5-3:世界樹林2
「待たせたわね!」
ギルドで珍しく意見が合い、意気投合してから旅支度を終えて、ヴェルサスの正門前で待ってくれていたナナリーと合流する。
「遅いですですよ」
ナナリーの他にもどうしてかクエピーとイマテラスさんが待っていた。
「何で二人ともいるの?アズマ、あんたが呼んだの?」
「俺は何も言ってないけど」
「何を水臭いことを言ってるんですよ。私達はパーティーメンバーですよ。パーティーメンバーが困っている時は助け合う。それがパーティーってものですよ」
うんうんとわかった風な口をきくクエピー。こいつもこいつで本音を隠しながら喋るから別の目的があるんだろう。どうせ大方世界樹林でしか出会えないモンスター目的だろう。
「クエピーちゃんの言う通り。いつでもお姉ちゃんに頼ってくれていいんだからね」
こちらはこちらでお姉ちゃん風を吹かせていた。純粋に力になりたいのだろうけども、お姉ちゃんとして頼られたい願望が透けて見える。
「俺達は本気で挑むつもりだ。それでもいいんだな?」
「当たり前ですよ!」
「お姉ちゃんに任せて!」
二人は二つ返事で答えてくれた、俺も変なプライドを捨ててあいつらに相談していたら追放されたとしても、普通に付き合えていたのかもしれないな。
過ぎた事を思っても仕方ない。今は世界樹の夜露を手に入れなければ。
「話はついたー?じゃあ行こっかー」
ナナリーの用意した馬車で俺達は世界樹林へと向かった。
世界樹林は世界樹という雲をも突き抜ける巨大な樹木を中心として草木が群落している樹林。天気がいいと俺達が住まうボロ家から薄らと見えたりする。
ヴェルサスからは半日以上をかければ馬車で行ける距離にある。今回はナナリーの店の常連客の人に頼んで馬車に乗せてもらっている。
「エウロスさん機嫌が戻って良かったですよ」
「まぁ俺達がお金を集めている理由は世界樹の夜露を手に入れる為に働いていたものだからな。それが手に入るとなるとそりゃあ機嫌も戻るだろ」
エウロスの機嫌が戻っているのは俺と同じ理由だろう。ギルドのどこかで世界樹の夜露の情報を聞いてきたんだろうな。
エウロスはと言うと世界樹林に早く着かないかと今か今かと御者にいちゃもんをつけていた。
「ナナリーちゃんも世界樹の夜露が欲しいの?」
「欲しいねー。だけど入手量は極僅かだから、もしも手に入れれば今回はアズマ君に譲るよー」
「えー?じゃあどうして一緒に行ってくれるの?」
「世界樹の夜露の生成されるところが見てみたいんだー。アズマ君達がいれば戦闘面での世界樹までの道程は安心だろうからねー」
「お姉ちゃんがナナリーちゃんも護ってあげるから安心してね」
「私も!私も役に立てますですよ!ね、ぷーちん!」
「ぷ!」
「二人共期待しているよ」
「見えてきたわよ!」
ナナリーが二人と親睦を深めていると、前方しか見ていなかったエウロスが高らかに叫んだ。
エウロスに言われて前を向くと、前方に見える世界樹がかなり大きくなってきていた。その世界樹を中心として広がる樹林。今回はナナリーを含めた五人で世界樹の下まで行くことになる。
受注したクエストではないがランクをつけるとすれば推定Sランクは超えるクエストになるだろう。
理由としては世界樹林の中にはAランクモンスターがいる。外周部分は低ランクが多いが、世界樹に近づく程に高ランクのモンスターが縄張りを持っていたりする。他にも磁場が狂っていたり、地形に惑わされたりと、ランクが上がる要素は多々ある。
「では世界樹までの案内は私がするね」
到着して、馬車は明日の昼に同じ場所に来るのを取り付けて去って行く姿が消える前に、そう言ってナナリーは地図を開いた。
「ナナリー、地図だけでいけるのか?」
「んーまぁ迷うことはないから行けるよー」
地図だけで辿り着けないと噂で聞いたので、心配だったが、ナナリーが言うならば信じよう。
「よーし!じゃあ行くわよ!エウロス隊レッツらゴー!」
エウロスが張り切り先頭きって一歩世界樹林に脚を踏み入れる。その次にイマテラスさんとクエピーが「おー」と仲良く言って後に続き、最後に俺とナナリーが歩を進め出したのであった。
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