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5-6:世界樹林5

「自己紹介がまだでしたね。私は魔王軍使徒のラヴィ・オクタンです。以後、冥土までお見知り置きを」


 そうラヴィは紳士的に挨拶する。変態紳士ってやつか。


「魔王軍使徒って確か、魔王の側近よね?」


「そうだよー。アズマ君が言っていたのが、あの使徒ならば、私達は相当マズイ相手と対峙しているねー」


 まさかあの変態紳士が魔王軍使徒だとはな。鈍っていても俺の剣速を見切られるのも納得だ。


 ナナリーの言う通りに俺達はとんでもなくマズイ奴を相手にしている。魔王軍使徒は勇者パーティーで相手をして一人倒せるかどうかの相手だ。


 現状の俺とエウロスとナナリーでは勝てる見込みはない。せめてクエピーが人質に取られていなくて、イマテラスさんがお姉ちゃんパワーを覚醒してくれていたら、まだ何となかなっていたはずだが、ないものねだりはやめておこう。


 そもそもこいつの目的は世界樹の夜露だ。それを奪い合うことになれば戦闘は必須だ、なんとか話し合いで纏められないだろうか。


「貴方達!」


 ラヴィは甲高い声で俺達に向かって叫んだ。


「どうして自己紹介ができないんですか!?私はしましたよ!貴方達の番じゃありませんか!?」


「な、ナナリー・ハンナリー」


「ほうほう、貴方は?」


「アズマ・クラタチ?」


「貴方があの……」


「エウロ」


「貴女には聞いてません!」


 二人の名前は大人しく聞いていたのに、何故か俺には厳しかった。


「お前が自己紹介しろって言ったんだろ!」


「貴女のことを知らない使徒はいませんよ!この売女!」


「誰が売女よ!この変態嫉妬糞野郎!」


 売女と罵られて怒りを抑えきれなかったのはエウロスだった。


「何で貴方が怒るんです?」


「それは…その……あれよ!よくも仲間を侮辱したなーてきな?」


「仲間思いなのですね。ですがその女は貴方の想いを無碍にするほどの愚かな存在です!」


「はぁ!?あんな糞野郎の使徒をやっているあんた達の方がよっぽど愚かじゃない!ぶっ殺すわよ!」


「誰のことを糞野郎呼ばわりしているんです?私ですか?私ならば、謝れば許してあげますが、もしも、もしも万が一魔王様に対して言っているなら、容赦はしませんよ」


 ラヴィから殺気が溢れ出して俺達へと向けられる。その殺気のせいで、この凍てついた世界とは違う寒気が身体を突き抜けていく。


 エウロスは気付いていないのか怯んではいなかった。


「おいエウロス。お前あいつのこと知っているな」


「えぇそうよ。名前を聞いて思い出したわ。前に言ったわよね魔王はあたし達のいる天界に来るって。その際の天移陣を作ってるのがあいつよ!だからあいつぶっ殺して魔王を来れなくしてやるわ!あたしって天才じゃない!?」


 嘘発見器は鳴らないから本当のことを言っているようだ。だとすると、こいつの方が愚か者になる。


「あいつ殺したら、お前は天界に帰れないってことにならないか?」


「………はい?」


「だってあいつが天移陣を作っているなら、その作り手を倒してしまったら、もう行く手段は無くなるわけだろ?それでいいのか?」


「良いわけないでしょ!そんなのちょっと考えたら分かることじゃないの!馬鹿じゃないの!」


 こいつが俺の身体をしていなかったらラヴィの前に突き出しているところだった。怒りを抑えてコソコソ話を続ける。


「俺達は世界樹の夜露を求めて来ている。それに対して目の前に魔王軍の使徒がいて、そいつが天移陣を作れるときた。ではどうするか?」


「ボコって言うことを聞かせたのちに世界樹の夜露を独り占めにするのね」


 真剣な顔でそう返される。エウロスは力量の差も考えていないし、ナナリーの発言も加味していない馬鹿な発言だった。頭が痛くなってきた。


「今の俺たちでは勝てない相手だ」


「あんた、あたしのこと馬鹿だと思ってるでしょ?」


「そうだが?」


「否定しなさいよ!!!まぁ、いいわ。見てなさいな!あたしが有能な女神ってところを証明してあげるわ!」


 エウロスは俺達より一歩前に出る。


「何ですか?謝る気なりましたか?」


 そして大きく息を吸って叫んだ。


「お姉ちゃん大好きー!」


 この場の全員が一瞬何を言っているのかを理解しなかったが、俺はエウロスの目的を理解した。だからエウロスに加勢する。


「お姉ちゃんの事が大好きだー!」


「お姉ちゃんとお風呂で洗いっこしたーい!」


「お姉ちゃんに添い寝されながら眠りにつきたーい!」


 お互いにお姉ちゃんにやってもらいたいことを棒読み気味に叫び続ける。


「な、何を言っているんですか?お姉ちゃん?……なるほど私の気に当てられて幻想を抱いてしまいましたか。なら話は終わりですね!」


 ラヴィは戸惑いを隠しきれておらず、どうすればいいのか少し考えてから、気が狂ったと思い、話ができなくなったので戦闘フェーズへと移行した。


「消えなさい!売女と愚者共よ!」


 手に捻り曲がった何かを作り出して、それが球状へと変化し、俺たちに向かって放った。


「お姉ちゃんパワー!」


 イマテラスさんの声が地の底から聞こえた後に、世界樹の根っこが剥き出しになっている陰の部分から人影が飛び出してきた。


「お姉ちゃんリフレクト!きゃああああああ!」


 イマテラスさんが地の底から帰ってきて、ラヴィの放った攻撃に直撃する。リフレクトと言っている割には何も防御する道具を持っていない。身体を張って俺たちを守ってくれた。


「お姉ちゃんの帰還だよ!」

 

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