掴んでアイアンクローをする。


「ごめんなさいごめんなさい!反省してまーす!」


 これ以上力を入れればエウロス顔面が変形してしまうので離してやる。


「あたしの黄金比率の顔が変わったらどうすのよ!ジャイロボール使えなくなるじゃない!」


「お前、アイアンクローに小顔効果があるの知らないのか?」


「そうなの?」


「骨が歪むからな」


「小顔効果はもっと表面上のとこを削ぐものよ!」


 馬鹿なエウロスは一瞬信じたが、俺の答えに唾を飛ばす勢いで反論した。


「まぁ何にせよ大円団って訳ね!」


「大団円な」


「そうとも言うわね」


「そうとしか言わない」


「細かい男は嫌われるわよ」


「お前に嫌われたところでなんの支障もない。てか何も大団円じゃないからな。やっぱりお前反省してないだろ」


「反省しています。本当よ。だからお願いよ、無言で拳を振り上げるのをやめてよ。怖いわ。ママが本気でキレた時並に怖いわ」


 舐めた口をきくと暴力を行使することにしよう。これもまた修正であり、教育である。何で俺がこいつを修正しなければならんのかは甚だ理解し難いが。


「はぁ……今日は疲れた。俺は寝るが、お前は?」


「あたしはニニリーのとこ……ろに行こうかと思ったけど、寝るわ!疲れたもの!えぇ!絶対に寝るわよ!じゃあおやすみ!」


 大人しくしていろと目で伝えたら、伝わったらしく、エウロスは自ら押し入れの中に入っていった。


 言葉に出した通り、今日は疲れた。そろそろ目を身体も限界だ。久しぶりに俺は自分の身体で睡眠ができる悦びに感動しながら布団へと入って、翌朝まで泥の様に寝た。


 何か夢を見た気がするが、起きた時には忘れていた。


 小鳥の囀りが目覚まし時計で俺は大きく伸びをした。すると腕が何かに当たって、突然の痛みに上体を起こすと、今度は頭を何かにぶつけた。


 何事かと慌てて横へと転がると物凄い音を立ててから、俺の腰くらいの高さから落ちた。


「な!何!何の音よ!」


 エウロスも俺が落ちた音で飛び起きた。


「……おい。これは夢か?」


「……いえ、夢じゃないわよ」


 ぼやけていた視界でお互いの顔を見合っていたのが、眠気が吹き飛ぶにつれて、互いの顔の輪郭が露になる。


 二人で互いの頬をつねりあう。痛みはある。エウロスの言う通り夢ではない。では悪い夢だ。悪夢だ。だってこんなことあってはならない。もう解決したじゃないか。そこは終わりじゃないか。そこの所は昨日終わりを迎えたじゃないか。


 だから俺達は大きく息を吸って、互いに思っていることを口にする。


「「何で俺達また入れ替わってる(のよ)んだ!?」」


 どうやら俺達の入れ替わり人生は終わらないようだ。


 誰かこのクソッタレな悪夢を終わらせてくれ。


 第一部完!ということで一旦終わりです。続きを書く力が高まったら書きます!


「面白い!」「続きが気になる~」と感じ、お思いになられたら、


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I need more power!!!!

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