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5-7:世界樹林6

「私の攻撃をたかが人間が身体で受け止めた!?貴女本当に人間ですか!?」


「ふっふっふっ、ついに秘密のベールを脱ぐ時が来たようだね。その質問に答えちゃうよ!」


「やはり、ただの人ではありませんか」


「私は全世界のありとあらゆる存在のお姉ちゃんだよ!」


 ラヴィはイマテラスさんの言っている事が理解できずに、俺達に説明を求めるように視線を移してきた。


 当然俺達もよく分からないので目を逸らしておく。ラヴィは取り付く島がないので、自分で考えてから質問した。


「……お姉ちゃん?全ての母という事ですか?」


「お姉ちゃんはお母さんじゃないよ!お姉ちゃんはお姉ちゃんだよ!」


 怪訝な顔で俺達を見つめられても困るのだけども。


「な、何にせよ、その精神だけで私の攻撃が防がれる訳がありません!もう一度検証してみましょう」


 ラヴィの手元の空間が歪む。またあの攻撃か。空間が歪んだように見えているので空気を圧縮しているのか?イマテラスさんが攻撃をくらってもすぐに回復してしまうために、どんな攻撃か想像が付かない。


 空間を歪ませて作り上げた見えない何かをイマテラスさんへと向かって放出する。


「お姉ちゃんだからって何度も受けると思わない……きゃあああああ!」


 イマテラスさんは確実に避けたはずだった。見えていなくても、初投の時の速度を計算すればイマテラスさんなら避けられていた。避けようとしたのだが、身体がそれに引き寄せられて直撃した。


「いたーい!もうおいたばっかりして!お姉ちゃん怒っちゃうよ!」


 それでもイマテラスさんはいつも通りの様子を崩さずにラヴィを相手していた。だが装備は耐久性を失い、破れたりして所々肌色が露出している。


 イマテラスさんの中にオネイロスがいるのは伏せておいた方がいい。そもそも俺達もなんでイマテラスさんの中にオネイロスがいるのかをしっかりと理解していないからな。


「私の力をものともしない。いくら加護でもそこまで強力なのは……まさか!」


「ふっふっふっ、気付いちゃったみたいだね」


「まさか!そんな!ありえない!」


 何やらラヴィは動揺している。イマテラスさんに攻撃が通用しない原因を自分なりに見つけたようだ。


「そう!考えている通りだよ!私はお姉ちゃん選手権膝枕ヨシヨシ部門と手作り料理あーん部門と将来弟君に結婚するーって言ってもらえる部門よ覇者だよ!」


「何ですかその姉がいない男が考えた選手権わ!違います!貴女の胸に刻まれたその紋章、その紋章は紅の巫女の証!その紋章を持っている人間はいないはず!」


「むぅ!お姉ちゃんの胸ばっか見てエッチな弟君だ」


「茶番はいいから答えなさい!その紋章を!どこで手に入れたのか!」


「んー?これ?これはね……わかんないの。お姉ちゃんね、小さい頃の記憶がないから、自分がどこの出身かも知らないんだ」


「……成程、では親切な私がそれが何か教えてあげましょう。その――」


「あぁ!紅の巫女!思い出したわ!確か神を体に宿す事ができるシャーマンよね!はーっ思い出せなくて胸につっかえがあったのよ!あースッキリした」


 ラヴィが説明しようとしたところで空気の読めないエウロスが割って入ってきて説明してしまう。ラヴィは咳払いして続ける。


「そうです。だが――」


「だけど確か糞野郎に一族の集落襲われたんじゃなかったっけ?そう!そうよ!あの糞野郎自分の天敵である紅の巫女がいる集落を襲っていたわ!あ!イマテラスの子供の頃の記憶がなのって、集落を襲われた時に無くしたんじゃないの!?どうどう?あたしの推理冴えてない?」


 目を輝かせて得意げにエウロスは俺とナナリーに褒めろと催促してくる。ラヴィが拳を強く握って震えているのだけども、寒いからだよな?


