5-8:世界樹林7
「死んで償え!」
ラヴィの攻撃が俺達へと向かってくる。エウロスも俺も避ける行動に出る。
「ふん!何度も同じ攻撃をして、あたしはもう見切ったわ!……えっ!なんで!?どうして!?」
が、避ける前の場所に戻された。成程、避けようとしてもこうなっていたわけか。
イマテラスさんがどれだけ受けても衣服が破れるくらいしかこの攻撃の威力が分からなかったから、俺がエウロスの身体で直撃するわけにもいかない。
しかし剣で受け流せるのか?やる前から諦めてはいけないな。とりあえずやってみるか。
「はいどいてー」
俺が攻撃を受け止められるか試そうとした時にナナリーが俺達を押しのけて前に立つ。加護の力が乗ったハンマーを腰から取り出して、攻撃に対して打ち付けた。
「な、何!?私の攻撃が消えた!?」
「あの使徒の攻撃は転移魔導だね。先程のからの攻撃は空間を歪めて圧縮した力を飛ばしてきているんだねー。不可視の攻撃だし、避けようとすれば歪んだ空間の余波で引き寄せられるみたいだねー。まぁそれを踏まえていれば身体が最も引き寄せられる瞬間にコレを打ちつければいいだけなんだけどもー」
ナナリーかラヴィに自己紹介をしてから今の今まで静かだったのはラヴィを観察してして考察していたからか。
「いいわよナナリー!そのままあいつやっちゃいなさいな!」
「それはムリー」
意気を取り戻したエウロスは揚々と言うも、ナナリーに却下される。
「どうしてよ!あんたの加護で打ち消せるなら、勝つのも簡単でしょ!」
「私の加護は前にも説明した通り、同じ痛みを与えることで治療するだけー。痛みを与えてくる攻撃は痛みを与えることで打ち消せるけど、相手にダメージを与えるのはムリー」
「だから俺達が攻撃役だ。エウロスの投擲攻撃をしてもいいが、クエピーに当たる可能性があるから、あいつに近寄って俺が近接攻撃をしないといけない」
「どうやってあいつのところに行くのよ」
「ナナリーが攻撃を打ち消しつつ前進していくしか考えつかないが、恐らくだがナナリーの体力がもたない」
「アズマ君ご明察」
「じゃあどうすのよ!あいつが自分から寄ってくるのを待つ訳!?」
「それも難しいよな。あいつが近接攻撃で仕留めたくなってくれれば……」
そう言いつつエウロスの顔を見ていると俺はある名案を思いついた。
「えっ?何?何であたしの顔見つめるの?こ、こんな時に愛の告白なんてやめてよね。い、一応聞いてあげるけど」
「エウロス」
「な、何よ。本当に告白するつもり!?」
「絶対に守ってやるからな」
そう言ってエウロスの肩を叩いてから俺はラヴィと向き合う。
「おいラヴィ!」
「何ですか売女!命乞いですか!?」
「お前の主人の魔王の気持ち悪い文面が綴られた手紙は家畜の餌以下だ!贈り物の皿も家畜の椀に丁度よく使っている!まぁ?そんな間接的なことでしか想いが伝えられない奴の部下は俺達に直接攻撃をしてこれない腰抜け野郎だよな!一生そこで投擲攻撃していればいいさ!主従共に腰抜けが!」
「どうやら、本当に死にたいようですね」
ラヴィの右瞼が怒りの限界で震えている。
「あ、アズマ、あんたあたし達の代わりにヘイトを買う真似をするなんて……なんて男らしいの!チョロいヒロインだったら惚れているわよ」
「って、こいつが言っていた」
「アズマ!!!!」
「殺す!」
エウロスに罪をなすりつけた。どう考えてもエウロス発の情報なのに、俺の身体をしているエウロスへと怒りを向ける。ラヴィは怒り心頭でそこまで考える冷静差に欠けているようだ。
これでラヴィが近接攻撃を仕掛けてくる。後はそれをどう受け、流し、反撃出来るかだ。
「え?」
俺が考えている間にラヴィはエウロスの前に移動していた。転移魔導だから少しでも目を離せば目の前に現れるのか!
エウロスの喉元を狙っている手に握っていた剣を突き立てる。ガキン!と金属音が鳴り、ラヴィの手と俺の剣は大きく弾かれる。何だ今の。剣と剣で競り合った時のような感覚だったぞ。
「しっ!」
上に大きく弾かれた反動を利用して身体を捻ってラヴィへと向かって斜めに斬撃を入れる。普通なら当たる速度だけど、ラヴィは再び転移魔導を使って移動した。
振り切りかけた剣はエウロスの顔面の前で止める。
「その太刀筋、相当洗礼されていますね。貴女、本当にあの売女ですか?」
ラヴィは元の場所へと戻って深く息を吐いてから、俺にそう問いかける。どうやら今の攻撃のやり取りで自分が俺達の術中にいると理解したようだ。一瞬にして冷静差を取り戻すのか。戦闘の場慣れしている厄介すぎる相手だな。
「さぁ、どうかね」
「先程そこのアズマ•クラタチが、貴女の事をアズマと呼んでいましたね?そして貴女達は世界樹の夜露を求めているんでしたね?貴方達、もしかして身体と精神が入れ替わっているんじゃありませんか?神話でありましたよね?そういうお話」
誤魔化してみたが、どうやらラヴィには誤魔化しは効かないようだった。そもそもバレたところでリスクはない。
「だったら何だ?解き方でも教えてくれるのか?」
「くくっ!くははははははは!そうですか!貴女は人間と精神が入れ替わったのですか!しかも入れ替わった相手がアズマ•クラタチ!でしたら大成功ですよ!」
「な、何が大成功なんだ?」
「おやおや?聞かされていないんですか?なるほどなるほど、売女は貴方に何も言っていないんですね。あぁ哀れな人間ですね」
「あんたね!あんたがあたしにこの呪いをかけたのね!」
なぜラヴィが嬉し楽しそうに笑っているのか疑問に思っていると、そう突然エウロスが叫んだ。
「くはは、そうですが?何か?」
「呪いって魔王の呪いか?でもあいつ魔王の使徒なんだろ?」
「魔王の使徒ってのはね、魔王の感情の一部から生まれたモノなのよ!だから言うならば魔王の分身体よ!あいつは嫉妬心から生まれたラヴィ•オクタン。あたしに嫉妬してこの入れ替わりの呪いをかけた張本人よ!」
「おい!色々と初耳の事が聞こえた気がするんだが!?」
「聞き流しなさいな!全部説明してる暇はないわよ!あいつが呪いをかけた本人なら、あいつを倒せば入れ替わりは解けるはずよ!さぁやるわよアズマ!感動のフィナーレを迎えるわよ!」
エウロスはこの戦いの終幕へと向かう様に俺に指示をする。
「勢いで誤魔化せると思うなよ」
だが俺はラヴィへと向くのではなく、エウロスへと敵意と怒りを向けた。
「ひっ!あ、アズマ…さん?か、顔が、あたしの顔が物凄い形相に……」
「そこに座れ」
「な、何を言っていいるの?ほら、戦闘中よ。ふざけている」
「座れ」
「はい」
俺の怒りがいつものような瞬間的で謝れば許せる怒りではなく、本物だと理解したエウロスは大人しく従った。
ナナリーもここまで怒りを露わにしている俺をみた事がないので、とりあえずラヴィを警戒している。
「全部、一から、説明しろ」
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