「えぇ!そうなの!?じゃあ、じゃあ、お姉ちゃんは魔王軍をやっつけなきゃいけないってこと!?」


「そうよ!あの糞野郎の手下なんて全部糞同然よ!糞の周りには蠅と雑菌しか集らないわ!似た物同士の集まりなのよ。イマテラス、あんたは魔王に対しての切り札よ!だからそんな使徒如きさっさとやっちゃいなさい!あたしが許可するわ!」


 エウロスにとって魔王は相当嫌われているらしい。しかし、こいつはどんな立場でこの発言をしているのだろうか。


「こ」


「何?紅の巫女にビビって声も出ないのかしら?」


「このビチグソがああああああああああああ!!!!!!!!」


 ラヴィのここ一番の怒号が樹林に響き渡る。急な怒号に俺達の背筋は伸び上がる。


「私の言葉を遮り、更には私の事を蠅呼ばわりし、魔王様の事を何度も何度も蔑称で呼んだ!償え!死んで償え!」


 エウロスの不遜な態度と発言に遂にプッチンと堪忍袋の尾が切れてしまったラヴィ。今までの攻撃や気迫は小手調程度だったのが、肌でひしひしと感じる。


 俺達は怒らせてはいけない者を怒らせたのかもしれない。


「な、何よ!こっちには紅の巫女であるイマテラスがいるのよ!行くわよアズマ!ナナリー!お姉ちゃんパワーをイマテラスに集めて変身させるのよ!ほら!ペンライト!」


 どこに忍ばせていたのか色とりどりのペンライトを渡される。こんなの用意するより防寒着をちゃんと用意して欲しかった。


「大きくなったらお姉ちゃんと結婚するー!だからがんばえー」


「ふぉおおおおおおおおおおお!」


 エウロスはペンライトを振りながら俺の身体で問題発言をする。周りに入れ替わりを知っている人しかいなくて良かった!


「ほら!あんた達も!」


「お前が全部やれよ。具体的なのを思いつかない」


 この前は大好きとかでも良かっただろうが、さっき言ってオネイロスに変身しなかったあたり、もっと具体的な事を言わないといけないであろう。それが思いつかない。


「何でもいいわよお風呂に入りたいとかでいいんじゃないの?」


「ぐっ…お、お姉ちゃんとお風呂で背中を洗いっこした〜い。だから頑張れー」


「あんた中々気持ち悪いわね」


「お前が言わせたんだろ!」


「いやっほおおおおおお!キタキタキタキタ!キター!お姉ちゃんパワーが溜まってキター」


 どうやらお姉ちゃんパワーがイマテラスさんに集まったようだ。これでオネイロスへと変身すれば、いくら魔王軍使徒と言えど対等、それ以上に戦えるだろう。


「私が黙ってそれを許す訳がないだろうが!」


 ラヴィが右手の人差し指を上に向けた瞬間にイマテラスさんの足元に魔紋が発生し、紫色の輝きとともにイマテラスさんの姿は消えてしまった。


「なっ!あんた!変身バンク中は攻撃しないのがセオリーでしょ!」


「知るがそんなこと!紅の巫女は私の力で樹林外へと転移させた!これでお前達を死で償わせる事ができる!」


 血走った目で俺達を捉えるラヴィ。マズイ、エウロスのせいで当初の話し合いで折り合いをつける事ができなくなった。このままの戦力では俺達は確実に殺されてしまう。


「アズマ!」


 エウロスがようやく真剣な顔つきで俺を呼んだので、同じ面持ちで答える。やっとこいつも危機感を持ったみたいだ。


「何だ!作戦でもあるのか!」


「どうしよう!」


 まずはこいつから片付けた方がいいかもしれない。


「面白い!」「続きが気になる~」と感じ、お思いになられたら、


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